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本編
大輝編57話~女神の母性~
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結論から言おう。
あいと俺の間に、無事子どもはできた。
俺は十六にして父親になってしまったのだった。
なってしまった、と言うと不本意だった、とかそう捉えられがちではあるが、俺としてはまだ人間としても女神としても半人前だと自負しているし、正直なところ人の親になれるという自信はない。
あと、あいは何度も俺から種を搾りとって自らの胎内に注いだが、最初は上手く行かなかった様だ。
「大輝、復活させるからもう一回」
このセリフを、俺はこの一晩で何回聞いたかわからない。
そもそも女神に排卵日とかあるのかわからないが、そういう日でもなければ着床とかしないんじゃないか?
そんな疑問が頭に浮かんだりもしたが、果たして説明して通じるかという疑問に上書きされて、俺は黙ってあいの言うとおりにしていた。
途中であいは、何かに気づいた様で、俺の顔をじっと見つめた。
何に気付いたのかわからないが、行為自体を中断するには至らない。
名目上は子どもを作る、というものではあるが俺は行為自体をある程度楽しんでいたのかもしれない。
「まだ、できない……」
「なぁ、あい。女神にも排卵日とかあるのか?」
「排卵日?何それ?」
なるほど、そこから説明しないといけなかったのか。
何時間もぶっ通しで行為に及んでいた俺たちだったが、ここへきて行為を一時中断するという選択をした。
排卵日についての説明を丁寧にして、あいに理解させるのはそう難しいことではなかった。
何故ならあいは、女神はそういうのを自在に操れると答えたから。
だが、あいは一つ失念していたことがあったことを打ち明ける。
行為に夢中になりすぎて、卵子を作るということそのものを。
一瞬は子どもを作りたいというのは建て前で、俺と行為に明け暮れたいというのが本音なんじゃないか、なんて思ったりもした。
だが、失念していたことを自覚したときのあいの落ち込みっぷりが、どうやらそうではないのだと教えてくれた気がする。
「あい、難しいかもしれないけど、落ち着いてやってみようか」
優しく、子どもを諭す様に頭を撫でる。
あいが、ここで初めて笑顔を見せた気がした。
その後、夜が明けるまで俺たちは再び行為に明け暮れ、やっと着床したと告げられたのは昼近くなってからのことだった。
二人ともが汗でびっしょりとなっていて、さすがにこのままじゃ、ということで俺たちはシャワーを浴びる。
「今、生んだ方がいい?」
「今って……そんなことできるのか?」
母やロキから、俺の生まれについてはある程度は聞いていたけど、正直十月十日を待たずに生めるという部分に関してだけは、眉唾物だと思っていた。
もちろん、人間の常識だけで図れる様なことではないことを理解もしてはいるのだが……俺に覚悟が足りないだけなのだろうか。
「大輝がいいって言うなら、今すぐにでも生める」
「ふむ……」
おそらく、このまま待っていればあいの腹の中で子どもは成長するんだろうし、時期がくれば生まれてもくるんだろう。
自分の子どもがどんななのか、見てみたいという好奇心と、見たら引き返せないんじゃないかという恐怖心。
この二つが俺の中でせめぎ合っている。
引き返せない、という部分に関してはもはや手遅れだとも思うが、怖いことは先延ばしにしたい、なんて甘えた考えが浮かんでしまう。
こんなんで本当に俺は父親になれるのだろうか。
そもそも父親になるということがどういうことか、俺にはまだよくわかっていない。
扶養の義務だとか、そういうのも含めて俺には責任が発生するんだ、ということは朧気ながら理解してるつもりだ。
ただ、あいに子どもを与えて、そのあとは?
あいはどうするつもりなんだろうか。
睦月たちは、そのあとのことまできちんと考えて今回の結論を出したのか?
わからないことだらけなのも事実だ。
「あい、シャワー終わったら……生んでみるか?」
「本当にいいの?後悔しない?」
「わからない。こんな言い方していいのか、ちょっと迷ってるけど……正直実感がなくてさ。もちろん、お前と子どもがきちんと生活できる様にするつもりではあるけど……」
「大輝、私大輝に苦労はかけないつもりだよ」
あいの口から、思いがけない言葉が飛び出して俺は面食らう。
どういうことなのかと問い詰めたくなる。
俺の力は必要ない、とでも言うのだろうか。
「大輝は、私に種を与えてくれた。それに、今日までの知識も。もちろん足りない部分だらけだとは思うけど……私に子供ができたんだったら、さすがに甘えてばかりもいられないんじゃないかって思って」
「おいおい、ここまできてそんなこと言うなよ。俺、お前と子どもについては、ちゃんと責任取るつもりでいるんだから」
「だけど……大輝、まだ悩んでる様に見えるから」
はっとさせられた。
あいは、俺のことなんか大して見てないもんだと決めつけていた。
自分の欲望に忠実なんじゃないかって、俺のイメージを押し付けていた。
それが間違いだってことを、他でもないあいが気付かせてくれた。
俺は今まで一体、こいつの何を見ていたんだろう。
何を、知ったつもりになっていたのか。
あいが何を考えて、何を感じて、何を見ていたのか。
そんなこと、少しも考えてなかった。
「あい」
「どうしたの?」
「子どもの名前、考えたか?」
「ううん、まだ。大輝は?」
「俺は……」
男の子か女の子かもまだ生まれてないから、生まれてから考えるのがいいと思った。
「生まれて、男か女かで決めたいと思う」
「そう……大丈夫?元気ないみたいに見えるけど」
「あい、ごめんな」
「え?」
「俺、お前のことちゃんと見てなかったかもしれない」
「そんなこと、ないよ?」
「何でそう思う?」
「大輝こそ、どうしてそう思うの?」
それは……この期に及んでまだ悩んでいるから。
あいは、きっと並々ならぬ決意と共に、子どもを望んだ。
なのに俺はどうだ?
「大輝、私は大輝のこと、大事だよ」
「え?」
「大輝は?私のこと、大事じゃない?」
「大事に、決まってるだろ」
「なら、私と大輝の子ども、大事にできる?」
できるのか?
あいの質問を、俺自身も頭の中で反芻する。
義務だから、とかじゃなく、俺は大事にしたいのか?
出来るのかどうか、じゃなく大事にしたいという気持ちがあるのか。
「大輝、無理なら無理って言ってもいいんだよ?」
空虚な目をしたあいが、淋しそうに呟く。
常識的に考えたら、誰がどう見ても無理だろう。
ただし、それは俺が前までの様にただの一般人だったらの話だ。
今の俺は、もう人間じゃないとさえ言える。
人間を、遥かに超越した存在じゃないか。
何を迷っているのか。
「あい、俺は……お前も子どもも、大事にしたい」
「大輝……?」
「何を迷ってたんだろうな、俺。今までだって散々不可能だったことを可能にしてきたってのに……目が覚めたよ」
「本当に、大事にしてくれるの?私、甘えてもいいの?」
「当たり前だろ。あいだけの子じゃないんだ。俺たちの子だ。大事にしないわけがあるか」
今の俺に出来ないことなんか、存在しない。
たとえ世界を作り替えろなんていうことがあったとしても、俺ならできるはずだ。
そんな俺が、子どもとその親を大事にできないはずがない。
もちろん根拠なんかない。
だけど、俺が全能であることがその裏付けだ。
俺はこの日、二人と元のメンバーとを、全部この手で守って行くことを決意した。
「おー……可愛い……」
睦月のマンションで、生まれたての我が子を女神勢が愛でている。
あいに抜け駆けさせてしまったことに関してだけは、今でも良かったのだろうかという葛藤がないでもない。
けど、あいを始めとするメンバーの、あの喜び様を見ているとそんなことさえもどうだって良くなってくる気がした。
子どもは男の子だった。
小さい羽を背中に蓄えた、天使の様な男の子。
名前はまだ決まっていない。
「何かこうして見てると、私たちもほしくなっちゃうよね」
気持ちとしてはわかるが、現段階でそれが可能なのはロヴンさんとフレイヤとノルンさんくらいじゃないだろうか。
睦月もまぁ、バレない様に生むことくらいできるかもしれないが、人間界出身のメンバーにはバレるおそれがあるのでまだそうはしないと言っていた。
何より朋美やらと約束もあるみたいだし。
「ところで名前、どうするの?」
睦月が当然の疑問を口にする。
正直俺のセンスだと完全に和名になってしまいそうで、あいの意志なんかも聞いておきたいと思っている。
あいは、昔活躍した神の名前を転用したいとか言っていたのだが、それだとこっちで呼びにくいからと保留にしてあるのだ。
「何かいい名前、ないかな。正直俺が決めちゃうと、センスないしガチガチの和名になりそうで」
「大吾郎とか?」
「いや、さすがにそこまでがっつり和名じゃないけど……」
「大輝」
「んー?」
睦月が、いつもの様な意地悪い顔でなく、自然な笑顔で俺を見ていた。
「大輝、何でも一人でやろうとしないで、いいんだよ?」
「えっ……」
「大輝が頑張ってるの、みんな知ってるから。大輝はもっと、人を頼ることを覚えた方がいいよ」
前にも、こんなことを言われた気がする。
何でも一人でやろうとするのは、俺自身の成長の為だって思い込んでいたし、何より達成感があるからだ。
俺にできないことなんかない、そう思ってはいても、やはり限界はある。
「何でもできる神は、ここに何人もいるんだよ?」
「そうそう。というか、こういうときにこそ頼ってくれないと……さすがに寂しくなっちゃうよ」
ノルンさんも話に加わり、俺はいつになくなくやりこめられている。
ロヴンさんはそんな俺の様子を微笑ましげに見ていて、フレイヤはまだ名のない俺とあいの子とじゃれている。
あいはまだ不安そうな顔をして俺を見ていた様だが、睦月の言葉にその不安を少しずつ手放していけている様だった。
「生んだのはあいだけど、この子はみんなの子みたいなもんだよ。そうでしょ?みんなで、頑張って育てていこう?」
「あいは……それで良いのか?」
「どうして?」
「睦月のこと、怖いって言ってたから」
「怖かったけど……今は害意を感じないから。それに、みんなはきっと、この子を大事にしてくれる」
なるほど、よくわかっている様だ。
偏見はもうあいの中にないのだとわかり、俺だけで頑張っていかないと、なんて肩肘張っている必要はないのだと理解する。
「あ、ちなみにこの子とあいの身元はもう、捏造する準備あるから」
「え、あ、そ、そうか」
聞いちゃいけない言葉が聞こえた気がする。
ならなおのこと、早くこの子に名前をつけなくては。
出生届やらが確か、生まれて一週間とかで出さないといけなかったと思うから……ここ数日で決めてしまわないといけないわけか。
男らしい名前……それとも親しみやすい名前?
「漢字の当て字なんかも最近だと流行ってるよね」
「まぁな……けど、光る宙って書いてぴかちゅうとかはさすがに……」
俺たちはこんな下らない話をしながら、我が子に笑いかける。
笑い返す我が子を見て、ここから俺も少しずつしっかりしていかなくては、と思いを巡らせた。
あいと俺の間に、無事子どもはできた。
俺は十六にして父親になってしまったのだった。
なってしまった、と言うと不本意だった、とかそう捉えられがちではあるが、俺としてはまだ人間としても女神としても半人前だと自負しているし、正直なところ人の親になれるという自信はない。
あと、あいは何度も俺から種を搾りとって自らの胎内に注いだが、最初は上手く行かなかった様だ。
「大輝、復活させるからもう一回」
このセリフを、俺はこの一晩で何回聞いたかわからない。
そもそも女神に排卵日とかあるのかわからないが、そういう日でもなければ着床とかしないんじゃないか?
そんな疑問が頭に浮かんだりもしたが、果たして説明して通じるかという疑問に上書きされて、俺は黙ってあいの言うとおりにしていた。
途中であいは、何かに気づいた様で、俺の顔をじっと見つめた。
何に気付いたのかわからないが、行為自体を中断するには至らない。
名目上は子どもを作る、というものではあるが俺は行為自体をある程度楽しんでいたのかもしれない。
「まだ、できない……」
「なぁ、あい。女神にも排卵日とかあるのか?」
「排卵日?何それ?」
なるほど、そこから説明しないといけなかったのか。
何時間もぶっ通しで行為に及んでいた俺たちだったが、ここへきて行為を一時中断するという選択をした。
排卵日についての説明を丁寧にして、あいに理解させるのはそう難しいことではなかった。
何故ならあいは、女神はそういうのを自在に操れると答えたから。
だが、あいは一つ失念していたことがあったことを打ち明ける。
行為に夢中になりすぎて、卵子を作るということそのものを。
一瞬は子どもを作りたいというのは建て前で、俺と行為に明け暮れたいというのが本音なんじゃないか、なんて思ったりもした。
だが、失念していたことを自覚したときのあいの落ち込みっぷりが、どうやらそうではないのだと教えてくれた気がする。
「あい、難しいかもしれないけど、落ち着いてやってみようか」
優しく、子どもを諭す様に頭を撫でる。
あいが、ここで初めて笑顔を見せた気がした。
その後、夜が明けるまで俺たちは再び行為に明け暮れ、やっと着床したと告げられたのは昼近くなってからのことだった。
二人ともが汗でびっしょりとなっていて、さすがにこのままじゃ、ということで俺たちはシャワーを浴びる。
「今、生んだ方がいい?」
「今って……そんなことできるのか?」
母やロキから、俺の生まれについてはある程度は聞いていたけど、正直十月十日を待たずに生めるという部分に関してだけは、眉唾物だと思っていた。
もちろん、人間の常識だけで図れる様なことではないことを理解もしてはいるのだが……俺に覚悟が足りないだけなのだろうか。
「大輝がいいって言うなら、今すぐにでも生める」
「ふむ……」
おそらく、このまま待っていればあいの腹の中で子どもは成長するんだろうし、時期がくれば生まれてもくるんだろう。
自分の子どもがどんななのか、見てみたいという好奇心と、見たら引き返せないんじゃないかという恐怖心。
この二つが俺の中でせめぎ合っている。
引き返せない、という部分に関してはもはや手遅れだとも思うが、怖いことは先延ばしにしたい、なんて甘えた考えが浮かんでしまう。
こんなんで本当に俺は父親になれるのだろうか。
そもそも父親になるということがどういうことか、俺にはまだよくわかっていない。
扶養の義務だとか、そういうのも含めて俺には責任が発生するんだ、ということは朧気ながら理解してるつもりだ。
ただ、あいに子どもを与えて、そのあとは?
あいはどうするつもりなんだろうか。
睦月たちは、そのあとのことまできちんと考えて今回の結論を出したのか?
わからないことだらけなのも事実だ。
「あい、シャワー終わったら……生んでみるか?」
「本当にいいの?後悔しない?」
「わからない。こんな言い方していいのか、ちょっと迷ってるけど……正直実感がなくてさ。もちろん、お前と子どもがきちんと生活できる様にするつもりではあるけど……」
「大輝、私大輝に苦労はかけないつもりだよ」
あいの口から、思いがけない言葉が飛び出して俺は面食らう。
どういうことなのかと問い詰めたくなる。
俺の力は必要ない、とでも言うのだろうか。
「大輝は、私に種を与えてくれた。それに、今日までの知識も。もちろん足りない部分だらけだとは思うけど……私に子供ができたんだったら、さすがに甘えてばかりもいられないんじゃないかって思って」
「おいおい、ここまできてそんなこと言うなよ。俺、お前と子どもについては、ちゃんと責任取るつもりでいるんだから」
「だけど……大輝、まだ悩んでる様に見えるから」
はっとさせられた。
あいは、俺のことなんか大して見てないもんだと決めつけていた。
自分の欲望に忠実なんじゃないかって、俺のイメージを押し付けていた。
それが間違いだってことを、他でもないあいが気付かせてくれた。
俺は今まで一体、こいつの何を見ていたんだろう。
何を、知ったつもりになっていたのか。
あいが何を考えて、何を感じて、何を見ていたのか。
そんなこと、少しも考えてなかった。
「あい」
「どうしたの?」
「子どもの名前、考えたか?」
「ううん、まだ。大輝は?」
「俺は……」
男の子か女の子かもまだ生まれてないから、生まれてから考えるのがいいと思った。
「生まれて、男か女かで決めたいと思う」
「そう……大丈夫?元気ないみたいに見えるけど」
「あい、ごめんな」
「え?」
「俺、お前のことちゃんと見てなかったかもしれない」
「そんなこと、ないよ?」
「何でそう思う?」
「大輝こそ、どうしてそう思うの?」
それは……この期に及んでまだ悩んでいるから。
あいは、きっと並々ならぬ決意と共に、子どもを望んだ。
なのに俺はどうだ?
「大輝、私は大輝のこと、大事だよ」
「え?」
「大輝は?私のこと、大事じゃない?」
「大事に、決まってるだろ」
「なら、私と大輝の子ども、大事にできる?」
できるのか?
あいの質問を、俺自身も頭の中で反芻する。
義務だから、とかじゃなく、俺は大事にしたいのか?
出来るのかどうか、じゃなく大事にしたいという気持ちがあるのか。
「大輝、無理なら無理って言ってもいいんだよ?」
空虚な目をしたあいが、淋しそうに呟く。
常識的に考えたら、誰がどう見ても無理だろう。
ただし、それは俺が前までの様にただの一般人だったらの話だ。
今の俺は、もう人間じゃないとさえ言える。
人間を、遥かに超越した存在じゃないか。
何を迷っているのか。
「あい、俺は……お前も子どもも、大事にしたい」
「大輝……?」
「何を迷ってたんだろうな、俺。今までだって散々不可能だったことを可能にしてきたってのに……目が覚めたよ」
「本当に、大事にしてくれるの?私、甘えてもいいの?」
「当たり前だろ。あいだけの子じゃないんだ。俺たちの子だ。大事にしないわけがあるか」
今の俺に出来ないことなんか、存在しない。
たとえ世界を作り替えろなんていうことがあったとしても、俺ならできるはずだ。
そんな俺が、子どもとその親を大事にできないはずがない。
もちろん根拠なんかない。
だけど、俺が全能であることがその裏付けだ。
俺はこの日、二人と元のメンバーとを、全部この手で守って行くことを決意した。
「おー……可愛い……」
睦月のマンションで、生まれたての我が子を女神勢が愛でている。
あいに抜け駆けさせてしまったことに関してだけは、今でも良かったのだろうかという葛藤がないでもない。
けど、あいを始めとするメンバーの、あの喜び様を見ているとそんなことさえもどうだって良くなってくる気がした。
子どもは男の子だった。
小さい羽を背中に蓄えた、天使の様な男の子。
名前はまだ決まっていない。
「何かこうして見てると、私たちもほしくなっちゃうよね」
気持ちとしてはわかるが、現段階でそれが可能なのはロヴンさんとフレイヤとノルンさんくらいじゃないだろうか。
睦月もまぁ、バレない様に生むことくらいできるかもしれないが、人間界出身のメンバーにはバレるおそれがあるのでまだそうはしないと言っていた。
何より朋美やらと約束もあるみたいだし。
「ところで名前、どうするの?」
睦月が当然の疑問を口にする。
正直俺のセンスだと完全に和名になってしまいそうで、あいの意志なんかも聞いておきたいと思っている。
あいは、昔活躍した神の名前を転用したいとか言っていたのだが、それだとこっちで呼びにくいからと保留にしてあるのだ。
「何かいい名前、ないかな。正直俺が決めちゃうと、センスないしガチガチの和名になりそうで」
「大吾郎とか?」
「いや、さすがにそこまでがっつり和名じゃないけど……」
「大輝」
「んー?」
睦月が、いつもの様な意地悪い顔でなく、自然な笑顔で俺を見ていた。
「大輝、何でも一人でやろうとしないで、いいんだよ?」
「えっ……」
「大輝が頑張ってるの、みんな知ってるから。大輝はもっと、人を頼ることを覚えた方がいいよ」
前にも、こんなことを言われた気がする。
何でも一人でやろうとするのは、俺自身の成長の為だって思い込んでいたし、何より達成感があるからだ。
俺にできないことなんかない、そう思ってはいても、やはり限界はある。
「何でもできる神は、ここに何人もいるんだよ?」
「そうそう。というか、こういうときにこそ頼ってくれないと……さすがに寂しくなっちゃうよ」
ノルンさんも話に加わり、俺はいつになくなくやりこめられている。
ロヴンさんはそんな俺の様子を微笑ましげに見ていて、フレイヤはまだ名のない俺とあいの子とじゃれている。
あいはまだ不安そうな顔をして俺を見ていた様だが、睦月の言葉にその不安を少しずつ手放していけている様だった。
「生んだのはあいだけど、この子はみんなの子みたいなもんだよ。そうでしょ?みんなで、頑張って育てていこう?」
「あいは……それで良いのか?」
「どうして?」
「睦月のこと、怖いって言ってたから」
「怖かったけど……今は害意を感じないから。それに、みんなはきっと、この子を大事にしてくれる」
なるほど、よくわかっている様だ。
偏見はもうあいの中にないのだとわかり、俺だけで頑張っていかないと、なんて肩肘張っている必要はないのだと理解する。
「あ、ちなみにこの子とあいの身元はもう、捏造する準備あるから」
「え、あ、そ、そうか」
聞いちゃいけない言葉が聞こえた気がする。
ならなおのこと、早くこの子に名前をつけなくては。
出生届やらが確か、生まれて一週間とかで出さないといけなかったと思うから……ここ数日で決めてしまわないといけないわけか。
男らしい名前……それとも親しみやすい名前?
「漢字の当て字なんかも最近だと流行ってるよね」
「まぁな……けど、光る宙って書いてぴかちゅうとかはさすがに……」
俺たちはこんな下らない話をしながら、我が子に笑いかける。
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