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4話

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気が付くとがたがたと揺れる箱の中にいた。これは馬車というらしい。
そんなことより、人間と仲良くすると軟弱になるというのは本当のようだ。いままでの僕であればここまで熟睡などせずましてや寝たまま運ばれるようなことはなかっただろう。気を付けないと犬や猫のようになってしまう。
心に魔物の誇りを抱かないとと決心をしつつ周りを眺める。
周りは例の3人に武装した人間1人だ。どうやら僕はどこかに連行されているらしい。あの護衛達の口ぶりからそのまま放置されて森の中で過ごせると思っていたのに、少しあてがはずれてしまった。このまま僕をペットとやらにするつもりなのだろうか?

「あら、起きたみたいですわ」

そう言って僕をなでる。

「そのようですな。本当に大人しい魔物だ。ですがお嬢様危険なのには変わりありません。それに契約と言ってもその魔物が了承しなければ結べません。時間が経てば愛着がわくばかりですよ」

「この子なら大丈夫ですわ。みてくださいこの格好を、まるで私を親のように思ってる証拠ですわ」

と勝手なことを言う。僕はただ眠くて眠りやすい所で寝ていただけだ。まあ勝手に思う分にはどうだっていいので適当ににゃぁと鳴いておく。
そうするとお嬢様はうふふとお上品に笑う。
ペットにされるにしろ、逃げるにしろ、好かれてることはいいことだろうとついでに鼻をお嬢様の顔につける。
僕達の友愛の印をつけてご機嫌を取ると、周りは少しぎょっとしたようだが、本人はすごくうれしそうだ。

「くすぐったいですわ。本当にかわいい子、名前を考えてあげないといけませんわ」

うーんうーんと考えだし、少しするといい案が浮かんだらしく僕の名前を決めた。

「真っ白い毛並みだしホワイトにしますわ」

「いい名前」

なんと安直な名付けだ。現に護衛などはため息をついている。タニアと呼ばれた人間だけが肯定している。もう少し強そうな名前が良かったが、仕方ない。気に入ってるようなので、またにゃぁと少し鳴いてお茶を濁すことにした。
そんな適当な名付けが終わるころにはどうやら家に着いたらしく。揺れは少なくなっていき高い岩の城壁が見える。ここから出るのは厄介だぞと少しだけ考えていた野生に戻ることを諦め、この家のペットになることを勝手に決めた。
見た目はあれだが、食べ物があり、この人間たちを見るに暖かく過ごせそうだ。
戦いばかりの魔物生よりももっといい生活にはなるだろう、多少しばられても生きている方がいい。
そう思ってもう一度眠ることにした。
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