手の届く存在

スカーレット

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本編

大輝編35話~異世界を作ろう!

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新学期が始まって、一ヶ月ほどして俺の誕生日を迎える。
全員が色々と手を尽くし、プレゼントを用意してくれて、晴れて俺は十六歳になった。
全員で濃厚なプレイをしたわけだが、今回はそれについては省くことにする。
変わったことと言えば、今まで消極的だったメンバーが超がつくほど積極的になって、様々な楽しませ方をしてくれたことくらいか。

今回は、それについてはいい。
いや、ホント良かったんだけど……今回言いたいのは、そういうことじゃない。


「ちょっと、相談があるんだけど」

睦月がまた、ロクでもないことを考えている様だった。
今度は何をしようと言うのか。
正直、こういう時の睦月にはあんまり関わりたくない。

「大輝は、パラレルワールドって信じる人?」

放課後の屋上で、睦月が言う。
パラレルワールドって、並行世界とか言われるあれか。
あってもおかしくはないが、無いとも言い切れない。
実際に見たわけじゃないし、何より現実味がない、というのが正直なところだ。

「信じるかどうか、って言われたら正直眉唾物だよな。だって見たこと無いし。でも、神界とかあるのは知ってるし、無いって断ずることはできない、って感じかな」
「ふむ……ちょっと、見てみる?」
「は?そんなことできるの?」
「実はね」

睦月が言うことには、厳密には違うものなんだけど、別の運命を歩む地球は作ってあるんだということだった。
作ってある、って……何言ってんのこいつ。
この地球とは違う星で、しかし同じ宇宙に一つ星を生み出してあり、そこに地球と酷似した環境を構成する。

人間もいれば動物もいて、文明も存在する。
この地球との違いといえば、妖精やドラゴン、魔物が存在するところくらい、と睦月は言った。
くらい、って……物凄く違うところだと思うのは俺だけなのか?

俺がおかしいのか?
文明レベルは十五世紀前後で構成されたその世界は、もう一つ、作り出した擬似地球を乗っ取るという。
というか擬似地球って何だ?

「んとね……まぁ、簡単に言うと、この地球のコピーみたいなものかな。私とか大輝はいないけど、他の人間は大体存在するよ」

さらりととんでもないことを口にする睦月。
神ってこういう、突拍子もないやつばっかりなのだろうか。

「まぁ作ったのはロキなんだけどね、どっちも」

以前睦月がロキに借りを作った際に、一つだけお願いをされたのだとか。
そのお願いというのが、この二つの星の管理だった。
もちろん、ロキも要所要所で手伝ってはくれる様だが。

「まぁ、この二つの星って言うか、後々一つの星になっちゃうんだけど」
「どういうことだ?」
「よくラノベなんかで異世界転移とかあるじゃない?あれの逆っていうか……」
「逆?よくわからないな」
「ドラゴンが存在するほうの世界が、擬似地球を乗っ取っちゃうの。つまり、擬似地球の人間は丸ごとドラゴンのいる環境に放り込まれる様なイメージだね」
「お、鬼かお前……普通の人間がドラゴンと戦ったりできると思うのか?しかも現代人だろ、コピーってことは」
「そうなんだよね。そのままだと人間が絶滅しちゃうから、是非アイデアがほしいの」

アイデアったって……できることって言ったら俺たちの力を貸すとか、そのくらいしか思いつかない。
しかし、貸す力の程度によっては人間側が無双状態になって、面白みがない。
ある程度の危機感は持たせつつ、という方がきっと睦月としては面白いと感じるのではないかと思った。

「ちなみに、キャラメイクはロキが一人一人全員分を細かくやったから」
「は!?人口どんだけいんだよ」
「大体同じくらいだから……両方で一三〇億くらい?」
「どんだけ暇なんだよあいつ……」

その時、俺の中のファンタジー好きの一面が顔を覗かせた。

「選ばれた人間を四人選出して、そいつらに神の力の一部を貸す、ってのはどうだ?」
「おお。さすがは夢見がちな少年」
「その言い方やめない?俺中二病とか患ったこと無いんだけど」
「まぁそれはいいとして……四人って、どうやって選ぶの?」
「そうだな……それぞれの星の人間のリストとかないのか?」
「あるにはあるかな。でも、物凄い量だよ?」
「げ、マジか……まぁいいや、とりあえず見せてくれ」

睦月が目の前にモニターを展開して、そこにぱっと人物名と簡単な生い立ち、年齢等のデータが映し出された。

「こ、この中から選ぶのか……」
「ちょっとどころじゃなくて大変な作業だと思うよ」
「む、睦月、これはさすがにお前がやってくれないか?」
「私?すごい適当に選んじゃうよ?」
「仕方ないだろ、これにかかる年月を考えたら、短縮できるとこはしとくべきだ」

そんなわけで選ばれし四人の選出は睦月に任せた。
ドラゴン側から四人、そしてコピーから四人。
睦月が選んだその人物を見て、俺は一つ気になった。

「……なぁ、何で男二人しかいねぇの?」
「んー、大輝の好みに合わせてみたつもりなんだけど」
「は?俺の?どういうことだ?」
「だって、大輝ハーレム好きでしょ?」
「…………」
「嫌いなの?」
「答えにくい質問を……」

何はともあれ選出が終わると、選ばれた人間の特性などを考える。

「一回死んだら終わり、とかだと後々大変そうだよね」
「相手が相手だからな……一日に死んでも大丈夫な回数でも設定しとくか?三回目は本当に死んじゃう、っていう感じで」
「まぁ、それくらいなら簡単だよね」
「ある程度敷居は低くしとかないと、さすがに選ばれたはずの英雄がバッタバッタ死んでくとかじゃな……」

続いて、アイテムが持てる数の上限等について話し合う。
正直無限でもいいのだが、どうやって持ち歩くのかという問題が生まれた。

「これも神の力で解決しちゃおっか」

便利だ、神の力。
大人の事情に通じるものを感じる。
ウェストポーチの様な鞄を一人一つずつ与えて、その中に無限に物が入る仕様にすることになった。
名前は向こうで使う人が勝手に考えてくれるだろう。

「ああいう世界だと、さすがに旅しながら寝泊りするとこ探すの大変なんじゃないか?」
「ああ、そうか、地続きになってるところでも、街が続いてるわけじゃないもんね。いいとこに気づいたね大輝」
「いや、昔から気にはなってたんだよ。RPGとかでトイレとか風呂どうしてんのかなって」

普通に考えたら青空の下で、ってことになるんだろうが、女の子ばっかりのこのパーティでそれをさせるのはさすがに忍びない。

「まぁ、風呂もトイレも無い、ってなると超絶臭いパーティになったりしそうだよね」
「敢えて言わないでおいたのに、お前……」

粗方の設定はできた、と睦月は言ったが、俺にはまだこだわりたいところがあった。

「なぁ、属性とかラスボスとか決めないのか?」
「属性?大輝はメガネ属性だっけ?」
「嫌いじゃないけど、違うからな?あと、そういう意味じゃない」
「っていうと、火属性、とか氷属性、みたいなの?大輝やっぱり中二びょ……」
「言うな……言って後悔してるんだ、頼むから……」
「でもそれ面白そう。採用」

そんなわけで各英雄に、属性がつけられることとなる。
人数が多いので被りも出てしまうが、これで臨機応変に龍に立ち向かえる様になる……と思う。
そして、ラスボス。

「正直私たちが出張ってもいいんだけどね」
「圧倒的すぎんだろそれ……勝負にすらならねぇよ」
「だよねぇ……だと、仮にでも設定しとく必要はあるか」

こればかりは二人で考えていても案が出なかった。
仕方ないので、助っ人を招集するべく睦月の部屋へ。


「で?何か面白そうなことしてるって聞いたけど」

朋美だけはバイトがあるとかで都合がつかず、それ以外のメンバーで話を進めた。

「なるほどな、じゃあ……威厳あるのと、えっ?こんなのが?みたいなのどっちがいい?」

愛美さんがノリノリで紙とペンを用意する。
手書きで作るつもりなのだろうか。
もしかしてもう、粗方考えついてるんじゃ……。

「……ぶっ」
「もしかしてこれ、朋美?」

愛美さんの中では、朋美はラスボスのイメージらしい。
本人がいなくて本当に良かった。
てか絵、上手いなぁ。

「まぁ、コピーでキャラメイクしてもいいんだけど」
「それか、本人に出張ってもらうか?」
「いや……さすがに英雄たちに深刻なトラウマ与えることになりそうなんだが……」
「あ、今の録音したから。あとで朋美に聞かせてあげよう」
「ば、やめろ!!」
「見た目だけでも、朋美感を消してやらないか?」

和歌さんがちょっと気の毒そうに言う。
そもそも何で朋美なのか。
確かに怒らせたら殺されかねない恐ろしさはあるが……あれでも一応普通の……いや普通じゃないけど女の子だというのに。

「髪型は……そうだな、こんなのどうだ?」

何だか懐かしさを感じる。
電撃なんとかってグループに、こんな頭した人がいた気がする。
てっぺんがつるつるに剃り上げられていて、サイドがピン、と横に立っている。

「目は朋美のまま行こうぜ」

目だけが朋美。
物凄くカオスだ。
桜子が笑いを堪えてプルプルしている。
笑ったら殺されるとでも思っているのだろうか。

「んで、鼻は……コンセント刺しとくか」

何故コンセント……。
意味を理解して吹き出してしまう。
こんなの、卑怯だと思う。

「口はそうだな、悪役らしく何か絶えずくっちゃくっちゃやってる感じで……」

愛美さんの絵心に正直驚く。
目だけでもう、何かが狂ってしまった朋美にしか見えない。

結局出来上がったのは、電撃何とかの人みたいな頭で朋美の目をしていて鼻コンセントをしていて口元がいつもくっちゃくっちゃやってる……上半身にはサラシを巻いて、下はふんどしにハイヒールを履いているという意味不明な人物だった。
武器はチェーンソーらしい。
桜子が笑いを堪えきれずに盛大に吹き出して、それを合図にしたかの様にみんなでゲラゲラ笑う。
正直夢に出そうだ。

「へぇ、楽しそうじゃない」

ぴたりと笑い声が止む。
……この声は。
何故、ここに……決まってる……犯人は……。

「バイト終わったって連絡きたから、連れてきてみたんだけど」

お前……何ということを……彼氏の人生こんなところで終わらせるつもりか……。

「性格の設定行こうか、もちろん性格はサイコパス、だよね大輝?」

朋美の目が怪しい煌きをたたえる。
まだお前、あのこと気にしてたのか……。

「いいえー?気にしてませんけど?サイコパス、いいじゃない。ねぇ?そんな私でも、愛してくれるんでしょ?」
「は、はひ」
「と、朋美、これはだな」

仲裁に入ろうとした和歌さんが、朋美の目を見て後ずさる。
あの和歌さんですら敵わないんじゃ、俺マジで殺されたりしないかこれ。

「と、朋美聞いてくれ。実は、お前をあっちの世界のお姫様としてコピーを作ろうとしてたんだ!」
「お、お姫様?」

一瞬想像したのか、朋美は少し頬を赤く染めた。
チョロい、これならいける!

「でも、それだとラスボスと兄弟か姉妹か、みたいな話になっちゃわない?」

せっかくぽわんとさせた頭を、睦月が余計な一言でクリアにしてしまう。

「大輝、ゆっくり話しましょうか。何、時間はたっぷりあるもの。明日の学校?いけるなんて思ってないよね?」
「お、落ち着け。まだデザインの段階だから、愛美さんに頼んでちゃんと……」
「ラスボスのデザインはそのまま。これは変更なんかさせないから。ねぇ、愛美さん?」
「お、おう……」

あの愛美さんですら怯むほどの迫力。
やっぱりこいつ、ラスボスなんじゃ……。

「何?言いたいことははっきり口に出して言いなさい」
「い、いえ……」

教訓。
本人のいないところでこういうことをしていると手痛いしっぺ返しをくらう。
何事もほどほどにしよう。

手遅れだが、俺はそのことを今日学んだ。
ちなみに、朋美はこのあとちゃんとお姫様としてコピーを作られ、後に国を治める女王になる。
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