1 / 46
1
しおりを挟む
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は今日の舞踏会を心待ちにしていた。
シルヴァン・リュカ・フォートレル・アヴニール王太子殿下の婚約者として選ばれるだろうと予感していたからだ。
そうして期待に胸を弾ませながら弟のエクトルにエスコートされ会場に着くと、他の貴族たちと軽く挨拶を交わし、舞踏会を楽しんだ。
何人かからダンスを申し込まれ、それを軽く受け流していると、予想通りシルヴァンに声をかけられた。
「アレクサンドラ、少し話がある」
アレクサンドラは舞い上がり、心を躍らせながらシルヴァンの後ろについてバルコニーへ出た。シルヴァンはそんなアレクサンドラの方を見向きもせず、そっけなく命令するように言った。
「僕と婚約してほしい。これは僕らの運命だ。違えるつもりはないから従ってくれ」
理想とは程遠いプロポーズだったが、それでも、やっと王太子殿下の婚約者の座を手にできるとアレクサンドラは喜んだ。
その気持ちをシルヴァンに伝えようと口を開いたとたん、シルヴァンがそれを遮り、鬱陶しそうな顔をする。
「君が断らないことはわかっている。これからのことは大臣たちに任せてあるから、君はそれに従っていればいい」
シルヴァンはそれだけ言うと、アレクサンドラをその場に残して会場へ戻って行った。
こうしてアレクサンドラの王太子殿下の婚約者としての生活が始まったが、それは夢に描いた理想とはほど遠かった。
それは、婚約の契約書に調印したときに一度顔を合わせただけで、その後シルヴァンと半年以上会うことがなかったからだ。
おまけに社交界では、シルヴァンが本当に愛しているのはアリス・ル・シャトリエ侯爵令嬢であり、アレクサンドラとは政治的に仕方なく婚約したという噂が流れた。
その証拠に、アリスとシルヴァンが仲睦まじくしている姿が何度か目撃されたという噂も耳にした。
アレクサンドラはそんな噂に不安な毎日を過ごしていたものの、シルヴァンと婚約しているのは私。大丈夫だと自分に言い聞かせた。
その頃、辺境の町トゥルーシュタットでオディロン協会という労働組織を率いるディという人物が、農民や商人たちを引き込み反乱を起こしたという一報が入る。
貴族たちは自分たちに害をなすのではないかと恐怖し、その鎮圧に躍起になっていった。
そんなとき、アレクサンドラの乗った馬車が賊に囲まれた。
野盗かと思い、金品を差し出すアレクサンドラに対し、彼らはそれを断ると自分たちはオディロン協会の者だと名乗った。
そして暴力的なことはせず、話し合いで問題を解決したいと言い、そのテーブルに国王を引っ張り出すためにも人質になってもらうとアレクサンドラに説明した。
こうしてアレクサンドラは彼らの人質となった。
暗く狭い地下牢に閉じ込められ、アレクサンドラはいつか必ずシルヴァンが迎えに来てくれることを祈りながら、その時を待った。
日の差さない真っ暗な地下牢で、朝か夜かもわからなくなるぐらいそうして過ごしていたとき、遠くで話している反乱軍たちの会話が耳に入った。
「ディ、いつこっちに? どうやってここが?!」
「そんなことはどうでもいい! 貴族令嬢を誘拐したというのは本当か?」
「あぁ、しかもシルヴァンの婚約者だ」
「なんてことを……。だがやってしまったことは仕方ない。対策を考えなければ。それで、王宮はなんと?」
「それがなぁ、勝手にしろってよ。王宮はあの令嬢を見捨てたってことだな」
その言葉にアレクサンドラはショックを受け、打ちひしがれた。シルヴァンはアレクサンドラを見捨てたのだ。
それでも、シルヴァンにはなにか意図があるのかもしれないと期待し、二人の会話の続きに耳をそばだてた。
「なんだって?! 王宮は今、私と交渉中なのに、そんなことを言うなんて思えないが。だが、そういうことなら、その令嬢はもう用済みだ。逃がしてやれ」
「なに言ってんだよ、ディ! 生かしておいたら俺らの立場が危いぜ」
「いいか、よく聞けカジム。まだ今のところは貴族たちもビビってるだけで、本格的に我々を排除しようという動きはない。だが、貴族令嬢を殺したとなったら話は別だ。貴族に害をなすものとして、本格的に討伐に乗り出しかねないんだぞ?!」
「だけどよぉ、ここまで来たら生かしちゃおけないだろう?」
「バカな、今の我々では貴族たちに太刀打ちできない。いいか、とにかくその令嬢を屋敷の前にでも放り出しておけ」
そう言い残すと、ディはその場を去って行ったようだった。
アレクサンドラはとにかく自分が解放されることに喜び、安堵していた。
生きてさえいれば、シルヴァンに捨てられたことなどなんということはないではないかと、そう思った。
ところが直後に地下牢の前までやってきたカジムは、牢屋の中に入り込むと扉を閉め、アレクサンドラを見下ろしてこう言った。
「まさかディのやつがお前を逃がせって言うなんてな、計算違いだったぜ。ああ言えば、お前を消せって言うと思ったんだがなぁ」
「でも、あのディって人物は私を逃がすことに決めたんですから、早く私を解放しなさい!」
「残念だが、俺の本当の雇い主はディじゃねえ。俺の本当の雇い主はお前を邪魔に思ってるみたいでなぁ。悪いが死んでもらう」
アレクサンドラは恐怖し、目を見開いてカジムを見つめた。そんなアレクサンドラに対し、やらしい笑みを向けると、カジムはゆっくりこちらに手を伸ばす。
「さて、殺す前に少しお楽しみのお時間だ。これも依頼主の希望でな、なんだか知らんが屈辱的な目に合わせてから殺せと」
アレクサンドラはカジムの手を振り払うと、カジムを睨みながら言った。
「私を殺せばどうなるかわかっているの?!」
「あぁ、もちろんさ。だが、俺にはディや王宮がどうなろうが知ったこっちゃないんでね。この組織を潰すのも目的に含まれているからな」
そう答えると、アレクサンドラのドレスをつかみ引き裂いた。アレクサンドラは悲鳴を上げ、牢屋の角に逃げ、恐怖で身体を震わせる。
カジムはその様子を楽しそうに見つめ、舌なめずりすると思い出したように言った。
「そうそう、あと依頼者から一つお前さんに伝言だ。一言一句違えずに伝えるからよ~く聞けよ。『私は運命の女性に出会った、お前はもう用済みだ』だとさ」
それを聞いてアレクサンドラは、自分の殺害を依頼した人物がシルヴァンだと確信した。
その瞬間、アレクサンドラは鮮明に前世の記憶を思い出す。
そして、この世界が前世で最後に読んだ小説の世界だと気づき、シルヴァンと婚約するのは自分ではなくアリスだったことを思い出す。
そもそも、自分とシルヴァンが婚約したという運命が間違っていたのだ。
だが、今さらそれに気づいても仕方がない。
いやらしい笑みを浮かべながら、カジムは楽しむようにアレクサンドラにじり寄る。
もう逃げられない。
そう思った瞬間、着けていた腕輪が光り輝き、辺りを包むとアレクサンドラは意識を失った
シルヴァン・リュカ・フォートレル・アヴニール王太子殿下の婚約者として選ばれるだろうと予感していたからだ。
そうして期待に胸を弾ませながら弟のエクトルにエスコートされ会場に着くと、他の貴族たちと軽く挨拶を交わし、舞踏会を楽しんだ。
何人かからダンスを申し込まれ、それを軽く受け流していると、予想通りシルヴァンに声をかけられた。
「アレクサンドラ、少し話がある」
アレクサンドラは舞い上がり、心を躍らせながらシルヴァンの後ろについてバルコニーへ出た。シルヴァンはそんなアレクサンドラの方を見向きもせず、そっけなく命令するように言った。
「僕と婚約してほしい。これは僕らの運命だ。違えるつもりはないから従ってくれ」
理想とは程遠いプロポーズだったが、それでも、やっと王太子殿下の婚約者の座を手にできるとアレクサンドラは喜んだ。
その気持ちをシルヴァンに伝えようと口を開いたとたん、シルヴァンがそれを遮り、鬱陶しそうな顔をする。
「君が断らないことはわかっている。これからのことは大臣たちに任せてあるから、君はそれに従っていればいい」
シルヴァンはそれだけ言うと、アレクサンドラをその場に残して会場へ戻って行った。
こうしてアレクサンドラの王太子殿下の婚約者としての生活が始まったが、それは夢に描いた理想とはほど遠かった。
それは、婚約の契約書に調印したときに一度顔を合わせただけで、その後シルヴァンと半年以上会うことがなかったからだ。
おまけに社交界では、シルヴァンが本当に愛しているのはアリス・ル・シャトリエ侯爵令嬢であり、アレクサンドラとは政治的に仕方なく婚約したという噂が流れた。
その証拠に、アリスとシルヴァンが仲睦まじくしている姿が何度か目撃されたという噂も耳にした。
アレクサンドラはそんな噂に不安な毎日を過ごしていたものの、シルヴァンと婚約しているのは私。大丈夫だと自分に言い聞かせた。
その頃、辺境の町トゥルーシュタットでオディロン協会という労働組織を率いるディという人物が、農民や商人たちを引き込み反乱を起こしたという一報が入る。
貴族たちは自分たちに害をなすのではないかと恐怖し、その鎮圧に躍起になっていった。
そんなとき、アレクサンドラの乗った馬車が賊に囲まれた。
野盗かと思い、金品を差し出すアレクサンドラに対し、彼らはそれを断ると自分たちはオディロン協会の者だと名乗った。
そして暴力的なことはせず、話し合いで問題を解決したいと言い、そのテーブルに国王を引っ張り出すためにも人質になってもらうとアレクサンドラに説明した。
こうしてアレクサンドラは彼らの人質となった。
暗く狭い地下牢に閉じ込められ、アレクサンドラはいつか必ずシルヴァンが迎えに来てくれることを祈りながら、その時を待った。
日の差さない真っ暗な地下牢で、朝か夜かもわからなくなるぐらいそうして過ごしていたとき、遠くで話している反乱軍たちの会話が耳に入った。
「ディ、いつこっちに? どうやってここが?!」
「そんなことはどうでもいい! 貴族令嬢を誘拐したというのは本当か?」
「あぁ、しかもシルヴァンの婚約者だ」
「なんてことを……。だがやってしまったことは仕方ない。対策を考えなければ。それで、王宮はなんと?」
「それがなぁ、勝手にしろってよ。王宮はあの令嬢を見捨てたってことだな」
その言葉にアレクサンドラはショックを受け、打ちひしがれた。シルヴァンはアレクサンドラを見捨てたのだ。
それでも、シルヴァンにはなにか意図があるのかもしれないと期待し、二人の会話の続きに耳をそばだてた。
「なんだって?! 王宮は今、私と交渉中なのに、そんなことを言うなんて思えないが。だが、そういうことなら、その令嬢はもう用済みだ。逃がしてやれ」
「なに言ってんだよ、ディ! 生かしておいたら俺らの立場が危いぜ」
「いいか、よく聞けカジム。まだ今のところは貴族たちもビビってるだけで、本格的に我々を排除しようという動きはない。だが、貴族令嬢を殺したとなったら話は別だ。貴族に害をなすものとして、本格的に討伐に乗り出しかねないんだぞ?!」
「だけどよぉ、ここまで来たら生かしちゃおけないだろう?」
「バカな、今の我々では貴族たちに太刀打ちできない。いいか、とにかくその令嬢を屋敷の前にでも放り出しておけ」
そう言い残すと、ディはその場を去って行ったようだった。
アレクサンドラはとにかく自分が解放されることに喜び、安堵していた。
生きてさえいれば、シルヴァンに捨てられたことなどなんということはないではないかと、そう思った。
ところが直後に地下牢の前までやってきたカジムは、牢屋の中に入り込むと扉を閉め、アレクサンドラを見下ろしてこう言った。
「まさかディのやつがお前を逃がせって言うなんてな、計算違いだったぜ。ああ言えば、お前を消せって言うと思ったんだがなぁ」
「でも、あのディって人物は私を逃がすことに決めたんですから、早く私を解放しなさい!」
「残念だが、俺の本当の雇い主はディじゃねえ。俺の本当の雇い主はお前を邪魔に思ってるみたいでなぁ。悪いが死んでもらう」
アレクサンドラは恐怖し、目を見開いてカジムを見つめた。そんなアレクサンドラに対し、やらしい笑みを向けると、カジムはゆっくりこちらに手を伸ばす。
「さて、殺す前に少しお楽しみのお時間だ。これも依頼主の希望でな、なんだか知らんが屈辱的な目に合わせてから殺せと」
アレクサンドラはカジムの手を振り払うと、カジムを睨みながら言った。
「私を殺せばどうなるかわかっているの?!」
「あぁ、もちろんさ。だが、俺にはディや王宮がどうなろうが知ったこっちゃないんでね。この組織を潰すのも目的に含まれているからな」
そう答えると、アレクサンドラのドレスをつかみ引き裂いた。アレクサンドラは悲鳴を上げ、牢屋の角に逃げ、恐怖で身体を震わせる。
カジムはその様子を楽しそうに見つめ、舌なめずりすると思い出したように言った。
「そうそう、あと依頼者から一つお前さんに伝言だ。一言一句違えずに伝えるからよ~く聞けよ。『私は運命の女性に出会った、お前はもう用済みだ』だとさ」
それを聞いてアレクサンドラは、自分の殺害を依頼した人物がシルヴァンだと確信した。
その瞬間、アレクサンドラは鮮明に前世の記憶を思い出す。
そして、この世界が前世で最後に読んだ小説の世界だと気づき、シルヴァンと婚約するのは自分ではなくアリスだったことを思い出す。
そもそも、自分とシルヴァンが婚約したという運命が間違っていたのだ。
だが、今さらそれに気づいても仕方がない。
いやらしい笑みを浮かべながら、カジムは楽しむようにアレクサンドラにじり寄る。
もう逃げられない。
そう思った瞬間、着けていた腕輪が光り輝き、辺りを包むとアレクサンドラは意識を失った
320
あなたにおすすめの小説
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました
Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。
「彼から恋文をもらっていますの」。
二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに?
真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。
そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
クズ男と決別した私の未来は輝いている。
カシスサワー
恋愛
五年間、幸は彼を信じ、支え続けてきた。
「会社が成功したら、祖父に紹介するつもりだ。それまで俺を支えて待っていてほしい。必ず幸と結婚するから」
そう、圭吾は約束した。
けれど――すべてが順調に進んでいるはずの今、幸が目にしたのは、圭吾の婚約の報せ。
問い詰めた幸に、圭吾は冷たく言い放つ。
「結婚相手は、それなりの家柄じゃないと祖父が納得しない。だから幸とは結婚できない。でも……愛人としてなら、そばに置いてやってもいい」
その瞬間、幸の中で、なにかがプチッと切れた。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる