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「ロザリー?!」
「お嬢様、おはようございます。今日は早く支度をしなければならないから、早めに起こして欲しいとのことでしたが、まだ少しお休みになられます?」
そう言われ、アレクサンドラは驚いて部屋の中を見渡して言った。
「誰が私を救い出してくれたの?」
「はい? 救い出す……とは?」
本気で驚いている様子のロザリーを見て、アレクサンドラは今までのことは夢だったのかもしれないと一瞬考えたが、それにしては今まで経験したことは現実のように鮮明すぎた。
夢なんかじゃない。
そう思いながら部屋を見渡すと、シルヴァンから婚約を申し込まれたあの舞踏会で身につけたドレスや装飾品などが並べられているのが目に入った。
「ロザリー、変なことを聞くけれど今日は何日?」
「お嬢様、本当にどうしてしまわれたのですか? あれだけ今日の舞踏会を楽しみにしていたではありませんか」
そう答えると、まじまじとアレクサンドラの顔を見つめる。
「そういえば、なんだかとてもやつれていらっしゃるし体調が悪そうに見えます。今日は大切な日ですから、なにかあってはいけません。今すぐに薬湯をお持ちしますね!」
笑顔でそう言うと、慌てて部屋を出ていった。
その後ろ姿を見つめながら、どうやってあの舞踏会当日に戻ってくることができたのだろうと不思議に思ったが、今はそんなことを考えている場合ではないと気づく。
あの舞踏会の日にもどれたのなら、運命をやり直すことができるはずだからだ。
シルヴァンに邪魔に思われた理由は、アレクサンドラが邪魔だったからである。
本来小説の中では、この舞踏会でシルヴァンとアリスが出会い互いに恋に落ちる展開になっていた。
そう、すべてはシルヴァンがアリスと出会う前に、アレクサンドラと婚約してしまったことが問題だったのだ。
シルヴァンに対しての気持ちはとうに冷めている。なので今日、殿下に婚約を申し込まれる前に婚約者候補から外してもらうようにお願いすることにした。
代わりの令嬢はいくらでもいる。婚約者候補から自分を外すように言ったところで、シルヴァンは何とも思わないに違いない。
ただ、また最初から婚約者を探すことを面倒に思うかもしれない。それも小説のヒロインであるアリスと出会うまでの話だろうが。
そこで思う。今後はシルヴァンに気に入られるように立ち振る舞う必要がないのだと。
そう考えると一気に肩の力が抜けるのが分かった。
いままで、王太子殿下の婚約者となるため努力を重ね肩肘を張って生きてきた。
シルヴァンの婚約者の座を射止めるために他の令嬢たちと張り合い、互いを貶めるような行動も取ってきた。
だが、それも昨日までの話。
もともとそういったことに興味がなく、シルヴァンの婚約者になるためだけに無理をしてきたアレクサンドラにとって、誰とも張り合わず自然体でいられることはもっとも嬉しいことだった。
ベッドから降り、薬湯を持ってきたロザリーからそれを受け取り少し口にすると、一息ついて満面の笑みで言った。
「今日着ていくドレスだけど、変更することにするわ。去年グラニエ伯爵夫人に招待された夜会で来たドレス、まだ払い下げてないわよね?」
「はい、ですがあのドレスは……。まさか、あのドレスを今日お召しになるわけではありませんよね?」
「そのまさかよ、ロザリー。今日の舞踏会はあのドレスが最適よ」
それを聞いたロザリーは不安そうな顔でアレクサンドラを見つめた。
それもそのはずで、シルヴァン以外と結婚するつもりがなかったアレクサンドラは、グラニエ伯爵夫人に夜会に誘われた際、断ることもできず、とても地味で目立たないドレスで参加していた。
よりによってそのドレスを、大切な舞踏会に着ていくと言い出したのだからロザリーが困惑して当然だった。
「お嬢様、ですが今日お召しになる予定のドレスはずいぶん前から用意されていたものですし、装飾品もあのドレスに合わせて作られたものですよね? まさか、装飾品もすべてそのドレスに合わせたものに変更なさるおつもりですか?」
「ロザリーってば、なにを言っているの? 当然よ。それと、やっぱり私は自分が一番気に入っているこの腕輪を着けて行きたいわ」
そう言って、ラブラドライトの腕輪を優しく撫でて見せた。
ラブラドライトは他の宝石に比べ柔らかく傷つきやすいため、貴族の間でもあまり人気のある鉱物ではなく安価で取引されていた。
なので、貴族がラブラドライトをメインとした装飾品を身に付けることはほぼない。
だが、このラブラドライトの腕輪は昔、ルカという少年からプレゼントされたもので、アレクサンドラはとても大切にしていた。
それに普通シラーはブルーに輝くものが多いのだが、この腕輪のラブラドライトはとても美しいピンクからパープルに輝く。それもこの腕輪を気に入っている理由の一つだった。
しかも、この時間に戻るときに腕輪が光ったように見えた。
もしかしたら、この腕輪に守られているのかもしれない。
アレクサンドラはそんな気持ちになっていた。
ロザリーはしぶしぶ昔のドレスを持ってくると、アレクサンドラに差し出す。
「本当にこちらのドレスでよろしいのですか?」
そのドレスは薄いピンク色で派手な装飾が少なく、唯一右肩に大きなダリアの花モチーフが付いているタフスリーブの半袖ドレスだった。
シルヴァンの婚約者の座を射止めるために、他の令嬢をけん制するためだけに派手なドレスを着ていたアレクサンドラにしてみたら、このドレスの方がいいものに見えた。
「素敵なドレスじゃない。これで十分よ。ただ、あからさまに着回ししているのが分かるのはまずいわね」
そう言って、すぐそばにあったレースの楕円形のテーブルクロスを引っ張ると、それをドレスに当てて言った。
「ほら、こうして花モチーフのところから後ろにたらせばいいわ。今すぐにお直しすれば間に合うわよ」
不満そうにしているロザリーに微笑みながら、以前このドレスに合わせて作らせた装飾品も出すよう指示した。
すると、ロザリーは残念そうな顔をしながらクローゼットに向かっていった。
こうして、ピンクトルマリンの可愛らしいイヤリングと揃いのネックレスにラブラドライトの腕輪を着けて舞踏会へ向かうことにした。
「お嬢様、おはようございます。今日は早く支度をしなければならないから、早めに起こして欲しいとのことでしたが、まだ少しお休みになられます?」
そう言われ、アレクサンドラは驚いて部屋の中を見渡して言った。
「誰が私を救い出してくれたの?」
「はい? 救い出す……とは?」
本気で驚いている様子のロザリーを見て、アレクサンドラは今までのことは夢だったのかもしれないと一瞬考えたが、それにしては今まで経験したことは現実のように鮮明すぎた。
夢なんかじゃない。
そう思いながら部屋を見渡すと、シルヴァンから婚約を申し込まれたあの舞踏会で身につけたドレスや装飾品などが並べられているのが目に入った。
「ロザリー、変なことを聞くけれど今日は何日?」
「お嬢様、本当にどうしてしまわれたのですか? あれだけ今日の舞踏会を楽しみにしていたではありませんか」
そう答えると、まじまじとアレクサンドラの顔を見つめる。
「そういえば、なんだかとてもやつれていらっしゃるし体調が悪そうに見えます。今日は大切な日ですから、なにかあってはいけません。今すぐに薬湯をお持ちしますね!」
笑顔でそう言うと、慌てて部屋を出ていった。
その後ろ姿を見つめながら、どうやってあの舞踏会当日に戻ってくることができたのだろうと不思議に思ったが、今はそんなことを考えている場合ではないと気づく。
あの舞踏会の日にもどれたのなら、運命をやり直すことができるはずだからだ。
シルヴァンに邪魔に思われた理由は、アレクサンドラが邪魔だったからである。
本来小説の中では、この舞踏会でシルヴァンとアリスが出会い互いに恋に落ちる展開になっていた。
そう、すべてはシルヴァンがアリスと出会う前に、アレクサンドラと婚約してしまったことが問題だったのだ。
シルヴァンに対しての気持ちはとうに冷めている。なので今日、殿下に婚約を申し込まれる前に婚約者候補から外してもらうようにお願いすることにした。
代わりの令嬢はいくらでもいる。婚約者候補から自分を外すように言ったところで、シルヴァンは何とも思わないに違いない。
ただ、また最初から婚約者を探すことを面倒に思うかもしれない。それも小説のヒロインであるアリスと出会うまでの話だろうが。
そこで思う。今後はシルヴァンに気に入られるように立ち振る舞う必要がないのだと。
そう考えると一気に肩の力が抜けるのが分かった。
いままで、王太子殿下の婚約者となるため努力を重ね肩肘を張って生きてきた。
シルヴァンの婚約者の座を射止めるために他の令嬢たちと張り合い、互いを貶めるような行動も取ってきた。
だが、それも昨日までの話。
もともとそういったことに興味がなく、シルヴァンの婚約者になるためだけに無理をしてきたアレクサンドラにとって、誰とも張り合わず自然体でいられることはもっとも嬉しいことだった。
ベッドから降り、薬湯を持ってきたロザリーからそれを受け取り少し口にすると、一息ついて満面の笑みで言った。
「今日着ていくドレスだけど、変更することにするわ。去年グラニエ伯爵夫人に招待された夜会で来たドレス、まだ払い下げてないわよね?」
「はい、ですがあのドレスは……。まさか、あのドレスを今日お召しになるわけではありませんよね?」
「そのまさかよ、ロザリー。今日の舞踏会はあのドレスが最適よ」
それを聞いたロザリーは不安そうな顔でアレクサンドラを見つめた。
それもそのはずで、シルヴァン以外と結婚するつもりがなかったアレクサンドラは、グラニエ伯爵夫人に夜会に誘われた際、断ることもできず、とても地味で目立たないドレスで参加していた。
よりによってそのドレスを、大切な舞踏会に着ていくと言い出したのだからロザリーが困惑して当然だった。
「お嬢様、ですが今日お召しになる予定のドレスはずいぶん前から用意されていたものですし、装飾品もあのドレスに合わせて作られたものですよね? まさか、装飾品もすべてそのドレスに合わせたものに変更なさるおつもりですか?」
「ロザリーってば、なにを言っているの? 当然よ。それと、やっぱり私は自分が一番気に入っているこの腕輪を着けて行きたいわ」
そう言って、ラブラドライトの腕輪を優しく撫でて見せた。
ラブラドライトは他の宝石に比べ柔らかく傷つきやすいため、貴族の間でもあまり人気のある鉱物ではなく安価で取引されていた。
なので、貴族がラブラドライトをメインとした装飾品を身に付けることはほぼない。
だが、このラブラドライトの腕輪は昔、ルカという少年からプレゼントされたもので、アレクサンドラはとても大切にしていた。
それに普通シラーはブルーに輝くものが多いのだが、この腕輪のラブラドライトはとても美しいピンクからパープルに輝く。それもこの腕輪を気に入っている理由の一つだった。
しかも、この時間に戻るときに腕輪が光ったように見えた。
もしかしたら、この腕輪に守られているのかもしれない。
アレクサンドラはそんな気持ちになっていた。
ロザリーはしぶしぶ昔のドレスを持ってくると、アレクサンドラに差し出す。
「本当にこちらのドレスでよろしいのですか?」
そのドレスは薄いピンク色で派手な装飾が少なく、唯一右肩に大きなダリアの花モチーフが付いているタフスリーブの半袖ドレスだった。
シルヴァンの婚約者の座を射止めるために、他の令嬢をけん制するためだけに派手なドレスを着ていたアレクサンドラにしてみたら、このドレスの方がいいものに見えた。
「素敵なドレスじゃない。これで十分よ。ただ、あからさまに着回ししているのが分かるのはまずいわね」
そう言って、すぐそばにあったレースの楕円形のテーブルクロスを引っ張ると、それをドレスに当てて言った。
「ほら、こうして花モチーフのところから後ろにたらせばいいわ。今すぐにお直しすれば間に合うわよ」
不満そうにしているロザリーに微笑みながら、以前このドレスに合わせて作らせた装飾品も出すよう指示した。
すると、ロザリーは残念そうな顔をしながらクローゼットに向かっていった。
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