手の届く存在

スカーレット

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本編

近づく刻

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「こんばんは、姫沢春海さんのご両親の方でお間違いないでしょうか」

一人の看護士が、声をかけてきた。

「はい、父親の春喜と妻の秀美です」
「こちらへ、どうぞ」

二人が診察室へ案内される。
俺はここで待とうと考えていたが、春喜さんが俺もくる様にと手招きしてくれたので、それに従う。

「春海さんなんですが、今は個室の病室に移動してもらっています」
「そんなに、悪いんですか?」

案内された診察室で、俺が恐る恐る尋ねる。
はっと息を呑む秀美さん。
いつになく真剣な眼差しの春喜さん。

「これをご覧ください」

女医さんが取り出したのは、春海の検査結果と思しき書類。
俺が見てもさっぱりだった。

「こちらは血液検査、こっちが尿検査…あとMRIにCTスキャンと、色々検査を実施させて頂いたんですが……」

思わず、ごくりと唾を呑む。

「尿酸値の値が高めなのと、白血球数がかなり多くなっています。これは、一般的に言う白血病の後期の症状に近いものです」
「白血病……!?」

秀美さんが卒倒しかける。
春喜さんがその体を支えて、座り直させた。
白血病……。

俺の知識では、ケガをしたときに血が止まらなくなったりとか、その程度のものでしかない。
もちろん、死につながる病気であることは知っている。

「以前から、具合が良くなかったとか辛そうにしていたとか、そういうことはありませんでしたか?」
「いえ、そう言った様子は……」
「私も、気付きませんでした。大輝くんは、何か気付いたこと、なかった?」

気付いたこと……何かあっただろうか。
少なくとも年末は普通に俺に稽古をつけたりできるほどに、元気だった。
卒業の頃はどうだろうか。
そういえば……。

「あの、全く関係なかったら申し訳ないんですが、普段眠りが深くて、睡眠もかなり長めに取るタイプの人がいきなり早起きとかする様になったりするものなんでしょうか」

朋美の見送りに行ったときのことだ。
確かあいつは四時くらいに起きて俺を起こしていたはずだ。
寝ぼけ眼の俺にコーヒー淹れたりしてたってことは、もっと早く起きてた可能性もある。

「もし、この検査結果通りの病気なんだとしてですが……体質変化というよりは、苦痛や苦しみでよく眠れないことがあって、それによって目が覚めてしまう、という方が正確かもしれません。結果だけを見ると白血病の後期に見られる数値なので、かなり前から無理をしていた、ということは大いに考えられます」

そんな素振り、一度も……一瞬も、春海は見せたことがなかった。
冷静だった春喜さんも、さすがに顔色が変わってきている。
秀美さんはもう顔面蒼白と言った様子だ。
俺は……どんな顔をしているのだろうか。

「非常に言いにくいことではあるんですが、症状とこの検査結果を見る限り、急性白血病で間違いないと思います。そして、病状としては」

この先の、女医さんの言うことが俺には何となくわかった。
恐らくは春喜さんと秀美さんも。

「手遅れ……です」

は?手遅れ……?
末期とか治療が難しいとか、そういうことじゃなくて?
何を言ってるんだ、この人。
ついこの間まで、春海は普通にしてたんだ。
元気だったんだ。
医者の言うことを認めたくなくて、頭の中がぐちゃぐちゃしてくるのがわかる。

「治療で何とかなる時期を、既に過ぎてしまっていると考えられます。初期の段階で発見できていれば、恐らくは治療で何とかなったはずですが……」

本当、何を言ってるんだろう。
春海に万一がある、そう言いたいのだろうか。

「手遅れって、どういうことですか?まさかとは思いますけど」
「大輝くん!」
「まさかとは思いますけど、春海が……」
「大輝くん、やめなさい。先生は、敢えて口にしなかったんだよ!」

春喜さんが俺を全力で制止した。
俺の肩を掴む春喜さんの手に、今までにないほどの力が籠もっているのがわかる。
春喜さんも、認めたくはないのだということが何となく伝わった。

「春海は、あとどれくらい持つんでしょうか……」

秀美さんが言う。
あの春海が、死ぬって言うのか?
死ぬって、何だよ。
わからねぇ……。

「はっきりとは申し上げられなくて恐縮ですが、恐らくはこの一ヶ月程が山場になるのではないかと……今も痛みや苦しみを緩和させる薬で症状を、緩やかにしてはいますが……」
「一ヶ月……」

俺の肩を掴んだまま、春喜さんが俯いて言う。
一ヶ月って。
何言ってんだよ、あの春海だぞ?
誰より強くて、誰より万能で……もはや全能とさえ言える様なやつだぞ?
そんな病気くらいで、あいつが死ぬって?
笑わせるなよ。

「春海に会うことは、出来ますか?」

春海に会って、確認したい。
春喜さんの手が俺の肩から離れる。

「……本来なら、面会謝絶と言う状態に近い、と言えます。ですが、事情が事情ですのでお会いになってください」

女医さんが看護士を促す。
俺たちは看護士さんについてエレベーターに乗り、春海のいる病室へと向かった。

「入るよ」

春喜さんが先立って病室へ入る。
俺たちも、後に続いた。

「面会時間は二十時までですので、近くなったらまた参ります」
「わかりました」

春海を見ると、ベッドに横たわっていた。
腕には、点滴がついている。

「春海……」
「全部、聞いてきたんだね、その顔」
「ああ。お前……わかってたんだろ、結構前から」
「何でそう思うの?」
「お前が春海だから、だ」
「そっか……」
「俺、言っとくけど怒ってるからな」
「だよね、ごめん……なんて言っても許してもらえないかな」
「春海、何で黙ってたんだい?先生が言うには、かなりの苦痛やら伴うって話だったじゃないか」

春喜さんが問う。
春喜さんの言うことはもっともだ。
俺なら耐えられただろうか……全く自信はない。

「気付けなかった私たちも、もちろん悪いけど……」

秀美さんもやや憔悴した様子で言う。

「何で、か。心配かけたくなかったってのもあるんだけど……せっかく入った高校だったから、って言うのが一番大きいかな」

俺の鼓動が跳ねた。
こいつ、まさか……あんな約束の為だって言うつもりか?

「お前……まさか俺との約束の為に……?」
「うん、私、ずっと楽しみだったから。夢だったの。大輝と同じ学校で高校生活過ごせるの、ずっと待ってた」

そんなことのために、想像を絶するであろう苦痛や苦しみに耐えて何でもない顔を装っていたと言うのか。
どうすれば、そこまで強くなれるのか。

人が人を想う力か?
そうなんだとすれば……。

「俺……」
「大輝?」
「俺がいなかったら、お前はもっとちゃんと……」
「大輝くん……」
「そんなことを言ってはダメよ、大輝くん」

一番参っていたのではないかと思われた、秀美さんの言葉にハッとする。

「前に言ったじゃない、あなたは春海の救世主だったのよ」
「……それは、朝の寝起きの話だったじゃないですか」
「もちろん、それだってそう。けど、春海は大輝くんと出会ってから本当に変わったのよ。毎日が楽しそうで……」

そこまで言って、秀美さんが声を詰まらせた。
涙が出そうなのを、堪えている様だ。

「君が出会いまでを否定してしまったら、春海が今までしてきたことが、全部無駄になってしまう。本当に全部。そんなことにだけは、させないでくれ」

秀美さんが言おうとしてたであろう言葉を、春喜さんが引き継ぐ。

「…………」
「ねぇ、大輝」
「……何だ?」
「パパとママが言った通りなんだよ。私、大輝と一緒にいたかっただけなの。だから、今日まで耐えてこられたの」
「そうかもしれないけど!けど……それでお前が……」
「聞いて?人が人を想うって、凄いんだってこと、大輝には覚えててほしい。だって、こんなにも頑張れるんだよ?」

ゆっくりと起き上がって、春海は言った。
こんなに辛そうな春海を、俺は見たことがない。

「だから、誰かを想うって気持ち、忘れないでね?私のことは、忘れてもいいから」
「ふざけるなよ、お前……忘れられるわけ、ないだろうが!」

自然と声が大きくなってしまう。
忘れろなんて、どうして言えるのか。

「大丈夫。今はまだ時期じゃないけど、いつかまた必ず会えるから」
「何だよそれ……」
「まだわからなくても良いよ。そのうちきっとわかるから」

何を言ってるのかわからなかったが、わかりたくなんて、なかった。
俺には春海がいて、それで毎日高校に通って、バカなこと言い合って……たまにエロいことなんかもして。
そんな当たり前の毎日があれば、それでいい。
それだけで、良かった。

とりあえず、明日秀美さんが春海の着替えを持ってまた来ると言っていた。
春喜さんは仕事があるらしく、来られないと言っていたが、終わって間に合う様なら必ず来ると。

俺は明日、バイトがある。
休もうかとも思ったが、春海に止められた。

「歩みを止めてはダメ。私はまだ大丈夫だから、来れるときに来てくれたら満足だから」
「わかった。明後日は来れると思うから……」
「うん。メールするから。余裕あったら電話するね」

帰りは春喜さんが車で送ってくれた。
うちに泊まって行くかと提案されたが、とてもそんな気分にはなれず、丁重にお断りした。

翌日。
重い気分が晴れることはないまま学校へ行った。
俺が施設に帰った頃には良平は既に寝ていた様で、追求されなくて済んだのが救いか。

野口にはまだ、春海の病気のことは伝えていない。
信じきれていない自分がいる。
だが、伝えなければならないだろう。

昼休みになり、野口のいる教室へ。
野口を呼び出し、学校の中庭へ行った。
人気のない中庭が、春海の話をするには丁度良いと思った。

「……え?嘘、だよね?」
「そうならどんなにいいんだろうな。俺も嘘だと思いたい」

全てを語ると野口は、半ば予想していた通りの反応をした。

「え、そんな……」

いつもの軽口や下ネタが飛び出してこない辺り、相当ショックを受けているのだろう。
俺はまだこの現実が受け入れられず、感情が麻痺してしまっている様な気分だ。

「ごめんなさい、今の話……本当なの?」

昇降口の方から声がした。
声がして、前髪つきのポニーテールが特徴的な女子が姿を現した。

「宮本、だっけ。聞いてたのか」
「ごめんなさい、今日姫沢さんきてないからあなたに事情聞こうと思って着いてきちゃって……」
「そうか、聞いちゃったものは仕方ない。本当だよ。俺も昨日、身内でもないのに全部、話聞いたんだ」

本当、あの医者はちゃんと診察したのかよ、と今でも思う。
学校にいると、病院で起こったことや聞いたことが全部嘘だったんじゃないかと思えてくる。

「まだ、あいつは諦めてない……と思う。俺だって。だから宮本、それに野口。他言無用でお願いしたい」
「誰に言えって言うの、こんな話……」
「言わないよ……言えないでしょ……」

二人ともが悲痛な面もちだ。

「なあ宮本、春海と仲良かったのか?」
「仲良かったっていうか、出席番号近かったから。自然と話す機会があったって言うか……」
「なるほどな」

春海に、俺や野口以外にも仲の良い友達が出来ていた事が少し嬉しかった。
もしかして春海は、こうなることがわかっていたから友達をあまり作らなかったんじゃないだろうか。

「とりあえず、そういうわけだから。明日は俺も見舞い行くけどお前らもくるか?」
「私はパス。さすがに初めてのお見舞いは宇堂くん一人で行ってあげてよ」

野口が力強く言う。
こいつの明るさも、時には人を助けることがあるんだな。

「私も、遠慮する。心配はもちろん心配だけど、姫沢さんが最初にきてほしいのは多分宇堂くんだろうし、女子と一緒になんて行ったらガッカリすると思うよ」
「そうか、なら明日はごめん、俺一人で行ってくるな」
「明後日なら一緒に行っても良いと思うし、お邪魔しようかな」

野口が軽くはにかむ。

「そうね……それなら私もお邪魔するわ」

宮本も遠慮がちに言った。
それなら、とどちらからともなく宮本とも連絡先を交換した。

帰ってすぐ、バイトのこの日。
俺は高校に入学してすぐに、近所のコンビニの面接を受けた。
とにかく働いて金を貯めておきたかった。
だけど今は……貯めてどうするんだ、と少し思い始めてしまっていた。

徐々に、俺の中で絶望がその口を広げ始めているのがわかる。
そしてそれは確実に、俺の心を蝕むのだろう。
それでも今はまだ、呑まれてやる訳にいかない。
その思いだけで、無理やり前を向いていた。


「おはようございます」

コンビニの事務所に入り、荷物を置いた。
今日は忙しくなるのだろうか。

「おお、おはようたいちゃん」

そう言ったのはオーナーの#__楠木勲__くすのきいさお#さん。
温和な性格で、怒ったりしているのを見たことがない。
昔は荒れていたこともあったらしいが、今ではその面影はない。
もちろん、仕事で必要があれば叱ることはある。

だが、一度言ってそのあと引きずらないので、バイト受けは良い。
俺をたいちゃんと呼ぶのは昔からで、俺のことは小さいころから知っている。

「今日は奥さんいないんですか?」
「ああ、ちょっとこどもの用事でね。代わりに愛美さんがきてくれるってさ」
「げっ、あの毒婦ですか……」
「あはは、毒婦って!」

柏木愛美かしわぎまなみ、確か二十六歳だかのフリーター……だったかな。
あんまり興味がなかったのでうろ覚えだ。
名前と裏腹に、愛があって美しいわけではない。

見た目は綺麗だと思うが。
愛に飢えた、見た目だけ美しい女。
もう一つ仕事を掛け持ちしてるんだったか。

きっつい下ネタと酒癖の悪さを見てから、俺はあの女を毒婦と呼んでいる。
酒癖の悪さは絡み酒ということもあって、俺も以前大いに被害を被った。
さっさと結婚でもして寿退社すればいいのに。

ああ、彼氏いないんだっけ。
適当にナンパでもしろよ、と常々思っていた。
勤務開始時間五分前。

「おっはようございまーす!」

元気良く入ってくる人影が一人。

「……おはよーございます」
「おお、今日はいきなりでごめんね、お弁当持ってっていいからね」
「やったぁ!……何しけた面してんだよ、辛気臭い」

俺を見て毒づく毒婦。
さすがだぜ。

「べっつに。あんたと顔合わせんのかと思うと憂鬱だっただけだよ」
「んだとこのガキー!!」
「ほらほら、仲良いのはいいけど、仕事仕事!今日も宜しくね!」

パンパンと手を叩いてオーナーが言う。
お前のせいで怒られたじゃないか、毒婦が。
何だかんだ仕事はこの毒婦から教わっただけあって、組んだときに仕事がやりやすいのは確か。

「笑顔は接客の基本」

などと宣っていたが、当の本人も割と気分屋なのか仏頂面をしてることもある。

「何かあんた、本当に今日元気なくない?何かあったの?」

店が暇な時間になると、いつも決まってこいつは俺に話しかけてくる。
俺はと言うと、毒婦に毒盛られたらたまらないので適当にあしらう。

「何もねーっつの。腹減ってるだけだよ」
「ふーん?まぁ、悩みがあるなら、このお姉さんが聞いてあげるから!何でも言いなよ?」

お姉さんの部分を、やたら強調して言う。

「お姉さんの部分、強調しすぎじゃね?」
「今何か言ったか、このガキャ……」

黒いオーラが滲み出る。
接客業でこれは良くない。

「いや、まごうことなきお姉さんだと思った、うん」

そういえば、昼休み結局昼飯食い損ねたんだった。
というか、準備すらしてなかった。
そりゃ腹も減るわな。

あいつらは教室戻ってちゃんと食ったかな。
意味不明な心配をした。
腹減ってると、ダメだな。

そんなことを考えながら何とか二十二時までを過ごし、ようやくバイト終了の時間になった。

「お疲れ様でした」 

夜勤の人たちに挨拶をし、俺と毒婦……もとい柏木さんは事務所に戻った。

「なぁ、宇堂?本当大丈夫か?いつもと違いすぎて怖いぞ、お前」

本当、何で俺の周りってこう、鋭いやつばっかなんだろうな。

「大丈夫じゃないって言ったら、助けてくれるのかよ」
「何だよ急に……私に出来る範囲でならな」
「へっ、冗談だっつーの。いらん心配してないで自分の婚期でも心配しとけ」

そう言った刹那、柏木さんに襟首を掴まれ、そのまま壁際まで追い詰められ、ぶつかった。
ドォン、という音がして、再びの逆壁ドン。
あれ、これ何てデジャヴ?

「結婚の話はするな……」
「は、はい」
「それはそれとして」

柏木さんが俺から手を離し、俺の襟首を直しながら言う。
何これ、現実で結婚できないからって疑似結婚ごっこ?
ちょっとだけ新婚さんみたいでドキドキしたよ、うん。

「何だろうなぁ、お前から一方的にウザいオーラを感じた気がするんだが」
「何もねーよ。話の続き早くしてくれよ」
「ああ、そうだった。ケータイ出せ」
「はぁ?何でだよ?」
「いーから出せっての。それとも何だ、素っ裸にされて全身身体検査される方がお好みか?」
「直ちに出します」

横暴過ぎんだろこの年増……。
そんなことを気取られたら何されるかわからないので、表情だけニコニコしとく。

「ほら、あたしの番号とアドレス入れといた。あとあんたのもコピっといたから」
「何してんの……」
「相談、いつでも乗ってやるから。あんま抱え過ぎんなってこと。わかった?」
「……へいへい、そりゃどーも。明日朝早いんで帰りますよ」

今優しくされると涙が出そうだ。
そんなことを気付かれればいじられるに決まってる。
なので足早に帰宅した。

帰ると、メールが数件きていた。
一件は春海。
十九時過ぎに送ってきた様だ。

『何か少し落ち着いてきたかもしれない。まだ油断できないって言ってたんだけど、もしかしたら一時帰宅出来る日がくるかもって』
『返事遅れてごめん、バイトだった。それは喜ばしいな。明日、見舞い行くからその時ゆっくり聞かせてくれよな』

素っ気ないかな、とも思ったが続きは明日でいいかと思い直し、そのまま送る。
もう一件は宮本明日香みやもとあすかとある。
宮本か、あいつ明日香って言うのか。
早速送ってくるとは。

『こんばんは、宇堂くん。今日ちゃんとお昼食べた?お昼休みすぐ出てきてたみたいだし、その時何も持ってる様子なかったから……私はちゃんと食べたよ。野口さんとも仲良くなりました。宇堂くんのおかげだね、ありがとう』

何だろう、よく見てんなぁ。
俺のこと好きなの?

『メールありがとう。実は昼飯の存在自体思い出したのバイト中でな。これから昼夜兼用の食事とるとこ。心配させたみたいならごめん』

送り、最後の一件。
送信者がお姉さんとなっている。
誰だよ、俺の知り合いにお姉さんなんていない。

スパムの類だろうか、最近増えたなそういえば。
と思いつつも開いてみる。

『スパムだと思ったり、なんて失礼なこと考えてないだろうなお前……。ついさっきまで壁ドンしたりと熱い夜をちょっとだけ過ごしたお姉さんだ、思い出したよな?お前昼食べるの忘れるくらい、思い詰めてんだろ。夜はちゃんと食えよ。』

心配してくれてるのはよくわかった。
しかし、本当口悪いなこの人は……。
せっかく見た目は綺麗なのにもったいない。
と思ったら追加メールがきた。

『あと、お前が私を毒婦と呼んでいることは知っている。毒婦か、言葉のチョイスにセンスを感じるよ。何でも知ってるお姉さんより』

こっわ!!独身の怨念極まってるな。

『ごめんなさいでした。二度と言わないのでどうかお許しを。ご飯はこれから食べます』

それから何通かメールがきて、返してを繰り返し、風呂に入って寝ることにした。
今夜も眠れるかわからないが、それでも寝ないと明日に差し支える。
こんな不安を抱えながら春海は、この数ヶ月を過ごしていたのだろうか。
そう思うと、やりきれない気分になる。
そんな気分を振り払う様に、布団を被って目を閉じた。


十九話に続きます。
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