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「今日は私本当に楽しみにしていたんですのよ」
アリスはそう言って全員の顔を見回し、最後にアレクサンドラをじっと見つめ嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、シャトリエ侯爵令嬢。そう言ってもらえて嬉しい限りですわ。さぁ、どうぞソファにお座りになって」
すると、アリスは恥ずかしそうにシルヴァンの隣に座った。
いい感じかもしれないと思いながら、アレクサンドラがアリスの対面に座るとダヴィドはその隣に座る。
それを確認したところで、セバスチャンにお茶を運んでくるよう目配せし口を開いた。
「今日は、モイズ村に遊びに来たシャトリエ侯爵令嬢のために、モイズ村原産の特別な最高級茶葉を用意しましたの。飲んだことがあるかたもいらっしゃるとは思いますけれど、楽しんでいただければと思いますわ」
言い終わったところで、タイミングよくお茶が運ばれてきた。そして、次々にテーブルの上にお菓子が並べられていく。
セバスチャンがお茶を淹れそれが配られると、ティーカップをソーサーごと受け取り、アレクサンドラはまずは懐かしいそのお茶の香りを楽しんだ。
幼いころモイズ村で生活していたことを思い出し、感慨に浸っていると、お茶に口をつけたアリスが素早く口元からティーカップを離した。
「つっ!」
「大丈夫ですの?! 少し熱かったかしら、ごめんなさい」
アレクサンドラは急いでアリスのお茶をもう少しぬるいものに替えるよう指示を出した。
アリスは少し涙目になりながら、慌ててアレクサンドラを制した。
「ごめんなさい、私がいけなかったんですわ。それに、もう少しすればこのお茶もぬるくなると思いますし」
そう言うと、シルヴァンの方を向いてペロッと少しだけ舌を出して、目に涙を浮かべたまま上目遣いで言った。
「礼儀知らずで申し訳ありません。私少し抜けているんですわ」
そう言うアリスを横目に、アレクサンドラはティーカップを口元に運びゆっくりとお茶を味わう。
こんなに可愛らしいアリスを見れば誰しもドキリとするに違いないだろう。そう思いながら、シルヴァンの様子を盗み見た。
シルヴァンはアリスに微笑み返す。
「そのようだな。次から気をつけるがいい」
アレクサンドラはそれを聞いて口に含んでいたお茶を誤飲してむせた。
「レックス、大丈夫か?」
そう言ってダヴィドがアレクサンドラの背中を優しくさすってくれた。
だが咳が止まらず、返事もできずに激しく咳き込んだ。すると、目の前にハンカチを差し出され、それを受け取ると恥ずかしさのあまり顔を覆ってなんとか呼吸を整えた。
やっと咳が止まり、涙を拭いながら言った。
「殿下、シャトリエ侯爵令嬢申し訳ありませんでした。それにダヴィ、ありがとう。このハンカチ洗ってか……」
そう言ってハンカチを見つめると、そこに刺繍でアヴニール国の紋章が入っているのに気づく。
ひぃ!!
アレクサンドラは、既のところでその悲鳴を声に出さずに飲み込むと、シルヴァンを恐る恐る見た。
すると、シルヴァンは心配そうにアレクサンドラを見つめていた。
「大丈夫か?」
「で、殿下、大切なハンカチを汚してしまって申し訳ありません!」
アレクサンドラは慌てて頭を下げる。そんなアレクサンドラを安心させるようにシルヴァンは微笑んだ。
「ハンカチのことなど気にしなくていい。君の役に立ててよかった」
「いいえ、あの、洗ってお返ししますから!」
その様子を見ていたアリスがくすくすと笑うと言った。
「みなさん、本当に仲がよろしいのですね。特にデュカス公爵令嬢とダヴィドさんはあだ名で呼び合うぐらいの仲よしなのですね、驚きましたわ。昔からのお知り合いなのですか?」
アレクサンドラは思わずダヴィドと見つめ合うと苦笑しながら答える。
「ダヴィとは幼馴染なんですの」
するとアリスは瞳をキラキラと輝かせた。
「そうなんですか?! 私にはそういったかたがいませんから、本当に羨ましいですわ。しかも、こんな素敵なかたと幼馴染だなんて」
そう言ってダヴィドを見つめた。ダヴィドは照れながら答える。
「いえ、俺たちは腐れ縁みたいなもので、そんなにいいものじゃないですよ」
それに対しアレクサンドラが反応する。
「なによ、ダヴィ。その嫌そうな言い方」
アリスはそれを聞いてもう一度くすくすと笑った。
「なんでも言い合えるのですね。デュカス公爵令嬢にそういった相手がいらっしゃるなんて、本当に羨ましいですわ。殿下もそう思いませんか?」
そう言うと、シルヴァンは無表情で答える。
「確かに、二人はまるで兄妹のようだ。いや、仲間と言ったところか? そういう仲間を持てるのは私も素晴らしいことだと思う」
そう言ってシルヴァンはダヴィドを射抜くように見つめるとにっこり微笑み、ダヴィドに尋ねる。
「ダヴィド、君もそう思うだろう?」
ダヴィドは慌てて首を縦にぶんぶんと振った。
それを受けてアレクサンドラは言った。
「そうですわね、確かにダヴィと私は兄妹のような間柄ですわ」
するとシルヴァンは満足そうに頷く。
「そうだろうな、君たちはただの仲間で艶っぽい関係ではないな」
アリスがそれを受けて少し頬を膨らませた。
「そうだとしても、兄妹のいない私からしたらうらやましいかぎりですわ。兄妹、とまでいかなくとも、そんな素敵なかたがそばにいてくださったらいいですのに、とは思いますもの」
そう言うと、シルヴァンに問いかける。
「そうですわよね? 殿下」
シルヴァンはすまし顔で答える。
「さぁ、どうだろう」
アレクサンドラはそのやり取りを見ていて少しじれったく感じ、アリスを後押ししようと思った。
「シャトリエ侯爵令嬢、きっとあなたの運命の相手はすぐ側にいらっしゃるはずですわ。私なんかを羨ましがる必要なんてないかもしれませんわよ?」
そう言ってちらりとシルヴァンを見てからアリスに視線を戻すと、アリスは瞳を輝かせてシルヴァンを見つめ、頬を桃色に染めて遠慮がちに口を開く。
「あの、デュカス公爵令嬢はこう言ってくださってますけれど、殿下はどうお考えでしょうか? 実は私自身も、今までに感じたことのない運命を感じてますの」
これはいい雰囲気かもしれない。そう思ったアレクサンドラは、ダヴィドの腕をつかむと言った。
「殿下、それにシャトリエ侯爵令嬢。このあとの催し物の準備があるのを私忘れてましたわ。ダヴィドと少しここを離れますけれど、ご容赦くださいませ」
そう言って立ち上がると、ダヴィドの腕を引っ張り素早く部屋を出た。そして、廊下でダヴィドに微笑むと小声で言った。
「うまくいきそうね、あの二人」
ダヴィドは少し不安そうな顔で答える。
「いや、どうだろう」
「なによ。あっ! もしかしてダヴィ、シャトリエ侯爵令嬢のことを気に入ったとか?」
アリスはそう言って全員の顔を見回し、最後にアレクサンドラをじっと見つめ嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、シャトリエ侯爵令嬢。そう言ってもらえて嬉しい限りですわ。さぁ、どうぞソファにお座りになって」
すると、アリスは恥ずかしそうにシルヴァンの隣に座った。
いい感じかもしれないと思いながら、アレクサンドラがアリスの対面に座るとダヴィドはその隣に座る。
それを確認したところで、セバスチャンにお茶を運んでくるよう目配せし口を開いた。
「今日は、モイズ村に遊びに来たシャトリエ侯爵令嬢のために、モイズ村原産の特別な最高級茶葉を用意しましたの。飲んだことがあるかたもいらっしゃるとは思いますけれど、楽しんでいただければと思いますわ」
言い終わったところで、タイミングよくお茶が運ばれてきた。そして、次々にテーブルの上にお菓子が並べられていく。
セバスチャンがお茶を淹れそれが配られると、ティーカップをソーサーごと受け取り、アレクサンドラはまずは懐かしいそのお茶の香りを楽しんだ。
幼いころモイズ村で生活していたことを思い出し、感慨に浸っていると、お茶に口をつけたアリスが素早く口元からティーカップを離した。
「つっ!」
「大丈夫ですの?! 少し熱かったかしら、ごめんなさい」
アレクサンドラは急いでアリスのお茶をもう少しぬるいものに替えるよう指示を出した。
アリスは少し涙目になりながら、慌ててアレクサンドラを制した。
「ごめんなさい、私がいけなかったんですわ。それに、もう少しすればこのお茶もぬるくなると思いますし」
そう言うと、シルヴァンの方を向いてペロッと少しだけ舌を出して、目に涙を浮かべたまま上目遣いで言った。
「礼儀知らずで申し訳ありません。私少し抜けているんですわ」
そう言うアリスを横目に、アレクサンドラはティーカップを口元に運びゆっくりとお茶を味わう。
こんなに可愛らしいアリスを見れば誰しもドキリとするに違いないだろう。そう思いながら、シルヴァンの様子を盗み見た。
シルヴァンはアリスに微笑み返す。
「そのようだな。次から気をつけるがいい」
アレクサンドラはそれを聞いて口に含んでいたお茶を誤飲してむせた。
「レックス、大丈夫か?」
そう言ってダヴィドがアレクサンドラの背中を優しくさすってくれた。
だが咳が止まらず、返事もできずに激しく咳き込んだ。すると、目の前にハンカチを差し出され、それを受け取ると恥ずかしさのあまり顔を覆ってなんとか呼吸を整えた。
やっと咳が止まり、涙を拭いながら言った。
「殿下、シャトリエ侯爵令嬢申し訳ありませんでした。それにダヴィ、ありがとう。このハンカチ洗ってか……」
そう言ってハンカチを見つめると、そこに刺繍でアヴニール国の紋章が入っているのに気づく。
ひぃ!!
アレクサンドラは、既のところでその悲鳴を声に出さずに飲み込むと、シルヴァンを恐る恐る見た。
すると、シルヴァンは心配そうにアレクサンドラを見つめていた。
「大丈夫か?」
「で、殿下、大切なハンカチを汚してしまって申し訳ありません!」
アレクサンドラは慌てて頭を下げる。そんなアレクサンドラを安心させるようにシルヴァンは微笑んだ。
「ハンカチのことなど気にしなくていい。君の役に立ててよかった」
「いいえ、あの、洗ってお返ししますから!」
その様子を見ていたアリスがくすくすと笑うと言った。
「みなさん、本当に仲がよろしいのですね。特にデュカス公爵令嬢とダヴィドさんはあだ名で呼び合うぐらいの仲よしなのですね、驚きましたわ。昔からのお知り合いなのですか?」
アレクサンドラは思わずダヴィドと見つめ合うと苦笑しながら答える。
「ダヴィとは幼馴染なんですの」
するとアリスは瞳をキラキラと輝かせた。
「そうなんですか?! 私にはそういったかたがいませんから、本当に羨ましいですわ。しかも、こんな素敵なかたと幼馴染だなんて」
そう言ってダヴィドを見つめた。ダヴィドは照れながら答える。
「いえ、俺たちは腐れ縁みたいなもので、そんなにいいものじゃないですよ」
それに対しアレクサンドラが反応する。
「なによ、ダヴィ。その嫌そうな言い方」
アリスはそれを聞いてもう一度くすくすと笑った。
「なんでも言い合えるのですね。デュカス公爵令嬢にそういった相手がいらっしゃるなんて、本当に羨ましいですわ。殿下もそう思いませんか?」
そう言うと、シルヴァンは無表情で答える。
「確かに、二人はまるで兄妹のようだ。いや、仲間と言ったところか? そういう仲間を持てるのは私も素晴らしいことだと思う」
そう言ってシルヴァンはダヴィドを射抜くように見つめるとにっこり微笑み、ダヴィドに尋ねる。
「ダヴィド、君もそう思うだろう?」
ダヴィドは慌てて首を縦にぶんぶんと振った。
それを受けてアレクサンドラは言った。
「そうですわね、確かにダヴィと私は兄妹のような間柄ですわ」
するとシルヴァンは満足そうに頷く。
「そうだろうな、君たちはただの仲間で艶っぽい関係ではないな」
アリスがそれを受けて少し頬を膨らませた。
「そうだとしても、兄妹のいない私からしたらうらやましいかぎりですわ。兄妹、とまでいかなくとも、そんな素敵なかたがそばにいてくださったらいいですのに、とは思いますもの」
そう言うと、シルヴァンに問いかける。
「そうですわよね? 殿下」
シルヴァンはすまし顔で答える。
「さぁ、どうだろう」
アレクサンドラはそのやり取りを見ていて少しじれったく感じ、アリスを後押ししようと思った。
「シャトリエ侯爵令嬢、きっとあなたの運命の相手はすぐ側にいらっしゃるはずですわ。私なんかを羨ましがる必要なんてないかもしれませんわよ?」
そう言ってちらりとシルヴァンを見てからアリスに視線を戻すと、アリスは瞳を輝かせてシルヴァンを見つめ、頬を桃色に染めて遠慮がちに口を開く。
「あの、デュカス公爵令嬢はこう言ってくださってますけれど、殿下はどうお考えでしょうか? 実は私自身も、今までに感じたことのない運命を感じてますの」
これはいい雰囲気かもしれない。そう思ったアレクサンドラは、ダヴィドの腕をつかむと言った。
「殿下、それにシャトリエ侯爵令嬢。このあとの催し物の準備があるのを私忘れてましたわ。ダヴィドと少しここを離れますけれど、ご容赦くださいませ」
そう言って立ち上がると、ダヴィドの腕を引っ張り素早く部屋を出た。そして、廊下でダヴィドに微笑むと小声で言った。
「うまくいきそうね、あの二人」
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