《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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最終章「プロポーズは指輪と共に!」

5 お風呂場で

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 ―――そして、その日の夕方。
 しっかりと仕事を終えた俺は、夕食を取るより先に風呂に入っていた。

 ……んー、やっぱ帝都で買った石鹸。これいいなぁ、今度帝都に行ったらまた買いに行こー。

 俺はもこもこの泡にまみれながら体を洗う。しかし風呂場に置かれている鏡に映る自分を見て眉を寄せた。

 ……ぐぅ、レノのキスマーク。すんごい主張してる。

 俺は首元に手を当てて、赤い鬱血痕を指先で撫でる。それは昨日レノにつけられたものだ。

 ……あいつぅ、こんなのつけやがって。俺が許可したのはチューだけだったのにぃー。

 俺はそう思うけれどレノに言われた言葉も思い出してしまう。

『満足するわけないでしょう? もっと坊ちゃんにキスしたいですし、体にもたくさん触って、坊ちゃんの中まで暴きたいと思ってますよ』

 言葉と共にレノの熱を孕んだ瞳も思い出して、俺はドキッとする。おかげで、頬が熱くなってくる。

 ……あいつ、本当にわかってんのか? 相手は俺だぞ? すんごい美少年でもないのに……いや、まあ父様と母様の遺伝子のおかげで顔はそれなりに整ってるけど、兄様の方が見目麗しいし。レノってば俺相手によ、よ、欲情、すんのか?

 自分で言っていて恥ずかしくなってくる。
 なので俺はザバーッとお湯を被って泡を流すと、浴槽にじゃぷんっと浸かった。

「余計な事は考えないでおこう、ブクブクブクッ」

 俺は顔をお湯につけて、息を吐く。でも、そういう時に限って神聖国でレノに押し倒された時のことが頭に蘇ってしまう。
 舌を入れられてねっとりとキスされ、服の下に手を入れられて胸を触られた事を。

 ……ギャアアアッ!! もー、変な事を思い出さないのッ!

 そう俺は自分自身に言い聞かせる。けれど言い聞かせれば言い聞かせるほどに、今までレノにされた事がどんどん思い出されて恥ずかしくなってくる。
 告白されて、抱き締められて、キスされて、何度も愛を囁かれた事も。

『好きです、坊ちゃん』

 ……うーうーっ、なんて恥ずかしい奴なんだ、あいつは。……こちとら慎ましやかな日本人の心(前世)を残してんだぞっ。

 俺はお風呂に顔を付けたまま、心のムズムズに戸惑ってしまう。でも嫌じゃないから質が悪い。
 けど、不意にレノのアナコンダ君を思い出した俺は、湯から顔を上げてフルフルと頭を左右に振った。

 ……いや、でも奴のアナコンダ君は無理! あんなの入るかよ。俺の尻も慎ましやかなんだぞ! 即落ち二コマはぜーったい無理なんだからな!

 俺はそう思う。けどBL知識がある俺は、ちょっと考えてしまった。

 ……で、でも……ほぐしたら、いける、もんなのかな? 大抵の主人公、『無理!』って言いながらも、受け入れてるもんな……うむむ。

 BLのえちえちシーンを思い出した俺は、ドキドキしながら恐る恐るお尻に手を伸ばしてみる。だがその時――――。

「キトリー様」
「ぴゃっ!?」

 突然浴槽の外から声をかけられて俺は心底驚いた。だってレノが急に呼びかけるんだもん! なので俺は慌てて尻から手を離した。

 ……俺は何をしようとしてたんだ! なにも触ってません!!

 俺は誰に言い訳をするでなく、心の中で叫んだ。しかしそんな俺の心を知らないレノはいつも通りの声色で俺に告げる。

「ただいま戻りました。遅くなり申し訳ございません」
「あ、いや、おかえりっ」

 俺はしどろもどろに答える。

 ……別に帰ってきた報告なんて後ででもいいのに。急に声かけるから驚くじゃん。しかもなんて時に声をかけるんだよっ。

 そう思いながらも、自分のしようとしたことへの恥ずかしさに全身が熱くなる。
 ポッポッポッ、ぷしゅ~っ。
  俺は両手で顔を覆い隠す。レノには見えてないっていうのに。
 けどそんな時、なにかの視線を感じて俺は何気なく風呂に置いてある鏡を見た。

「んん?」

 そうすれば、鏡に一瞬人影のようなものが写る。

「ヒッ!?」
「キトリー様、どうかしましたか?」

 レノは俺の悲鳴を聞いて、尋ねてきた。けれど俺は答えるよりも先に風呂から上がって浴室を飛び出す。

「レノッ!」
「ぼ、坊ちゃんッ!?」

 素っ裸で出て来た俺を見て、レノは驚いた顔を見せた。しかし、今はそんな事はどうでもいい、俺はレノにひしっとしがみつく。そうすればレノはますます驚いた。

「ちょ、坊ちゃん、なにをッ」

 動揺するレノを無視して俺は濡れたまましがみつき、レノに頼む。

「レノ! 風呂の鏡見て!!」
「え……かがみ?」

 突然鏡を見ろと言った俺にレノは素っ頓狂な声を上げた。

「鏡がどうかしたんですか?」
「いーから、鏡みて!!」

 俺が頼むと、レノは浴室の中を覗いて風呂に置かれている鏡を見る。

「別に……普通ですが?」
「ホント!?」
「ええ。一体、どうしたんです?」

 レノに尋ねられて俺はようやく顔を上げた。

「なんか、鏡に一瞬人影みたいなのが写った気がしたんだよ~!」

 ……この別邸って何気に古いから、幽霊とかじゃないよな!? 俺、ホラー系は無理なのに!!

「自分が映ったんじゃないですか?」
「んなわけあるか!」

 俺はレノの言葉にムッとしながら答える。だが、レノはフイッと俺から目を逸らした。

「それより、さっさと離れてください」

 冷たい言い方に『俺が怖がってるのに!』と思わず言い返しそうになるが、レノを見ればその耳先は赤く染まり、頬もなんだかほんのり紅潮している。

 ……ん? どうしたんだ、レノの奴。顔が赤いけど。……風邪か?

 俺はじっとレノを見つめる。そうすれば、レノは「ハァ」とため息を吐いた。

「坊ちゃん」
「ん? なんだ?」
「今がどういう状況かおわかりですか?」
「どういう状況?」

 レノに言われて、俺はあたりを見渡す。そして今、自分がどういう格好をしているか思い出した。

 ……ギャッ! そうだ、俺ってば裸じゃーんッ! しかも濡れたまんま!!

「わッ! ごめん!!」

 レノから離れると、レノは近くに置いてあったバスタオルを俺に差し出し、いや、押しつけた。

「風邪を引きますから、早く着替えてください。では」

 レノはそれだけを言って出て行こうと踵を返す。だが俺は出て行こうとしたレノの服をむんぎゅっと掴んで引き留めた。

「ちょっと待って! 着替えるまで、ここにいて!」

 ……一人なんて怖いし!

  俺が頼むとレノはまた大きなため息を吐いた。でもただのため息じゃない、心底呆れたため息だった。

「はぁー。本当、このニブちんは」

 レノは振り返ると、じとっと俺を見て呟いた。その言葉に俺はカチンとくる。

「な、なんだと!?」
「ニブちんだからニブちんだと言ってるんですよ!!」

 レノはそう言うと、突然濡れたままの俺をバスタオルごとぎゅっと抱き締めた。その事に俺は「ひょへっ!?」と驚く。しかし、レノは構わずに俺を強く抱きしめ、耳元で囁いた。

「坊ちゃん。この状況、私に何をされても文句は言えませんよ?」

 レノは警告する様に言えば、ぐいっと腰を俺に押しつけた。すると、レノのアナコンダ君が当たる。そこはちょっとお立ちになられていた。

 ……ひょぇぇぇえっ!?

「あ、あばっあばっ!?」
「わかったら、一人で着替えてください」

 レノはそれだけを言い残し、俺から離れると脱衣所から出て行った。そして残された俺と言えば。

 ……レノのアナコンダ君、反応してた。ってことは、裸の俺に欲情したって事? は、はずぅーーっ!

 俺は恥ずかしさに顔がポポポッと熱くなり、思わず両手を頬に当てる。

「あ、あいつ……俺の事、本気で好きなんだな」

 今更ながらに思い知らされる。おかげで怖さはどこかに吹き飛んでしまった。

 ……でも、この前風呂に入ってきた時はしれっとした顔してたのに。……もしかして、あれって澄まし顔してたのか?

 そう思うとレノがちょっと可愛い。でも、やっぱり恥ずかしさが気持ちを上回る。

 ……あーもー、夕食の時にどんな顔して合わせればいいんだよ~!

 俺は恥ずかしさのあまりレノに心の中で悪態をついた。
 まあ結局、夕食の時にレノは風呂に入っていて俺とは顔を合わせなかったんだけどね。ほっとしたような、ちょっと残念なような……。




 ――――しかし、この日からレノは毎日村に行くことになり、毎日遅くに帰ってくるようになった。なんでも、村に引っ越してきたお爺の知り合いの世話を任されたらしい。
 そしてその人が俺にとってもレノにとっても重要人物とは、まだこの時の俺は知らなかった。
 

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