クソ食らえ!

スカーレット

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第四話 水着ってああも簡単に流されるものなの?

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夏休みになった。
高校生の夏休みは長い。
大学生はもっと長いんだぞ、と姉が誇らしげに言っていたが、予定があまりないのか家でごろごろしてることが多い。
その無駄な美貌を活かしてナンパでもしてくりゃいいのに。
そんなことを考えられるくらいに暇な、夏休みの朝。

「今日は真帆ちゃんこないの?」
「そんな毎日来れるほどあの子暇じゃないと思うけど」
「ちゃんと捕まえとかないと、逃げられちまうぞ?ていうか、何でこんなのがいいのかねぇ」

散々背中を押しておいて、その言い草はないと思う。
姉はつまんない、とか言いながら冷蔵庫を開けて飲み物でも探している様だった。

俺だってつまんない。
けど、そんな夏休みだからって毎日会うのは……いや会いたいけど。
夏休み終わってから耐えられなくなったりとかありそうで少し怖い。

姉がコップに飲み物をついで持ってきてくれた。
シュワシュワと泡を立てている。
炭酸飲料……コーラか。
泡の具合から見ても、どう見てもションベンだ。

「飲尿健康法とか昔あったなぁ」

ぼそっと姉が呟く。
何でこのタイミングでそれ思い出した?
首でも絞めたらこの姉、少しは大人しくなったりしないだろうか。
手にしたコップを握る力が自然と強まるのを感じる。

「なぁ、今日真帆ちゃん何してるか知ってるの?」
「あ?どうだっけ……」
「お前、釣ったらそのまま放置でエサもやらないタイプかよ……ちゃんと彼女の予定くらい把握しとけよな……」
「んなこと言ったって……」
「お前のことだからどうせ、しつこく追及して嫌われたら立ち直れない、とかウジウジ考えてんだろうけどよ」
「ぐっ……」

悔しいがそのまんますぎて、何も言い返せない。

「そ、そっちこそ暇なら男漁りでも行けばいいだろ。俺たちのことはほっといてくれよ」
「あたしはまだ若いからな。気づけば彼氏の一人や二人、出来てるって」

十年経っても、同じこと言ってそうな予感がした。
さすがに十年経ってそれ言ってたら、痛すぎて直視できない。

「それにな、あたしも真帆ちゃんとメル友になったから」

じゃん、とか言いながら携帯の電話帳のゆ、のページを出してきた。
結城真帆、と名前がある。

「あ、そうだ。暇なら呼んじゃえばいいのか」
「いや、迷惑かもしれないだろ、やめとけって」
「あんなになついてくれたんだから大丈夫だろ」
「社交辞令って言葉知らないのかよ……」
「ならお前、電話でもして聞けよ。案外待ってるかもしんねーぞ?」
「は?何で俺が」
「彼氏だろ?」
「そ、そうだけど……」

付き合い始めて数週間。
下校デートは何度かした。
二人でクレープと言う名のうんこを食べさせあいっこしたりもした。

三段重ねのうんこを食べさせあったりもした。
考えてみたら食べてばっかりだな、俺たち。
しかし夏休みになってから二日、俺たちはまだ一回も会っていない。
これは由々しき事態だ。

「で、電話してくる」

姉に聞こえない様、自分の部屋で電話をかける。
二回、三回とコール音がする。
出ない。
と思ったら、がちゃ、と音がして電話が繋がった。

『あ、ごめんね。ちょっと離れてて』
『あ、いや大丈夫。今平気?』
『珍しいね、電話なんて。でも、嬉しいな』

この一言で、早くも男としての自信を回復する。
お安くできてるな、俺。
ちなみに、付き合った翌日に真帆って呼んで、とか言われたが未だに慣れていない。
向こうは既に空くん、と呼んでくれているのに。

『あ、いや今何してるかなって』
『誰が?』
『結城さんが』
『結城さんは今うちにあと一人いるよ?お父さんだけど。呼んでくる?』

とんでもない意地悪をしてくる。

『ま、真帆さん……が』
『いい加減慣れてほしいなぁ……私、空くんに名前で呼んでほしいのに』

電話越しなのに少ししゅんとしているのがわかる。
申し訳ない気持ちになってきて、少し考えを改めようなどと思った。

『もし、空くんが私のことちゃんと呼んでくれないなら……』
『なら……?』
『今度のデートにお父さん連れて行くから』

なんつー事考えやがる……狂ってやがるぜ……。

『そ、それだけは何卒……』
『頼んだからね?それはそうと、今日暇なの?だったらプールでもいこっか』

プール!
なんと甘美な響きか。
浴衣姿の結城……真帆も正直良かった。

下品なんですが……勃起……してしまいましてね……。
なんていうセリフを思いだす。
プールなんてもっとやばいんじゃないだろうか。

まさかスク水で、なんてことは……いや、それでもいい。
セパレートでもスク水でも、彼女はきっと似合うに違いない。
電話がまだ切れていないのに、一人で俺は興奮していた。

『もしもし?空くん?プールやだ?他のとこにする?』
『い、いやプールでお願いします!是非!是非に!!』
『そ、そう?そんなにプール行きたかった?暑いもんねぇ』

熱いのは今まさに、俺の股間です。
そんなことはとても言えないが、俺の胸は期待に高まる。

『じゃあ、あとでまた迎えに行くから、支度しといてね』

そう言って彼女は電話を切る。
や、やった。
何か知らんけど急なお誘いなのにデートだ。
しかもプールだって。

「何だ、来ることになったの?」
「あ?ああ、でもすぐ出かけるよ」
「ほー、やるじゃん。何処行くの?」
「言ったらまたあんた、追跡してくんだろ」
「そこまであたしだって暇じゃねっつの。課題とか一応あんだから」
「そ、そうか。でも言わない」
「まぁいいや、うっかり真帆ちゃんが口滑らすだろうし」

ひひ、と笑って姉は階下へ。
あれ、姉いつの間に俺の部屋にきてたの?
ってことは行き先バレてねぇ?

一時間ほどすると、真帆がやってくる。
姉が歓喜の声を上げて、私服もいいねぇ、なんて言っている。
酔っ払いの親父か。

「ご無沙汰してます、お姉さん!」
「やー、会いたかったよ!こんなのに会いに来るくらいならあたしに直接会いにきたっていいんだよ?」
「こんなのとか言うな……こんなのだけど……」
「で、何処行くの?プール?」
「あれ、空くん言ったの?」
「いや言ってない……電話中に俺の部屋に忍び込んでた」
「本当、仲良くて妬けちゃいます」
「いやいや、さすがにないから。真帆……さんが妬く様な相手、この世に存在しないから」
「何をさんとかつけてんだよこのヘタレ。あと、プール入る前にちゃんと流せよな」
「う、うるさい。まだ慣れないだけだっつの。あと一言余計だよ」

やかましい姉を放っておいて、俺たちはプールへ向かう。
さすがに少し距離があるので、バスに乗る。
バス停で待っている間、照り返しやらが凄かったが真帆といるのであんまり気にならない。

「ね、真帆って男らしく呼んでみて」

バスの中で、真帆が意地悪く笑いながら言う。
こんな意地悪い笑顔も可愛いから困る。

「え、何で今なの……」
「じゃあいつ言うの?」
「…………」
「今でしょ、って言わないの?」
「言ってもいいんだけど、それもう古いと思うんだ」
「ぶー」
「そんな顔すんなよ、可愛いけど……真帆」
「あ、今……」
「い、言ってみた」
「それくらいでそんなに顔赤くしてたら、大事な時どうするの?」
「だ、大事な時って……」

大事な時って、大事な時ですよね。
いつもはソロ活動の私ですが、そういうときはデュオになるんですよね!?

「ふふ、まだそういう時じゃないかもだけど……そういう時までには、慣れててほしいな」
「あ、ああ……」

ふと目の前の真帆を見てその時を想像してしまう。
い、いかん。
まだ距離があるからいいものの、これがプールの近くだったら立ち上がれない。

「ね、何想像したの?」

耳元で、真帆がふっと囁く。
俺の目はくわっと見開かれ、つい真帆の方を向いてしまう。

「野獣みたいな顔してる……」

そんなことを言いながら、真帆は軽く口付けてきた。

「!?」
「隙ありっと」

こんなとこで、何してくれてんの、真帆さん。
乗客少ないからって、そういうのは公共の場でしちゃダメだと思います!
鼻歌など歌いながら、真帆は鞄をごそごそとやっている。
ちらりと見ると、水着と思われるものが顔を覗かせた。

「あ、まだ見ちゃダメ。着いてからのお楽しみなんだから」

そう言って、代わりに俺にお菓子の箱を手渡す。

「一緒に食べよ?」

ポッキーだった。
この暑さだと溶けるんじゃないだろうか、と思ったが、真帆はかりっと音をさせて食べている。
バスの中って食い物いいんだっけ?などと考えるが、食べないと真帆がまたしゅんとしそうなので、その細いうんこをかじる。

「はい、あーん」
「真帆、あーん好きだよね」
「ダメ?」
「だ、ダメじゃない」

小首をかしげてそんな風に言われてダメとか言えるやつがいたら、そんなのは男じゃないと思う。
何なら全て、あーんで食べさせあいっこしてもいい。
まぁ全部うんこだけどな!!

そんなことを考えていると、プールのあるところにきたのでバスを降りる。
俺が先に降りて手を伸ばすと、その手を嬉しそうに取る。

「空くん、エスコートしてるみたいでかっこいい」
「真似事だけどね、こういうの、女の子は好きかなって」
「む?他の女の子にもこんなことするの?」
「しねーよ……わかってて言ってないか?」
「へへ、ごめんね」

プールで俺は素早く二人分の入場券を購入し、真帆に渡した。
真帆は払うよ、って言ってたけど俺は無視して男子更衣室へ。

「じゃ、あっちでな」

ふくれっ面の彼女を置いて、先に更衣室に入るが誰もいなかった。
早くプールに入りたいという気持ちから一気に全部脱いで海パンに履き替えた。

更衣室を出て、少し進むとセンサーに反応したのかシャワーが降り注ぐ。
少し冷たいかな、と思ったがすぐに慣れて気持ちよくなってくる。
その後少しして、真帆がきた。

「ね、これ持ってて?」

シャワーの脇から小さな鞄を渡されて、真帆がシャワーを浴びるのを待つ。
ああ、鞄濡れちゃうもんな。
てか彼女がシャワー……やばい。
プールでこんな試練が待っていようとは考えもしなかった。

「どうしたの?」

セパレートの、オレンジ色の水着に身を包み、普段の何倍も空気に晒されたその肌を、ついつい見つめてしまう。
……だって、男の子だもん。

「あ、いや……」
「そ、そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ……」

鞄を受け取り、その鞄で下を隠して片腕で胸の辺りを隠す。
それが更にエロさを倍増させている気がして、俺は前かがみのまま真帆の手を取って歩いた。

「ここならシート広げても良さそうだな」

何とか下半身具合が落ち着いた俺は、やっと普通に歩ける様になった。
二人で監視員の近くの空きスペースにレジャーシートを広げる。
風で飛ばない様に、重しみたいなものを貸し出ししてくれているので、遠慮なく借りることにした。

「空くん、流れるプール行く?」
「ああ、何処からでもいいよ。てか軽くでも体操した方がよくないか?」
「あ、そうだよね。足つったりしたら怖いもん」

屈伸運動を、その場で始める真帆だったが……割と大きめなその胸が揺れる揺れる。

「え、何?屈伸なら伸ばさないとだよ?」
「あ、あと五分くらい待って……」

あの胸は俺にとって凶器だ。
俺の下半身をガンガン攻め立ててくる。
内股気味にしゃがみこむ俺を、彼女は心配して見つめる。

「あっ……そ、そういう……」
「こんなときだけ無駄に察しいいの、やめてくれ……」
「わ、私先に入ってるから」

そう言って彼女は流れるプールに入っていった。
ポニーテールにまとめられたその髪が揺れるのにあわせて揺れる胸。
もう辛抱たまりません。

少しして落ち着いた俺は、真帆を追って流れるプールへ。
案外まだ近くにいたらしく、真帆はこっちを見て手を振った。
近くまで行って、俺も水に入る。

心地よい温度だ。
外が暑いからか、ずっと入っていられる気がする。

「ほら、ここ流れ早いよ」
「あ、本当だ」

水流の元になっているところなのだろう、そこには人が何人か集まっていた。

「少し人増えてきてるね、あっち行こう」

真帆は俺の手を取って泳ぎ始める。
真帆とは高校からの付き合いだが、運動もそれなりにできるらしいということを最近知った。
水泳もそこそこ。

時折こっちを振り返って、真帆が笑いかけてくる。
俺もそれに対して笑い返す。
しかし、途中から真帆の様子がおかしくなっていることに気づいた。

「どうした?」
「そ、空くん……水着、流れちゃったみたい……」
「え、ええ?」
「大きな声出さないで……周りに気づかれちゃうから……」

こういうとき、どうしたらいいのか。
俺の手で隠すか?
いや、そんなことしたら俺も隠さないといけないところが出てきてしまう。

「空くん、こっちきて……」

真帆が片手で胸を隠しながら俺を手招きする。
近寄っていいんだろうか。
幸い俺の下半身は水の中だから、真帆に様子を気取られる心配はないが……。

「う、後ろから、両手で私の胸、隠してて」
「はぁ?い、いやさすがにそれは……」
「じゃあ、私の胸、誰かに見られてもいい?」
「いや、それは……嫌だ」
「そこに水着、浮いてるから……お願い」

ど、どうする俺!!
男としての意地を取るのか?
彼女の尊厳をとるのか?
……決まってる。

「お、お邪魔します……」

真帆の腕と胸の間から、手を差し込む。
ふにっと柔らかい感触がして、下半身に血液が送り込まれるのがわかる。

「もっと、ちゃんと隠して……」

後ろから抱きしめる様な格好で、俺は彼女に手ブラをする。
手のひらに、少し固めのものが……これはやばい。

「もっと、抱きついてよ……じゃないと、いちゃついてるカップルに見えないから……」
「あ、ああ……」

言われるままに抱きつく。
真帆は何かに気づいた様だった。
きっと、俺の相棒が当たったか何かしたのだろう、赤い顔が更に赤くなっている。

「そ、そこにあるから、行くよ?」
「お、おう」
真帆が動くのにあわせて、俺も進む。
うっかりすると真帆の尻に俺の相棒がぶつかってしまうので、慎重に動く。
ぶつかったら暴発、なんて悲劇も想定されるので慎重さだけは半端ない。

「と、取れた……まだ手、放しちゃダメだからね」
「あ、うん……」

何ならずっとブラの代わりしててもいいんだけど。
手の上に水着の上がかぶせられ、真帆がこっちを見る。

「手、放していいよ」
「あ、ああ、はい」

真帆は手早く水着をつけて紐を結びなおす。

「今度はほどけない様にしといてな」

なるべく真帆の方を見ない様にしながら、俺は注意する。

「ね、ドキドキした?」
「あ、当たり前だろ……見られたらどうしよう、っていうのとか……」
「それだけ?」
「そ、それだけって……」
「感触、どうだった?また触りたい?」
「そ、それは……」
「ふふ、時間切れ。また今度だね」

真帆はまたも意地悪な笑顔を浮かべて、水に潜った。
あ、今潜らないで!
俺の大惨事が知られてしまう。

「……エッチ」
「そ、そんな」
「うっそ。わかってるもん、男の子は仕方ないんだよね?」
「わかってるなら、突っ込まないでそっとしといて……」

少し泳いで、俺たちは一度上がって昼食を取ろうということになった。
真帆が、入場券のお返しに買ってくる、というので俺は待つことにした。
うち、屋上あんだけど焼いてく?

という文句を思い出し、せっかくきたんだし焼こうかな、などと思い立つ。
仰向けに寝そべっていると一人、こっちにやってくる人影があった。

「こんにちは、初めまして」

女だった。
若い様に見えるが、俺の知り合いにこんな人はいない。

「こ、こんにちは」
「連雲港空太郎くん、だよね?」
「え、何で……」
「私は何でも知ってるの。君が今抱えている問題も、その原因も」
「は?何を言って……」

真帆に聞かれるのは良くない話だ。
そう思って周りを見渡すが、いつの間にか人がいなくなっていた。

「な、何だこりゃ……」
「安心していいよ。君の大事な真帆ちゃんにはまず聞こえない。少しだけ、話をしようか」
「あ、あんた一体……」
「まぁ、君の今回抱える問題の原因である存在、ってところかな」
「俺の抱える問題って、もしかして」
「察しが良くて助かるよ。そう、君の視界についてだね」
「あ、あれがあんたのしたことだって言うのか?」
「まぁ、結果としてはそうなるかな」

女はふふっと笑い、俺を見た。

「気分はどう?まぁ、よくはないんだと思うけど」
「正直最初は最低の気分だったよ。普通に本物のうんこ食って倒れたしな」
「ああ、あれは予想外だったよ。嗅覚まで変えなくて良かったってちょっとほっとしたんだ」
「あんた、相当性格悪いな……」
「まぁね。でも、ちゃんと彼氏とかいるからご心配なく」

そんなやつがいるとしたら、とんでもないマゾでもなかったら務まらないんじゃないだろうか。

「まぁ、今回は自己紹介まで。今後もちょっと観察させてもらうことにはなるけど、大事な時なんかはなるべく見ない様にするからね」

そう言って、女は消えた。
すると周りの雰囲気も元に戻り、すぐに騒がしさが戻ってきた。

「あ、空くん起きた?」
「お?俺寝ちゃってた?」
「うん、何か気持ち良さそうだったからそっとしといた」
「そ、そっかごめんな」
「ううん、そんなに長い時間じゃなかったから。さ、食べよ?」

そう言って真帆はたくさんのうんこを持ってくる。
はぁ、これさえなかったら……もう何度目だこれ。
けど、真帆と一緒に食べてるんだから、美味しくないわけはない、と自分に言い聞かせる。

「こういう時期だから、手作りとかはちょっと怖いしね、でも少し落ち着いたら、お弁当とか作るのもいいかな。そしたら空くん、食べてくれる?」
「あ、ああ!もちろんだとも!」

真帆の手作りの弁当……中身はうんこ。
こんな可愛い子から……ダメだダメだ、そんなこと考えるな!
見てから考えろ!

普段よりも少し頑張って、俺はうんこを平らげていく。
焼きそば味、うどんかそばの味、味噌ラーメン味、フライドポテト味と色々なうんこ。
その様子を、真帆は嬉しそうに眺めていた。

「今日は空くん、元気いっぱいだね!」
「そ、そう?普段そんなに元気ないかな」
「ううん、そうじゃないけど、いつもより元気そうで良かった」

そのあとまた少し泳いで、着替えて帰路に着く。
疲れているのか、帰りのバスで俺に寄り添って寝息を立てる彼女を、愛おしいと思った。
しかし、あの女は一体何者だったのか。

俺の原因そのものとか言ってやがったな……。
そんなこと人為的に出来るものなのか?
考えても全く答えは出ない。

俺を観察しているなんて言っていたし、また現れることだろう。
考えることをやめて、俺は真帆の肩を抱いた。
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