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おまけ その後の二人

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 ルビーは自分が王妃としてしっかりしなけれればと気負っていた。まだ婚約者と言う立場だったが、できるだけ王太子殿下をサポートするために、側近には王太子殿下よりも早く情報を聞き、必要な書類を集めたり王太子殿下のスケジュールを把握して、王太子殿下の過ごしやすいようにすることに努めた。そんなルビーに側近のフランツが

「ディスケンス公爵令嬢、令嬢そのものの存在が王太子殿下にどれだけ影響を与えているか、あなたはご存じですか?」

 と言ったが、ルビーに心当たりはなかった。確かに以前の王太子殿下に比べれば表情が豊かになったような気がしたが、それは結婚を控えてそれなりに王太子殿下にも心境の変化があるのだと解釈していた。ルビーは

「フランツ様は大袈裟なのですね、王太子殿下は誰にも影響されることはありません」

 と、答えた。すると後ろから手が伸び腰に手を回され、思い切り抱きすくめられる。

「君はそんな風に思っていたのか」

 その声は紛れもなく王太子殿下のものだった。ルビーは慌ててフランツをフォローするつもりで

「王太子殿下、フランツは何か勘違いしたのです。わたくしは王太子殿下がわたくしごときに影響されるなど思ってはおりませんから、大丈夫です」

 と言った。王太子殿下はため息をつくと

「僕を人たらしめたのは君の存在だ。はじめて自分以外の人間を愛すること、それがこんなにも、辛くも素晴らしいことなのだと教えてくれたのは君だというのに、君はまるで自覚がないのだね」

 と苦笑した。ルビーはその言葉に酷く動揺し顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。

「それに僕のことはジェシーと呼ぶように言ってあるはずだ、君はいつになったらそう呼んでくれるんだい? 僕は悲しいよ」

 と言った。ルビーは慌てて、ジェシーと呼ぼうとするがあまりにも恥ずかしくて言葉がでない。

「あの、えっと......ジェシー様......」

 と聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言う。王太子殿下は愉快そうに

「聞こえないよ、もう一度言って?」

 と言った。ルビーは意を決して言う。

「ジェシー様!」

 王太子殿下は満足そうに頷き、ルビーにキスをすると

「結婚するまでは君を無理やりに奪うようなことはしまいと思っていたのだが、限界だ。なぜそんなに君は愛らしいのだ、結婚したら部屋から一歩も出さないと思っていたが、婚約したのだから今からそれを実行しても問題あるまい」

 そう言ってルビーを抱きかかえた。ルビーは混乱し王太子殿下に

「王太子殿下、今日の執務が終わっておりません。今日の予定を読み上げますから!」

 と慌てる。王太子殿下は

「また王太子殿下と言ったね、これからはそう呼ぶたびにペナルティーを課すよ。ベッドの中でね」

 と言って微笑む。それを聞いたルビーは更に顔を真っ赤にして、あわあわと何事かを呟いている。そつのない完璧な公爵令嬢が、こんなにも恥ずかしがりやで可愛らしい存在なのだと、誰が気づくことができただろうか。
 だが、いずれジェサイアとルビーが一緒に過ごす間に、周囲にはこのルビーの愛らしさが周知されてしまうだろう。その前に自分のものにしてしまうのが得策だ、とジェサイアは意思を固める。
 側近のフランツに

「すまない、ルビーに用事があるから、今日の予定は全てキャンセルできないだろうか?」

 と訊く。フランツは満面の笑みで

「お任せください王太子殿下、調整は問題ありません。それより今日の予定など気にせず、ディスケンス公爵令嬢と親睦を深めることが最優先事項だと思います」

 と言った。ルビーはその言葉に

「フランツ様、何をおっしゃっているのです。わたくしのことを公務より優先するなどありえないことですわ」

 と言ったが、王太子殿下は

「何故? どう考えても君が優先事項だろう」

 と言った。フランツが後ろで大きく頷く。そこまで言い切られてルビーは何も返せず、王太子殿下のジャケットをぎゅっと握ると

「でも、その、だめですわ」

 と言う。その言葉に、その場にいたフランツさえルビーの可愛らしさに魅了されていた。ジェサイアは

「もう耐えられない、これから君を僕のものにするよ。婚前だが君の両親も反対はしないだろう。なんせ、婚約者なのだから。結婚式まで君を王宮に閉じ込めて、皆の前にその姿を出さないようにしよう。それもこれも君が可愛らしすぎるのが悪いんだよ」

 そう言うと、そのまま寝室へルビーを運んだ。ルビーは何とか抵抗するが抵抗むなしく、寝室で王太子殿下から信じられないほどの快楽を与えられ、グダグダになった。
 王太子殿下は結婚まで王宮から出さないと言ったが、それは言葉通り実行されることになった。
 意識のあるうちは、ひたすら王太子殿下から攻め続けられてとてもではないが部屋から出られない状態となったからだ。

「乱れる君もたまらない。愛してる」

 と、毎日ひたすら耳元で囁かれ、甘やかされルビーは幸福感につつまれた。

 結局結婚式まで、ルビーが王宮を出ることは一度もなかった。
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