死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第四話

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 本来ならばアザレアは、マトリカリアの中等科に通わなくてはならない年齢だ。

 マトリカリアの中等科は、年齢的に社交界デビューの準備で忙しいため、家庭教師をつければ通うのは免除となることがある。

 それに殿下の婚約者候補ともなると、中等科進学は必須だ。ところが、実際のところ婚約者候補教育のカリキュラムは、中等科に通っているだけではカバーできない。

 他の婚約者候補はどのように対応しているか不明だが、ケルヘール家ではリアトリスが直接王宮の王妃教育室室長に認定の家庭教師をつけたい、と申し出てくれた。

 すると中等科に通うことが免除され、認定家庭教師の派遣、そしてその家庭教師らによる新しいカリキュラムをびっちり組まれてしまった。

 当然、アザレアは遊んでいる暇などなく、それどころか、当初はついて行くだけで必死だった。とにかくがむしゃらに取り組んだ。
 だが、気がつけば予定より早く課程を終了することができていた。アザレアは家庭教師の先生方には頭が上がらない思いだった。

 そのお陰で時間に余裕が生まれ、現在ロングピークに行くことができるのだ。
 自身のためにもなったし、学ぶのも楽しかったので、殿下の婚約者にならなくとも努力してカリキュラムを受けた甲斐はあった。



 ロングピークまでは馬車で八日ほどかかる。そもそも出かけることが好きなので、長旅なのは大歓迎だった。

 それでも、流石に六日も経つと体のあちこちが痛くなりつらくなってきた。自分に対して治癒魔法をかけ続けた。時折シラーがアザレアの様子を伺いに来るのだが、あと数日のところでらもう無理と我儘を言うわけにもいかなかった。

 最初の三日目まではは本当に楽しく過ごしていた。立ち寄る村を視察と言う名目で観光したりしりもした。それに領主様の娘ということで、どこに行っても歓迎され、手厚いもてなしを受けた。

 四日目ぐらいから森が深くなり、人里を離れほぼ毎日夜営である。その上移動中は小さな空間でずっと座っていなければならず、体が強ばりあちらこちらが痛かった。

 五日、六日経ち、そして迎えた7日目。夜営で十分な睡眠もとれておらず疲れがたまったのか、治療魔法に対する魔力酔いに罹ってしまった。

 しかし、淑女たるもの人前で情けない姿をさらすわけにもいかない。魔力酔いに対して更に治療魔法をかける。その上で長旅の疲れに対しても治癒魔法を長期間継続してかけ続け、流石につらくなってきていた。

 ロングピークの屋敷に早く行きたい、フカフカのベッドに横たわりたい。そう強く思った。

 そのとき、突然ベッドの上に横たわっていた。状況が理解できずにしばらく呆然とした。疲れすぎて幻覚でもみているのかとも思ったが、どう考えても現実のようだ。辺りを見回す、ロングピークのわたくしの自室に見えなくもない。

 そろりとベッドからおり、ドアを静かに開ける。他人の家かもしれないからだ。すると廊下にいたメイドと目が合い、その瞬間メイドは悲鳴をあげた。

「ひぃっ!」

 幽霊でも見たかのような顔をして、手に持っていたはたきを床に落とした。

「お、お嬢様!? なぜここに!?」

 アザレアは、わたくしもなぜここに居るのかわからない。そう思いながら、とりあえず取り繕うようににっこり微笑んだ。

 メイドは慌てて背筋を伸ばすと

「申し訳ありません、明日の到着と伺っていたもので」

 と頭をさげた。アザレアは、首をゆるゆる横に振ると

「驚かせましたね。わたくしだけ魔法で先に来たのです」

 と、うそぶいた。そんな魔法おいそれと使えるものではない。と言うか、正確には、そんなことをできる属性持ちは数百年に一度しか現れない。しかし、メイドは素直に納得したようだった。

 突然アザレアが消えてしまって、シラー達が今頃上を下への大騒ぎだろう。慌ててしシラーのもとへ、アザレアが無事だと伝える使者を出すように指示した。

 恐らく、シラー達の所に戻ることは、今のアザレアにならできるかもしれない。でもそうすることによって、下手に周囲にバレてしまっては大騒ぎになる。実際問題、すでに屋敷のメイドに発見されてしまっている。今度はロングピークからも消えたとなれば、更に騒ぎになるだろう。

 希属性待ちだとばれてしまえば、婚約者候補の辞退の話も白紙に戻ってしまうだろう。
 まだ正式に辞退になっていない現状では、アザレアが稀属性持ちとバレずにやり過ごすことが得策だ。

 とりあえず、懸命に探してくれているであろうシラー達には申し訳ないが、アザレアは一足先に湯浴みをし、美味しい食事をいただき、足を伸ばしてフカフカのベッドに横たわった。

 人心地ついたところで考える。今日アザレアが使った魔法の属性は時空属性の魔法だろう。
 時空魔法を使えると、瞬間移動や時間操作ができるが、時空をいじるということは、自然の法則やことわりを歪めてしまう恐れがありリスクのあることだ。

 だから考えて使わなければならない。

 それにはやはり時空魔法を熟知している者に教えを乞う必要があるだろう。時空魔法に関してのことは存在は公にされているものの、詳細については王宮で秘匿、隠避されているため、いずれにせよ国王陛下へ報告しなければならないかもしれない。

 平凡な人生は送れないのだなと、少し落ち込んだ。面倒事から離れたくてロングピークまで来たというのに。でも落ち込んでいても仕方がない、と暗い考えはやめた。

 とりあえずは、来年の高等科入学まではアザレアは自由なのだ。アザレアはここで大好きな本を好きなだけ読みふけると決めていた。せっかくゆっくりできるのだしこの機会を逃す手はない。

 そこで急に思いつく。うまく時空魔法を使えば、もしかして王宮図書室に忍び込み放題なのでは? と。

 アザレアはベッドから上体を起こした。そうと決まれば、まずは自分の思う位置へ移動できるように練習をしなければ、と気合いを入れた。

 馬車からロングピークまで移動した時は、とにかくその場所に行きたいと心の底から思ったら移動していた。まずは短い距離から、と廊下に使用人がいないことを確認し、自室にもどりたいと念じてみた。もっと難しいかと思っていたが、案外とあっさり自室の中へ移動していた。

 練習のために距離を伸ばしながら数回行ってみた。そして気がついたのだが、長い距離を移動することはたいして難しくない。問題なのは一度行うごとに魔力を大量に消費することだ。わたくしでも一日に二十~二十五回ぐらいが限界だった。

 普段の生活でも魔力は使うため、実際にこの魔法を使うならばもっと魔力を伸ばすか、魔石を作りそれを利用するようにしなければならない。

 また、花に時間魔法をかけて、枯れない花を作るなんてこともやってみた。もちろん魔法が切れれば枯れてしまう。

  もしも、これを人に応用し人間に老いない魔法をかけるとするなら、大量の魔力が必要となるし、人体にどのような影響がでるかわからないので、恐ろしくてできたものではないが。

 最初は時空魔法を使うのは恐る恐るだったが、時空魔法を使うには、大量の魔力を消費するためそれ以前の問題だったと気がついた。

 色々試してみたいものの、今日は魔力を使いすぎてもう限界だった。そうこうしているうちに魔力切れとなり、疲れはて泥のように眠った。




 柔らかい光に照らされてゆっくりと目を開けると、朝になっていた。寝ていた時間が一瞬に感じられた、ここ最近ゆっくり休養できていなかったせいもあるだろう。

 目が覚めてまず思ったことは、昨日の出来事は夢ではないか? と言うことだ。
 本当は普通にシラーと共にロングピークに到着しており、昨日のことは夢でもみたのではないか? と思ってしまう。

 と、いうことで寝起き一番に王都の邸宅にある自室に移動して帰ってきた。やはり夢ではなかった。更に驚いたことに、昨日より魔力が三倍ぐらい増えているのだ。

 魔力を消耗したから増えたのだろうが、異常な増えかたである。恐らくは体が時空属性魔法に適応しようとしているということなのかもしれない。でもこれは所謂チートというものなのではないだろうか。
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