死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
33 / 66

第三十二話

しおりを挟む
 翌日からの講義は、かなりゆったりとしたものだった。そもそも講義を行うヒュー先生が

「朝早く起きて、ご飯詰め込んですぐに講義。なんて僕には無理。朝はゆっくりめの開始にしようよ。君たちだってなんか良くわからない貴族の儀式みたいな物があって忙しいんでしょ?」

 などと言って、朝はゆっくりめの開始となったからだ。しかしヒュー先生の講義内容は大変面白いもので、毎日が充実した時間を過ごすことができた。

 王宮で授業を受けることになってから、一つだけ気になることがあった。時空魔法に関する書物がとにかく少ないと言うことだ。

 王宮図書室でも探してみたが、ほとんど見つからなかったのだ。

 アザレアたちはこうしてヒュー先生に直接教えを乞うことが出きる。なので、わからないことはこの場で補完できるが、以前の時空魔法属性持ちの人はどうしていたのだろうか? と思った。

 先日カルが見つけたヒュー先生の書いたと言う書物は、大変貴重な物といえるだろう。なのである日ヒュー先生にこんな質問をした。

「先生、先生のようにこの分野について研究なさってる方がいらっしゃるのに、何故こんなにも時空魔法に関しての文献や書物が少ないのでしょう?」

 ヒュー先生はしばらく考える。

「僕もハッキリはわからないけど、この属性魔法を使える人間が現れることがほぼ無いからじゃないかな?」

 そして、腕組みをしてゆっくり話を続ける。

「人間ってのは日々の生活に追われて生きてるだろう? 関係ないことや、必要ないこと。知らなくて良いことに時間を割く余裕はないからね、だからこの分野の研究者も少ない。なんたって研究していても自分の生きている間に、時空魔法を使える人間が現れるとは限らないし」

 そう言うとオーバーに肩をすくめた。それを受けてカルが訊く。

「それは理解できますが、書物が極端に少ない理由は? 研究者が少ないとしても、今までに研究してきた人がいるのですから、いくらかの書物が残っていてもおかしくないと思うのですが……」

 ヒュー先生は頷く。

「同じ理由だよ、必要になるころには余りにも時間がたちすぎて、書物がのこっていないんじゃないか? 僕の書いた本にしろいつまで保管されるかはわからないね」

 そう言われてアザレアは一つ思いついた。

「それなら、時空魔法を使って将来に書物を残せる箱を作れば良いのではないでしょうか?」

 カルとヒュー先生が同時にこちらを見た。先生は座っていた机から立ち上がると、瞳を輝かせてアザレアの手を取った。

「君は本当に素晴らしいね、是非作ろう!」

 すると隣にいたカルが不機嫌そうに

「先生、手を離してもらえませんか?」

 と、ヒュー先生の腕をつかんだ。ヒュー先生はアザレアの手をぱっと離す。

「ごめんごめん、男性に手を握られたら嫌だよね」

 頭を掻いて笑い、アザレアに真剣な眼差しを向けた。

「本当に素晴らしいアイデアだと思う。でも、かなり長い時間保存できるような物を作るなら、相当な魔力がないと無理じゃないかな?」

 顎をさすり目を細めながら難しい顔をした。それは十分わかっている。なのでアザレアは頷き言った。

「だから、まずは試作で小さな物を作って見ようと思います」






 その日の夜、箱のデザインを考えるため、何か参考になるような本がないか探しに図書室へ行った。特に工芸品等の本を探して歩く。

「アズ、こんばんわ」

 声をかけられ、そちらを向くとカルがいた。

「カル、こんばんわ」

 アザレアは笑顔で挨拶を返した。

「君はもしかして昼間言ってた箱に関する調べもの?」

 アザレアは頷き答える。

「はい、カルも何か調べものですの?」

 カルも頷くと、優しく微笑んだ。

「そう、僕もちょっと調べたいことがあってね」

 そして、じっとアザレアの顔を、見つめた。

「なんですの?」

 首をかしげると、カルが楽しそうに言った。

「こうして図書室で君に合うと、君が引きこもっている時にお茶会をしたのを思い出すね」

 アザレアも微笑み返す。

「そうですわね、あの頃も楽しかったですわね」

 そう言って、ここでのことを思い出した。少し前のことなのに、ずいぶん昔に感じた。ふと見ると、カルも当時を思い出している様子だった。

 そして、目が合うとお互いに『ふっ』と笑った。

 その後本を探す作業に戻り、アザレアは数冊の本を手に取るとソファに腰かけた。しばらくすると同じく数冊の本を手に持ったカルが、アザレアの隣に腰かける。

 そうしてしばらくは夢中になって本を見ていたが、アザレアは横から視線を感じ、本から顔を上げた。すると、カルと目があった。

「な、なんですの?」

 恥ずかしくなり、すぐに本に視線を戻す。カルはそのままアザレアを見つめ微笑む。

「熱心に調べているアズが可愛いなと思って」

 恥ずかしくて顔が熱くなった。無言でいると、カルはアザレアの頭を引き寄せ、自分の額にコツンとくっつける。

「よし、頑張って調べよう」

 と言って、手を離した。その後アザレアはカルを意識しないように本に集中した。




 気がつくとアザレアは、ふわふわと柔らかい暖かな雲に乗っていた。それが心地よく、しばらくまどろんでいるうちに、これは夢だということに気がついた。

 気持ちの良い夢だからもう少し寝ていたい、と思いつつも意識がはっきりしてしまい目を開ける。

 一瞬そこがどこだかわからなかったが、ニ~三秒のち、そこが図書室であることに気がつく。ソファで寝てしまったようだった。

 そして自分の体の下に暖かな体温を感じる。まさかと思いながら顔を上げると、カルの顔がすぐ目の前にあり、目が合った。

「やぁ、目が覚めた?」

 どうやらカルに抱きつくようにして寝てしまっていたようだった。慌てて体を起こす。

「ごめんなさい」

 恥ずかしさで顔を押さえながら言う。カルは楽しそうに言った。

「素晴らしい時間だったから、気にしないで。でもあんなに無防備だと、イタズラされかねないよ」

 カルは微笑み、ゆっくり起き上がると思い切り伸びをした。そして胸ポケットから懐中時計を取り出すと、時間を確認する。

「早く部屋に帰らないと不味いことになる。一緒に図書室を出るのは上手くないな。悪いがアズは魔法で部屋に戻ってもらえるか?」

 アザレアは頷くと、慌てて部屋へ瞬間移動した。運良くシラー達には気がつかれずにすんだようだった。

 アザレアはベッドにもぐってからもしばらくは、どきどきが収まらなかった。

 次の日の朝、少し寝坊したがヒュー先生のお陰で朝は遅くても問題なかったので、慌てることなく準備ができた。髪の毛をセットしてもらっていると、シラーが表情を曇らせる。

「お嬢様、その……首筋に虫刺されが」

 アザレアは虫に刺された記憶はなかった。寝ている間に刺されたのだろうか? そう思いながら答える。

「あら、そうなの? 痛くも痒くもないけれど、いつの間に刺されたのかしら?」

 するとシラーは気を取り直したように言った。

「今日は髪の毛を多めに下ろして、隠しましょう」

 シラーは黙々と髪の毛を整えた。準備が出来て講義室へ行くと、カルはもう来ていた。カルはアザレアを見ると残念そうに、こう言った。

「なんだ、髪を下ろしてしまったのか」

 と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...