死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
65 / 66

第六十三話

しおりを挟む
「アズ! お願いだ、目を開けてくれ!」

 カルが呼ぶ声で目を開けると、カルがアザレアを抱き抱え、心配そうな顔で覗きこんでいた。

 アザレアはそっと手を伸ばし、カルの頬を愛おしそうになでて言った。

「カル、わたくしあなたのもとに帰ってきましたわ」

 カルは頬をなでるアザレアの手をつかむと、そのまま自身の頬に更に押し付けて頷く。

「あぁ、そうだね、ありがとう」

 カルは目に涙を溜めて微笑んだ。アザレアはそんなカルを見つめ、指先でカルの顔をゆっくりなぞった。

「カル、わたくしあなたに伝えたい気持ちがありますの」

 すると、カルはアザレアの唇に指をあてた。

「待ってくれ、その先は私から先に言わせて欲しい」

 アザレアが頷くと、カルはアザレアの唇から指を離す。

「初めて私の前にアンモビウムの花を持って現れたあの瞬間に君に恋に落ち、会うたびにその気持ちは募った。一度君が私から離れたあの日から、君を知りもっと君を深く愛するようになった。私は君以外いらない。王位もこの国も、それよりなにより君が欲しい。君を心から愛している」

 アザレアは大粒の涙をこぼしながら答える。

わたくしも、心からあなたを愛しております」

 そう言った瞬間、二人は強く抱き合い、お互いの存在をしばらく確かめ合った。カルはアザレアの首筋に顔を埋めると言った。

「君がいないと、私は生きてはいけない。ずっとそばにいて共に歩んでくれるね?」

 アザレアは頷く。

「もちろんですわ、わたくしだって、もうカルがいなければ生きていけません。あなたがいたからわたくしはここまでこれたし、ここに戻ってくることもできたのです」

 カルはアザレアの顔を両手で優しく包み、アザレアの瞳を覗きこむと言った。

「君の全てが欲しい、身も心もその全てを」

 アザレアもカルの瞳を見つめ返す。

「はい、わたくしの全てはカルのものです」

 そう言うと、カルはアザレアと唇を重ねた。そして、何度も角度を変え、深く求めた。

「アザレア、嬉しいよ。私はやっと君を手に入れた」

 アザレアはいたずらっぽく笑うと言い返す。

「カルの全てもわたくしのものですわ」

 するとカルは微笑む。

「もちろん。私は疾の昔に君のものだよ」

 そう言ってまた深くキスをした。

 しばらくそんな時間を過ごしたのち、アザレアは周囲を見まわし以前カルと一緒に訪れた湖畔だと気づいた。

「みんなはどうしましたの?」

 カルは適当な倒木のところまでアザレアを連れていきそこに座ると、アザレアを抱き締めながら話し始めた。

「実は君が奈落を閉じる瞬間に、私たちはどこかの空間へ吹き飛ばされたんだ。私はその空間ではぐれそうになった君を腕輪で探し、必死でつかまえた。そして魔石でここまで移動してきたんだ。心配しなくとも、フランツのことは移動魔石を持ったコリウスに任せたから大丈夫だろう」

 アザレアはカルに訊いた。

「でも、なぜわたくしたちはこの場所へ?」

 カルは少し照れたように笑った。

「君を助け移動しようとした瞬間。君とのことが色々思い出されてね。気がついたらここに移動していた。あの晩の二人の思い出は、それほど私にとって大切なものだったからね」

 そう言って、アザレアに優しく微笑む。もちろんアザレアにとってもあの晩のことは大切な思い出だった。

「ここへまた二人で来ることができて、わたくしも嬉しいですわ」

 そう言って微笑み返すと、カルがまたアザレアに軽くキスをして言った。

「そうか、ありがとう」

 アザレアは不意に万次郎のことを思い出し、話しておかなければならないと思った。

「そう言えば、わたくしカルに話しておかなければいけないことがありますの」

 カルはその言葉に真剣な顔になる。

「いい話だとよいのだが」

 アザレアは苦笑しながら答える。

「今回はそんなに悪い話ではありませんわ。だから安心して聞いてくださいませ。実はわたくし、光属性も使えるようになりましたの」 

 カルは一瞬動きを止めたが、頷くと言った。

「うん、なんか、君らしいね」

 アザレアは笑った。

「ありがとうございます」

 満面の笑みでお礼を言う。そして万次郎に会ったときの話を掻い摘んで話した。流石に世界はプログラムされたものだとか、アザレアが万次郎と同じ存在になるかもとか、そう言った内容は話せなかった。

 ただ、アザレアがいずれ全ての属性魔法を使えるようになるかもしれないこと、あとミツカッチャ神はミツカッチャ神ではなく、万次郎という名前なのだということだけはしっかり伝えた。

「まんじろう神? 変わった名だが、神ご自身がそうおっしゃるなら、そうなのだろう」

 アザレアは、まさかアザレアが前世で飼っていた犬の名前なのだとは口が裂けても言えなかった。そして、カルに取られてしまったフラワーホルダーを指差した。

「あとそのお花、品種改良して変異したもので種を残すか迷っていたのですが、万次郎さんから増やしても大丈夫とお墨付きをいただいたので、お花だけでも返していただけると嬉しいですわ」

 そう言うと、カルは頷いて言った。

「そう言う事ならこちらにまかせて欲しい」

 アザレアは素直にお願いすることにした。

「はい、ではおまかせします」

 カルは少し考えてアザレアに言った。

「ところでアズが全ての属性を使えるとなると、今後君に王位継承の話も出てくるかも知れないね」

 そう言ってアザレアを見つめた。アザレアは顔の前で手を降る。

「絶対にだめです、無理ですわ!!」

 カルは声を出して笑った。

「私は一向に構わない。君が王でも私が王でも共に歩むことに変わりはないからね」

 アザレアは少し恥ずかしくなり、小声で答えた。

「その通りです。確かにどちらでも変わりありませんわね……わたくしたち、ずっと、その、一緒ですもの……」

 カルはアザレアをぎゅっと抱き締めた。

「君は本当に愛らしい」

 そう言うと、またアザレアに口づけ、口内を貪った。そして、ゆっくり唇を離しアザレアを熱をもった瞳でしばらく見つめる。

「愛してる。もう少し君の存在を感じたい」

 そう言ってしばらく抱き締めた。そうしてから体を離すとアザレアを見つめ、アザレアの額に自身の額をこつんとつけると言った。

「さて、いつまででもこうしていたいが、もうそろそろ戻らなければ皆が心配するだろう」

 そう言って、アザレアを横抱きにして立ち上がった。

「さぁ、大聖女様の凱旋だ」

 そう言って、王宮まで移動した。





 王宮に戻ると、上を下への大騒ぎとなっていた。

「アジャレ~!」

 リアトリスが、アザレアに飛びつく。アザレアは今回だけはそれを甘んじて受け入れた。

 その後アザレアは国王陛下より直々に救国のお礼の言葉を賜った。陛下はカルに向かって言った。

「一時期どうしたものかとお前を心配したが、大義を成し遂げ、守るべきものを守り、いつの間にか立派に王の資質を備えていた。私は安心した。それもこれもアザレア」

 そう言うと、アザレアの方を向いて微笑む。

「そなたのお陰だと思っている。よくぞ私のバカ息子をここまで支えてくれた。そして奈落を塞いだことは、誠に大義であった。改めて礼を言う。アザレア、ありがとう」


 その後は晩餐会が開かれ、その中で今後正式に、聖女お披露目を兼ねた凱旋パレードを行うという話が上がった。大変なことになったと思いながらも、平和な日常を噛み締めていた。

 結界の外は奈落が塞がれたとはいえ、まだまだ飛散粒子の影響が強いため、急ピッチでアザレアの作った粒子無効魔石を散布する作業が行われた。今後は国交が自由にできるようになるため、もっと国が発展し、より豊かになるだろう。

 アザレアがいずれ重力属性を操ることができるようになれば、人口ダイヤの製造も可能になるかもしれない。

 アザレアは、これからもやらなければならないことが山積みだった。だが、どれもやりがいのあることばかりで、アザレアはやる気にあふれ、希望にみちていた。



 万次郎には感謝しかない。あの時、あの瞬間に記憶を思い出さなければ、こんなに素晴らしい日常は過ごせなかっただろう。そしてカルやフランツ、コリン、リアトリスやノクサ、言い出せばきりがないぐらいの、たくさんの人々に助けてもらえた。彼らの影のサポート無しで奈落を塞ぐことは不可能であったと思う。

 彼らに感謝しつつ、今日もアザレアは精一杯生きるのだった。


 後日……、カルが珍しく外へ行こうと誘ってきた。最近は忙しくしていて、どこへも出掛けていなかったので、外へ出られるのは正直嬉しいことだった。

 カルに抱えられ、馬で森の中を進む。

「何処へ行きますの?」

 アザレアが質問すると、カルは微笑む。

「前に一緒にピクニックに行った丘だよ」

 と言った。今日は快晴でピクニックにはうってつけだった。しばらく馬を走らせていると、ブルーの草原が見えた。近づいてゆくに連れそれがスターチスの群生だとわかった。

「カル、もしかしてあれは……」

 と言うと、カルは頷く。

「ことのほか、増やすのに時間がかかってしまってね。やっと君に見せることができる」

 と微笑んだ。森から抜けるとそこは丘一面にスターチスの花が広がっていた。遠くに続く丘のすべてが紫とブルーのグラデーションスターチスで染まっている。アザレアは思わず感嘆の声を漏らした。

 丘の上まで来るとカルは、アザレアを馬から降ろし、アザレアの頬に触れるとアザレアの前に跪いた。

「アザレア公爵令嬢、私とこの先一生人生を共に歩んでいただけますか?」

 そう言うと、内ポケットからリングケースを取り出し、中に入っているダイヤの指輪をアザレアに見せた。そして言った。

「私と結婚してください」

 アザレアは震える手でそのリングケースを受け取る。

「はい、こちらこそ宜しくお願いいたします」

 そう答えると、カルは立ち上がりアザレアを抱き締め

「ありがとう、愛してる」

 と言って深くキスをした。

「婚約辞退を言われたあの日、今日こんな日がくるなんて、想像もできなかった。どこまでも駄目な僕をそれでも見捨てなかった君が、本当に愛おしくて、初めて自分を犠牲にしてでも守りたいと思えた。君が僕を成長させてくれた。君以外は誰もいらない。君しかいない」

 と、強くアザレアを抱き締める。

「何度でも言おう、愛してる」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...