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3章

23話

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数日を経って僕の生活も大分と様式化し、ここでの生活も慣れたものになった。
朝はお嬢様と少し遊ぶ。昼はボスのところで昼寝を楽しむ、夜はまたお嬢様と遊ぶ。食事もそれに伴って、邸宅と宿舎を行き来して色々と失敬して満足できるようになった。
そのせいであのメイドの長からぴりぴりした魔法を受けないといけない回数が増えたのでそこは少し残念だけど、身体を洗濯されるよりはましなので我慢している。
そんな生活を何カ月か過ごしているうちに僕も大分と成長することができた。実はもうあの特別な扉を通らなくても自力でほとんどの扉を開けることができるくらいだ。でもかわいそうなのとちょっとした無駄を楽しむのもいいかと下の扉がある所は下で通ることにしている。

でもここ数日、朝のお嬢様との遊びを邪魔する人間が現れたので、最近は食後はすぐに宿舎に向かうようにしている。ここではボスの元でいたおかげで大分と大きな顔ができる。訓練中の騎士も訓練後で疲れた騎士も僕には毎回手を振ってくれる。これは人間の挨拶らしい。僕を蔑ろにするのはあの護衛くらいのものだ。
食堂のコックたちもミナが僕に餌をやってるのを見てるので、大体は笑顔で接してくれる。

さて今日も宿舎で人間と適当に遊んでやろうと思ってきたのだが、今日は少し様子が違った。

「やっぱり少しおかしいですね」

「ちょっと確かめてみるしかないですね」

とこれはミナとボスの会話だ。何を話してるか知らないが、まあ関係ない事だろうとにゃぁと声をかける。今日の分の催促だ。

「猫ちょっとこっちこい」

そう言って僕を抱えてキッチンの奥へと僕を連れて行く。ここだけは絶対に入るなと言っていたのに不思議なことだ。きょろきょろとしていると何やら奥から丸い何かを持ってきた。だがよく見ると端が欠けてるように見える。
すんすんと匂いを嗅ぐとどうやらこれはたしかチーズとかいうやつのようだ。これも大変な工程を経て作られる人間の癖からできたものだ。

「猫。これをちょっとかじってみろ」

と僕の鼻先に突き出す。食えと言われたら大抵のものは食べるので、あむっとかじる。そうするとよしと言って僕をまた食堂まで運ぶ。

「歯形は全然違いますね」

「それに中に入ったらきょろきょろしてました」

とまた相談する。そんなことより早く食事にありつきたいので、またにゃぁとなく。

「ごめんね。すぐ持ってきてあげるね」

とはミナである。にゃぁとお願いする。

「となると本格的にねずみの仕業ですかね。おかしいですね」

とはボスである。なるほど、どうやらねずみが僕の食糧庫に手を着けてるようだ。それならそうと言ってくれればもっとちゃんと手伝ったというのに、これは許せん。僕はミナの持ってきた食事を食べながら考えを練るのであった。
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