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そのとき、洞窟の奥に甲高い声が響いた。
「こんなところにいらしたのですね!」
ランプの光が差し込み、眩しさに目を細めながらその人物を見たアレクサンドラは、慌ててシルヴァンから離れた。
「アレクサンドラ様、よかったですわ。私たちはぐれてしまって途方にくれていたところですの。これで洞窟から出られますわね」
そう言ってアリスは、シルヴァンに同意を求めるように見つめた。
シルヴァンはアレクサンドラの顔をしばらく見つめると、諦めたようにため息をついて立ち上がる。
「そうか、僕はどうにかなると思っていたが」
そうしてアレクサンドラに手を差し伸べて立たせると、アリスの方へ向き直った。
「それにしても、随分と見つけるのが早かったようだが?」
「もちろんですわ。私たち、殿下がいらっしゃらないことに気づいて直ぐにお探しいたしましたもの」
アレクサンドラは気を利かせたつもりが、アリスの邪魔をしてしまった形になったことを慌てて答える。
「アリス、せっかくここまでいらしたのに私たちを探すことに時間を使わせてしまってごめんなさい」
するとアリスは、大きく首を横に振った。
「そのように謝らないでくださいませ。とにかくこうして無事に見つけることができて私ほっといたしましたわ」
それを聞いてアレクサンドラは、アリスはなんていい子なのだろうと感じた。これならシルヴァンもアリスに心を奪われたのではと思い、彼の方を見た。
案の定、シルヴァンはそんなアリスをじっと見つめていた。
こうしてアレクサンドラたちはアリスたちと合流し、あらためて洞窟の奥へと向かった。
洞窟の奥へ進むには、狭い場所や岩を乗り越えて行かなければならず、一筋縄ではいかなかったが、なんとか絶景の広間へとたどり着いた。
そこは先ほどシルヴァンと二人で見た場所よりもずっと広く、天井一面に土ボタルの淡い光が揺れていた。まるで夜空が地の底に降りてきたようだった。
「素敵ですわ!」
アリスはそう呟くと、アレクサンドラに向き直り瞳を潤ませて言った。
「こんな素敵な場所にお誘いいただいて、ありがとうございます。それに殿下と一緒にこんなにも美しいものを見られるなんて、私とても感激しております」
そう言うと、アリスはシルヴァンをうっとりと見つめた。
「そうか」
シルヴァンはそれだけ返すと、土ボタルをじっと見つめた。
二人の会話を邪魔しないよう、アレクサンドラは静かに土ボタルを見上げた。
その光を見つめているうちに、ルカと一緒にここを訪れたときの記憶が蘇る。
ルカはあのとき『いつか必ず一緒にまたここへ来よう』そう、静かに微笑んでいた。
そんな“いつか”が本当に来ればいい。アレクサンドラはそう願いながら、淡い光を見つめ続けた。
屋敷へ戻ると、全員が慣れない洞窟を歩き回った疲れでぐったりしていた。夕食を終えると、それぞれ静かに自室へと戻っていった。
ベッドに入ると、アレクサンドラはシルヴァンが洞窟で言った『僕は君がほしい』という言葉を思い返した。
なぜ、アリスという存在がありながら、あのようなことを言ったのか。彼の真意はまるで掴めない。
殿下は、あの洞窟の不思議な空気に流されたのだろう。今ごろは後悔しているに違いない。
そう思いながら、アレクサンドラは静かに目を閉じた。
翌日は村で豊穣祭が執り行われる予定であった。疲れを残したくないという気持ちもあり、なるべく早く休むことにした。
豊穣祭は午後から村の中央広場で行われるため、朝はゆっくりと過ごすことができた。
アレクサンドラの記憶では、豊穣祭は秋に行われるはずだった。それがこの時期に前倒しされたということは、きっとシルヴァンの滞在に合わせて村人たちが準備を整えてくれたのだろう。
領主の娘として、その厚意を無にするわけにはいかない。アレクサンドラは軽く頬を叩き、気を引き締めた。
やがて、アレクサンドラたちは豊穣祭の形式に則り、民族衣装を身に纏った。
アリスはシルヴァンに、アレクサンドラはダヴィドにエスコートされながら、村の中央広場へ向かう。
広場の中央には祭壇が設けられ、収穫された作物が山のように積まれていた。
若い男女たちはその周囲でダンスを踊り、来年の豊作を願う。
踊りの後には、収穫した野菜で作った『ガッタフーラ』と呼ばれるパイが振る舞われ、玉子入りを食べた男女がその年の『ムトワーナムケ』として選ばれる。
彼らは『バハティワトー』、幸運を授かり、それを人々に分け与える者として祝福されるのだ。
アレクサンドラは、村の者たちがわざとシルヴァンと自分に玉子入りを配ろうとしているのではないかと懸念し、一計を案じていた。
祭りの直前、ダンスを簡単に習ったが、複雑な動きはなく、誰もがそつなく踊り終えた。
アレクサンドラは素早くアリスの隣に座り、ガッタフーラが配られるのを待った。
配られたパイを見て、アレクサンドラは思わず眉をひそめる。
どう見ても、自分の前のものだけがひときわ大きい。
おそらく、玉子が入っている。
アレクサンドラはガッタフーラを見つめながら、アリスにそっと耳打ちした。
「アリス、ひとつお願いがありますの」
「まぁ、アレクサンドラ様、なんですの? 私にできることならなんでもしますわ」
驚きと好奇心を浮かべるアリスに微笑み返し、アレクサンドラは言った。
「実は私、ガッタフーラに入っている不断草が少し苦手ですの。それで……私の分、少し大き過ぎると思いませんこと?」
「わかりましたわ。アレクサンドラ様は私のガッタフーラと交換したいということですのね?」
「そのとおりですわ。よろしいかしら?」
アリスは一瞬ためらいを見せた。
「でも、もしかすると玉子が入っているのかもしれませんわ。交換しないほうがいいのでは?」
「そんなことありませんわ。もしそうだとしても、それも運のうちですわ」
それでもアリスは迷いを見せたが、アレクサンドラがもう一度小さく微笑んで言う。
「どうしても、お願い。ね?」
アリスはようやく頷き、苦笑した。
「わかりましたわ。そこまで仰るなら。それにしても、アレクサンドラ様にも苦手なものがありますのね。失礼かもしれませんけれど、なんだか親しみがわきますわ」
「こんなところにいらしたのですね!」
ランプの光が差し込み、眩しさに目を細めながらその人物を見たアレクサンドラは、慌ててシルヴァンから離れた。
「アレクサンドラ様、よかったですわ。私たちはぐれてしまって途方にくれていたところですの。これで洞窟から出られますわね」
そう言ってアリスは、シルヴァンに同意を求めるように見つめた。
シルヴァンはアレクサンドラの顔をしばらく見つめると、諦めたようにため息をついて立ち上がる。
「そうか、僕はどうにかなると思っていたが」
そうしてアレクサンドラに手を差し伸べて立たせると、アリスの方へ向き直った。
「それにしても、随分と見つけるのが早かったようだが?」
「もちろんですわ。私たち、殿下がいらっしゃらないことに気づいて直ぐにお探しいたしましたもの」
アレクサンドラは気を利かせたつもりが、アリスの邪魔をしてしまった形になったことを慌てて答える。
「アリス、せっかくここまでいらしたのに私たちを探すことに時間を使わせてしまってごめんなさい」
するとアリスは、大きく首を横に振った。
「そのように謝らないでくださいませ。とにかくこうして無事に見つけることができて私ほっといたしましたわ」
それを聞いてアレクサンドラは、アリスはなんていい子なのだろうと感じた。これならシルヴァンもアリスに心を奪われたのではと思い、彼の方を見た。
案の定、シルヴァンはそんなアリスをじっと見つめていた。
こうしてアレクサンドラたちはアリスたちと合流し、あらためて洞窟の奥へと向かった。
洞窟の奥へ進むには、狭い場所や岩を乗り越えて行かなければならず、一筋縄ではいかなかったが、なんとか絶景の広間へとたどり着いた。
そこは先ほどシルヴァンと二人で見た場所よりもずっと広く、天井一面に土ボタルの淡い光が揺れていた。まるで夜空が地の底に降りてきたようだった。
「素敵ですわ!」
アリスはそう呟くと、アレクサンドラに向き直り瞳を潤ませて言った。
「こんな素敵な場所にお誘いいただいて、ありがとうございます。それに殿下と一緒にこんなにも美しいものを見られるなんて、私とても感激しております」
そう言うと、アリスはシルヴァンをうっとりと見つめた。
「そうか」
シルヴァンはそれだけ返すと、土ボタルをじっと見つめた。
二人の会話を邪魔しないよう、アレクサンドラは静かに土ボタルを見上げた。
その光を見つめているうちに、ルカと一緒にここを訪れたときの記憶が蘇る。
ルカはあのとき『いつか必ず一緒にまたここへ来よう』そう、静かに微笑んでいた。
そんな“いつか”が本当に来ればいい。アレクサンドラはそう願いながら、淡い光を見つめ続けた。
屋敷へ戻ると、全員が慣れない洞窟を歩き回った疲れでぐったりしていた。夕食を終えると、それぞれ静かに自室へと戻っていった。
ベッドに入ると、アレクサンドラはシルヴァンが洞窟で言った『僕は君がほしい』という言葉を思い返した。
なぜ、アリスという存在がありながら、あのようなことを言ったのか。彼の真意はまるで掴めない。
殿下は、あの洞窟の不思議な空気に流されたのだろう。今ごろは後悔しているに違いない。
そう思いながら、アレクサンドラは静かに目を閉じた。
翌日は村で豊穣祭が執り行われる予定であった。疲れを残したくないという気持ちもあり、なるべく早く休むことにした。
豊穣祭は午後から村の中央広場で行われるため、朝はゆっくりと過ごすことができた。
アレクサンドラの記憶では、豊穣祭は秋に行われるはずだった。それがこの時期に前倒しされたということは、きっとシルヴァンの滞在に合わせて村人たちが準備を整えてくれたのだろう。
領主の娘として、その厚意を無にするわけにはいかない。アレクサンドラは軽く頬を叩き、気を引き締めた。
やがて、アレクサンドラたちは豊穣祭の形式に則り、民族衣装を身に纏った。
アリスはシルヴァンに、アレクサンドラはダヴィドにエスコートされながら、村の中央広場へ向かう。
広場の中央には祭壇が設けられ、収穫された作物が山のように積まれていた。
若い男女たちはその周囲でダンスを踊り、来年の豊作を願う。
踊りの後には、収穫した野菜で作った『ガッタフーラ』と呼ばれるパイが振る舞われ、玉子入りを食べた男女がその年の『ムトワーナムケ』として選ばれる。
彼らは『バハティワトー』、幸運を授かり、それを人々に分け与える者として祝福されるのだ。
アレクサンドラは、村の者たちがわざとシルヴァンと自分に玉子入りを配ろうとしているのではないかと懸念し、一計を案じていた。
祭りの直前、ダンスを簡単に習ったが、複雑な動きはなく、誰もがそつなく踊り終えた。
アレクサンドラは素早くアリスの隣に座り、ガッタフーラが配られるのを待った。
配られたパイを見て、アレクサンドラは思わず眉をひそめる。
どう見ても、自分の前のものだけがひときわ大きい。
おそらく、玉子が入っている。
アレクサンドラはガッタフーラを見つめながら、アリスにそっと耳打ちした。
「アリス、ひとつお願いがありますの」
「まぁ、アレクサンドラ様、なんですの? 私にできることならなんでもしますわ」
驚きと好奇心を浮かべるアリスに微笑み返し、アレクサンドラは言った。
「実は私、ガッタフーラに入っている不断草が少し苦手ですの。それで……私の分、少し大き過ぎると思いませんこと?」
「わかりましたわ。アレクサンドラ様は私のガッタフーラと交換したいということですのね?」
「そのとおりですわ。よろしいかしら?」
アリスは一瞬ためらいを見せた。
「でも、もしかすると玉子が入っているのかもしれませんわ。交換しないほうがいいのでは?」
「そんなことありませんわ。もしそうだとしても、それも運のうちですわ」
それでもアリスは迷いを見せたが、アレクサンドラがもう一度小さく微笑んで言う。
「どうしても、お願い。ね?」
アリスはようやく頷き、苦笑した。
「わかりましたわ。そこまで仰るなら。それにしても、アレクサンドラ様にも苦手なものがありますのね。失礼かもしれませんけれど、なんだか親しみがわきますわ」
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