死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第三十三話

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 講義室にヒュー先生があくびをしながら入ってくる。これもいつもの光景になりつつあった。

「おはよう、さて今日は何について話そうか?」

 ヒュー先生はいつも質問に答える形で授業を進めて行くので、わからない、不思議、と思っていることについて深掘りできて退屈しなかった。

 アザレアは普段から疑問に思ったことを書き留める癖がついたほどだ。この日もいつものようにアザレアはヒュー先生に質問した。

「先生、時空魔法のことなのですが」

 ヒュー先生はもう一度出たあくびを噛み殺した。

「はいはい、なんだい? 僕が答えられることだと良いけど」

 そう言うと、いつものように机に軽く腰かけ腕を組んだ。

「時間を巻き戻すと言うのは、わたくしも恐いのでやったことがないのですが、自分以外の世界を巻き戻すとその後の私の記憶はどうなるのでしょう?」

 ヒュー先生は口をとがらせ、眉根にシワを寄せた。

「う~ん、これまた難しい質問だねぇ」

 としばらく考えた後答える。

「僕は時空魔法を使えないから、これは研究から導き出された予測になってしまうんだけど、時間を巻き戻す魔法ってのは、どうしてもそこに存在する全てにかかってくると思うから、記憶は残らないと思うよ。時間と空間が連動してしまっているからね」

 それを受けて更に質問する。

「確かに、時間と言う一方向の次元に三次元がくっついているのが今の世界ですものね。時空の空間を移動して過去に戻っても、そこはここと時間軸が異なるから『記憶が残っている』とは言えませんしね」

 と言うと、ヒュー先生は目を見開いて驚く。

「君、本当に何者?」

 横からカルが言う。

「申し訳ないが、私にはアザレアの言っている意味がわからない」

 カルは困惑した顔をしていた。そこでアザレアは説明する。

「時間と言うのは現在から未来に一方向にしか動きのない世界なんですの。わたくし達の世界は立体的な世界ですけれど、もし時間経過がなければそこにあるだけの存在になりますわよね?」

 一度話を切って、カルが理解したか確認する。見るとカルが頷いたので話を続けた。

「だから、時間と言う一方向の概念にわたくし達の立体的な世界がのって過去から未來へ移動することで、この世界が動いていますの。そこから考えて、時間と空間は引き離せないものだとわかりますわね? だから時間を戻す魔法をわたくしがかけたとしても、わたくしはこの世界にいる限り、そこから免れることができない訳です。結局自身も巻き戻ってしまうから、記憶も消えてしまうと言うことですわ」

 と、一気に説明した。それを聞いていた、先生がため息をつく。

「僕はアザレアには教えること無さそうなんだけど」

 そこでカルは

「それはわかったが、時空の空間を移動して戻るって言うのは?」

 と、まだ混乱気味だ。

「時間と空間に穴を開けて、時間の存在しない場所を通って過去に戻ると言うことです。でもそうすると、同じ時間軸にわたくしが二人存在することになりますでしょ? そんなことはあり得ない、だから行った先は違う時間軸と言うことになります」

 と説明した。流石に物理学の概念のないこの世界で理解するのは難しいかと思ったが、カルは納得した様子になると言った。

「凄く面白いね。まさか君がこんなにも博識だとは……」

 と、アザレアを見つめた。その横でヒュー先生も目を輝かせてアザレアを見た。

「君は本当に凄いな。時空魔法を操れて、そのことわりをそこまで熟知しているとは」


 アザレアは心の中で、すみません、全部前世の受け売りなんです。計算式もさっぱりわからないのに、偉そうに話したことを申し訳なく思った。


「ところで先生」

 カルが先生に話しかける。

「私はまだ、重力魔法の封印が解かれていません。ですが、もうそろそろ制御の方法を実践で学ばなければならないと思うのですが」

 アザレアもそれには同意だったので、話を聞きながら大きく頷いた。すると先生はアザレアを見た。

「アザレア次第かな」

 意味がわからず話の続きを待っていると

「魔法制御の訓練は、自分の持ちうる魔力を限界まで解放してから、それを暴走させないように制御する。ってのを繰り返さなければならないんだ。これはとても危険な訓練で、今までは結界外の奈落にて行われていたようだよ。だがそれはとても危険を伴う。そこでアザレア、君の出番。アザレアがそういった訓練をできる空間を作ってしまえばいい」

 そう言って、ヒュー先生はニヤリと笑った。簡単に言ってくれているがとんでもないことである。その空間を作っている間、アザレアは空間を維持、制御するためにかなりの魔力を使わなければならない。

 アザレアはヒュー先生の顔を恨めしげに見つめた。ヒュー先生はアザレアの反応をみて更に笑った。

「アザレアならできる。大丈夫だって、カルミアのためにも頑張らないとね、宮廷魔道師様」

 と、ちゃかして言った。

「そういえば……」

ヒュー先生は急に思い出したかのように言った。

「先日の箱の件はどうなったんだい?」

 アザレアは、話をそらされた気がしたが気を取り直して答える。

「まず素材を決めてから作ろうかと思っています」

 ヒュー先生は頷きアザレアに訊いた。

「この前その話を聞いた時に、開明けてほしいタイミングで光るとか、勝手に開くとか、そんな仕掛けなんかも付与したらいいんじゃないかな? そういうことはできる?」

 アザレアは感心して答える。

「なるほど、そういった仕掛けがあれば『特定の条件下になった時に開けて欲しい』と言う時に狙って開けてもらえるようにすることも可能ですわね」

 ヒュー先生は微笑んだ。

「出来るんだね? 実物を見るのを楽しみにしてるよ」


 この日の授業を終えて、早速自室で箱のデザインをする。デザインしていて気がついたが、これはマユリにしかできないだろう。アザレアは後日改めてマユリに箱の製作を依頼をしに行くことにした。
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