手の届く存在

スカーレット

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大輝編33話~強欲の果てに~

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「さて、大輝。選択の時だよ」

俺は、睦月の家のリビングの誕生日席に座らされ、選択を迫られていた。
何故こんなことになっているのか。
俺にもよくわからない。

夏休みもあと一週間ほどで終わろうかという今日、朝起きて顔を洗って、朝食でもと思ってキッチンへ。
すると、全員がリビングに集合しているではないか。
朋美に明日香に桜子、愛美さんに和歌さん、ノルンさんにロヴンさん、何故かフレイヤ。

そして睦月。
こんなにリビング広かったっけ。
そう思っていたが、その疑問はすぐに氷解する。

ノルンさんが空間を広げているのだとわかった。
そして、リビングにあったテーブルの大きさも倍くらいになって、椅子は単に数を増やしただけの様だった。

……こんなことに力使うなんて。
そして、睦月が現れ、いきなり座る様促されたのだ。

「なぁ、俺何かまずいことしたっけ?」

訳がわからないのも気持ち悪いし、特に思い当たる様なこともない。
せいぜい先日朋美にエロ動画を見てることがバレたくらいのものだろう。
しかし、あれくらいは許してほしい。

美女や美少女に囲まれて暮らしている俺だけど、ご馳走ばっかりじゃ人間は飽きてしまう。
よって、ファーストフードみたいな体に悪いものもたまには食べたくなったりすることもあるのだ。

「ううん、まずいことは特にしてないと思う。何か心当たりあるの?」
「いや……」

そう言って朋美を見ると、何で私?という顔をした。
どうやらあの件ではないみたいだ。
次に桜子を見た。

桜子とは男女逆転プレイに興じたことがあるので、もしかしてそれがバレたのかな、なんて考える。
しかし桜子も、普段と変わらない表情だ。

「うん、何もない」
「何で今朋美と桜子を見たの?」
「いや、気のせいじゃないか?みんなの顔を見回しただけだし」
「ふーん。まぁいいけどね。今日はそういうことは別にいいんだ」

睦月が何処からかホワイトボードを持ってくる。
足のついた、会議とかで使う様なやつだ。
本当、どっから持ってきた……。

そして、俺以外全員の名前を書き連ねて俺を見た。

「大輝、上から順番にその人のいいところを挙げてみて」
「は?何だ突然」
「挙げられないってことは、その人にはいいところなんかない、ってことで」
「ま、待て。展開早すぎるぞ」
「じゃあ、どうぞ」
「いきなり言われてもな……」

まず最初に書いてあったのは睦月の名前。
カッコでくくって、ご丁寧にスルーズ、と書いてある。

「睦月は……そうだな、心が広い。スタイルがいい。色々知ってる。強い」
「最後のは女の子に言うものではない気がするのだけど……」
「んー、まぁ言われて嫌な気分ではないね。じゃあ次」
「次は……朋美か。努力家だな。あと……料理が上手い。最近胸がでかくなった」
「ちょっと、そんなところこんなとこで褒めるの?」
「まぁまぁ……他にはある?」
「んー……一途なところとか」
「ふむふむ」

睦月が俺の挙げたいいところとやらを次々書いていく。
一体何がしたいんだろうか。

「なぁ、これに一体何の意味があるんだ?」
「いいから。次……桜子だね」
「コミュ力高い。盛り上げ上手。小さくて可愛らしい……勉強ができる」

桜子の学力の高さには度々お世話になっている。
もちろんベッドの中でもお世話になっているんだが、桜子は教えるのが上手いと思う。

「なるほど、次明日香」
「んー、いい匂いがする。上品だ。あと……情熱的」
「あんまり褒められてる気がしないわね……」
「まぁまぁ。それだけ?」
「え……うーん……何気に女子力高めだよな」
「本当、抽象的ね」
「まぁいいや、じゃあ次愛美さん」
「愛美さん……んー」

愛美さんか。
床上手、とか言ったら殴られるだろうか。

「優しい。女性的な一面が割とある。色っぽい。懐が広い。頼れる」
「お前、床上手、とか思わなかった?嬉しくないこともねーけど」
「じゃ、じゃあ床上手も……」
「次は……和歌さん」
「和歌さんか」

大食い……男勝り……いやどっちも悪口だな。

「義理堅い。人情に厚い。胸が大きくて形が良い。初々しい」
「何だそれは……褒める気あるのかお前……」
「あとは?」
「一緒にいて楽しい。尽くすタイプだ」
「そ、そうだよそういうのでいいんだ……」
「ノルンかな、次は」

女神も評価しないといかんのか……逆じゃないのか、なんて思ったりする。
俺も女神だけど、何となく恐れ多い気がする。

「ノルンさんは……無邪気だ。ちょっとしたことで赤くなったりするところが可愛い。天真爛漫ってイメージ」
「貧乳、とか言わないでね」
「それ悪口じゃないですか……」

貧乳には貧乳のいいところがあるんだ、きっと。
口には出さないが、目でそう伝えると白い目を向けられた。
何故なのか。

「ロヴンは?」
「ロヴンさんは……一生懸命だよな。尽くすタイプだと思う。苦しんでたんだと思うけど、今はいい女に変身したなぁ、って思う」
「何かくすぐったいな、こういう褒められ方は……」
「ロヴンの褒め方が一番一生懸命っぽく聞こえるのは気のせい?」
「大輝がそんな贔屓みたいな真似をするものか。率直な感想だろう」
「も、もちろんですよ」

元があれだっただけに、今のロヴンさんの変貌っぷりは俺も驚きを隠せなかった。
正直ぐっとくることも多い。

「最後、フレイヤ……はいっか」
「ちょっと!扱いがぞんざいじゃない!?」
「だってフレイヤだし……」
「そんな意地悪してやるなよ……」

フレイヤのいいところ……案外優しいんだけど……あの性欲の強さはちょっと困りものだ。
もちろん、そういうときにはドーピングしてくれるから何とかなってるけど……。

「フレイヤはこう見えて優しいやつだぞ。あと、色々とエロい。何しててもエロい。全てをエロに直結させられる」
「最初以外褒めてないわよねそれ……」
「そんなことないぞ?俺はすごいと思う。さすがはエロの女神」
「ちょっと、色々混ぜないでよ。二つ名は美の女神よ」
「出揃ったね。じゃあ……私は」

睦月がホワイトボードを眺めて、一息つく。

「胸が大きさ変わってなくて、料理がまずくて怠惰で……」
「!?」
「でかくて不細工で勉強はからっきし」
「な、何言ってんのお前……」
「あと、臭くて下品で冷めてる」
「いやいやいや……」
「冷酷で男勝りで、色気がなくて心が狭くて、頼りない」
「お、おい……」
「義理も人情もなくて胸がでかいだけで形が悪い。阿婆擦れだ、と」
「…………」
「邪気にまみれて何があっても顔色一つ変えない、人間味の薄いやつで、生きる気力が希薄」
「えっと……」
「手抜きばっかりで放置するタイプ。苦しんだ経験なんか皆無で、今は更にブスになった」
「はぁ……」
「こう見えて冷血。色々と色気がない。何してても色気がない。全てにおいて色気がない」
「あのー……」
「だって大輝、私の評価に入れてくれなかったから。ならきっと、反対のこと思ってるんだろうなって」
「極端すぎるわ!想像したら何かすごい女が頭の中に生まれたぞ」

桜子と朋美、明日香辺りが、睦月の言うことを聞いて吹き出している。
そんなこと言いながら、俺も少し笑ってしまいそうになっていた。

「何がおかしいの?私がブスだから?」
「バカだな、ブスだなんて思ってねーよ……」
「バカだとは思ってるんだ」
「い、いや言葉の綾です」
「まぁいいんだけど……最近構ってもらえなかったのもきっと、そういうのが原因なんだよね」
「は?いやいや、お前不在がちだったから……」
「と、いうわけで大輝には、この中の誰か一人を選んでもらいます」

……えっ?

全員が、俺を見る。
さっきまで笑っていた朋美や桜子、明日香までも真顔で。
今の話のどこに、そんな要素が?
俺がこの中の誰かを選ばないといけないの?

「えっと、何で?」
「大輝、ちゃんと考えてる?私たち、みんな大輝が好きで集まっているけど、この歪な関係をいつまで続けられるのか、とか」
「そ、そりゃ……」
「本当に?じゃあ具体的にどうするかとか決めてるの?」
「そ、それは……」
「こういうの言いたくないけど、愛美さんとか和歌さんは私たちより年上で、結婚とか子ども意識しててもおかしくないんだよ?」
「そう……だな」

確かにそうだ。
先日愛美さんの母親に会ったときにも思ったことはあった。
もちろん和歌さんだって。

「そのあと、私たちだって大人になって結婚や出産を考える様になるよね」
「そうなるよな、当然……」
「大輝が、全員を大事に思ってくれてるのはわかってるつもりだけど……私たちには、大輝の気持ちがわからない」
「だから、あんなこと聞いてきたのか?」
「それもある。だけど、それだけじゃないよ」

俺にも、わからない。
睦月の意図するところが。

「じゃあ、それぞれアピールタイムと行きますか」
「は?」
「だから、アピールタイム。だって、私たち大輝に捨てられたくないし」
「ちょ、ちょっと?」
「それとももう決めてるの?」
「そ、そうじゃないけど」
「じゃあまず誰行く?」

座っていた明日香が、立ち上がった。
真っ直ぐ俺を見て、一瞬俯いた。

「大輝くん、私……本当ならあなたの全部がほしい。時間も、愛情も全部独り占めしたい。だけど、今のこの状態も楽しめてる自分がいる。もしあなたが私を選んでくれるなら……お父さんに頼んで、組の跡継ぎの権利をあげるわ」
「明日香……」

お、重いよ!
組とか別にいらないんだけど……でも、それくらい堅い決意をしてるってことにしとくか……。
次に、朋美が立ち上がった。

「大輝。私を選んだら、いいこと一杯あるわよ」
「へ?」
「これ、何だと思う?」
「何だそれ……」

朋美が取り出したのは、ドレッシングとかが入っていそうな容器。
中身は透明の半液体という様な……もしかして。

「そう、ローション。おっきくなってきた私の胸で、また挟んで……今度は痛くなくいいことできちゃうよ」
「お前、一生のことなのにそれで俺を釣るつもりなのかよ……」
「も、もちろんそれだけじゃないわよ。ちゃんと尽くすし……明日香みたいに組一つあげるなんてことはできないけど……」
「わ、わかった。とりあえずもうわかったから」
「もう……」

そして次に立ち上がったのは、愛美さん。

「あたしは……正直結構いい年だし大輝に無理させてんじゃないかな、なんて思ってる。だから、もし大輝が他の誰かを選ぶって言うなら潔く身を引こうと思ってる」

今までの面子と違う攻め方できたか。
いや、これが本心だったら、と思うと余計なことは言えないが。

「けど、選んでくれるんだったら……あたしの全てをお前にやってもいい。一生をかけてその恩に報いるよ」

これまた重い……選ぶ、ってそういうものなのか?
一生かけるのはこっちだって同じなのに。

「私は、毎日大輝にすごいいい思いさせてあげるわよ?それこそ、病み付きになっちゃうくらいの。神界で暮らせばお金の心配もないし、何も気にしないでいられるんだしね」

フレイヤが立ち上がる。
一人の男としては、大変魅力的な提案です。
ちょっとそれさわりだけでもやってみてもらっていいですか、なんて言いたくなるのをぐっと堪える。

「私は……大輝くんにあげられるものとかあんまりない……けど。胸も小さいし。だけど、ごく普通のでよかったら、円満な家庭を作ってあげたりできるとは思う」

桜子が控えめに言う。
胸が控えめだからってそんなとこまで控えめにしなくてもいいんだぞ?

「わ、私は……貯金だけならそこそこあるんだけどな。大輝が望むならそれも差し出そう。あとは、大輝が望む様にプレイに……」

言いながら顔を赤くする和歌さんは本当に可愛らしいと思う。
年齢の差とか、気にしないでいられるし。
けど貯金はいらないです。

「はいはーい!私を選んだら、大輝の望む未来を作ってあげるよ。それこそ寸分違わず」

それはそれで怖い。
さすがは運命の女神だが、怒らせたりしたらどうなるのか、と肝が冷える。

「私は……そうだな、桜子と似てしまうかもしれん。私は大輝のおかげで大分変われたが……特にしてやれることというのも思いつかない。だが、不幸にはしないと思う」

ロヴンさんはそこそこ胸あるのに控えめだ。
いや、胸関係ないんだけどな。

「全員言ったかな。じゃあ、最後に私」

どんなとんでも発言が飛び出すのか、と睦月を見つめる。
昔からこいつのめちゃくちゃな部分に振り回されてきて、それでも楽しかったなぁ、などと考える。
そう、俺の心はもう決まっていた。

「私は……初めて会ったときからずっと大輝を見てきて、それこそ生まれ変わってもまた一緒にいられて……幸せだと思う。朋美が加わってから始まったこの関係だけど、私は正直満足してるんだ。大輝がこれほどまでの男になったこと。ノルンと被る部分は出ちゃうけど、私も私の力の全てを尽くして大輝の為に尽くす自信はある」
「睦月……」

案外まともだ。
もっとぶっ飛んだ発言を期待していたのだが……。

「さて、大輝。選択の時だよ」

とまぁ、冒頭に至るわけだ。

この発言を受けて、俺は自分がいかに我が儘で欲深い人間なのかということを思い知る。
誰かを省いた未来、誰か一人を選んだ未来というものが、俺にはもう想像できなくなっていた。

勝手なことだというのはわかっている。
本来であれば許されないことなんだということも痛感している。
それでも、俺はこの関係を崩したいと思えない。

「ありゃ、出てきちゃったか」

俺の全身を、黒いものが包んだ。
今までに見た渦のどれよりもでかく、濃い闇の様な渦。

「大輝、誰か一人を選ぶことで、その渦は簡単に消えると思うよ。どうする?」
「誰か一人……」

睦月の言うことはわかる。
それを実行すればいいのだと。
だが、俺にはもう、誰か一人を選ぶなんていうことは出来ない。

今いる全員に序列なんかつけたことはないし、贔屓もしない。
全員を満足させたいし、全員を幸せにしたい。
全員で笑っていたいし、全員で楽しく過ごしたい。

一般的に無茶で無謀だ。
絶望的ですらあるとは思う。
破滅の未来が待っているかもしれない。
だが。

「お、俺は……」
「…………」

全員が無言で見守る。

「俺は、誰も選ばない……」
「大輝?」

誰の声かはわからないが、俺を心配する声がした。


「俺は、全員が大事で、全員で未来を築き上げたい!!欲張りだってわかってる!!卑怯な言い分だって理解もしてる!!だけど!!誰か一人でも欠けた未来なんかいらない!!全員が俺はほしい!!全員でいて、俺は楽しかったし幸せだった!!超楽しかった!!!文句あっか!!!」

力の限り叫ぶ。
腹の底から、全てを搾り出すかの様に。

「たとえお前らが俺に愛想を尽かしても、俺はお前らを捨てない!!!俺は、全員を愛しているんだっっ!!!!!」

どこぞのスーパーサイヤ人なのかというポーズを取り、俺は叫んだ。
割と最低な内容を絶叫していた気がする。

「具体的にこうしてあげる、みたいな話をくれた人たちには悪いと思うけど、俺はそのどれかを選ぶなんてことはしない」

肩で息をしながら、全員を見回しながら告げる。
酷なことを言っているかもしれない。
だが、永遠なんてものはない。

あっても俺や他の女神たちだけのものになってしまう。
なのであれば、限りあるものであるならば。
俺は出来る限りの時間を、全員と過ごして行きたい。

これでも伝わらないのであれば、仕方ない。
そう覚悟もしていた。

「なるほど、よくわかった」

睦月が口を開いた。

「大輝は、誰かじゃなくて全員を選ぶ、そういうことでいいんだよね?」
「ああ……そうだ」
「そっか……」

睦月は少し口元を歪め、立ち上がると自室へ入っていった。
それに続くかの様に、他の面々も部屋に入っていき、俺はリビングに一人になった。

ダメだった……のか?
力の限りを尽くした結果、本当に脱力して俺は椅子に座り込んだ。
言えることは言った。

みんなが思う不安ももっともだ。
俺の理想とみんなの理想が必ずしも一致するとは考えていない。
何処かに齟齬が生まれるのは、仕方ないことだ。
そう思う一方で、みんなに見放されたのかと思うと、少し悲しくなってくる。

だが、これでみんながそれぞれの人生を歩めるのであれば。
俺のしたこともあながち無駄ではなかったのではないか、とも思えた。

「はー……そうか、これで……」

天井を見上げて一人呟いた、その時だった。

全部の部屋のドアが一斉に開いて、何度か破裂音がした。
ヤー公のカチコミかぁ!?
などと考えるが普通に考えてありえない。

「よくできました、大輝」

全員がクラッカーを手にしている。
何故か睦月は絶妙なバランス感覚で頭にでかいケーキを皿ごと載せていた。

「……は?」
「わかってたよ。大輝がそう言うだろうってこと、全員が」
「な、何、何で?」
「だって大輝、欲張りだもん」
「大輝くんが誰かを選ぶなんてこと、するはずないって言い出したのは睦月ちゃんなんだけどね」
「え……」
「最後の渦、強欲のなんでしょ?ロキから聞いたんだ。だから、大輝の一番大事にしてる部分をつついたら出てくるかなって」

何言ってんだこいつ……。

「みんなに芝居させるのは気が引けたんだけどね。でも、あれくらいじゃないと大輝の本音なんて引き出せないから」
「私は……別に選んでくれるならそれでも良かったけどね。でもやっぱり、もうこの関係が馴染んでるから」

みんな、どうかしてる。
あんなイカれたこと言われて、何でこんな幸せそうな笑顔を?

「けど、あれが建前ではなくてちゃんと私たち全員を幸せにしてくれるんだろう?」
「大輝なら、それが出来るって信じてるから、あたしたちはこうしてずっといるんだぞ」
「私だって、大輝がいなかったら正直どうなっていたか……一つ黙っていたことがあるんだが、聞いてくれるか?」

ロヴンさんが申し訳なさそうに俺を見た。
全員が、ああ、あのことか、と理解している様だ。

「実はな、大輝とここにいる全員の縁は、既に堅く結んであるんだ。私の手で。私が解いたりしない限り、切れることはないぞ」

それって職権濫用じゃないんですか。
ていうか何で俺に教えてくれなかったんですか……。

「大輝がどれだけ私たちを大事にしてくれてるか、ちゃんとわかったし。今日はそのお祝いでも、とね」

睦月が頭に載せたケーキをテーブルに置く。
そんなに大きいものだとは思っていなかったが、実際に見るとイメージの倍くらいの大きさがある。

「さ、食べよう。切り分けるから」

着々と切り分けて行く睦月の手元を見ながら、俺は何故か泣いていた。

「あれ、大輝くん泣いてる?」
「おいおい大輝、どうした?」
「そんなに私たちの演技が真に迫ってた?」

違う。
いや、それもあるかもしれない。
けど……。

「安心したんだよね?」

睦月が近づいてきて、俺の頭を抱いた。
そんな様子を、みんなが笑顔で見守った。

「ごめんね、でも軽くなったでしょ?」

そう、渦はすっかりと消えていた。
そして、その代わりに俺の中に何かが芽生えた。
その何かの正体を知るのはもう少し後になるが、これで俺はやっと、乗り越えることができたのだ。
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