手の届く存在

スカーレット

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本編

出逢いの始まり

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何事も、突然だった。
俺と彼女の出会いも、彼女との付き合い始めも。
そして、別れの瞬間も。

正直なことを言ってしまえば、初めて会ったときは何だこいつって思ったし、一般的には変人か不思議ちゃんにカテゴライズされるのではないかと思う様な、そんな女だった。
かと思えば俺と同い年と思えないほどに大人びた顔を見せることもある。
一言で言えば強いのだろう。
俺なんかよりも、ずっと強い。
そんな彼女に、俺はずっと憧れの様な感情を持っていた。

出会いは小学生の頃。
夏が近づく、少し蒸し暑い日だったと思う。
晴れわたった空が眩しく、夏の到来が近いのだと予感させる、そんな空模様の日。
地元の空手の道場に通っていた俺と、少し遠いところからたまたま家族の用事か何かで俺の地元に遊びに来ていた彼女。
彼女もまた彼女の地元で空手をやっていたのだと後から聞いた。
そんな彼女は道場があるのを発見し、館長に許可を得て見学にきていた。
当時の俺には彼女の強さはパッと見ではわからなかったが、彼女は俺のいた道場の稽古を一通り見て、こう言った。

「組み手を、やってみたいです」

当時まだまだ子供だった俺の脳裏には、道場破り!?という様な言葉がよぎり、館長以外の人間がざわつくのがわかった。
始めは渋っていた館長だったが、彼女が必死に何かを説明することで納得した様で、館長と彼女が同時にこっちを見た。
何人かに同時にこっちを見られると、何か悪口でも言われてる様な気分になるのは気のせいだろうか。

「宇堂、前に出なさい」

そんな俺の心境を知ってか知らずか、館長が俺の名を呼ぶ。
門下生以外の人間がいるからか、館長は普段より丁寧に俺を呼んだ。
え、俺?
何で?俺そんな可愛い子知らない。
何なら女の子の知り合いなんて身内にしかいない。
戸惑いを隠せず、動けずにいた俺に更に館長が続ける。

「宇堂、何をしている?早くきなさい。それとも、この女の子が怖いのか?」

少しイラついた様子で館長は言ったが、これはない。
安い挑発だと子ども心に思った。
大体、そんな挑発で動くのなんて頭の中が熱い、脳味噌が筋肉でできている様な人くらいじゃないのか。
そう思ったのはずなのだが……。

「怖いわけがないでしょう!」

考えるより先に口が動き、体は自然と前に出た。
俺も脳みそが筋肉で出来ちゃってるんだろうか。
言われっぱなしなのが癪だったのかもしれない。
彼女の身長は俺と身長は同じくらいか……。
経験者なのだろうというのは何となくわかった。

「私、姫沢春海(ひめさわはるみ)。よろしくね」

にこりと笑う彼女を、不覚にも可愛いと思った。
顔の造りは確かに整っていると思う。
大人になったら美人になる、とかよく言うがそれが正しい表現だろう。
短く整えられた髪もよく似合っている。
活発そうで、印象そのものは悪くない。

「宇堂大輝(うどうたいき)だ。女だからって手加減しないぞ」

アニメなんかでよくある、名字と名前の間を少し溜めて……有り体に言えばカッコつけて名乗る。
男の子だからな、カッコつけたかったんだよ。
そしてありがちなセリフ。
この言い回しがかませ犬の定番であることを、この数分後に思い知ることとなる。
そう、無様な俺の負けっぷりで。
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