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第三章「キスは不意打ちに!」
4 お城へ!
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――三十分後。
「いかがですか、キトリー様」
そうセリーナは俺に聞いてきた。肩まで伸びた黒髪に白い花の髪飾り、水色の上品なドレスを身に纏い、化粧までばっちりと施された俺はまさにどこかの令嬢だ。なので俺は姿見鏡の前でくるりっと回り、じっくりと自分を観察する。
……やっだぁー。俺ってばなかなか可愛いじゃん? うーん、美人な母様の遺伝子がなせる業か。
しかし、そこへレノがやってきた。
……ふふっ、レノもこの俺の姿には驚くだろう。こうなったらこの可愛さを見せびらかしてやろう。
「レノ、レノ~! この姿どうぅぇうぇうぇ?!」
そう思ったがレノを一目見て、俺の方が驚いた。
いつもとは違う感じの護衛服に、栗色の長髪を紐で留め、赤い瞳は紫色のアメジストのような瞳に変わっていた。
普段のレノは整った顔に付け加え、髪と目の色のせいで冷たい印象を持ってしまうが、今のレノはまるで爽やかな好青年という感じだ。
……アハーッ! 髪と目の色で人ってこんなに雰囲気が変わっちまうんだなぁ~。すげーっ。
まるで別人のようなその姿に俺は口をぽかーんと開けて見入ってしまう。だがレノは俺に近づいてくると不思議そうな顔で尋ねた。
「キトリー様? どうかされましたか?」
……いやいや、どうかされましたよ。自分の顔を鏡で見てないのか? コイツ。
「レノの変わりようがすごくて見入ってたんだよ。レノ、髪と目の色が違うと全然雰囲気が変わるんだなー!」
「そうですか? 変でしょうか」
「いや、似合ってるよ。いつもと違ってちょっと変な感じもするけど悪くない」
……うむ、元がいいとなんでも似合うもんだ。
「そうですか。それなら良かったです」
レノはほっと安堵した後、じっと俺を見た。その視線に俺はハッとする。
……そうだった、俺も変わってたんだ!
「レノ、俺のこの姿、どうよ!?」
……ちょーかわいいべ!? ついついお前も俺に惚れちゃう仕上がりだろ?(いや、まあもう惚れられてはいるけど)
俺は腰に手を当てて、フンスッと鼻息を撒き散らす。だがレノの反応は普通だった。
「キトリー様もよくお似合いですよ」
「感想それだけ?」
「はい」
レノは素直に頷いた。嫌がらせでそう答えている風でもない。
……むむ、なにやら敗北感。
「なんだよ。可愛いとかそういう感想はないのかよ。全く~っ、そんなんじゃモテないぞ」
まあ俺がこんなことを言っても、実際のところレノは女子にモテてるんだけど。
でも俺が言ったからかレノはしばらく考えてから、こう答えた。
「そうですね、可愛いとは思いますが……。私は服や髪と言う外見ではなく、坊ちゃんの中身の方に興味がありますから」
最後の方は俺の耳元で囁き、俺はその色っぽい声にぞくっとしてしまう。
「な、レノッ」
……俺の中身に興味があるって、一体どこでそんな殺し文句を覚えてきたんだ!? 恥ずかしいやつめ!
俺は囁かれた耳をわしわしっと擦ってレノの色っぽい声を掻き消す。そんな俺をレノは楽し気に見つめた。この野郎っ。
「令嬢がそんな顔をしてはいけませんよ。城に行けば、お嬢さまなんですから」
「わかってるよ!」
「やれやれ、心配ですね」
レノは呆れたように言ったが、そこへ応接間で待っていたジェレミーとディエリゴがやってきた。
「キトリー、すごく可愛いじゃん! これはキトリーだってわからないよ」
ディエリゴは俺をじろじろ見ながら言った。しかし喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら複雑な気持ち。
……そもそも、女装ならディエリゴの方が似合いそうなのになぁ。
そう思っていると、ジェレミーもそう思ったのかじぃーっと俺の服とディエリゴを見返している。
……あ、今度ジェレミーも同じことを思ってるな?
そう思うと、バチリとジェレミーと目が合った。
《今度、ディエリゴに似合いそうなドレス、贈ってやるゼ☆》
目でアイコンタクトしサムズアップすれば、ジェレミーは俺の意思をくみ取ってパッと嬉しそうに笑った。長年幼馴染をしているので意思疎通はバッチリなのだ。
……これでしばらく二人はまたラブラブすることだろう。未来の王様に恩を売っとくのも大事だし、たまにはイベントも必要だからな。ムフッ。
「キトリー、どうしたんだ?」
「ん、いや? それよりそろそろ行かないとな。陛下も待ってるだろうし」
ディエリゴの問いかけに俺は適当に返事をして、明後日の方向を見た。
後ろからレノの呆れた視線がぐさぐさと背中に刺さるが、気にしないでおこう。
「さぁて、そろそろ行きますか……。いや、行きますわよ!」
俺は令嬢らしく言った。
――それからどんぶらこっこ、どんぶらこっこ~。
俺とレノは公爵家の馬車に乗り、王家の馬車を追う形で城に向かう事に。
……今頃やつらは馬車の中で仲直りして(イチャついて)いるんだろうなぁ。
俺は窓の外を見ながら、そんなことを思う。だがそんな俺に、向かいに座るレノが尋ねてきた。
「そう言えばキトリー様、お名前はどうされますか?」
「あー、名前ねぇ。考えてなかったな」
レノに尋ねられて俺は頭の中で考える。
……名前かぁ、どんな名前が合うかな。思い浮かぶと言えば、エリザベス、マリア、クレオパトラ、卑弥呼! ……いや、卑弥呼は駄目か。でも、どれもしっくりこないな~。
「レノ。俺、じゃなかった、私ってどんな名前が似合うと思う?」
うふっと小首を傾げて尋ねてみた。するとレノは案外真面目な顔をして考える。
「キトリー様に合う名前ですか。そうですね……では、オードリーなどいかがですか?」
聞き覚えのある名前に俺は真顔を見せる。
……お前は俺とローマをバイクでニケツしたいのか?
「キトリー様、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。ただ俺にはちょっと合わないかなー」
「そうですか? なら」
「ごめん。やっぱ自分で考えます」
……なんか、俺が名乗りにくい名前を言いそうだからな。
なので俺は腕を組んで考える。
「そうだなぁ。ラン、にでもしておこうかな」
「ランですか。お知り合いの名前とか、ですか?」
「ん? まあ、そんなところ」
……(前世の時の)ねーちゃんの名前をもじった、なんて言えないしなぁ。
俺はそんなことを思いつつ、我が姉(マイシスター)を思い出す。美人でパワフル。その上優秀で、俺が大人になっても頭が上がらなかった人である。
「キトリー様?」
「いーや、なんでもない。それよりこれからはランと呼ぶように」
「畏まりました」
「ん。それより、レノはどうするんだよ? レノも名前を変えないとだろ」
「そうですね。バレンとでも名乗っておきましょうか」
「バレンか。レノも知り合いからの名前か?」
「ええ、父の名前です」
「レノパパ!」
……えー、レノのパパってバレンって名前だったのか。そういや、話す時はいつもレノパパって呼んでて、名前までは聞いた事なかったもんなぁ。
そう思いながら俺はレノの父親像を思い浮かべる。会った事はないが、レノは恐らく父親似だ。サラおばちゃんは明るい茶髪に琥珀の瞳だからな。となれば、バレンパパはかなり格好いい人だったと推測する。
……蛇獣人のバレンパパか~。生きてたら俺も会ってみたかったなぁ。まあ、一番そう思っているのはレノだろうけど。
俺はちらりとレノを見る。いつもとは違う容姿になんだかやっぱり違和感だ。でもそんな俺の気持ちを気づかずにレノは窓の外を見た。
「キトリー、いえラン様、そろそろ城が」
レノに言われて俺は窓の外を見る。そこには見慣れたお城があった。
……とりあえず、今はバレないように気を付けないとな!
俺は城を見つめ、改めて気合を入れたのだった。
「いかがですか、キトリー様」
そうセリーナは俺に聞いてきた。肩まで伸びた黒髪に白い花の髪飾り、水色の上品なドレスを身に纏い、化粧までばっちりと施された俺はまさにどこかの令嬢だ。なので俺は姿見鏡の前でくるりっと回り、じっくりと自分を観察する。
……やっだぁー。俺ってばなかなか可愛いじゃん? うーん、美人な母様の遺伝子がなせる業か。
しかし、そこへレノがやってきた。
……ふふっ、レノもこの俺の姿には驚くだろう。こうなったらこの可愛さを見せびらかしてやろう。
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そう思ったがレノを一目見て、俺の方が驚いた。
いつもとは違う感じの護衛服に、栗色の長髪を紐で留め、赤い瞳は紫色のアメジストのような瞳に変わっていた。
普段のレノは整った顔に付け加え、髪と目の色のせいで冷たい印象を持ってしまうが、今のレノはまるで爽やかな好青年という感じだ。
……アハーッ! 髪と目の色で人ってこんなに雰囲気が変わっちまうんだなぁ~。すげーっ。
まるで別人のようなその姿に俺は口をぽかーんと開けて見入ってしまう。だがレノは俺に近づいてくると不思議そうな顔で尋ねた。
「キトリー様? どうかされましたか?」
……いやいや、どうかされましたよ。自分の顔を鏡で見てないのか? コイツ。
「レノの変わりようがすごくて見入ってたんだよ。レノ、髪と目の色が違うと全然雰囲気が変わるんだなー!」
「そうですか? 変でしょうか」
「いや、似合ってるよ。いつもと違ってちょっと変な感じもするけど悪くない」
……うむ、元がいいとなんでも似合うもんだ。
「そうですか。それなら良かったです」
レノはほっと安堵した後、じっと俺を見た。その視線に俺はハッとする。
……そうだった、俺も変わってたんだ!
「レノ、俺のこの姿、どうよ!?」
……ちょーかわいいべ!? ついついお前も俺に惚れちゃう仕上がりだろ?(いや、まあもう惚れられてはいるけど)
俺は腰に手を当てて、フンスッと鼻息を撒き散らす。だがレノの反応は普通だった。
「キトリー様もよくお似合いですよ」
「感想それだけ?」
「はい」
レノは素直に頷いた。嫌がらせでそう答えている風でもない。
……むむ、なにやら敗北感。
「なんだよ。可愛いとかそういう感想はないのかよ。全く~っ、そんなんじゃモテないぞ」
まあ俺がこんなことを言っても、実際のところレノは女子にモテてるんだけど。
でも俺が言ったからかレノはしばらく考えてから、こう答えた。
「そうですね、可愛いとは思いますが……。私は服や髪と言う外見ではなく、坊ちゃんの中身の方に興味がありますから」
最後の方は俺の耳元で囁き、俺はその色っぽい声にぞくっとしてしまう。
「な、レノッ」
……俺の中身に興味があるって、一体どこでそんな殺し文句を覚えてきたんだ!? 恥ずかしいやつめ!
俺は囁かれた耳をわしわしっと擦ってレノの色っぽい声を掻き消す。そんな俺をレノは楽し気に見つめた。この野郎っ。
「令嬢がそんな顔をしてはいけませんよ。城に行けば、お嬢さまなんですから」
「わかってるよ!」
「やれやれ、心配ですね」
レノは呆れたように言ったが、そこへ応接間で待っていたジェレミーとディエリゴがやってきた。
「キトリー、すごく可愛いじゃん! これはキトリーだってわからないよ」
ディエリゴは俺をじろじろ見ながら言った。しかし喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら複雑な気持ち。
……そもそも、女装ならディエリゴの方が似合いそうなのになぁ。
そう思っていると、ジェレミーもそう思ったのかじぃーっと俺の服とディエリゴを見返している。
……あ、今度ジェレミーも同じことを思ってるな?
そう思うと、バチリとジェレミーと目が合った。
《今度、ディエリゴに似合いそうなドレス、贈ってやるゼ☆》
目でアイコンタクトしサムズアップすれば、ジェレミーは俺の意思をくみ取ってパッと嬉しそうに笑った。長年幼馴染をしているので意思疎通はバッチリなのだ。
……これでしばらく二人はまたラブラブすることだろう。未来の王様に恩を売っとくのも大事だし、たまにはイベントも必要だからな。ムフッ。
「キトリー、どうしたんだ?」
「ん、いや? それよりそろそろ行かないとな。陛下も待ってるだろうし」
ディエリゴの問いかけに俺は適当に返事をして、明後日の方向を見た。
後ろからレノの呆れた視線がぐさぐさと背中に刺さるが、気にしないでおこう。
「さぁて、そろそろ行きますか……。いや、行きますわよ!」
俺は令嬢らしく言った。
――それからどんぶらこっこ、どんぶらこっこ~。
俺とレノは公爵家の馬車に乗り、王家の馬車を追う形で城に向かう事に。
……今頃やつらは馬車の中で仲直りして(イチャついて)いるんだろうなぁ。
俺は窓の外を見ながら、そんなことを思う。だがそんな俺に、向かいに座るレノが尋ねてきた。
「そう言えばキトリー様、お名前はどうされますか?」
「あー、名前ねぇ。考えてなかったな」
レノに尋ねられて俺は頭の中で考える。
……名前かぁ、どんな名前が合うかな。思い浮かぶと言えば、エリザベス、マリア、クレオパトラ、卑弥呼! ……いや、卑弥呼は駄目か。でも、どれもしっくりこないな~。
「レノ。俺、じゃなかった、私ってどんな名前が似合うと思う?」
うふっと小首を傾げて尋ねてみた。するとレノは案外真面目な顔をして考える。
「キトリー様に合う名前ですか。そうですね……では、オードリーなどいかがですか?」
聞き覚えのある名前に俺は真顔を見せる。
……お前は俺とローマをバイクでニケツしたいのか?
「キトリー様、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。ただ俺にはちょっと合わないかなー」
「そうですか? なら」
「ごめん。やっぱ自分で考えます」
……なんか、俺が名乗りにくい名前を言いそうだからな。
なので俺は腕を組んで考える。
「そうだなぁ。ラン、にでもしておこうかな」
「ランですか。お知り合いの名前とか、ですか?」
「ん? まあ、そんなところ」
……(前世の時の)ねーちゃんの名前をもじった、なんて言えないしなぁ。
俺はそんなことを思いつつ、我が姉(マイシスター)を思い出す。美人でパワフル。その上優秀で、俺が大人になっても頭が上がらなかった人である。
「キトリー様?」
「いーや、なんでもない。それよりこれからはランと呼ぶように」
「畏まりました」
「ん。それより、レノはどうするんだよ? レノも名前を変えないとだろ」
「そうですね。バレンとでも名乗っておきましょうか」
「バレンか。レノも知り合いからの名前か?」
「ええ、父の名前です」
「レノパパ!」
……えー、レノのパパってバレンって名前だったのか。そういや、話す時はいつもレノパパって呼んでて、名前までは聞いた事なかったもんなぁ。
そう思いながら俺はレノの父親像を思い浮かべる。会った事はないが、レノは恐らく父親似だ。サラおばちゃんは明るい茶髪に琥珀の瞳だからな。となれば、バレンパパはかなり格好いい人だったと推測する。
……蛇獣人のバレンパパか~。生きてたら俺も会ってみたかったなぁ。まあ、一番そう思っているのはレノだろうけど。
俺はちらりとレノを見る。いつもとは違う容姿になんだかやっぱり違和感だ。でもそんな俺の気持ちを気づかずにレノは窓の外を見た。
「キトリー、いえラン様、そろそろ城が」
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