16 / 121
殿下、何してるんですか!?
9 治すって、そういう意味じゃない!
しおりを挟む俺は思わず目を見開いて、パチパチッと目を瞬かせる。
頭にあるぴくぴくっと動く獣の耳、お尻から生えたうねうね動く尻尾。そして俺と年の変わらなかったセシル様は縮んで、十歳の少年に変わっていた!
「ううええぇえええっ!?」
俺、体の力を抜く事しかしてないけど!? 耳とか尻尾とか生やしてないし、なんで少年になってるのっ!?……俺、なにかやっちゃった!?
と思ったが、小さくなったセシル様はびええええーーんっと高い声で泣いて俺に謝った。
「あぁぁんんっ、ごめんなさぁぁいいっ、ぼくっぼくっ、傷つけるつもりじゃなかったのおぉーー! ごめんなさぁいいっ! わぁぁんっ!」
セシル様は床にぺちゃっと張り付いたまま、泣きじゃくった。床に涙が溜まっていく。
そしてその姿を見て、俺はハッと思い出した。ずっと忘れていた事を。
……そうだ、忘れてた! ノース王国の末王子はまだ十歳の黒豹の獣人だったッ!!
その真実に気が付き、俺は今までの違和感の謎がすっかり解けた。
見た目に反して、俺宛ての呪いの手紙の文字が拙いところ、やることがどこか妙に幼いところ、自分の気持ちにここまで正直なところ……全部、子供だからだ。
つまり、レオナルド殿下が大きくなったらって、歳を取ったらって事?
俺は呆気に取られていたが、セシル様は三人の従者に抱きかかえられて必死に慰められている。最初は多いと思っていた従者も、十歳の子供なら従者も三人つくはずだ、と今では納得できる。
「あああーんっ、ごめんなさぁぁいいっっ」
セシル様はよっぽど怒った俺が怖かったのか、ビービー泣いている。それはもう手も付けられないほど。
ぶかぶかの服を纏って小さな子供が泣いている姿を見ていると、段々居た堪れなくなってきた。というか、罪悪感が……。体の力はすぐに戻ると思うけど、ちょっとやり過ぎちゃったかな? いや、十歳の子供にはやり過ぎたよな。どうしようっ……!!
俺はおろおろとし始めたが、そんな俺の肩をぽんっとレオナルド殿下が叩いた。俺が振り返るとレオナルド殿下は少し困ったように笑っていた。
そして、すぐに俺の手を怪我をしていない方の手で握ると従者達に言った。
「私達がいてはセシル様も落ち着かれないでしょうから、一旦失礼します。……今回の事はお互い不問という事でいいですね?」
レオナルド殿下がまだ血の付いている右手をちらつかせると、従者達は頷いた。それを見て、レオナルド殿下は俺の手を引いて「戻ろう」と言った。
俺はレオナルド殿下に引かれて、来た時と同じように部屋を出て行った。
それから俺達は自室に戻ったのだがーーーー。
「レオナルド殿下、俺、やりすぎちゃったんじゃっ」
心配になって言うと、レオナルド殿下は「大丈夫だよ」と俺の頭を優しく撫でた。
「それより、私の手を治療してくれないか?」
切られた右手を見せて俺に言った。
皮膚は繋がって治っているが、まだ内部は痛むのだろう。
「勿論です! 先に手を洗って血を落としてきてください。俺、準備しておきますから」
俺が言うとレオナルド殿下は「ちょっと待ってて」と言って部屋を出て行った。手を洗いに行くのだろう、俺はその間に仕事鞄から包帯やら薬草やらを取り出した。
それからレオナルド殿下が部屋に戻ってきて、俺達はベッドの上で向かい合って座った。
「レオナルド殿下、ナイフの前に出ちゃダメですよ」
俺はそう言いながらレオナルド殿下の右手に治りが良くなる薬草を貼り、包帯を巻く。
レオナルド殿下にナイフが向けられた時、ひやっとした。
「切られるつもりはなかったんだけどね」
「俺……本当にびっくりしたんですから」
切られた時の事を思い出すと、胸が痛い。自分が切られたみたいに。
「すまない、セス」
レオナルド殿下は俺の頬を撫でながら謝った。いつもは凛々しい眉毛が八の字になっている。そんな表情をされたら怒れない。
「今度からは気を付けて下さいね」
俺は包帯を巻き終え、レオナルド殿下は「ああ」と答えた。そんなレオナルド殿下に俺はぽつりと尋ねる。
「あのレオナルド殿下。……セシル様、本当に大丈夫ですかね? 俺、やりすぎちゃいましたよね、きっと」
「いや、あの子にはあれぐらいがちょうどよかっただろう」
レオナルド殿下は意外にあっさりと言い放つと、その理由を教えてくれた。
「セスも見ただろう? あの子が半獣なところを」
「はい」
人でありながら一部は獣だった姿を思い出す。
「ノース王国では、魔力が高いとどちらの姿も保てないとされている。実際セシル様は魔力が高い。あの変身魔法も魔力が高いから出来た事だ。おかげで将来を期待されている。……だが、そのせいで皆が甘やかしているんだ」
レオナルド殿下の言葉に俺はセシル様のわがままプリンスぶりを思い出し「あー」と納得する。
「なんでも自分の思う通りになると思っている。……今回の事はあの子にとってはいい薬になっただろう。さすが薬剤魔術師だ」
レオナルド殿下はふっと笑って言った。
まあ、確かにいい薬にはなったかもしれない。……でもぉ。
「大丈夫ですかねぇ」
あんなに泣いてたけど……。俺、やりすぎちゃったんじゃないかな?
俺はやっぱり心配になる。でもそんな俺にレオナルド殿下は「セスは優しいな」と言った。
「……俺は別に優しくないですよ。……それより」
言いかけた俺にレオナルド殿下は「なんだい?」と問い返した。
「あの、どうしてセシル様はレオナルド殿下の事を?」
いや、まあ、レオナルド殿下なら老若男女問わず誰にだって好かれると思うけど。でも、どこでセシル様に好かれたんだろう? 相手は他国の王子なのに。
その疑問が胸に残っていた。
「ああ、それはね。去年、私がノース王国に行った時に遊び相手になってね、どうやらそこで惚れられてしまったみたいなんだ。さすがに小さな子の求婚を足蹴にできなくて、ああやって答えてしまったんだが……今度からは気をつけるよ」
レオナルド殿下は申し訳なさそうに俺に告げた。
レオナルド殿下が誰にでもモテてしまうのはしかたないが、あんな小さな子も恋に落とすとは……さすが魔性の男!
俺は改めてレオナルド殿下のモテ力に感心してしまった。
「……今度からは気を付けて下さいね」
「ああ、わかってる。……ところでセス」
レオナルド殿下は俺の腰を掴み、ぐいっと自分の方に抱き寄せ、じっと俺を見る。
「はい?」
なんでしょう? 治療も聞きたいことも、もう終わりましたけども?
俺が首を傾げて尋ねるとレオナルド殿下は微笑みながら俺に尋ねた。
「私の事を大切な人って思ってくれているの?」
「へ?」
そんな事を聞かれると思っていなかった俺は驚いた。
「あの子に向かって言っていただろう? 俺の大切な人を傷つけたって……私の為に怒ってくれた」
「あ、あれは!」
俺は怒りでほとんど無意識に喋っていたから、改めて言われるとなんだか恥ずかしかった。
「その……忘れて下さい。恥ずかしい事を言いました」
俺は照れくさくてレオナルド殿下から離れようとした。けれど、レオナルド殿下は俺をがっしり捕まえていて離さない。
「セス、嬉しいよ。私が無理やり迫って結婚したようなものなのに、私の事をそう思ってくれて」
レオナルド殿下は本当に嬉し気に呟き、俺の手を恭しく取るとその手の甲にキスをした。その仕草に俺はドキマギしてしまって、目を逸らす。でも、そんな俺の指先をレオナルド殿下はがじっと甘く噛んだ。その刺激に視線を戻すと、サファイアの瞳が俺を見ていた。
「セス、もう一度言ってくれないか?」
「え?」
「私がセスにとってどういう存在なのか」
レオナルド殿下に言われて、俺は頬を少し熱くする。でも、言うまで離してくれなさそうだ。言わなくなって、わかっているだろうに。
「セス」
催促されるように名前を呼ばれ、俺はどうしたものか、と考えたが、ええいっ! と勢いのまま身を動かした。
「んっ!」
レオナルド殿下は俺に口を塞がれて、小さく驚きの声を上げた。俺がぶちゅっとキスしたからだ。でも俺はすぐに体を離してレオナルド殿下を見た。
「これが答えです。……俺、好きでもない人とこんなことできませんから!」
俺の一生懸命の答えにレオナルド殿下は驚いた顔をして、真っ赤な顔の俺をまじまじと見た。
む? なにか文句でもあるのか? これ以上の答えは言えないぞ。
むぎゅっと口を閉じて目で訴えるとレオナルド殿下は俯いて、胸を抑えた。しかも何も答えない。黙ったままだ。
「……殿下?」
不安になった俺が尋ねるとレオナルド殿下は胸を抑えたまま小さく呟いた。
「セス、胸が痛い」
「えッ?!」
突然の事に驚き、俺は声を上げた。
「胸が痛いんですか?! どんな風に? 横になりますかっ?!」
俺は慌てて尋ねたけれど、レオナルド殿下は首を横に振り、そして俯いた顔を上げて俺を見た。その瞳は細まり、嬉しそうに俺を見ていた。
「セスを想うと胸がいつも痛んだ。心がぎゅっと締め付けられる」
それは、愛してると同じ意味を持っていた。
「でもセスにしか治せない。これからもずっと治してくれる?」
レオナルド殿下は優しい目をして俺に尋ねた。
そんなの決まっているのに。……なんでこの人はこう、恥ずかしい事を聞いてくるかな。もうっ!
「俺は薬剤魔術師ですし、俺達は夫夫なんですから……治して差し上げますよ。何度でも!」
俺は恥ずかしながら答え、俺の言葉にレオナルド殿下は満足そうに笑った。
「ああ、セス! 大好きだよ!」
レオナルド殿下は言いながら、ガバリッと俺に覆いかぶさってきた。二人共ベッドに倒れ込む。ぐわんぐわんっとベッドが揺れる。
レオナルド殿下の重みと体温、そして香りに俺はついついうっとりしそうになった。
だが……倒れ込んだまでは良かったが、何かが太ももに当たっている。
なんだろう、太ももに当たっているモノは。まだ明るい午後ですヨ??
だが、その太ももに当たっているモノをレオナルド殿下はすりすりと俺に擦りつけてきた。
「で、デンカ?」
俺が顔を引きつらせながら尋ねると、ちゅっとキスされた。
「セス、ベッドの上では殿下はなしだ」
「いや、でも……その、太ももに」
当たっているんですけど、殿下のナニかが。すごく元気になっているナニかがッ!!
「セス、治してくれるって言ったよね? 早速、腫れてるところを治して欲しいな?」
レオナルド殿下の指先があやしく俺の頬をすりっと撫でる。
「いや、それは腫れというか……」
勃っていらっしゃる、というのですけれど。
「セス、いいよね? そういえば明日は休みだったね?」
「え、でも、まだ明るいしぃ……」
俺がずーりっずーりっとベッドの上を逃れるように動くとレオナルド殿下はがしっと俺の腰を掴んだ。
ひえぇっ!!
「セス、逃がさないよ?」
レオナルド殿下の瞳がキランッと獰猛に光っていた。
いや、治すって言ったけど……そっちじゃなーーーーーーい! ぁぎゃーーっ!
その日、俺はぺろっとまるっとレオナルド殿下にまたも食べられてしまったのだった。
218
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる