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猿の帯留めの章
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青い風呂敷を持ったシロツメクサは、呉服屋に入った。普請を見ると、そう古い店にも見えなかった。店の中には七宝、市松、麻の葉、などの古典的な柄から華やかな西洋花をあしらった近代的な柄の品物まで、様々に取り揃えてあった。
シロツメクサは俺に、少し待っているように、と言って店の奥に入った。すぐに、というほどではなかったが、割と早く戻ってきた。
「戻りました」
とだけ言って、店の品物には目をくれず、俺にそれ以上の言葉をかけることもなく、店の外へ出た。青い風呂敷も、持ったままだった。何か欲しかったわけでもないのだな、と思いながら、その後を追った。その割には、スッキリしたような顔をした、シロツメクサだった。
先ほどまで、シロツメクサの機嫌が悪く見えたのは、クロのせいだと分かっていた。クロがシロツメクサに、あの猿の帯留めを使ったら、あの青年も喜ぶだろう、と言ったせいだった。不自然なほど、軽い口調だった。隠し事が苦手なくせに、胸のうちの不機嫌を誤魔化そうとしたから、そのような口調になったのだ。そのことを、きっとシロツメクサも、俺と同じくらいに分かっている。
案の定、シロツメクサは言った。先ほどより、少しばかり機嫌が良くなったシロツメクサだった。
「どうして、クロは誤魔化そうとしたのでしょう」
俺は、簡単に答えた。
「お前に、嫌な思いをして欲しくなかったのだろうよ」
「嫌な気持ちになりました、私」
シロツメクサは言った。頰の線が、柔らかく見えた。
「クロが、誤魔化そうとしたからです」
「それよりも、俺はお前が町に行こうと思ったことに、驚いたよ」
「必要なら、それくらいします。クロだって、それくらいのことはしています。私の着物とか、他にも必要なものを、揃えるとき。町の方が、良いものがあったりしますから」
「何だか、ありがたくないというか……クロからしてみればありがたいのだろうが、俗な感じだな。クロは神様じゃないのかよ」
「鬼でもありません」
シロツメクサの小さな唇の隙間から、チラッと白いものが見えたのは、前歯だった。
シロツメクサは、また別の店に入った。さっきの呉服屋よりは年季が入っていて、小さな店だった。売られている品物は、巾着や簪、ちょっとした化粧品など、小物が多いと思って見ていたら、壁沿いには古本が並べられていた。
「おじさん」
シロツメクサが店の奥に向かって呼びかけると、四十くらいの白髪混じりの男が、むっつりと出てきた。
「持ってきました」
シロツメクサが、持ってきた風呂敷を出すと、男は頷いてそれを受け取り、低い卓の上で風呂敷を広げた。俺は初めて、その中身を見た。端切れで作った人形に、財布、巾着が出てきた。男はまた頷いて、シロツメクサに紙に包まれた何かを渡した。チャリン、という音から、小銭が入っているのではないかと思われた。
「ありがとうございます」
シロツメクサが頭を下げると、男はまた頷いた。皺で強張ったような口元を、僅かに緩めたように見えた。
「シロ、お前いつから商売なんて始めたんだよ」
店から出て、二人で帰り道を辿りながら、俺はシロツメクサに言った。先ほど風呂敷から取り出された巾着の柄に、見覚えがあった。
シロツメクサは、首を左右に振りながらゆるゆると答えた。
「商売、というほど稼げていないの」
「それにしても驚いたよ。そういえば、シロは昔から、何か繕っていたな」
「昔、というほど長くやっているわけではないんです」
シロツメクサは、何かを勘定する仕草をした。
「半年ほど前から」
「急に、金がいるようになったのか」
「そういうわけでもないんです。ただ、繕い物が好きなら、それを仕事にしてみるのはどうかって」
「誰から?」
「猿の帯留めの人」
家に帰ると、クロが薪を割っていた。襷掛けをして、剥き出しになった腕に夕焼けの色が映って、赤く見えた。
「おかえりなさい」
クロは、斧を置いて言った。
「ただいま。猿の帯留めを返してきました」
シロツメクサが言った。
「そうですか」
クロは、それ以上は答えなかった。
昨日、シロツメクサと入った呉服屋の前にいた。
店の構えを見ていると、ちょっと通りかかる仕草をするだけのつもりが、つい、入ってみようかという気になった。しかし、それより先に、あの猿の帯留めの青年が、店の暖簾の下から出てきた。この店が、猿の帯留めの青年の家だということは察していたから、特に驚くことでもなかった。青年は、俺を見ると、頭を下げた。
「こんにちは。何か、御用ですか?」
近くで見ると、素直で、飾り気のない中にも、何となく、寂しそうな顔だった。
「猿の帯留め」
俺がサッパリと言うと、青年は表情を硬くした。ニヤリ、と笑いかけると意味は通じたらしかった。青年は、肩を落とした。
「今から、また、あの人のところにお伺いに行こうと思っていたところです」
俺と並んで歩きながら、青年は言った。それほど身長は変わらないはずだが、猫背のせいで、俺よりも小柄に見えた。
「今日は、店の方もあまり忙しくないし、それに……あの人が、帯留めを返してきたから……」
「ほぅ」
シロツメクサが、猿の帯留めを返したことは、俺もその場にいたから知っていた。ただ、その場にいたときは、何だろう、とだけ思った。俺は無意識に懐を探ったが、煙管はクロの家に置いてきたことを思いだした。懐に差し込んでいた手を、体の脇でダラリとさせた。
「僕がいない間に、母の元に返しに来たそうです。母は、黙って僕に帯留めを渡しただけで、あの人が何と言っていたかも、教えてくれませんでした」
「なるほど」
シロツメクサは、ただ、返しにきました、とだけ言ったのかもしれない。
青年は、切れ長の目で俺を見た。優しい形をした目だったが、今は何とも言えない力が籠っている。青年が口を開く前に、俺は言った。
「あの子……シロって、俺たちは呼ぶことが多いけれど、その子がどういう素性の娘か、お前、分かっているのか?」
「……僕があの人を山の中で偶然見かけてから、時々会うようになったことを、どこかで知ったらしいご老人が教えてくれました。あれは、神様に捧げた娘だから、親しくなってはいけない、と」
俺は、黙って頷いたが、そのことで、却って青年の目は生き生きとし出した。
「僕には、あの人が、そんな特別な人には思えません。何度も会って、話もしていますが、普通の人と変わりません。実際、そう言っているのも、そのご老人だけで、もうそんな昔話を本気にしている人は、殆どいません」
青年は、普通、という言葉に、特に力を込めて言った。
昔話、という言葉に、俺は多少驚かされた。たった十一年前のことが、昔話になったのか。
「……そもそも、何で、山に入ったわけ?」
「写生の為です」
青年は、不意の質問に気の抜けたような顔をしたが、すぐに答えた。
「僕は職人ではないので、着物や帯の図案制作をする必要はないのですが、昔から絵を描くのが好きで、よく、山の中や川沿いを歩いては、絵を描いています」
「そう」
「あの人は菫を差して、あれは、私の花かもしれません、と言っていました」
青年はそう言って、顔を赤らめた。俺にはそれが、少し妙に感じられた。
「……大木の、菫?」
「さぁ……草の中に埋もれるように咲いていた、普通の菫だったと思います」
青年は、また、普通、という言葉を使ったが、先ほど感じた、尋常ではない力は込められていない、それこそ、普通、という意味を込めた言葉だった。
「神様には、会った?」
俺がからかう口調で言うと、青年は和らぎつつあった表情を、再び硬くした。そして、硬い声で言った。目が、光っている。
「一緒に暮らしているらしい、男の人の姿なら……」
「そう」
「あなたでは、ありませんね」
「そう。俺では、ない」
クロと俺とでは、背格好も違うので、間違えるはずもなかった。
「あの男の人も、普通に見えます」
「けれど、それはきっと君の言う、普通には当てはまらない」
「それは……知っています」
「長生きだよ」
「僕は、あの人が欲しい」
青年の声に、迷いはなかった。頰が紅潮して、顔全体が締まって見える。目の色が、異様に鮮やかに見えた。
「シロのこと?」
青年は、硬く、重く、頷いた。
「シロは、クロのものだよ」
「クロ……あの人と一緒にいる人のことですか?けれど、あの人は本当に、その男の人の所有ですか?自分で立って、ものを考えて、感じる人が、そんな簡単に誰かの所有になると言えますか?」
俺は立ち止まり、青年よりやや高い位置から、青年を見下ろした。青年は、もはや、猫背とは感じられなかった。
「シロツメクサは、君の所有にもならない」
シロツメクサ、という名前を、俺ははっきりと言った。青年は、唇を震わせた。
「分かっています」
少し間を置いて、もう一度、言った。
「分かっています」
鳥の影が、二人の上を通り過ぎた。大きな鳥だった。俺も青年も、動揺しなかった。また、動揺を見せなかった。
「形式上の妻として、僕があの人を欲しいと思っているのは、本当です。でも僕はそれ以上に、……」
青年の喉の奥で、一瞬、大きな、熱い塊が詰まったようだった。
「僕は、あの人を自由にしたい」
自由。
その言葉が、重く、冷たく聞こえた。
シロツメクサは俺に、少し待っているように、と言って店の奥に入った。すぐに、というほどではなかったが、割と早く戻ってきた。
「戻りました」
とだけ言って、店の品物には目をくれず、俺にそれ以上の言葉をかけることもなく、店の外へ出た。青い風呂敷も、持ったままだった。何か欲しかったわけでもないのだな、と思いながら、その後を追った。その割には、スッキリしたような顔をした、シロツメクサだった。
先ほどまで、シロツメクサの機嫌が悪く見えたのは、クロのせいだと分かっていた。クロがシロツメクサに、あの猿の帯留めを使ったら、あの青年も喜ぶだろう、と言ったせいだった。不自然なほど、軽い口調だった。隠し事が苦手なくせに、胸のうちの不機嫌を誤魔化そうとしたから、そのような口調になったのだ。そのことを、きっとシロツメクサも、俺と同じくらいに分かっている。
案の定、シロツメクサは言った。先ほどより、少しばかり機嫌が良くなったシロツメクサだった。
「どうして、クロは誤魔化そうとしたのでしょう」
俺は、簡単に答えた。
「お前に、嫌な思いをして欲しくなかったのだろうよ」
「嫌な気持ちになりました、私」
シロツメクサは言った。頰の線が、柔らかく見えた。
「クロが、誤魔化そうとしたからです」
「それよりも、俺はお前が町に行こうと思ったことに、驚いたよ」
「必要なら、それくらいします。クロだって、それくらいのことはしています。私の着物とか、他にも必要なものを、揃えるとき。町の方が、良いものがあったりしますから」
「何だか、ありがたくないというか……クロからしてみればありがたいのだろうが、俗な感じだな。クロは神様じゃないのかよ」
「鬼でもありません」
シロツメクサの小さな唇の隙間から、チラッと白いものが見えたのは、前歯だった。
シロツメクサは、また別の店に入った。さっきの呉服屋よりは年季が入っていて、小さな店だった。売られている品物は、巾着や簪、ちょっとした化粧品など、小物が多いと思って見ていたら、壁沿いには古本が並べられていた。
「おじさん」
シロツメクサが店の奥に向かって呼びかけると、四十くらいの白髪混じりの男が、むっつりと出てきた。
「持ってきました」
シロツメクサが、持ってきた風呂敷を出すと、男は頷いてそれを受け取り、低い卓の上で風呂敷を広げた。俺は初めて、その中身を見た。端切れで作った人形に、財布、巾着が出てきた。男はまた頷いて、シロツメクサに紙に包まれた何かを渡した。チャリン、という音から、小銭が入っているのではないかと思われた。
「ありがとうございます」
シロツメクサが頭を下げると、男はまた頷いた。皺で強張ったような口元を、僅かに緩めたように見えた。
「シロ、お前いつから商売なんて始めたんだよ」
店から出て、二人で帰り道を辿りながら、俺はシロツメクサに言った。先ほど風呂敷から取り出された巾着の柄に、見覚えがあった。
シロツメクサは、首を左右に振りながらゆるゆると答えた。
「商売、というほど稼げていないの」
「それにしても驚いたよ。そういえば、シロは昔から、何か繕っていたな」
「昔、というほど長くやっているわけではないんです」
シロツメクサは、何かを勘定する仕草をした。
「半年ほど前から」
「急に、金がいるようになったのか」
「そういうわけでもないんです。ただ、繕い物が好きなら、それを仕事にしてみるのはどうかって」
「誰から?」
「猿の帯留めの人」
家に帰ると、クロが薪を割っていた。襷掛けをして、剥き出しになった腕に夕焼けの色が映って、赤く見えた。
「おかえりなさい」
クロは、斧を置いて言った。
「ただいま。猿の帯留めを返してきました」
シロツメクサが言った。
「そうですか」
クロは、それ以上は答えなかった。
昨日、シロツメクサと入った呉服屋の前にいた。
店の構えを見ていると、ちょっと通りかかる仕草をするだけのつもりが、つい、入ってみようかという気になった。しかし、それより先に、あの猿の帯留めの青年が、店の暖簾の下から出てきた。この店が、猿の帯留めの青年の家だということは察していたから、特に驚くことでもなかった。青年は、俺を見ると、頭を下げた。
「こんにちは。何か、御用ですか?」
近くで見ると、素直で、飾り気のない中にも、何となく、寂しそうな顔だった。
「猿の帯留め」
俺がサッパリと言うと、青年は表情を硬くした。ニヤリ、と笑いかけると意味は通じたらしかった。青年は、肩を落とした。
「今から、また、あの人のところにお伺いに行こうと思っていたところです」
俺と並んで歩きながら、青年は言った。それほど身長は変わらないはずだが、猫背のせいで、俺よりも小柄に見えた。
「今日は、店の方もあまり忙しくないし、それに……あの人が、帯留めを返してきたから……」
「ほぅ」
シロツメクサが、猿の帯留めを返したことは、俺もその場にいたから知っていた。ただ、その場にいたときは、何だろう、とだけ思った。俺は無意識に懐を探ったが、煙管はクロの家に置いてきたことを思いだした。懐に差し込んでいた手を、体の脇でダラリとさせた。
「僕がいない間に、母の元に返しに来たそうです。母は、黙って僕に帯留めを渡しただけで、あの人が何と言っていたかも、教えてくれませんでした」
「なるほど」
シロツメクサは、ただ、返しにきました、とだけ言ったのかもしれない。
青年は、切れ長の目で俺を見た。優しい形をした目だったが、今は何とも言えない力が籠っている。青年が口を開く前に、俺は言った。
「あの子……シロって、俺たちは呼ぶことが多いけれど、その子がどういう素性の娘か、お前、分かっているのか?」
「……僕があの人を山の中で偶然見かけてから、時々会うようになったことを、どこかで知ったらしいご老人が教えてくれました。あれは、神様に捧げた娘だから、親しくなってはいけない、と」
俺は、黙って頷いたが、そのことで、却って青年の目は生き生きとし出した。
「僕には、あの人が、そんな特別な人には思えません。何度も会って、話もしていますが、普通の人と変わりません。実際、そう言っているのも、そのご老人だけで、もうそんな昔話を本気にしている人は、殆どいません」
青年は、普通、という言葉に、特に力を込めて言った。
昔話、という言葉に、俺は多少驚かされた。たった十一年前のことが、昔話になったのか。
「……そもそも、何で、山に入ったわけ?」
「写生の為です」
青年は、不意の質問に気の抜けたような顔をしたが、すぐに答えた。
「僕は職人ではないので、着物や帯の図案制作をする必要はないのですが、昔から絵を描くのが好きで、よく、山の中や川沿いを歩いては、絵を描いています」
「そう」
「あの人は菫を差して、あれは、私の花かもしれません、と言っていました」
青年はそう言って、顔を赤らめた。俺にはそれが、少し妙に感じられた。
「……大木の、菫?」
「さぁ……草の中に埋もれるように咲いていた、普通の菫だったと思います」
青年は、また、普通、という言葉を使ったが、先ほど感じた、尋常ではない力は込められていない、それこそ、普通、という意味を込めた言葉だった。
「神様には、会った?」
俺がからかう口調で言うと、青年は和らぎつつあった表情を、再び硬くした。そして、硬い声で言った。目が、光っている。
「一緒に暮らしているらしい、男の人の姿なら……」
「そう」
「あなたでは、ありませんね」
「そう。俺では、ない」
クロと俺とでは、背格好も違うので、間違えるはずもなかった。
「あの男の人も、普通に見えます」
「けれど、それはきっと君の言う、普通には当てはまらない」
「それは……知っています」
「長生きだよ」
「僕は、あの人が欲しい」
青年の声に、迷いはなかった。頰が紅潮して、顔全体が締まって見える。目の色が、異様に鮮やかに見えた。
「シロのこと?」
青年は、硬く、重く、頷いた。
「シロは、クロのものだよ」
「クロ……あの人と一緒にいる人のことですか?けれど、あの人は本当に、その男の人の所有ですか?自分で立って、ものを考えて、感じる人が、そんな簡単に誰かの所有になると言えますか?」
俺は立ち止まり、青年よりやや高い位置から、青年を見下ろした。青年は、もはや、猫背とは感じられなかった。
「シロツメクサは、君の所有にもならない」
シロツメクサ、という名前を、俺ははっきりと言った。青年は、唇を震わせた。
「分かっています」
少し間を置いて、もう一度、言った。
「分かっています」
鳥の影が、二人の上を通り過ぎた。大きな鳥だった。俺も青年も、動揺しなかった。また、動揺を見せなかった。
「形式上の妻として、僕があの人を欲しいと思っているのは、本当です。でも僕はそれ以上に、……」
青年の喉の奥で、一瞬、大きな、熱い塊が詰まったようだった。
「僕は、あの人を自由にしたい」
自由。
その言葉が、重く、冷たく聞こえた。
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