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6話

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まず周りをいちおうきょろきょろとさがしてみる。だがさっき思った通り簡素な部屋で寝るにいい場所は護衛が寝ている場所を除くと全くと言ってなかった。
床の上で寝るなどあり得ぬし、机の上はごちゃごちゃとしていて嫌だ。やはりあそこしかない。
護衛は眠かったのかぐぅぐぅといびきをかいて寝ている。のんきなものだ。僕が眠いことを察して僕をそのベッドの上に乗っけてから寝てくれればいいものを、なにがくつろいでくれだ。
それに寝ている場所も最悪だ。ベッドは当然壁に貼り付けて設置されている。この護衛も壁の方によって寝ればいいのに、壁の逆側、落ちるのではないかというくらいふちにちかいところで眠っている。
これでは僕がジャンプして飛び乗ろうとすれば、護衛の体の上に乗っかることになるだろう。この護衛は僕のことを好いてはいない様子だし、そんなことをすればそれを盾に何をされるかわかったものではない。
かといって壁側まで飛ぶことは難しい。
だが利口な僕は簡単な方法を思いついた。机から飛べば簡単に奥まで飛べるだろうと机を使っていくことに決めた。ひょいひょいと椅子、そして机と簡単に到着する。机の上には手紙やらインクやらがごちゃまぜになっている。
どうやら整頓は苦手のようだ。
こかしたりしないように抜き足差し足とゆっくりゆっくりふちまで歩いていく、よしこの辺でいいだろうという所まできて両手足をそろえてぴょんと一大跳躍を見せる。
見事に着地に成功しベッドの上に乗ることに成功したはいいが、後ろでがしゃんと音がする。
やはりかと少し落胆する。尻尾に何かが当たった気がしたのは勘違いではなかったかと目を瞑り、なかったことになりはしないかと祈る。

「ん?なんだ」

護衛がゆっくりと体を起こす。これはまずいな、こういう時は寝たふりだと、急いで目を瞑り大げさにすーすー言う。

「おい、おいおいおい」

惨事に気付いて大変な声を上げる。

「なんてことしてんだ。真っ黒じゃねえか」

声を上げて怒る。知らない知らないと寝たふりをする。

「ああ、もう仕方ないな」

そう言って護衛は部屋を出て行った。どうやら寝たふりでどうにかなったようだ。そもそも位置的な話で言えば僕が何かできたはずがないのだ。きっと風で落ちたと思ってくれてるだろう。
さて慌てて出て行ったせいか扉が開きっぱなしである。本当ならここに居てあげるのがやさしさというものだろうけど、怒鳴られた上に、この住まいについては何も知らないので調査した方がいいだろう。
あの面々の中ではお嬢様に、この住まいの中では誰に付くのがよいか調べなくてはペットになるにしてもなった甲斐がない。
野生ではボスを目指して生きていくのもいいが、ペットとなっては2番手になる方がよっぽど好都合だ。
少なくともさっきの護衛よりはよい立場にいないと何をされるかわからない。
そう思って開いた扉の隙間からすっと抜けて部屋を出たのだった。
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