《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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第三章「キスは不意打ちに!」

13 初対面

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「おや、キトリー」
「あ、父様」

 ジェレミーと廊下を歩いていると、仕事中の父様にバッタリと会った。そして父様の後ろには、なんと陛下がいる。

 ……第一シーズンの王様!! これは印象を良くせねば!

 俺は一人意気込むが、陛下は俺を見ると指をさして父様に尋ねた。

「エヴァンス、この子が噂の息子か?」
「はい、そうですよ。うちのやんちゃな息子です。キトリー、ご挨拶を」

 父様に促され、俺は頷いて陛下に挨拶をする。

「初めてお目にかかります、国王陛下。ジェレミー様と親しくさせて頂いておりますポブラット公爵家、次男のキトリーと申します。後ろにいるのは従者のレノです。今後ともどうぞお見知りおきを」

 俺は完璧に挨拶をこなし、心の中でヨシ! と拳を握る。だがあまりに完璧に挨拶し過ぎたのか、陛下は目を丸くした。

「この子、本当に六歳か? 中身は大人が入ってるんじゃ?」

 ……ドキィッ!!

「陛下、残念ながらキトリーはまだ六歳ですよ。まあ、あんまり子供らしくないですが」

 ……父様まで!? や、やっぱり『キトリーでしゅ! 六しゃい!』ぐらいのノリでやった方がよかったか?! いや、でも宰相である父様に恥をかかせるわけにもいかないし。どうすりゃ良かったんだ?!

 そう不安に思ったが、大人達はあっさりと話を変えた。

「そうか。まあ、いい。キトリーか、よろしくな。……しかし聞いていた話とは、随分イメージと違う。エヴァンス、あの話の子がこの子だとはなぁ」
「ふぇ?」

 ……話ってなんだ? 父様は何を陛下に言ったんだ??

 陛下は俺を見て不思議そうな顔を見せるが、俺は何のことかわからない。

「家を抜け出して、街で値切った焼き菓子を大量に買ってきて、ついでに引ったくりを捕まえて、助けた相手が実はモンス伯爵夫人でお礼に領地でとれる小豆を貰って、あんぱんを作り出し、一儲けしたと言う子がこんな小さな子だとは」

 ……多い多い情報がッ! というか父様、なんてことを陛下に教えてるんだ!! ……ま、まぁ全部ほぼ事実だから否定はできないけどぉ。でもでもっ、引ったくりを捕まえたのはフェルだからね?!

 俺は心の中で訴えながらあの日の事を思い返す。

 俺はフェルとヒューゴのデートを眺めようとして家を抜け出し(この時レノは学校で不在)でも二人に見つかっちゃって一緒に街歩きをすることになり(俺が帰宅拒否)歩いていたら、ある出店のおっちゃんが困っていて、話を聞けば作った焼き菓子の納品が突然キャンセル。
 売り捌けなくて、どうしようかと頭を悩ませていたので、俺がそれならと公爵家のみんなにお土産で買うことに(全引き取りだったのでちょっと値切らせてもらった)

 けど、その後も街歩きしてたら引ったくりに遭遇して、おっとりした性格からは信じられないぐらい俊敏な動きでフェルが簡単に犯人を捕まえて、街の警備隊に引き渡し。

 そして被害にあったのがたまたまモンス伯爵夫人で(優しい感じのおばあちゃん)『お礼に何かさせて頂ける?』って聞かれたもんだから、伯爵領地で作られてるって噂の小豆を思い出したから俺はそれを少し貰って、昔懐かしのあんぱんをヒューゴと二人で開発。そしたらたまたま納品に来ていたパン屋の親父が興味持っちゃって、販売権を譲渡したら素朴な味に人気が出て、パン屋も俺も一儲けできたという……いやー、そんな事もありましたね? 一年前の話ですが。

「へぇ? そんな事が」

 後ろでボソッと声が聞こえ、振り向けばレノが呆れた顔で呆れた視線を俺に向けていた。

 ……あ、そう言えばレノにはこの事内緒にしてたんだった! 絶対家を抜け出したの怒られると思ったからっ。

「あ、あのレノくん?」
「後でじっくり聞かせてくださいね?」

 レノはにっこりと有無を言わせない笑みを見せた。

 ……これ、帰ったらお説教コースだ。うえーん(泣)

 しかし俺ががっくり肩を落としていると隣からキラキラした視線を感じる。見ればジェレミーがまるでヒーローでも見るかのような顔で俺を見ていた。

「ジェレミー?」
「キトリー、すごいね! オトナみたい!」
「いや、別にたまたまだから」

 俺はそう言うが、ジェレミーのキラキラが収まらない。おかげで目がチカチカしてきた。まぶちぃ。

「しかし、こんな小さな子がなぁ。人は見た目によらんと言うが」
「そうでしょう、私も驚くばかりですから。ハッハッハッ」
「笑ってる場合か。……しかしキトリー、今後ともジェレミーと仲良くしてやってくれ」

 陛下に言われ、俺は頷く。そして陛下の視線はジェレミーへと向かう。

「ジェレミー、最近どうだ?」

 陛下はジェレミーに尋ねるが、ジェレミーはぴくっと動くと俯いて「楽しいです」と小声で答えた。その姿はいつもより大人しくて俺はおや? と思う。
 そして陛下もそれ以上はジェレミーに何も言わなかった。

「そうか。では、我々はそろそろ行こう。城の中で迷子にならないようにな」

 それだけを言って。

 ……うーん、なんだか二人ともギクシャクしていたような? なんでだろ??

 そう思うが父様達が去った後、貴婦人風のおばさんが歩いてきた。

「ジェレミー王子、こんなところにいたのですか! お勉強のお時間ですよッ!」

 ヒステリックな声に俺は耳がキーンとする。

 ……なんだー? このヒステリックおばさん、俺が見えてないのか?(怒)

「え、でも、今日はお勉強はなしって」
「そんなことは言っていません」
「え、で、でも、昨日ボクに」
「私が間違えたとでも?」

 おばさんはじろっとジェレミーを見て言った。子供にとって大人の威圧は強力だ。怖さから何も言えなくなる。そしてジェレミーも口を噤んだ。

「ジェレミー?」

 俺が声をかければ、ジェレミーは悲しげな顔を見せる。だがおばさんはジェレミーの腕を取った。

「さ、お友達にお別れをして、行きますよ」
「あ……はい。キトリー、ごめんね。また学校でね」

 ジェレミーは小さな声でそれだけを言い、おばさんは近くにいた使用人に声をかけ俺達を帰らせるように指示し、そのまま有無も言わせずジェレミーを連れて去って行った。残った俺とレノはその小さな背中を見送り、嫌な気分になる。

 ……王子だから勉強も必要なんだろう。……でもだからってあれはないだろう。それにしても、なんか引っかかるなぁ?

「これは何かあるかも?」

 ……なにせジェレミーは第二シーズンの人だからな。

 俺が顎に手を当てて呟けばレノは後ろで小さくため息を吐いた。


「坊ちゃん、あまり無謀な事はなさらないでくださいね」
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