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第十六話
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アザレアはドアをノックする音で目覚めた。
「お嬢様? いらっしゃいますか? 大丈夫ですか?」
ドア越しにシラーの声がした。どれぐらい寝ていたのだろうか。アザレアが部屋から出てこないので、シラーが心配して声をかけてくれたようだった。ドアの外に向かい返事をする。
「ありがとう、大丈夫ですわ。少し寝ていただけだから。ところで今何時ぐらいですの?」
言いながら窓の外を見ると、空が茜色に染まっている。
「午後の六時です」
少し眠るつもりが、かなり寝てしまったようだ。特訓を行っているお陰で魔力量が増えたとはいえ、流石に時空魔法の魔石を何個も作るのは無謀だったのだろう。
「お夕食はどうなさいますか?」
「いただくわ」
そう返すと、シラーはアザレアの体調が悪いのではないかと心配している様子で言った。
「お嬢様? お部屋にお持ちしましょうか?」
これ以上心配させてはいけないので、アザレアはそれを断り、着替えるのも面倒だったので、そのままの格好で食堂へ向かう。食堂に入ると、リアトリスが待っていた。
「私のエンジェルはお寝坊さんだね」
いつものことなので聞き流す。
「お父様、お待ちくださってたんですか? 今日はお約束がなかったので、てっきりご一緒されないかと思っておりました」
リアトリスはオーバーに肩をすくめる。
「まさか、この父がお前抜きにして食事を取れるわけなかろう。それにブラックダイヤを発見した私の女神…」
「はい、ありがとうございます。ではいただきましょう」
アザレアはリアトリスの言葉を遮って、テーブルについた。食事を取りながら昨夜の話の続きをする。
「私の時空魔法のことは、お父様と国王陛下、それ以外はどなたがご存じですの?」
リアトリスは左上を見ながら答えた。
「ストックとシラーは知っている。あの二人には隠さんで良い。まぁそもそも、何処で見られてるかわからんから、公になるまではあまりおおっぴらには使わん方が良いだろう」
アザレアはシラーも知っていたことに驚く。考えてみれば一番最初に王宮で無意識に瞬間移動してしまったとき、シラーも王宮に来ていたのだし侍女なら知っていても当然だった。
シラーはアザレアが時空魔法を使った際に言い訳をする度、暖かく見守ってくれていたのだろう。それは少し気恥ずかしいかもしれない。
そんなことを考えていると、リアトリスはアザレアの思考を遮って言った。
「ところでアザレ、ブラックダイヤのことだが……」
と、新しく発見したブラックダイヤについて、二人で話し合った。
ブラックダイヤは現状では、見た目から本当に使えるのか? と疑われる恐れもある。なので、市場に出すには時期尚早だろう。と言う意見で見解が一致した。
まずは、高度もあり輝きがある美しい、価値ある宝石だと認知度を上げる必要がある。
それと今日、時空魔法の魔石をいくつか作り設置することを伝えた。これでリアトリスも移動が楽になるだろう。
リアトリスは全てにおいて自ら確認したいタイプだ。だが立場上、情報の集まる中央に居た方が良いだろう。
今後は魔石で移動できるようになったので、中央にいながらにして現地に飛び、確認し素早く指示をだす。そんなことも可能となった。
そんな話をしつつ食後のデザートに差し掛かったとき、リアトリスはゆったりお茶を飲みながら、なんでもないことのように言った。
「アザレ、婚約者候補の辞退が正式に通ったぞ」
ドキッとした。死から一歩遠ざかったのだから、喜ぶべきところだが。カルのことを思うと、なんとも言えない気持ちになった。アザレアは勤めて平静を装って言った。
「早かったのですね」
リアトリスはアザレアの様子をしばらく伺っていたが何も読みとれなかったのか、諦めたように話を続けた。
「聖女が召喚されたからな、アゲラタムの連中は、聖女と王太子殿下を婚約させたいのだろう」
そう言うと、コーヒーを一口飲んでソーサーに置いた。アザレアは驚いて手に持っていたフォークを乱暴に置く。
「召喚されましたの!?」
思わず大きな声を出してしまった。そんなアザレアをいさめるでもなく、表情も変えずリアトリスは続ける。
「まだ正式な発表はないがな。お前より一つ年上の少女らしい」
それを聞いて、あの物語と年齢設定が違っていて、少しは未来がかわったのだろうか? それとも、この先は同じ展開になってしまうのだろうか? と不安に思っていると、リアトリスがいつにもまして真面目な顔で言った。
「お前のことは絶対に守る、心配するな」
アザレアはなんとか笑顔を作った。
「ありがとうございます」
話題を変えるようにリアトリスはアザレアに訊いた。
「ところで、お前は将来どうしたい? なにか考えがあるのか?」
アザレアには、これになりたい! と言うような目標はなかった。しばらく考えて答える。
「宮廷魔導師か、婿養子をとってケルヘールを継ごうと思います。婿養子に来てくださる方がいらっしゃればですけど」
正直結婚は今のところまだ考えられない。なので、まずは宮廷魔導師になるべく研鑽し、結婚はその後で考えても良い。
そんなことを考えながら不意にリアトリスを見ると、なぜか泣いている。アザレアは驚いて思わず二度見した。
「お父様?」
アザレアはなぜリアトリスが泣いてるのかわからず困惑した。するとリアトリスは声を絞るように言った。
「アザレ、私のアザレがこんなに大きくなってもう結婚……花嫁姿も綺麗だ……グファッ」
は? まだ結婚どころかお相手もおりませんけど?
呆れてそのまま無言になって見ていると、リアトリスは我に返る。
「だめだ、だめだアザレ。お前は結婚せずとも良い。宮廷魔導師になりなさい。高等科には伝えておこう。この家はコリンに継がせる」
と、なぜか勝手に決めてしまった。少なくとも時空魔法の制御など学ばないといけないことは多いので、高等科で魔法学を専門的に学ぶのはアザレアとしても大賛成だ、反対する理由はない。
コリンというのはサイケンス侯爵家に嫁いだ叔母の息子で、コリウス・ファン・サイケンス侯爵令息のことだ。
もしアザレアが婿養子をとるとしたら、今のところ筆頭候補となる存在だ。しかし、リアトリスの反応を見るに、アザレアの結婚は遠退きそうだった。
「お嬢様? いらっしゃいますか? 大丈夫ですか?」
ドア越しにシラーの声がした。どれぐらい寝ていたのだろうか。アザレアが部屋から出てこないので、シラーが心配して声をかけてくれたようだった。ドアの外に向かい返事をする。
「ありがとう、大丈夫ですわ。少し寝ていただけだから。ところで今何時ぐらいですの?」
言いながら窓の外を見ると、空が茜色に染まっている。
「午後の六時です」
少し眠るつもりが、かなり寝てしまったようだ。特訓を行っているお陰で魔力量が増えたとはいえ、流石に時空魔法の魔石を何個も作るのは無謀だったのだろう。
「お夕食はどうなさいますか?」
「いただくわ」
そう返すと、シラーはアザレアの体調が悪いのではないかと心配している様子で言った。
「お嬢様? お部屋にお持ちしましょうか?」
これ以上心配させてはいけないので、アザレアはそれを断り、着替えるのも面倒だったので、そのままの格好で食堂へ向かう。食堂に入ると、リアトリスが待っていた。
「私のエンジェルはお寝坊さんだね」
いつものことなので聞き流す。
「お父様、お待ちくださってたんですか? 今日はお約束がなかったので、てっきりご一緒されないかと思っておりました」
リアトリスはオーバーに肩をすくめる。
「まさか、この父がお前抜きにして食事を取れるわけなかろう。それにブラックダイヤを発見した私の女神…」
「はい、ありがとうございます。ではいただきましょう」
アザレアはリアトリスの言葉を遮って、テーブルについた。食事を取りながら昨夜の話の続きをする。
「私の時空魔法のことは、お父様と国王陛下、それ以外はどなたがご存じですの?」
リアトリスは左上を見ながら答えた。
「ストックとシラーは知っている。あの二人には隠さんで良い。まぁそもそも、何処で見られてるかわからんから、公になるまではあまりおおっぴらには使わん方が良いだろう」
アザレアはシラーも知っていたことに驚く。考えてみれば一番最初に王宮で無意識に瞬間移動してしまったとき、シラーも王宮に来ていたのだし侍女なら知っていても当然だった。
シラーはアザレアが時空魔法を使った際に言い訳をする度、暖かく見守ってくれていたのだろう。それは少し気恥ずかしいかもしれない。
そんなことを考えていると、リアトリスはアザレアの思考を遮って言った。
「ところでアザレ、ブラックダイヤのことだが……」
と、新しく発見したブラックダイヤについて、二人で話し合った。
ブラックダイヤは現状では、見た目から本当に使えるのか? と疑われる恐れもある。なので、市場に出すには時期尚早だろう。と言う意見で見解が一致した。
まずは、高度もあり輝きがある美しい、価値ある宝石だと認知度を上げる必要がある。
それと今日、時空魔法の魔石をいくつか作り設置することを伝えた。これでリアトリスも移動が楽になるだろう。
リアトリスは全てにおいて自ら確認したいタイプだ。だが立場上、情報の集まる中央に居た方が良いだろう。
今後は魔石で移動できるようになったので、中央にいながらにして現地に飛び、確認し素早く指示をだす。そんなことも可能となった。
そんな話をしつつ食後のデザートに差し掛かったとき、リアトリスはゆったりお茶を飲みながら、なんでもないことのように言った。
「アザレ、婚約者候補の辞退が正式に通ったぞ」
ドキッとした。死から一歩遠ざかったのだから、喜ぶべきところだが。カルのことを思うと、なんとも言えない気持ちになった。アザレアは勤めて平静を装って言った。
「早かったのですね」
リアトリスはアザレアの様子をしばらく伺っていたが何も読みとれなかったのか、諦めたように話を続けた。
「聖女が召喚されたからな、アゲラタムの連中は、聖女と王太子殿下を婚約させたいのだろう」
そう言うと、コーヒーを一口飲んでソーサーに置いた。アザレアは驚いて手に持っていたフォークを乱暴に置く。
「召喚されましたの!?」
思わず大きな声を出してしまった。そんなアザレアをいさめるでもなく、表情も変えずリアトリスは続ける。
「まだ正式な発表はないがな。お前より一つ年上の少女らしい」
それを聞いて、あの物語と年齢設定が違っていて、少しは未来がかわったのだろうか? それとも、この先は同じ展開になってしまうのだろうか? と不安に思っていると、リアトリスがいつにもまして真面目な顔で言った。
「お前のことは絶対に守る、心配するな」
アザレアはなんとか笑顔を作った。
「ありがとうございます」
話題を変えるようにリアトリスはアザレアに訊いた。
「ところで、お前は将来どうしたい? なにか考えがあるのか?」
アザレアには、これになりたい! と言うような目標はなかった。しばらく考えて答える。
「宮廷魔導師か、婿養子をとってケルヘールを継ごうと思います。婿養子に来てくださる方がいらっしゃればですけど」
正直結婚は今のところまだ考えられない。なので、まずは宮廷魔導師になるべく研鑽し、結婚はその後で考えても良い。
そんなことを考えながら不意にリアトリスを見ると、なぜか泣いている。アザレアは驚いて思わず二度見した。
「お父様?」
アザレアはなぜリアトリスが泣いてるのかわからず困惑した。するとリアトリスは声を絞るように言った。
「アザレ、私のアザレがこんなに大きくなってもう結婚……花嫁姿も綺麗だ……グファッ」
は? まだ結婚どころかお相手もおりませんけど?
呆れてそのまま無言になって見ていると、リアトリスは我に返る。
「だめだ、だめだアザレ。お前は結婚せずとも良い。宮廷魔導師になりなさい。高等科には伝えておこう。この家はコリンに継がせる」
と、なぜか勝手に決めてしまった。少なくとも時空魔法の制御など学ばないといけないことは多いので、高等科で魔法学を専門的に学ぶのはアザレアとしても大賛成だ、反対する理由はない。
コリンというのはサイケンス侯爵家に嫁いだ叔母の息子で、コリウス・ファン・サイケンス侯爵令息のことだ。
もしアザレアが婿養子をとるとしたら、今のところ筆頭候補となる存在だ。しかし、リアトリスの反応を見るに、アザレアの結婚は遠退きそうだった。
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