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28 イサールは……
しおりを挟む翌日の早朝、庭では帰国の準備をしている二コラ達がいた。
「あ、おはよー、レイ」
ぐっすり眠ったのか、二コラはすっきりした顔でレイに言った。
一方でレイは眠れなかったのか、眠そうな顔をしている。
「レイ、どうしたの? なんだか、疲れてるけど」
二コラは心配そうに言い、傍にいたイサールもどうしたんだろうか? という顔でレイを見つめる。しかし、レイは二コラに恐る恐る尋ねた。
「二コラ……お前のお母さんって、もしかしてエルマン?」
レイが尋ねると二コラはきょとんっとした顔で「そうだよ。今頃わかったの?」とあっさりと答えた。だが、まさかの答えにレイは言葉を返せなかった。
「ほんと、レイってば気が付いてなかったんだねー。ま、僕は父様似らしいから」
「でも! エルマンは男だろ!?」
「そうだよ? でも僕の母様」
二コラはにっこりと笑って言った。
……まさかフェインの言っていた事が本当だったなんて!
レイは昨夜フェインから聞いた話を思い出した。
フェインの話では、銀竜を竜国の竜人が神聖なものとして見るのは、珍しい銀色だという事もあるが。
それと同時に、銀竜だけが男女の性別関係なく子供を孕ませられるから、だった。
まさか! と信じられなかったが、こうして二コラを前にレイは信じるしかなかった。
「男同士で子供ができるのか……」
という事は……ルークも? と考えたが、そこへ会話を見守っていたイサールがレイに声をかけた。
「レイ様、我々はそろそろ」
「えー、もう出なきゃいけないのー?!」
二コラが声を上げたが、イサールは「今出ないと野宿することになりますよ。それに今回はレイ様の送り迎えをするだけ、という約束だったでしょう?」と二コラを宥めた。
二コラは不服そうだったが「はーい」と大人しく返事をし、イサールはレイに視線を戻した。
「レイ様、色々とありがとうございました」
イサールは深々と頭を下げてお礼を言った。その態度にレイも身を正す。
「あ、いえ、こちらこそ。送っていただき、ありがとうございました」
レイが言うとイサールは頭を上げ、それからマスクの下でにっこりと笑った。
「いえ、本当にありがとうございました。レイ様」
イサールは、まるでレイにとても大きな恩があるかのように言い、レイは内心首を傾げつつ「は、はぁ」と間抜けた返事をした。
……なんだろう? イサールさん。何か俺に言いたげな? でも、何かした覚えないし。
レイは答えが見つからず、その内にイサールは二コラに「じゃあ、二コラ様。行きましょうか」と言い、二コラは「はーい」と素直に答えた。
そして二人は庭の広場に戻り、レイが心の中で首を傾げている間に竜国に戻る為、竜の姿に変わった。
『じゃあ、レイ。またね』
『失礼いたします。レイ様』
ニコラとイサールはそう言い残し、翼をはためかせ、空へ飛んだ。
でもその時だった。
レイはイサールの湖水のような瞳を見て、ようやく気が付いた。イサールのその目がルークによく似ている事に。
そして、全てのピースが突如として頭の中で嵌っていった。
ルークの母親の墓がない事。
イサールが昔命を狙われ大怪我をしてマスクをしている事。
銀竜は性別関係なく子を伴侶に孕ませられる事。
そしてルークと同じ瞳のイサールの存在。
何よりレイに向けられたお礼の言葉。
この全てを合わせてできる答えがレイの頭に浮かんだ。
「イサール! 貴方は本当はルークの!」
レイはそこまで言いかけたが、竜達の翼音でその声はかき消されてしまった。
だが確証のない確信に、レイは微笑んだ。
……そうか、そう言う事だったのか。よかったな、ルーク!
レイは美しく飛ぶ竜達の姿をいつまでも眺めて、青い空を仰いだ。
だがファウント王国に戻ったレイの体に異変が起きたのは、それから数か月後の事だった。
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