死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第三十一話

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 カルは重力属性持ちである。それは王族のみに受け継がれる属性で、重力属性も使い方によっては軽く国一つが崩壊する魔法だ。

 そのため成人し、王位を受け継ぐ資質があると判断されるまでは使えないように精神的に封印されている。

 カルはまだ封印を解かれていないので、もちろん重力魔法を使用したことはない。そこでまずは制御方法や重力魔法のことわりについて学ぶことになっている。

 そういうわけで、カルもアザレアと一緒に授業を受けることになっていた。

 カルから本を渡されたあと、アザレアはカルと共に講義室に向かった。講義室は円柱状の天井の高い部屋だ。図書室とは違い、天井近くまである窓が、ぐるりと囲っているので、王宮の庭を一望できた。

 外装は大理石のようなもので覆われているが、内装は木造で木の暖かみも感じられる。王宮の本館より左斜め前方にあるので、国王陛下やカルの部屋は見えないような作りになっていた。

 部屋を入ってすぐのところに教壇があり講師の机、その右隣に小さなスタンドテーブルのような見た目の、ピクテと言う映像を立体的に写し出す魔道具が置いてある。

 講義室の中央に大きな映像だったり、ピクテの上に小さな映像を写し出すことができる。その向こう側にすり鉢状に弧を描いて椅子と机がある。

 もしも遅刻をしたら先生の背後から入らなければならず、絶対に遅刻のできない仕組みだ。アザレアはそんなことを考えながら改めてまじまじと講義室を見ていた。

「うん、ここの講義室は素敵な作りだものね、ついつい見ちゃうよね」

 背後から声がした。アザレアとカルは慌てて振り向く。そこには、栗色の癖のある髪の毛に、栗色の瞳、そして鼻眼鏡をかけローブを着た男性が腕を組んでたっていた。

「ごめんごめん、急に後ろから話しかけてしまったからビックリしたよね」

 と、その男性は言うと、教壇の机に軽く腰掛けた。カルは戸惑いながら訊く。

「もしかして講師の先生でしょうか?」

 するとその男性はにこりと微笑む。

「そうなんだよね、僕一応先生なの。この分野ってさ、研究者少ないんだよね、だから僕みたいのが王族に教えることになっちゃって」

 と困った顔で続ける。

「僕はただの研究者なのにね。って、自己紹介遅れちゃったな」

 そう言うと頭を掻いて苦笑し、改まって言った。

「僕はヒュー。君たちと違って僕には苗字はないから、そのまま名前で呼んでほしい」


 アザレアは慌てて挨拶をしようとした。するとヒュー先生はそれを制した。

「いやいや堅苦しいのは嫌なんだ。挨拶は抜きで頼むよ。僕はここでは君達をカルミアとアザレアと呼ぶけど、許してもらえるかな?」

 アザレアは特に異論が無いので頷く。カルを見るとアザレアの反応を見たあとで答える。

「私も問題ありません。宜しくお願いします」

 と一礼した。それを見たヒュー先生は腕を組んで目をつぶり、少し考えたあと

「う~ん、僕は一応先生ではあるんだけど、時空魔法や重力魔法を使えるわけじゃない。アザレアなんかは実際にもう時空魔法を使えるわけで、こっちもそこから学ぶことは多いと思うんだ」

 というとなにかに気がついた様に、はっとした。

「あっ、座って座って!」

 アザレアはとりあえず席に座り、話の続きを聞くことにして、机の上に先程カルに渡された本を乗せた。すると、ヒュー先生はそれを目ざとく見つける。

「あっ! それ、昔僕が書いたやつだ。けど、実際に時空魔法使ってるアザレアには必要ないかも。本当に軽く概要書いただけだし」

 それを聞いていたカルが苦虫を噛み潰したような顔をした。それを見たアザレアは咄嗟に答える。

「それでも、こういった書物は大変希少ですから、読む価値はありますわ」

 ヒュー先生は小首をかしげる。

「そう? 君がそう言うなら良いけど。さて、僕の自己紹介が済んだところで、早速授業を始めよう」

 と、仕切り直し続けた。

「さて、まずは君達の持っている属性それぞれは全く関係ない属性に感じるかもしれないが、ある共通点がある。なんだかわかる?」

 ヒュー先生はしばらく沈黙し返事を待っていたが、二人が黙っていると答えた。

「制御を誤ると暴走して、誰にも止めることができなくなってしまうところだ」

 アザレアとカルは頷いた。ヒュー先生はそれを見て話を続ける。

「重力魔法は粒子の数の増減で物質の重さを変換できるが、そのまま重さを増やし一定を超えると、制御不可能となる。これがどういうことかわかるかな?」

 ヒュー先生はアザレアの顔を見た。実はアザレアは、前世でドキュメンタリー番組が好きだったので、宇宙物理学はなんとなく理解していた。おかげでヒュー先生の言っていることは理解できる。

「重さ、重力が増すということはどんどん物質を引き付けます。そうすれば更に重さを増し、重力が増すので更に物質を引き付けます。それがある一定量を越えると加速度的に進み、制御できなくなるということですよね?」

 と、返す。ヒュー先生はビックリした顔をして、メガネの真ん中を人差し指で押し上げる。

「失礼を承知で言うけど、ただのご令嬢なのになんでそんなことまで知っているの?」

 アザレアは苦笑いをしながら、すみません前世の受け売りなんです。と、心の中でつぶやき、ヒュー先生に答える。

「独学です」

「ふ~ん」

 ヒューは納得のいかない顔をしたが、それ以上突っ込んで聞いてくる事はなかった。そして今度はアザレアの知識量を推し量るかのように訊いてきた。

「それなら、時空魔法で制御不能となる理由は?」

 アザレアは答えるか躊躇したが、今更何も知りませんと言っても信じてもらえそうになかったので答えた。

「時空に穴を開けることができるので、その時空の穴、時空の狭間を制御しないと、世界ごと時空の狭間にいざなわれてしまいます。それに時間と空間の制御を間違えると、過去と未來、現在が秩序を保てず、混沌となります」

 するとヒュ先生ーは満足気に頷く。

「その通り! 僕の生徒はできが良くて助かるなぁ。じゃあ今日は、君たちがわかっていることを教えてほしい。君たちがわからないことを講義しないと時間の無駄になるしね。それにないとは思うけど、君たちの知識で間違っていることは、遠慮なく訂正させてもらう」

 と愉快そうに言った。こうして、本格的な授業の一日目が過ぎていった。
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