《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

文字の大きさ
46 / 180
第三章「キスは不意打ちに!」

4 お城へ!

しおりを挟む
 ――三十分後。

「いかがですか、キトリー様」

 そうセリーナは俺に聞いてきた。肩まで伸びた黒髪に白い花の髪飾り、水色の上品なドレスを身に纏い、化粧までばっちりと施された俺はまさにどこかの令嬢だ。なので俺は姿見鏡の前でくるりっと回り、じっくりと自分を観察する。

 ……やっだぁー。俺ってばなかなか可愛いじゃん? うーん、美人な母様の遺伝子がなせる業か。

 しかし、そこへレノがやってきた。

 ……ふふっ、レノもこの俺の姿には驚くだろう。こうなったらこの可愛さを見せびらかしてやろう。

「レノ、レノ~! この姿どうぅぇうぇうぇ?!」 

 そう思ったがレノを一目見て、俺の方が驚いた。
 いつもとは違う感じの護衛服に、栗色の長髪を紐で留め、赤い瞳は紫色のアメジストのような瞳に変わっていた。

 普段のレノは整った顔に付け加え、髪と目の色のせいで冷たい印象を持ってしまうが、今のレノはまるで爽やかな好青年という感じだ。

 ……アハーッ! 髪と目の色で人ってこんなに雰囲気が変わっちまうんだなぁ~。すげーっ。

 まるで別人のようなその姿に俺は口をぽかーんと開けて見入ってしまう。だがレノは俺に近づいてくると不思議そうな顔で尋ねた。

「キトリー様? どうかされましたか?」

 ……いやいや、どうかされましたよ。自分の顔を鏡で見てないのか? コイツ。

「レノの変わりようがすごくて見入ってたんだよ。レノ、髪と目の色が違うと全然雰囲気が変わるんだなー!」
「そうですか? 変でしょうか」
「いや、似合ってるよ。いつもと違ってちょっと変な感じもするけど悪くない」

 ……うむ、元がいいとなんでも似合うもんだ。

「そうですか。それなら良かったです」

 レノはほっと安堵した後、じっと俺を見た。その視線に俺はハッとする。

 ……そうだった、俺も変わってたんだ!

「レノ、俺のこの姿、どうよ!?」

 ……ちょーかわいいべ!? ついついお前も俺に惚れちゃう仕上がりだろ?(いや、まあもう惚れられてはいるけど)

 俺は腰に手を当てて、フンスッと鼻息を撒き散らす。だがレノの反応は普通だった。

「キトリー様もよくお似合いですよ」
「感想それだけ?」
「はい」

 レノは素直に頷いた。嫌がらせでそう答えている風でもない。

 ……むむ、なにやら敗北感。

「なんだよ。可愛いとかそういう感想はないのかよ。全く~っ、そんなんじゃモテないぞ」

 まあ俺がこんなことを言っても、実際のところレノは女子にモテてるんだけど。
 でも俺が言ったからかレノはしばらく考えてから、こう答えた。

「そうですね、可愛いとは思いますが……。私は服や髪と言う外見ではなく、坊ちゃんの中身の方に興味がありますから」

 最後の方は俺の耳元で囁き、俺はその色っぽい声にぞくっとしてしまう。

「な、レノッ」

 ……俺の中身に興味があるって、一体どこでそんな殺し文句を覚えてきたんだ!? 恥ずかしいやつめ!

 俺は囁かれた耳をわしわしっと擦ってレノの色っぽい声を掻き消す。そんな俺をレノは楽し気に見つめた。この野郎っ。

「令嬢がそんな顔をしてはいけませんよ。城に行けば、お嬢さまなんですから」
「わかってるよ!」
「やれやれ、心配ですね」

 レノは呆れたように言ったが、そこへ応接間で待っていたジェレミーとディエリゴがやってきた。

「キトリー、すごく可愛いじゃん! これはキトリーだってわからないよ」

 ディエリゴは俺をじろじろ見ながら言った。しかし喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら複雑な気持ち。

 ……そもそも、女装ならディエリゴの方が似合いそうなのになぁ。

 そう思っていると、ジェレミーもそう思ったのかじぃーっと俺の服とディエリゴを見返している。

 ……あ、今度ジェレミーも同じことを思ってるな? 

 そう思うと、バチリとジェレミーと目が合った。

《今度、ディエリゴに似合いそうなドレス、贈ってやるゼ☆》

 目でアイコンタクトしサムズアップすれば、ジェレミーは俺の意思をくみ取ってパッと嬉しそうに笑った。長年幼馴染をしているので意思疎通はバッチリなのだ。

 ……これでしばらく二人はまたラブラブすることだろう。未来の王様に恩を売っとくのも大事だし、たまにはイベントも必要だからな。ムフッ。

「キトリー、どうしたんだ?」
「ん、いや? それよりそろそろ行かないとな。陛下も待ってるだろうし」

 ディエリゴの問いかけに俺は適当に返事をして、明後日の方向を見た。
 後ろからレノの呆れた視線がぐさぐさと背中に刺さるが、気にしないでおこう。

「さぁて、そろそろ行きますか……。いや、行きますわよ!」

 俺は令嬢らしく言った。




 ――それからどんぶらこっこ、どんぶらこっこ~。
 俺とレノは公爵家の馬車に乗り、王家の馬車を追う形で城に向かう事に。

 ……今頃やつらは馬車の中で仲直りして(イチャついて)いるんだろうなぁ。

 俺は窓の外を見ながら、そんなことを思う。だがそんな俺に、向かいに座るレノが尋ねてきた。

「そう言えばキトリー様、お名前はどうされますか?」
「あー、名前ねぇ。考えてなかったな」

 レノに尋ねられて俺は頭の中で考える。

 ……名前かぁ、どんな名前が合うかな。思い浮かぶと言えば、エリザベス、マリア、クレオパトラ、卑弥呼! ……いや、卑弥呼は駄目か。でも、どれもしっくりこないな~。

「レノ。俺、じゃなかった、私ってどんな名前が似合うと思う?」

 うふっと小首を傾げて尋ねてみた。するとレノは案外真面目な顔をして考える。

「キトリー様に合う名前ですか。そうですね……では、オードリーなどいかがですか?」

 聞き覚えのある名前に俺は真顔を見せる。

 ……お前は俺とローマをバイクでニケツしたいのか?

「キトリー様、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。ただ俺にはちょっと合わないかなー」
「そうですか? なら」
「ごめん。やっぱ自分で考えます」

 ……なんか、俺が名乗りにくい名前を言いそうだからな。

 なので俺は腕を組んで考える。

「そうだなぁ。ラン、にでもしておこうかな」
「ランですか。お知り合いの名前とか、ですか?」
「ん? まあ、そんなところ」

 ……(前世の時の)ねーちゃんの名前をもじった、なんて言えないしなぁ。

 俺はそんなことを思いつつ、我が姉(マイシスター)を思い出す。美人でパワフル。その上優秀で、俺が大人になっても頭が上がらなかった人である。

「キトリー様?」
「いーや、なんでもない。それよりこれからはランと呼ぶように」
「畏まりました」
「ん。それより、レノはどうするんだよ? レノも名前を変えないとだろ」
「そうですね。バレンとでも名乗っておきましょうか」
「バレンか。レノも知り合いからの名前か?」
「ええ、父の名前です」
「レノパパ!」

 ……えー、レノのパパってバレンって名前だったのか。そういや、話す時はいつもレノパパって呼んでて、名前までは聞いた事なかったもんなぁ。

 そう思いながら俺はレノの父親像を思い浮かべる。会った事はないが、レノは恐らく父親似だ。サラおばちゃんは明るい茶髪に琥珀の瞳だからな。となれば、バレンパパはかなり格好いい人だったと推測する。

 ……蛇獣人のバレンパパか~。生きてたら俺も会ってみたかったなぁ。まあ、一番そう思っているのはレノだろうけど。

 俺はちらりとレノを見る。いつもとは違う容姿になんだかやっぱり違和感だ。でもそんな俺の気持ちを気づかずにレノは窓の外を見た。

「キトリー、いえラン様、そろそろ城が」

 レノに言われて俺は窓の外を見る。そこには見慣れたお城があった。

 ……とりあえず、今はバレないように気を付けないとな!

 俺は城を見つめ、改めて気合を入れたのだった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

処理中です...