手の届く存在

スカーレット

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~Girls side~第8話

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めでたく大輝に携帯を渡せてから一年、いつでも何処でも、それこそ風呂でも用便の最中であろうと自家発電中であろうと連絡が取れる様になった。
これにより、大輝に勉強を教えるのも簡単になったし、お互いの負担を減らすこともできるのだ。
それもこれも、家が離れてるのが全部悪い。

もういっそパパに頼んで大輝をうちの子にしちゃう?
禁断の愛のやりとり……背徳感がたまらないです。
婿養子、なんてのも魅力。

メールでのやり取りが基本の勉強会。
写真で問題を送ってきて、後ほど回答を送ってくるというやり方だ。
あ、この問題間違えてる。

『今の問題、惜しかったね。代入が間違っちゃうと、全部がおかしくなっちゃうから落ち着いてやったらいいかも』

考え方というか、発想はいいんだけど、惜しいなぁ。

『了解、もう少し頑張って解いてみる』

勉強のときは素直だ。
携帯についてるカメラなんかハメ撮りくらいにしか使わないだろ、とか大輝は考えてたみたいだけど(冤罪)、こういう使い方がある、と教えると目から鱗と言った様子で毎日捗っている様だ。
この一年で私たちの関係は……進展なんかしてない。

とても不満だ。
主に欲求が。
大輝の誕生日を盛大に祝ったりして、プレゼントのおまけに私の処女あげよう、なんて思って準備万端だったのに華麗にスルーされて、私は陰で泣いた。

けど、本人は大いに喜んでくれていた様なので帳消しだ。
やや恐縮している様だったけど、嫌みなく

「うち、見ての通りお金持ちだからさ。あんまり気にしないで?」 

さらりと言うことで大輝も納得してくれた。

「それに、パパもママも息子ほしいみたい。気が早いよね」

私は大輝の息子がムスコ的な意味でほしいんだけど、とは言えなかった。

そして今日は普段お勉強頑張ってるし、息抜きがてら週末デート。
前に大輝の地元行った時に見かけて、見たかったものがあるんだよね。
今日は大輝を少しだけ待たせたみたいだ。

「大輝、待った?」

大輝の目の前で手をひらひらさせて、着いたことをアピール。
何かボケーッとしてる。

「何、大したことないよ。こんなのは待った内に入らない」

はっとして、キリッと効果音が聞こえそうな顔をしたが、目やについてる。
あとでさり気なく教えてあげなきゃ。

「普通に待ってないよ、とか言えれば合格点なのにね」

もちろんそんなのは期待してない。
大輝はこのまま、少年でいてほしい。

「しかしあれだな、この辺も巡り尽くした感あるな」

そうなのだ。
裏道はもちろん、ホテルがどの辺にあるとか、人目につきにくそうなところが何処にあるとか、そういうのは熟知している。
そしてそれはもう、色々な意味で準備万端であることを表す。

「そうだねぇ。それだけ長く付き合ってきてるし、沢山会ってるってことだけどね。嬉しい?」

私は嬉しい。
ちょっとボディタッチ的な意味で物足りないけど。

「ああ、嬉しいよ」 

素直な大輝は可愛い。
けど、奥手な彼氏にちょっとだけ意地悪してやる。

「うわぁ、素直過ぎてきんもーい」

きもいことを強調するべく、「き」と「も」の間に「ん」を入れる。
ちょっと泣きそうな顔してる。
多感な時期だもんね、女の子にこんなこと言われたら傷ついちゃうかな?

「たまにはそういう気分になることもあるんだよ」
「そういう気分って?ムラっと?」
「…………」

引いた顔も素敵。
舐め回したくなる。
でも、ちょっとそういうこと考えてるよね。

何だか今日は絶好調過ぎて色々ぶっ飛ばしてる気がする。
生理前だからかな、もう何か大輝を食べちゃってもいいかなって思ってる。
もちろん下の口でな。

「あはは、ドン引きの表情頂きましたー」

そんな考えを振り払う様に、わざと明るく振る舞う。
考え込んでると、気付いたら事後でしたなんてことになりかねない。

「ちょっと行ってみたいところあるんだよね」

話題を無理やり切り替える。

「あれ?宇堂じゃない?」

切り替えるつもりが、何者かに邪魔された。
誰かは知らぬがいい度胸だ……相手になろうぞ。

「げっ…………」

まずいやつにまずいところを見られた、という大輝の顔。
相手は3人。
全部女子か…みんななかなか可愛いな。

ざっと二秒ってとこかな。
何がって?
……まとめて屠るのに必要な時間さぁ。

「げっ、ってご挨拶じゃない?」

ボブカットの女の子が大輝に言う。
まぁ、クラスメートだろうな。
この子は……ああ、この子も大輝の虜なわけね。

……敵か、敵なんだな?
さっき声をかけてきたロン毛……は古いか。
長い髪の女の子はどうやら友達以上の好意を持ってないみたい。 

もう一人の……目大きいなぁ。
ゴルフボールくらいあるんじゃないかと思うくらい大きい目をした子は……恋愛より甘いもの、みたいな顔してる。
太ってるわけじゃないけど、沢山食べるっぽい。

「いや、まさかこんなとこでクラスの女子に会うとは思わなかったからさ」

爽やかイケメン風に大輝は言う。
似合わないこともないけど、それまさか普段からやってないよね?

「あれ、そちらは彼女さん?」

他人の男女関係など興味なさそうな、巨大な目の子が私を見て言う。

「初めまして、姫沢春海です。大輝とお付き合いしてます、宜しくね」

大輝のクラスメートなんだろうから、それなら遠慮はいらないだろう。
ちょっと笑顔を意識して言ったが、引きつってないといいな。
私の独占欲の強さは性欲の強さと同程度に私を困らせる。

「噂の彼女さんだ!凄い美人だね!」

ボブカットの子が騒ぐ。
鎮まれ……ここは往来ぞ。

「噂の……?」

そんなことはおくびにも出さず、小首を傾げる。
大輝が可愛い、なんて思ってくれるなら、この首180°くらい回しても、私構わないよ?

「ああ、結構みんな知ってるんだよ、宇堂くんに彼女いるの」

ゴルフボール・アイが言う。
長いし呼びにくいね、却下。
名乗り早よ。

「っと、自己紹介してもらったのに、こっちがまだでごめんなさい」 

あら、心の声聞こえちゃった?
3人がそれぞれ名乗る。
よし、互いに名乗ったらあとは決闘だ!

剣を取れ!
……そんなことするわけないよね。
ボブの、大輝ラブな子は桜井朋美というらしい。

大輝を見る目が、泥棒猫のそれだ。
偏見かなぁ。
ボブはボブらしくボブにでも惚れてりゃいいのに。

でもそんな名前の外国人、探す方が大変か。
長い髪の子は井原圭織。
活発そうなイメージがある。

よく通る声してるし、私的には好感度やや高め。
ゴルフ……目の大きい子は野口桜子。
背の小ささがちょっとマスコットっぽくて可愛いかも。

「じゃあ、俺も……俺は宇堂た」
「「「「それは知ってる」」」」

大輝の珍しいボケに四人の声が揃う。
何?鳳凰院さんにでも憧れてるの?

「じゃあ、今おデート中だね?」

桜井さんが私と大輝を交互に見て言う。
本当は大輝だけ見てたいんだろうに、健気だなぁ。

「あ、ああ、まあ……」

照れくさそうな大輝。
学校じゃこんなことはないんだろうな。

「じゃあ、邪魔しちゃ悪いね」

井原さんが私に気を遣ってる。
いい子だなこの子。

「私たちも女子三人でデート……女子三人で……」

野口さんはちょっと打ちひしがれている。
女子三人、いいじゃない。
百合とか売れると思うよ。

しかし、何かこのまま立ち去るのもやな感じ。
私が桜井さんに嫉妬して、大輝を引き離そうとしてるみたいに見えたら嫌だ。
ということで、

「そーだ!もし良かったら、みんなでご飯でも食べようか」

わざと明るい声を出して提案する。
は?マジでか?と言いたげな大輝の視線はこの際無視する。
それに、普段な大輝の様子も聞きたい。

「え、でも邪魔しちゃ悪いんじゃ……」

遠慮してる風だが、桜井さん、あなただけは嬉しそうなのを、私は見逃していない。
ラッキー!って顔したよね。

「せっかく知り合ったんだし。それに私たち毎週会ってるから、そんなに気を使わないでも大丈夫。ね、大輝?」

まぁ、毎週独占してるし、たまには一般開放するのもね。

「ああ、そうだな。別に俺はどっちでも……」

煮え切らない。
歓迎するよ、なんて言ったら私にぶっ飛ばされるとか思ってるのかな。
まぁ、ぶっ飛ばすけど。

「じゃあ……ご一緒しちゃおっか?」

桜井さんが残り二人を見て言ったので、決まり。
近くにあるファミレスで、みんなでお昼ご飯にすることになった。

お店に入ると大輝は男性店員から怨みの籠もった目で見られていた。
まぁ可愛い女の子4人も侍らせてるんだし、役得料だと思って。
注文を済ませて、ドリンクバーは大輝が取りにいく。

ガールズトークに男子は立ち入れないのよ。
とは言ってもすぐ戻ってくるだろうし、どうせ混ぜられていじられることになる。

「あの……宇堂って二人だとどんな感じ?」

桜井さんが躊躇いがちに聞いてくる。
どんな目的があるのかはわからないけど、そりゃもうネットリグットリよ、なんて言ったらどんな顔をするんだろう。
ちょっと言ってみたくなったが、さすがに昼間から飛ばし過ぎるのは、と思って自重する。

「どんなか……割とあのまんまだと思うよ?私たち付き合ってるって言っても、所謂大人の関係ってとこまで行ってないから」
「お、大人の関係……」
「やだなぁ、さすがにわからないってことはないでしょ?」

何この子、可愛いとこあるじゃない。
具体的な単語を口にしてないのにもう赤くなってる。

「こないだやっと携帯もお揃いの買って、普段から連絡取れる様になったばっかりなんだよね」

ほら、これの色違い、と言って携帯をちらつかせる。

「へ、へぇ……ラブラブだぁ……」

桜井さんは少しグロッキー気味になってきてる。

「メールのやり取りとか見る?」
「えっ、そんないいの?」
「ほら」

例のあいうえお作文。
三人はそれを見て笑った。

「ネタ古くない?宇堂本当はいくつなのよ」

井原さんがゲラゲラ笑う。
女子力ひくーい。
手叩いて笑うなんて、チンパンジーみたい。

「何か、楽しそうでいいな……」

桜井さんも軽く笑いながら言う。
その、いいな、は大輝と付き合えていいな、にしか聞こえない。
同情して大輝をあげちゃったりはしないけど。

けど……何だろ。
大輝って可愛いし、愛され体質なのかも?
ハーレム作る素質あったりして。
そういうの作っちゃうのも、選択肢としてはありなのかな。

「まぁでも、うちの両親は大輝のことすごく気に入ってるね。こないだママが部屋のドアの前にいるのに絶叫告白してたし」
「絶叫……?それどんな状況?」

先日の私の部屋でのやり取りを説明すると、再び笑いが起こった。
時々伏し目がちになるのは気になるが、桜井さんも楽しんでいるみたいだった。

「あっ、きたきた、おそーい」

そんなことを考えていると、大輝が戻ってくるのに桜井さんが気付いて声を上げる。

「ほれ、飲み物。自分らで取ってくれ」

大輝は全員分をトレーに載せて持ってきたみたいで、テーブルにトレーごと置いて自分の分を取った。

「そこは、お待たせしましたー、って笑顔でみんなのとこ置かないと」

ウェイトレス姿の大輝も悪くない。
想像して鼻の下が伸びそうになった。
スカートだってきっと似合うに違いない。

ちゅーっと飲み物をストローで飲む大輝を見てほんわかしていたが、桜井さんもまた、大輝を見ている。
その私の視線に気付いた桜井さんが一瞬こっちを見て、赤くなって慌てて目を逸らしてきた。
何故かニヤニヤしてしまった。

案外こういうの嫌いじゃないのかな。
すっかりとさっきまでの敵意は消えている様だった。

「さて、それじゃ宇堂も戻ってきたし、そろそろ二人の馴れ初めを……」
 
井原さんが口火を切る。
まぁ、予想できた展開ではある。
私は別に恥ずかしいことが特にないし、構わない。
大輝は……うん、頑張って。

「いや、待て。そんなのまで話さないといかんのか?断固拒否するよ、当然」

大輝は慌てた様子でこっちを見る。
私はウインクを一つ返して、全然違うところを見る。
視界の端で大輝ががっくりしてるのが見えた。

「えー?じゃあ宇堂の携帯からの初メールの内容、みんなに言っちゃうかなぁ」

桜井さんもノリノリになってきている。
大輝のこと諦めるきっかけにでもするつもりなのかな。

「あと、春海ちゃんの部屋で絶叫告白して親御さんに聞かれてたエピソードとか」

野口さんも手を貸す。
この子も大輝のことは嫌いじゃなさそう。

「わかった、言えばいいんだろ!」

半ばヤケになって大輝が言う。
君は女の子にいじられる為にここにいるのだよ。
潔さと諦めは大事だね、うん。

「良かったー、説得できて」
「脅しだろ!!」

大輝がボソボソと私たちの馴れ初めを語り始める。
特に脚色はされていないが、意図的にキスシーンなんかは省かれた。
まぁ、大輝じゃ仕方ないか。
それにそろそろ限界近そうだし、助け船でもと思ったら料理がきた。

「あ、料理きたね。先食べちゃおう。冷めちゃったら勿体ないし。続きは食べ終わってからね」

私が言い、桜井さんもいただきますをしてみんな料理にとりかかる。
予期していたものではないにしろ、こういうのもたまになら良いな、なんて思ってしまう。
私は甘いのかもしれない。

「なぁ、そういえばさっきので思いだしたんだけどさ。俺の携帯からのメールってどんな内容なんだ?」

粗方食べ終わってデザートでも、なんて考えていた所で大輝が口を開いた。
私に向けた質問だった様だ。
そりゃ、内容知らないんだもんね。

「ん?宇堂自分で送ったのに内容知らないの?覚えてないとか?」
「いや違う。そもそも俺が送ったもんじゃないし、あれ」

ああ、種明かししちゃうのかこの子。
空気の読めなさも可愛い。

「あー、あれね。ちょっと待って」

大輝が見たいと言い出すのは想定の範囲内だったので、さっきのメールは開いたままにしてある。

「これかな。はい」

そしてそのまま携帯を大輝に手渡す。

「……ナニコレ」

またバカなことしてる、という顔をする大輝。

「あいうえお作文……だと……しかもこの内容……序盤懐かしすぎて俺生まれてないかもしんない」

怒ったりしない辺り大輝は器が広いなと思う。

「よくできてるでしょ」

ちょっと得意げに胸を張って見せると、大輝が目を見開いて唾を飲むのが見えた。
まぁ、最近大きくなってきてるし大輝は見ちゃうよね。

「あー、宇堂が春海ちゃんの胸見てエロいこと考えてる!!」

井原さんが大輝の視線に気付いたみたいで、冷やかす。
女の子は男が何処見てるって敏感に感じ取れる生き物なんだよ、大輝……。

「おま!んなわけねーだろ!」

場所が場所だけに慌てて取り繕うが、私もここはいじりに加わらせてもらっちゃおう。

「考えてないの?そんなに私魅力ない?」

もごもごと口ごもって返答に窮する大輝を見てみんなで笑う。
一見するといじめに見えたりしないかと心配になるが、私たちの笑顔に邪悪さがないのは見てわかるだろう。

「そういえば、この間も腕組んだら動ける様になるまで時間くれって…」
「やめろおおおぉぉぉおお!!!」

それから二時間くらい、大輝いじりは続いた。
途中嬉しそうにしてる様に見えてMの素質が目覚めたのかと勘違いしそうになる。
料理の到着によって中断した馴れ初めの続きを説明させられているときはちょっとだけ可哀想に思ったが、私も補足を加えたりしてフォローしといたし大丈夫だろう。

馴れ初めへの異常な食いつきを見せた桜井さんは、諦めた様子もない。
むしろ炎が燃え上がってしまったのではないだろうか。

結局私たち女子四人は連絡先を交換した。
この子たちとは何となく仲良くなれる、そんな気がする。
そのあと三人は別の用事があるとかで私たちとは別行動に。
桜井さんは名残惜しそうだったが、外せない用事の様で仕方ないと言った表情を見せた。

「大輝、燃え尽きてない?」
「ああ、半分はお前のおかげさまでな」

大輝は遠い目をしながら三人を見送る。
その割にはまぁまぁ楽しそうだったけどね。

「あんなに女子に囲まれるのも、ちょっと前に妄想したことあるけど実際囲まれると疲れるな」

溜め息混じりに大輝が言う。
贅沢者め!

「ふぅん……」

少しだけヤキモチ発動。
まぁ、特に接触があったり……しなかったこともないけど、別にあれを浮気判定してしまうほど心は狭くない。

「ま、待てって。喜んでたわけじゃないから。楽しくなかったわけでもないけどさ。あんなのはもうさすがにいいわ」

これは本音っぽい。

「まぁ、私も楽しかったけどね。いじられてる大輝は可愛いよね」

愛玩動物みたい、とは言わなかったが心の中でわーしゃわしゃわしゃ、とやってしまう。

「お、男の子に可愛いとか言っちゃいけないんだぞ」
「へぇ、女の子にゴリラって言うのはいいんだ?」

ニヤリと笑って意地悪く言う。
まぁでもそろそろゴリラのことは忘れてあげようかな。

「わ、悪かったって。大体そんなスタイルいいゴリラいてたまるかよ」

なんて思ってたら意外にも嬉しいことを言ってくれる。

「本当?本当にそう思う?」
「ああ、思うね。贔屓目に見ても普通にスタイルいいと思う」

日々特に努力という努力をした覚えはないが、誉められればやはり嬉しい。

「やった!多分もうちょっと胸はおっきくなるかなと思うよ」

そしたら大輝のとコラボしてホットドッグ……なんて。

「そ、そうか」 

そんな私の邪な妄想に気付いたのか、それとも大輝も同じ様なことを考えたのか。

「大輝のは……きっと毎日おっきくなってるんだよね?」

縮んだり伸びたりしてるんだろう。
男はそういうものだと言うことは知っている。
大輝は理解ある女の子っていいと思わない?

「一言余計じゃありませんかね!」

少し落ち着いたところで(大輝の下半身的な意味で)、さっき私が言っていたところへ行こうということになった。

そこは、昔ながらの駄菓子屋さんだった。

「あー、ここか。俺も少し気になってたんだよ」

かなり古い建物だが、お菓子や玩具、くじなんかが所狭しと並べられている。
アイスストッカーなんかもあるみたいで、割と幅広くやっているのだろう。
奥にはもんじゃを食べたりできるスペースもある。

「あ、紐飴あるよ大輝」

一人で来てたら、ダウジングの真似とかしてたかも。
まぁ、力使えば紐飴でもダウジングとか出来ますけどね。

「こっちにはベーゴマ……生で見るの初めてだわ」

生という言葉に脳みそが過剰反応してしまう。
なんていやらしい子なのかしら!
自分で自分にツッコミが入ってしまった。

色々物色して、目に付いたものを割と片っ端から買う。
ここからここまで全部頂戴!
なんてやってみたかったけど、食べきるのは大変そうだからやめておく。
もんじゃもちょっとだけ気にはなったけど、さっきご飯食べたばっかりだし遠慮しとく。

駄菓子がパンパンに詰まった袋を持って、近所の公園へ。
こういうデートは私も好きだ。

「結構買ったねぇ。それでも1000円行かないってすごい」
「確かに」

コンビニなんかだと少し高めなのだろう。
同じだけ買ったらいくらになるのか、想像がつかない。

「あんず棒、凍ってると美味しいね」

安い味といえばその通りなのだが、それがまたいい。

「あー、前よく食べたわ」

言いながら大輝はソース煎餅に梅ジャムを塗っている。 

「そういえば大輝」
「ん?」

私は、さっきの女子会もどきで思っていたことを打ち明けることにした。

「桜井さんだっけ?あの子、大輝のこと好きだと思う」

あんず棒を食べきりながら言う。

「ぶっ!!……はぁ?いきなり何を言い出すんだお前は……」

盛大にソースせんべいを吹き出し、大輝は信じられないという顔をした。
有り得ないなどと思っているみたいだ。

「女の勘ってやつかな。あと、大輝を見てる桜井さんの表情」

自らの幸せに気付かない愚か者め、裁きの鉄槌がくだるぞ。

「まさかぁ……大体、春海と付き合ってること、割と早い内から知ってたと思うし」
「自覚してすぐに私の存在を知った、って感じじゃないかな、多分だけど」

それに、気になる相手だからいち早く情報をキャッチできた、ってこともありえる。

「いや、そうは言うけど……あいつが何かアクション起こしたりしなきゃ決定打に欠けるんじゃないか?」

軽いドヤ顔の大輝。
理屈は通ってると思う。
それだけにちょっと腹立たしい。

もちろんこの怒りを爆発させたりはしない。
大輝が私に罪悪感を持つ様仕向けるだけだ。

「でも……」

しゅん、としおらしげに大輝を上目遣いで見る。
気付けよこんにゃろ!と心の中では思ったりしてる。
女の子って割とこういうとこあるよね。

「えーと、もしかしてヤキモチ?妬いてくれてるの?」

当ったり前じゃーい!
絶対桜井さんは大輝を諦めてない。
そりゃヤキモチだって妬きますわ。

「うん。これも多分だけど、大輝って女子から人気あると思うし。可愛さに気付いてる子、結構いるはずだよ」

大分素直に思ってることは打ち明けたつもりだが、大輝はまだ半信半疑と言った表情だ。

「仮に春海の言う通りだとしてさ、俺が春海を裏切る様に見える?」

ああ、そういうことね。
仮に彼女が何かしてきても大輝が裏切ることはないでしょ?と言いたい訳か。 

「ううん、大輝ヘタレだし、まずそれはないと思う。大輝が自主的に裏切りに走る確率ははぼゼロだろうね。私がどれだけアプローチかけても一線超えようとしないし」

ヘタレという言葉にやや苦笑いを浮かべる大輝。

「あるとしたら、大輝のことが好きっていうのを抑えきれない子が暴走して逃げ切れなかったり、ってパターンかな」

まぁ、暴走しそうなのは私も同じだけど。
ちょっと想像しちゃったのか、やや青ざめている。

「今日私たちと会って、桜井さんたちは半分私の品定めしてたんじゃないかな。あとはどの程度大輝が本気か、とか」
「ええ……」

女って怖い、なんて思ってるんだろうけど、案外こんなのは序の口だと思う。
ひどいとあからさまなアプローチかけたり駆け引きしたりってザラだし。
少し考え込んでいた様子の大輝が、私を見て言った。

「……んー……春海、俺にどうしてほしい?どうしたら春海は安心できる?」

待ってました、その言葉。
本当なら私の大輝を誰の目にも晒したくはない。
危ないやつだと思われてもいい。

けど、大輝は物じゃない。
わかってる。
だからちょっとだけ我が儘を言ってみる。

「あの子たちと縁切って、って言ったら切るの?大輝優しいし、そんなのは無理だよね?」

仮にそれが出来るとしたら、それはもう私の好きな大輝ではなくなってしまう。

「極端すぎるな、さすがに。それに春海も一応、あいつらとは友達みたいなもんだろ?」

表情からそれはちょっと、というのが窺えた。

「どうかなぁ…今日たまたま会っただけだし、次いつ会うのかなんてわからないし。他人以上友達未満に近いんじゃない?」
「深いな……」

私って嫌な子だなぁと思う。
もし独り占め出来たとしても、桜井さんが私の手の届かないところで暴走したら意味ないのに。

「ねぇ、週末デートだけど……来週からは私の家にしない?」

それでも、出来る限り独り占めしたい。
だからこんな提案をしてしまう。

「あー……」

単純に女の影が見えるのが嫌なだけで、別に大輝に非があるわけではない。
大輝は純粋に友達として接しているだろうし。
ちょっと我が儘が過ぎたかと後悔しそうになる。

「春海がそれで安心できるんだったら、それでいいよ。ていうか、もっとワガママ言っていいんだしさ。あ、友達と縁切れとかは無しだけど」

笑顔で言う大輝を見て、ちょっとした罪悪感が芽生える。
こんないい子を縛ろうなんて、私は何をしてるんだろう、なんて考えてしまった。

「私、結構嫌なやつだよね。独占欲っていうの?強い気がする」
「そんなもんじゃないの?俺だって他の男子が春海に言い寄ってたら嫌だって思うから」

そうか。
私は、女の影が見えることではなくて大輝の気持ちが見えないことが嫌だったのかもしれない。
それが今、少し大輝の気持ちを聞くことが出来たことでスッと何かが心の中を降りていくのを感じる。

「それに独占欲だけじゃなくて性欲とか色々強いよ」

私はそれが少しだけ嬉しくなり、つい調子に乗って胸を張る。
お家デートの件を撤回することも少し考えたりしたが、やはり一度言ったことは実行するべきだろう。
ということで。

「私が満足できるかはわからないし、できないかもしれない。けど、落ち着くまででいいから、私の家でいい?」
「わかった、いいよ。二人の時間ってことでさ」

特に異を唱えることもなく、あっさりと了承を得た。
あとで定期買って渡しとこう。

それと……たまにはうちに泊まってもらって、二人の絆をより強固なものにしよう。
そんなことを私は考えていた。
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