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カーレルはため息をつくと、ミリナを追い払うような仕草をした。ミリナは少しムッとした様子で翡翠に向き直ると、カーレルには聞かれないよう小声で耳打ちした。
「カーレル殿下ってば、いつもああなの。恋人にする態度じゃないわよね?!」
そうして茶目っ気たっぷりにウインクすると、繋いだ翡翠の手を横に振りながらふてくされたように言った。
「はーい、王太子殿下。わっかりましたー! じゃあ私は退散しまーす。翡翠、またね!」
そう言い残し部屋を出ていった。
「可愛らしいかたですね」
翡翠はなんとかそう言うと、カーレルは無表情のまま答える。
「いや」
その横でオオハラはクスクスと笑った。
「聖女様はいつも元気でいらっしゃる」
その言葉に翡翠は驚いて思わず反応した。
「聖女様?!」
「えぇ、彼女は『スタビライズ』に結界を張ったと言っていて、聖女様と崇められています。そのお陰で残る最後の『スタビライズ』には誰も近づけなくなりましたけど」
翡翠はどういうことなのか話について行けずに困惑した。その様子を見て、オオハラはハッとする。
「すみません、そんなことを今のあなたに言っても、なんのことだかさっぱりわかりませんよね」
「はい、すみません」
「いいえ、色々と説明しなければならないので、どうか座って下さい」
そう言って翡翠にソファーに座るように促すと、カーレルの方を見た。
「殿下、僕から彼女に説明をしておきますから、ここはお任せください」
「いや、私も残る」
カーレルの有無を言わさぬ言い方にオオハラは苦笑する。
「そうですか、わかりました。殿下がそう仰るなら」
オオハラが言うと、カーレルは翡翠のとなりに座った。
翡翠はカーレルが警戒する気持ちが十分に理解できた。ジェイドだったころあれだけのことをしたのだから当然だろう。
そう思いながら、オオハラが説明するのを待った。オオハラはゆっくりと翡翠の向かいに座ると微笑んだ。
「驚くかもしれませんが、翡翠さん。あなたは以前この世界でジェイドという女性として生きていました」
「どういうことですか?」
「あなたはそのジェイドの生まれ変わりなんです」
なぜ生まれ変わりだとオオハラたちは知っているのか、そして生まれ変わってなおなぜこの世界に呼び戻されたのか不思議に思っているとオオハラは続けて言った。
「なぜそう言いきれるのか説明しますね。僕は『ジェイド』を研究しています。ですが、僕の言っている『ジェイド』とはもちろん過去のあなたのことではありません」
「はい……」
「『ジェイド』は『レリック』としてこの国の中心にあり、長年なんのために存在しているのかわからない存在でした。ところがある日、『ジェイド』に不思議な文字が浮かびあがったんです」
「文字、ですか?」
「はい、それは今からちょうど数ヵ月前、聖女様が『スタビライズ』に結界を張ったと言ったあの日でした」
「なぜ聖女様は結界を?」
すると、オオハラは困ったように微笑む。
「それは今は申し上げられません。すみません」
ジェイドのような者から守るためなのではないかと思っていはいたが、このオオハラの表情でその予想は当たっていたのだと確信した。
「そうなのですね、わかりました。では文字は?」
「はい、その文字ですが見たことのない文字で、僕はその文字を解読することに没頭しました。そうして、そこにはあなたがこの世界に召還されることと、その日付が書かれてあることがわかりました」
翡翠はそれを聞いて、『ジェイド』が意図を持って自分をこの世界に召還したのだとしたら、おそらく最後の『スタビライズ』を停止させるために召還したのだろうと思った。
「では、その『ジェイド』になぜ私が呼び戻されたのかも書いてあったのですか?」
オオハラはゆっくり首を横に振る。
「残念ながらそれ以上は解読できませんでした」
「そうですか。でも、私は違う世界から召還されました。その文字を私が見ればなにかわかるかもしれません」
「そうですね、そうかもしれません。私もできればお見せしたいのですが、それは無理でしょう」
「なぜですか? 外部の者には見せられないとかですか?」
「いいえ、消えてしまったんです」
「文字がですか? 書き写しはしていないのですか?」
「違いますよ、『ジェイド』そのものが消えてしまったんです。僕も急いで文字を書き写したのですが全文書き写すことはできませんでした」
翡翠は驚く。『ジェイド』がもし消えるとしてもまだ先のはずである。だいたい今消えてしまったのなら、この宇宙に影響が出るはずだ。
「本当にその『ジェイド』は消えてなくなってしまったんですか?」
「違うと思います。僕が思うにどこかへ移動したのでしょう。多分それは最後の『スタビライズ』の近くではないかと僕は思ってます」
「最後の『スタビライズ』?」
翡翠が質問すると、オオハラは苦笑する。
「そうでしたね、あなたは『スタビライズ』を知らないのですね。『スタビライズ』とは『レリック』の一つです」
「最後の? とは?」
「あぁ、最後に残ったと言うべきでしょう。他の『スタビライズ』は今は稼働していないので」
「そうなのですか」
「わからないことだらけですみません。僕からご説明できるのはここまでです」
「えっ? あの、まだジェイドさんのことを聞いていません」
「彼女がどういった人物だったのかは、ご自身で思い出してほしいのです。そうすれば色々とわかってくると思いますから」
翡翠は驚いてカーレルのほうを見た。カーレルは突然翡翠に見つめられ、驚いたように目を逸らすと言った。
「 私からもなにも話せない」
翡翠はオオハラに向き直る。
「では、思い出すまで待つと言うことですか? でも、なにも思い出さなかったら?」
「もちろん、思い出すまでただじっと待っているわけではありません。あなたにはジェイドと縁の深い場所を回っていただきたいのです」
「それで思い出せるでしょうか? そんなに遠回りしなくとも、その最後の『スタビライズ』に行けば思い出せるかもしれませんよ?」
「はい、もちろんそうだとは思います。その最後の『スタビライズ』に行く道中、縁の深い場所に寄っていただければと思ってます」
そこで言葉を切ると、オオハラは一呼吸置いてから言った。
「それともう一つあなたには重要な役割があります」
「役割……ですか?」
オオハラは大きくうなずく。
「『レリック』である『ジェイド』が消えてしまってから、どの場所に移動したのかはっきりわかっていません」
「でも先ほど最後の『スタビライズ』のそばにあると仰っていましたよね?」
「はい。僕はそう考えていますが、確証はありません。そこであなたの出番になるのです」
「もしかして、それを探せと?」
「はい。さっしがよろしくて助かります。『ジェイド』になんらかの関わりがあるあなたになら、見つけられるのではないでしょうか?」
「カーレル殿下ってば、いつもああなの。恋人にする態度じゃないわよね?!」
そうして茶目っ気たっぷりにウインクすると、繋いだ翡翠の手を横に振りながらふてくされたように言った。
「はーい、王太子殿下。わっかりましたー! じゃあ私は退散しまーす。翡翠、またね!」
そう言い残し部屋を出ていった。
「可愛らしいかたですね」
翡翠はなんとかそう言うと、カーレルは無表情のまま答える。
「いや」
その横でオオハラはクスクスと笑った。
「聖女様はいつも元気でいらっしゃる」
その言葉に翡翠は驚いて思わず反応した。
「聖女様?!」
「えぇ、彼女は『スタビライズ』に結界を張ったと言っていて、聖女様と崇められています。そのお陰で残る最後の『スタビライズ』には誰も近づけなくなりましたけど」
翡翠はどういうことなのか話について行けずに困惑した。その様子を見て、オオハラはハッとする。
「すみません、そんなことを今のあなたに言っても、なんのことだかさっぱりわかりませんよね」
「はい、すみません」
「いいえ、色々と説明しなければならないので、どうか座って下さい」
そう言って翡翠にソファーに座るように促すと、カーレルの方を見た。
「殿下、僕から彼女に説明をしておきますから、ここはお任せください」
「いや、私も残る」
カーレルの有無を言わさぬ言い方にオオハラは苦笑する。
「そうですか、わかりました。殿下がそう仰るなら」
オオハラが言うと、カーレルは翡翠のとなりに座った。
翡翠はカーレルが警戒する気持ちが十分に理解できた。ジェイドだったころあれだけのことをしたのだから当然だろう。
そう思いながら、オオハラが説明するのを待った。オオハラはゆっくりと翡翠の向かいに座ると微笑んだ。
「驚くかもしれませんが、翡翠さん。あなたは以前この世界でジェイドという女性として生きていました」
「どういうことですか?」
「あなたはそのジェイドの生まれ変わりなんです」
なぜ生まれ変わりだとオオハラたちは知っているのか、そして生まれ変わってなおなぜこの世界に呼び戻されたのか不思議に思っているとオオハラは続けて言った。
「なぜそう言いきれるのか説明しますね。僕は『ジェイド』を研究しています。ですが、僕の言っている『ジェイド』とはもちろん過去のあなたのことではありません」
「はい……」
「『ジェイド』は『レリック』としてこの国の中心にあり、長年なんのために存在しているのかわからない存在でした。ところがある日、『ジェイド』に不思議な文字が浮かびあがったんです」
「文字、ですか?」
「はい、それは今からちょうど数ヵ月前、聖女様が『スタビライズ』に結界を張ったと言ったあの日でした」
「なぜ聖女様は結界を?」
すると、オオハラは困ったように微笑む。
「それは今は申し上げられません。すみません」
ジェイドのような者から守るためなのではないかと思っていはいたが、このオオハラの表情でその予想は当たっていたのだと確信した。
「そうなのですね、わかりました。では文字は?」
「はい、その文字ですが見たことのない文字で、僕はその文字を解読することに没頭しました。そうして、そこにはあなたがこの世界に召還されることと、その日付が書かれてあることがわかりました」
翡翠はそれを聞いて、『ジェイド』が意図を持って自分をこの世界に召還したのだとしたら、おそらく最後の『スタビライズ』を停止させるために召還したのだろうと思った。
「では、その『ジェイド』になぜ私が呼び戻されたのかも書いてあったのですか?」
オオハラはゆっくり首を横に振る。
「残念ながらそれ以上は解読できませんでした」
「そうですか。でも、私は違う世界から召還されました。その文字を私が見ればなにかわかるかもしれません」
「そうですね、そうかもしれません。私もできればお見せしたいのですが、それは無理でしょう」
「なぜですか? 外部の者には見せられないとかですか?」
「いいえ、消えてしまったんです」
「文字がですか? 書き写しはしていないのですか?」
「違いますよ、『ジェイド』そのものが消えてしまったんです。僕も急いで文字を書き写したのですが全文書き写すことはできませんでした」
翡翠は驚く。『ジェイド』がもし消えるとしてもまだ先のはずである。だいたい今消えてしまったのなら、この宇宙に影響が出るはずだ。
「本当にその『ジェイド』は消えてなくなってしまったんですか?」
「違うと思います。僕が思うにどこかへ移動したのでしょう。多分それは最後の『スタビライズ』の近くではないかと僕は思ってます」
「最後の『スタビライズ』?」
翡翠が質問すると、オオハラは苦笑する。
「そうでしたね、あなたは『スタビライズ』を知らないのですね。『スタビライズ』とは『レリック』の一つです」
「最後の? とは?」
「あぁ、最後に残ったと言うべきでしょう。他の『スタビライズ』は今は稼働していないので」
「そうなのですか」
「わからないことだらけですみません。僕からご説明できるのはここまでです」
「えっ? あの、まだジェイドさんのことを聞いていません」
「彼女がどういった人物だったのかは、ご自身で思い出してほしいのです。そうすれば色々とわかってくると思いますから」
翡翠は驚いてカーレルのほうを見た。カーレルは突然翡翠に見つめられ、驚いたように目を逸らすと言った。
「 私からもなにも話せない」
翡翠はオオハラに向き直る。
「では、思い出すまで待つと言うことですか? でも、なにも思い出さなかったら?」
「もちろん、思い出すまでただじっと待っているわけではありません。あなたにはジェイドと縁の深い場所を回っていただきたいのです」
「それで思い出せるでしょうか? そんなに遠回りしなくとも、その最後の『スタビライズ』に行けば思い出せるかもしれませんよ?」
「はい、もちろんそうだとは思います。その最後の『スタビライズ』に行く道中、縁の深い場所に寄っていただければと思ってます」
そこで言葉を切ると、オオハラは一呼吸置いてから言った。
「それともう一つあなたには重要な役割があります」
「役割……ですか?」
オオハラは大きくうなずく。
「『レリック』である『ジェイド』が消えてしまってから、どの場所に移動したのかはっきりわかっていません」
「でも先ほど最後の『スタビライズ』のそばにあると仰っていましたよね?」
「はい。僕はそう考えていますが、確証はありません。そこであなたの出番になるのです」
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