《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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最終章「プロポーズは指輪と共に!」

27 前世

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「レノ……実は俺な、前世の事を覚えてるんだ」
「前世、ですか?」
「そっ。俺はキトリー・ベル・ポブラットとして生まれる前の事を覚えてるんだ。まあ、覚えてるって言っても思い出したのはお前に出会うちょっと前なんだけど。三歳の時に頭を打ってその時にな」
「そういえば、三歳の時に猫を追いかけて頭を打ったと言っていましたね」
「そう、その時にな。前世の俺は三十過ぎの男で、こことは違う世界で生きてたんだ。全く違う文明に文化、習慣の世界で。でも、バレンシア様に呼ばれて俺は向こうからこっちに転生したんだ」
「世界の均衡を保つ為に、ですね」
「そう。んで、姉ちゃんって言うのはランネット様の事だよ。ランネット様は俺の前世の姉ちゃんなんだ」
「ランネット様がッ!?」

 レノはここ一番驚いた。てか、驚くとこってそこなの?

「う、うん、そう。だから仲が良いんだ、向こうも前世の事を覚えてたし」
「もしかして、ランネット様が坊ちゃんの事を『りっちゃん』と呼ぶのは」
「前世の時の俺の愛称だよ」
「なるほど。これで全て理解しました」

 レノは実に冷静に答えた。しかし、リアクションが薄すぎて話した俺としては物足りない。なんかこー、もっと驚きなさいよ! てか、ちょっとちゃんと信じてる!?

「理解するの早すぎん? なんか、もうちょっと驚くとかないわけ? 俺の話、嘘だと思ってるんじゃないだろーな!?」
「ちゃんと信じていますよ。ただ驚きは、あまりないです。ああ、やっぱりそういう事だったのかと腑に落ちるばかりで」
「そーゆう事?」

 ……って、どーゆことよ? 腑に落ちるって??

「子供のくせに妙におじさんくさ、いえ、妙に大人びているな? と思ったり。訳の分からない言葉、いえ、不思議な単語を口にするな? と思ったりしていましたが、前世が絡んでくるのなら納得です」

 ……おい、いちいち言い換えるなよ。てか、俺はおじさん臭くないもん!! まだ三十二歳だから、加齢臭は出てなかったはずだもん!! 枕カバーだって、臭くなかったもん!!

 俺は心の中で言い返す。まあ、無駄な反論なんだけど。

「なんだよ。そんなりすんなり聞き入ってくれるなら、さっさと言えばよかった。信じてくれなかったらどーしよ、とか思ったのにさ」

 俺は口を尖らせて言う。だが、レノは俺にこう言った。

「信じますよ。どんなに荒唐無稽で、信じられないような話でも貴方が真実だと言うのなら……信じます」

 レノはあんまりに真っ直ぐに俺を見て言うもんだから、俺はなんだか恥ずかしくなってくる。こんなにも真っ直ぐに信じられるのは嬉しいけど照れ臭い。

「バカ、ちょっとは疑いも覚えなさい。……あー、もう、話はこれで全部! ちょっと空気吸お!」

 俺は照れくささを隠すようにプイッと顔を背けて、ベッドから下り、窓辺へと向かう。今は頬の熱さを冷ましたかった。
 しかし、窓辺に近づくと妙に外気の冷めたさ感じる。まだ秋だっていうのに。
 そして俺はおかしさを感じながらも、カーテンを勢いよく開けた。するとそこに広がっていたのは……。

「ゆ、雪ぃぃぃぃいいい~~~っ!?」

 俺は外の景色を見て思わず叫んだ。だって窓の外に広がるのは、銀世界だったから。

 ……おいおいおいっ! この前まで紅葉してたじゃん! いつの間に雪が!? あれか、異常気象ってやつか!?

 俺は窓の外を見て、驚く。そしてレノも窓辺へとやってきた。

「……雪、ですね」

 レノは冷静に外を見て呟いた。いや、だからもうちょっと驚きなさいよ!
 俺は冷静沈着なレノを見て、心の中で突っ込む。しかし、そこへ廊下を走る足音が響く。

「ん? なんだぁ??」

 呟いて俺とレノが部屋のドアに視線を向ければ、ドアはノックされることなく勢いよく開いた。そしてそこにいたのは息を切らしたフェルナンドとヒューゴだった。

「ん? フェルナンドとヒューゴ? どったの??」

 慌てた様子の二人を見て、俺は尋ねる。けれど二人はつかつかと歩いてくると、俺とレノをまとめてぎゅーっと抱き締めた。

「坊ちゃん、レノ! 無事で本当に良かった!!」
「心配したんだぞ! ずっと連絡も寄越さないで!」

 二人は少し涙声で言い、俺とレノはちょっと驚く。

「え、ナニナニ? 何があったの??」

 状況がいまいち飲み込めない俺が思わず尋ねると、今度はフェルナンドが驚いた。

「何があったって……連絡もなしに、一カ月も帰ってこなかったら驚くでしょう!」

 叱るようにいうフェルナンドに俺とレノは顔を見合わせる。

 ……はて、一カ月とは? 俺、半日くらいしか天界にいなかったけど。

「えーっと、つかぬ事をお伺いしますが、今日は何日ですかね?」
「今日はって、もう冬至ですよ!」

 フェルナンドの解答に俺は思考が一瞬止まる。

 ……冬至って十二月??

 だが外を見れば、それが嘘じゃないことは確かで。

「坊ちゃん、どうやら私達はあちらで一カ月を過ごしたようですね」
「浦島太郎じゃん!!」

 俺が叫べばフェルナンドとヒューゴは首を傾げた。ただ、もう俺の前世の事を知ったレノは驚きもしなかったが……。


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