《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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第三章「キスは不意打ちに!」

9 陛下との話

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 でも、ディエリゴと少し他愛もない話をしたところで(別邸での暮らしやレノとの事)ロディオンがディエリゴを迎えに来た。なんでも王妃教育の時間らしい。なので俺はディエリゴを見送って部屋に一人残ったのだが、そこへマリアがやってきた。なんでも今度は陛下がお呼びだとか。

 ……俺を呼び出した理由、聞けるかな?

 そう思いつつも執務室の中に入れば、そこには机に座る陛下と隣に立つ父様が。

 ……うーん、絵になるイケオジが二人。ちょっと年齢層高めなおじ様同士の話を今度の新作で出すのもアリですな、うむうむ。そうなると受けと攻めが。

「おい、何か変な事を考えてるだろ」
「いいえ、何も考えておりませんヨ。陛下」

 俺はにっこり笑顔で返事をする。だが、陛下は呆れた顔をしたまま俺を見た。

「全く、お前の息子は昔から変わらんな。変わっている所がッ」
「嫌だな~。個性的、と言ってよ」
「そうですよ。キトリーは個性的なんです、ちょっと親の私でも考え付かないような突拍子もない事をしでかしてくれますがね」

 ……父様、それってフォローになってないんだが? というか、ちょっと苦情が入っていたような……うん、聞かなかったことにしよう。

「で、おっちゃん。俺を呼んだ理由を今度こそ聞かせてもらえるのかな?」

 俺は図々しくも執務室の前に置かれている長椅子に腰掛けて尋ねた。

「ああ、その事だがな。報償の件でな」
「報償って、もしかしてサウザー伯爵の件で? それならもう貰ったよ?」

 俺が答えると陛下はジト目で俺を見つめた。

「貰った、と言ったところで、イルスタンの孤児院に全額寄付したんだろう? イルスタンの各孤児院から巨額寄付を受け取ったと報告があったぞ」
「えぇー、何のことぉ? キトリー、わっかんなーい。きゃぴっ」

 俺はブリッ子して明後日の方向を見る。だが、そんな俺を見て陛下はため息を吐く。

「はぁ、全く白々しいな。折角の報償なのだから自分の為に使ったらよかっただろう。お前はそれに見合う分の事をした」
「自分の為に使ったよ?」

 寄付と言う形で。

「そーいう事じゃなくてな! ほら、なんかあるだろ! 欲しいものを買うとか!!」

 陛下がそう言うので、俺はちらり父様に視線を向ける。

「えー、お金ならお家に一杯あるし。ね、父様?」
「まぁ、お金には困らないなー」

 俺が尋ねれば父様は合いの手のように答えてくれる。さすが俺のパッパ。
 だが、そんな俺達を見て陛下は頭を抱える。

「あのなぁ、そういう事じゃない。……キトリー、もうちょっと欲張ってもいいものだぞ。お前はこの国に貢献した。どれだけの人が助かったか。俺にはできない事をしてくれたんだぞ」

 陛下は真面目な顔をして俺に言った。だから俺はフゥッと息を吐いて真面目に答える。ただのキトリーではなく、この国の公爵家次男のキトリーとして。

「おっちゃん、俺は当然の事をしたまでだよ。それにおっちゃんの手が回らないことをする為に、父様や兄様、俺がいる。だから気にしないで、上手く使ってください」
「……キトリー」

 キリッとした顔で言えば、陛下は驚いた顔を見せる。だから俺は元の調子に戻す、なにより俺の真面目モードは三秒も持たないしな。

「あと、俺ってば欲張りだよ? イルスタンで虐げられてきた人達にはその分ずっと幸せになって欲しいって思ってるもん」

 笑って言うと、陛下もつられるように笑った。

「それは確かに欲張りかも、な? 全く、お前にはいつも驚かされるよ。時々十八歳だという事を忘れてしまいそうだ」

 陛下に言われて俺はギクッとする。

「そ、そんな~。俺ってば、ピチピチの十八歳だよ?」
「そーいう所が十八歳らしくないと言ってるんだ」

 ……え、ピチピチってもう死語かしら。こういうところからおじさん臭出てる?!

 自分の頬に手を当てて考え込むが、陛下はそんな俺を見てまた笑った。

「だが助かるよ。これからよろしく頼むな、キトリー」

 陛下に言われ、俺の答えはただひとつ。 

「もちろん」

 そう答えれば陛下は嬉しそうに微笑んだ。だが、話しはまだ終わってなかった。

「さて、キトリー。話は戻すが、報償の件だ。お前には俺個人からひとつ報償をやろうと思う」
「え? いいよ。もう俺、たんまりお金を貰ったし」
「いや、これは俺個人からの労いの証だ」

 そう言いながら陛下は机から何かを取り出す。でも、俺に受け取る気はなかった。

「いやいや、もう貰ったから」
「本当にいいのか?」
「いいよ。俺は十分」

 そこまで言った時だった。陛下は引き出しから一冊の本を取り出した。

「これが報償でもいらないのか? それは残念だな」

 そう言って陛下が見せびらかした本に俺の目は釘付けになる。そして陛下はにやりと笑った。

「キトリーが探していると聞いて、わざわざ用意したんだがなぁ?」
「しょ、しょれは!!」

 ……今ではマニアの中でも入手困難となっていて、幻とまで言われている百部限定で発行された初版『愛ゆえに』特典オリジナルイラストカード付き!!

 それは俺がずっと探してたけど、手に入らなかったお宝本だった。

「そーか、そーか、いらないのか。なら、これは国立図書に寄贈」
「待ったぁー!」

 俺は声を上げ、陛下の手から本を取り上げる。

「これはッ、俺がッ、貰いマスッ!!」

 フスンッと鼻息荒く、力強く言えば、陛下はにやにや顔で「そうか?」と言った、そして。

「お前の為に用意したものだから、喜んでくれて嬉しいよ」

 陛下はそう言ったが俺はもはや聞いていなかった。

「ひゃぁぁぁぁっ! この装丁、重厚感あっていい! それにこのイラストカードの絵も神ッ! うひょーっ!」

 俺は貰った本に大興奮。でも誰だって欲しいものが手に入ったらこうなるはずだ。

 ……俺が探しても見つからなかったのに、それを手に入れるなんてさっすが王家!! これは早速じっくりまったり隅から隅まで舐める様に見なければ!!

「陛下、ありがとうございます! では、お話は終わったようなので俺は失礼します!」

 俺はそれだけを言うと「あ、おい」と呼び止める陛下を他所に、本を片手にそそくさと出て行った。
 そして取り残された執務室の国王ジェットとキトリーの父・エヴァンスは。

「全く、なんて奴だ。ホント、変わってるな」
「いい子でしょう、うちの息子」
「否定はせんが……一体どういう育て方をしたらあんな風に育つんだ?」
「どうって普通ですよ? 特に変わった事はしていません。陛下もご存じでしょ」
「それはそうだが。普通に育った奴が、貴族の間でも力を持った古参の狸爺を完膚なきまでに叩きのめすか? それ以外にも今まで不正をした貴族連中を次々に告発して。十八歳の子がやることじゃないぞ」
「まー、それがキトリーですから。ちょっとわんぱくなだけですよ」

 にこにこ笑って言うエヴァンスにジェットは呆れた顔を見せた。

「わんぱくと言う言葉に収まりきらんのだが。しかし、あの子にしてこの親ありというところか」
「お褒めのお言葉ありがとうございます。いやー、照れるなぁ」
「褒めとらん。……全くレノの気苦労が知れるな。しばらくは大人しくしているといいが」

 ジェットはハァと嘆息をつき、しみじみと呟いた。



 ――そしてそんな会話がされていると知らない俺は、執務室を出て数秒で面倒ごとに巻き込まれていた。
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