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本編
大輝編64話~急転直下~
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結局、納得いかない様子の絵里香ちゃんだったが両親と三人で何とか説得して、俺が絵里香ちゃんの友達になるということで一件落着となった。
必要があればハーレムメンバーを何人か友達として紹介してもいい、という話もして漸く絵里香ちゃんが首を縦に振ったのは、午前二時近くになってからだった。
良かったら泊って行ってくれと絵里香ちゃんママからは言われたのだが、さすがに小学生の女の子の家に泊まるのは憚られたので丁重にお断りして、睦月のマンションへと向かった。
というか絵里香ちゃんに色々吹き込んだの絶対あいつなんだろうな……。
おかげで本当、ひどい目にあったわ……。
まだ起きてる様だったら説教して……いや、でもバイト代わりに入ってくれたし……ってあいつ、接客なんかやったことあるのか?
そう考えると何だか不安しかない。
バイト先に行くのも怖いし、睦月に何を吹き込んだのか問い詰めるのも怖い。
考えてみると、俺の人生怖いものだらけな気がする。
だって、周り怖い人ばっかだし絵里香ちゃんだってある意味で怖いし、その両親も怖い。
はぁ、正直このままマンション行くのも何となく怖い。
内田さんと樋口さんが絵里香ちゃんの家行くの知ってたってことは、全員が知ってると考えていいだろう。
そうなるとロリコン疑惑とかかけられて……ああ……憂鬱だ。
このままマンションじゃなくて施設に、と思って方向を変えると、何と背後に睦月さん。
「どーこ行くのぉ?」
「…………!!」
正直ちびるかと思うくらいびっくりした。
いつからそこにいたんですか……。
「い、いやあの、喉渇いたから飲み物でもって……」
「コンビニあっちだよね?ていうかうちに沢山あるから。さ、行こ行こ」
気配絶って背後に立つとか暗殺者みたいな真似、ほんとやめて……。
心臓止まっちゃったらどうするんだよ、本当……。
「で、どうだったの?」
「何だよ、お前どうせ見てたんじゃないのか?」
マンションに強制連行されて、荷物を置くなり問い詰められる。
あれ、さっき俺睦月を問い詰めてやるとか考えてなかったっけ。
何で俺が問い詰められてんの?
しかも何で全員集合?
「さ、何があったか詳しく」
詳しく、じゃねーよ……。
それよりも俺は、バイト先で何があったのかが気になって仕方ないんだっつーの。
簡単にあった出来事を話してみると、意外なことにみんな神妙そうな顔をしている。
一体なんだと言うのか。
「泊まってくればよかったのに」
こう言ったのは明日香だ。
眠そうな顔こそしているが、かろうじて意識を保っている様に見える。
というか何で泊まってくればよかったんだろう。
「だって、親御さんがいいって言ってくれていたんでしょう?」
「まぁ、そうだけど……あの子の家そんなに広くなかったし、泊まるとなると絵里香ちゃんと一緒に寝ることになるんだぞ?」
「いいじゃない、それでも。大輝くんは小学生でも構わず食っちまうんだぜ、とか言うつもり?」
「それはさすがにないな……。可愛いとは思うけど、そういう対象としてはちょっと見れないかな、俺は」
問題は俺じゃなくて絵里香ちゃんの方だし。
たとえ絵里香ちゃんから何かしてきたんだとしても、俺がそれを意識の有無に関わらず受けてしまった段階でもうアウトなのだから。
そういうのは避けるに越したことはないはずだ。
「何だよ、つまんないな……せっかくロリペド野郎、って罵ってやれるかと思ったのに」
「愛美さん、それが本音ですか……」
「まぁ、仮に大輝が絵里香ちゃんに指一本でも触れてたら、私は多分ぶん殴ってたかな」
「…………」
指一本くらいは多分触れたと思うけど、相手は朋美だし黙っておくべきだよな。
「何で黙ったの?大輝……もしかして指一本くらい触れちゃった?」
「一緒にいればそれくらい普通にあるだろ……疚しい気持ちがなくてもさ」
「まぁ、そっか。意識的に、って言葉省いたのは良くなかったわね」
このやろ……まぁ親父さんのことでまだ納得できてない部分があるのかわからんけど……俺に八つ当たりしないで。
「まぁでも、友達からって言ったんなら……成長過程で他に好きな男の子くらいできるかもしれないしね。一応未来に希望を持たせておいて、あとは自覚に任せるって言うのはいいかもしれない」
桜子がまともな意見を……。
こいつは余計なことしか言えないのかもしれない、なんて思ってごめん。
「そうだね。とりあえず暫くはそれで落ち着くんだろうし、様子見た方がいいでしょ。それよりこっちのクリスマスなんだけど……」
かくして一連の絵里香ちゃん騒動は幕を閉じた。
願わくば絵里香ちゃんが真っ当な恋愛をして、俺以外の男の子をちゃんと好きになってくれることを……。
なんて思っていたら、翌日の夕方絵里香ちゃんからメールがきて、事態は急変する。
『大輝くん、助けて』
何だろう、この余裕のなさそうな文面。
割と切羽詰まって見えるけど……いや、罠かもしれない。
油断はできないんじゃ……。
「えっ……ねぇ大輝、これ絵里香ちゃんのお父さんじゃない?」
「は?」
テレビを見ていた朋美が驚きの声をあげる。
気になって俺もテレビの画面を見ると、そこには……。
『はい、先ほど逮捕されました富沢毅容疑者ですが……容疑を完全に否認している様です』
せ、先生……?
ニュースキャスターが真面目な顔をして、中学教師淫行の罪で逮捕、とかタイトルのついたニュースを読み上げている。
先生が、淫行?
概要としては、自身の勤務する中学校の女子生徒に手を出した、という内容の様だが……。
あの人が生徒に手を?
自分の娘と大して年齢の変わらない女子を?
「いや、ありえなくないか?」
「大輝、それより絵里香ちゃんが心配だよ」
「あ、ああ、確かに……」
もしかしたら記者とかが絵里香ちゃんの家を嗅ぎ付けて、取材など迫っているかもしれない。
なるほど、助けてって言ってたのはこのことか。
「ちょっと、行ってくるわ」
「大輝、一人で大丈夫なの?」
「何、とりあえず家の前にマスコミがいたらハワイ辺りにでも転移させるから」
俺は変身して羽だけ隠して、絵里香ちゃんの家の近くにワープした。
案の定絵里香ちゃんの家の前には大勢のマスコミがいて、比較的静かなはずの住宅街が騒然としているではないか。
ゲスい連中だな……まだ先生がそれをやったって決まったわけでもないだろうに。
とは言えさっきハワイ辺りまで、と言ったがやりすぎるのは良くない。
ということで俺はマスコミと思しき連中を……と思ったところで一つ気づいたことがあった。
マスコミの輪の外……明らかにこの現場に似つかわしくない制服姿の女の子が三人いる。
そして、その三人は絵里香ちゃんの家を見て、何やらニヤニヤしながら談笑している様に見えた。
あの制服……もしかして先生の……というか俺の母校なんだが。
どうも、頭の中に嫌な考えが浮かんでくる。
仮にあの子らがこの事件の被害者だとして……富沢先生はハメられたんじゃないだろうか。
そう考えると辻褄が合ってくる。
あの胸糞悪い表情、バカにした様な蔑んだ様な感じの。
まぁ、とにかくこの騒動を収めておかなくては。
ひとまず個人的にマスコミが目障りだったので、大阪まで飛んでもらった。
今頃連中はパニックになっているだろうが、そんなことは知ったことじゃない。
一瞬でマスコミが消えたのを見ていたJC三人組やご近所さんが、目を丸くしている。
絵里香ちゃんの家の様子も気になるところだが、俺としてはJC三人組の動向が気になるところだ。
三人はずっと家の様子を見ていて、次第に動きがないことがわかるとその場を後にした。
直接何かをするつもりはないらしい。
誰か応援でも頼んでおくんだったな……。
まだ少し人がいるのが見えるし、正面から絵里香ちゃんの家に入るのは危険そうだ。
少し悩んだ末に、俺はJC三人組を追うことに決めた。
いや、下心があってとかそういうんじゃない。
こいつらは事件の真相を知っていると思ったからだ。
先生が今日逮捕されたってことは、短期決戦で決着をつける必要がある。
無実の罪なのかどうかはまだ断定できないが、あの先生がJCに手を出すなんてことがまず想像できなかった。
睦月がたまにやっていた、屈折率の調節をして姿を誰からも見えない様にする術を使ってJCの後を追う。
途中、睦月にメールして絵里香ちゃんの様子をこっそり見に行ってほしい、と連絡を入れておいた。
これでとりあえずは何とかなるか?
「富沢のやつのあの顔、傑作だったね」
「ねぇ、全くだよ」
三人が足を運んだのは駅前のカラオケ屋だった。
触れてしまわない様にぴったりと後にくっついて歩いて、部屋の中まで追跡することができた。
どうやらこいつらで間違いなさそうに見える。
「これであいつももう、教職に復帰なんて無理でしょ」
「だろうねぇ、淫行とか今世間が一番うるさい問題だし」
先ほどから音声の録音をしているが、決定的な一言が出てこない。
「でも、自分の娘とそんなに変わらない歳の女の子とチュッチュできて最後に幸せな思い出来たんじゃないの?だったらうちら、いいことしたんだよ!」
「違いないね!」
どういうことだ?
先生が自ら手を出したってことになるのか?
いや、それだと今の現状に違和感が……。
「だけど富沢、半分意識が朦朧としてなかった?だとすると記憶ないかもしれないよ?」
おっと?
これはもしかして……。
「でも、既成事実はもうあるから。だったらあとは警察が自白に追い込むでしょ」
なるほど、何となく掴めてはきたかもしれない。
何かしらの薬か酒かで富沢先生の意識を奪ったかして、無理やり……まぁ、最後までしたのかはわからないがそういう証拠画像なり映像なりを撮って、警察か学校に提出した、というところだろう。
となると、あとは動機だな。
それにしても、動きが早い気がする。
どうせ何か逆恨みなんだろうとは思うが、思いついて今日の今日決行したのか?
前もって計画していたんだとして、それにしても発覚から逮捕までが早すぎる様な……。
「子どものすることに、いちいち大人が口挟んでくるのがそもそも間違いって言うかさ……」
「それね。今時あんな熱血指導、流行んないっつーの。まぁ、これで教師どもにはいい見せしめになったんじゃない?うちら英雄だよ!!」
そんなことを言いながらギャハハハと品のない笑いを見せる三人。
思った通り、逆恨みか。
とは言え、やりすぎだと思うが……。
まぁ、音声は手に入れたしとりあえず一回戻ってもいいかもしれない。
というわけで俺は睦月がいるであろう絵里香ちゃんの家の玄関に直接ワープすることにした。
「た、大輝くん?どうやってここに……」
「ああ、表にマスコミはいないと思いますよ。まぁ今日は外に出ない方がいいと思いますけど」
絵里香ちゃんママが俺の足音に気づいて玄関まで来てくれた。
多分睦月も似た様な侵入方法で来たんだろうと思ったし、特に説明は必要ないかと思う。
「ああ、大輝。何か掴めたの?」
「まぁな。とりあえずこれ、みんなで聞こうか」
先ほど録音した音声ファイルを再生する。
雑音もそれなりに入ってはいるが、三人組の音声はちゃんと聞き取れた。
絵里香ちゃんも絵里香ちゃんママも険しい顔で聞いている。
「これって……」
「怪しいと思ったんですよ。さっきマスコミが殺到してた時に、すぐそこでずっとこの家を見ながらニヤニヤしてる三人組がいたので……」
簡単に事情を説明して、三人を尾行したことを告げる。
「その三人って……一人茶髪の子混じってた?あと、二人は黒髪だけど普通のロングとウェーブかかった感じの……」
「あ、それですね。ご存知なんですか?」
「ええ……というかその子達が、今朝絵里香に話しかけてきたらしいのよ。絵里香はすぐ逃げたらしいんだけど……」
あのガキども、絵里香ちゃんに接触しただと……?
大事に至らなかったからまだいいものの……。
「聞いた限り、先生はハメられた可能性が高いですね。まだ先生は拘留中なんでしたっけ」
「そうね……玄関の外があの様子だったものだから、まだ面会にも行けていないのよね……」
「なるほど……というかマスコミが嗅ぎ付けるのも早すぎる……となるとあいつらが呼んだと考えるべきか」
放っておけばまたマスコミは押し寄せてくるだろう。
さっきまでの連中は幸い、過激な行動に出る人間がいなかった様だが次もそうとは限らない。
思ったよりも時間がないかもしれないな、これは……。
「大輝、私に作戦があるんだけど」
「マジか……でも、一人でやろうって思ってたし……だけど既にまきこんでしまってるよな」
「すぐそうやって抱え込もうとするの、本当良くないよ。ちゃんと頼ってくれないと、私としても存在意義がわからなくなっちゃう」
「そうだよな、ごめん。なら聞かせてもらってもいいか?」
不安な顔で富沢親子が見つめる中、睦月が作戦の概要を話す。
なるほど、俺一人じゃ考えつかない様な内容かもしれない。
こんな調子じゃ、俺がこいつに頼らないで生きていくなんてことは到底無理だな、なんて思いながらその作戦を頭の中で反芻して、俺たち二人は富沢家を後にした。
必要があればハーレムメンバーを何人か友達として紹介してもいい、という話もして漸く絵里香ちゃんが首を縦に振ったのは、午前二時近くになってからだった。
良かったら泊って行ってくれと絵里香ちゃんママからは言われたのだが、さすがに小学生の女の子の家に泊まるのは憚られたので丁重にお断りして、睦月のマンションへと向かった。
というか絵里香ちゃんに色々吹き込んだの絶対あいつなんだろうな……。
おかげで本当、ひどい目にあったわ……。
まだ起きてる様だったら説教して……いや、でもバイト代わりに入ってくれたし……ってあいつ、接客なんかやったことあるのか?
そう考えると何だか不安しかない。
バイト先に行くのも怖いし、睦月に何を吹き込んだのか問い詰めるのも怖い。
考えてみると、俺の人生怖いものだらけな気がする。
だって、周り怖い人ばっかだし絵里香ちゃんだってある意味で怖いし、その両親も怖い。
はぁ、正直このままマンション行くのも何となく怖い。
内田さんと樋口さんが絵里香ちゃんの家行くの知ってたってことは、全員が知ってると考えていいだろう。
そうなるとロリコン疑惑とかかけられて……ああ……憂鬱だ。
このままマンションじゃなくて施設に、と思って方向を変えると、何と背後に睦月さん。
「どーこ行くのぉ?」
「…………!!」
正直ちびるかと思うくらいびっくりした。
いつからそこにいたんですか……。
「い、いやあの、喉渇いたから飲み物でもって……」
「コンビニあっちだよね?ていうかうちに沢山あるから。さ、行こ行こ」
気配絶って背後に立つとか暗殺者みたいな真似、ほんとやめて……。
心臓止まっちゃったらどうするんだよ、本当……。
「で、どうだったの?」
「何だよ、お前どうせ見てたんじゃないのか?」
マンションに強制連行されて、荷物を置くなり問い詰められる。
あれ、さっき俺睦月を問い詰めてやるとか考えてなかったっけ。
何で俺が問い詰められてんの?
しかも何で全員集合?
「さ、何があったか詳しく」
詳しく、じゃねーよ……。
それよりも俺は、バイト先で何があったのかが気になって仕方ないんだっつーの。
簡単にあった出来事を話してみると、意外なことにみんな神妙そうな顔をしている。
一体なんだと言うのか。
「泊まってくればよかったのに」
こう言ったのは明日香だ。
眠そうな顔こそしているが、かろうじて意識を保っている様に見える。
というか何で泊まってくればよかったんだろう。
「だって、親御さんがいいって言ってくれていたんでしょう?」
「まぁ、そうだけど……あの子の家そんなに広くなかったし、泊まるとなると絵里香ちゃんと一緒に寝ることになるんだぞ?」
「いいじゃない、それでも。大輝くんは小学生でも構わず食っちまうんだぜ、とか言うつもり?」
「それはさすがにないな……。可愛いとは思うけど、そういう対象としてはちょっと見れないかな、俺は」
問題は俺じゃなくて絵里香ちゃんの方だし。
たとえ絵里香ちゃんから何かしてきたんだとしても、俺がそれを意識の有無に関わらず受けてしまった段階でもうアウトなのだから。
そういうのは避けるに越したことはないはずだ。
「何だよ、つまんないな……せっかくロリペド野郎、って罵ってやれるかと思ったのに」
「愛美さん、それが本音ですか……」
「まぁ、仮に大輝が絵里香ちゃんに指一本でも触れてたら、私は多分ぶん殴ってたかな」
「…………」
指一本くらいは多分触れたと思うけど、相手は朋美だし黙っておくべきだよな。
「何で黙ったの?大輝……もしかして指一本くらい触れちゃった?」
「一緒にいればそれくらい普通にあるだろ……疚しい気持ちがなくてもさ」
「まぁ、そっか。意識的に、って言葉省いたのは良くなかったわね」
このやろ……まぁ親父さんのことでまだ納得できてない部分があるのかわからんけど……俺に八つ当たりしないで。
「まぁでも、友達からって言ったんなら……成長過程で他に好きな男の子くらいできるかもしれないしね。一応未来に希望を持たせておいて、あとは自覚に任せるって言うのはいいかもしれない」
桜子がまともな意見を……。
こいつは余計なことしか言えないのかもしれない、なんて思ってごめん。
「そうだね。とりあえず暫くはそれで落ち着くんだろうし、様子見た方がいいでしょ。それよりこっちのクリスマスなんだけど……」
かくして一連の絵里香ちゃん騒動は幕を閉じた。
願わくば絵里香ちゃんが真っ当な恋愛をして、俺以外の男の子をちゃんと好きになってくれることを……。
なんて思っていたら、翌日の夕方絵里香ちゃんからメールがきて、事態は急変する。
『大輝くん、助けて』
何だろう、この余裕のなさそうな文面。
割と切羽詰まって見えるけど……いや、罠かもしれない。
油断はできないんじゃ……。
「えっ……ねぇ大輝、これ絵里香ちゃんのお父さんじゃない?」
「は?」
テレビを見ていた朋美が驚きの声をあげる。
気になって俺もテレビの画面を見ると、そこには……。
『はい、先ほど逮捕されました富沢毅容疑者ですが……容疑を完全に否認している様です』
せ、先生……?
ニュースキャスターが真面目な顔をして、中学教師淫行の罪で逮捕、とかタイトルのついたニュースを読み上げている。
先生が、淫行?
概要としては、自身の勤務する中学校の女子生徒に手を出した、という内容の様だが……。
あの人が生徒に手を?
自分の娘と大して年齢の変わらない女子を?
「いや、ありえなくないか?」
「大輝、それより絵里香ちゃんが心配だよ」
「あ、ああ、確かに……」
もしかしたら記者とかが絵里香ちゃんの家を嗅ぎ付けて、取材など迫っているかもしれない。
なるほど、助けてって言ってたのはこのことか。
「ちょっと、行ってくるわ」
「大輝、一人で大丈夫なの?」
「何、とりあえず家の前にマスコミがいたらハワイ辺りにでも転移させるから」
俺は変身して羽だけ隠して、絵里香ちゃんの家の近くにワープした。
案の定絵里香ちゃんの家の前には大勢のマスコミがいて、比較的静かなはずの住宅街が騒然としているではないか。
ゲスい連中だな……まだ先生がそれをやったって決まったわけでもないだろうに。
とは言えさっきハワイ辺りまで、と言ったがやりすぎるのは良くない。
ということで俺はマスコミと思しき連中を……と思ったところで一つ気づいたことがあった。
マスコミの輪の外……明らかにこの現場に似つかわしくない制服姿の女の子が三人いる。
そして、その三人は絵里香ちゃんの家を見て、何やらニヤニヤしながら談笑している様に見えた。
あの制服……もしかして先生の……というか俺の母校なんだが。
どうも、頭の中に嫌な考えが浮かんでくる。
仮にあの子らがこの事件の被害者だとして……富沢先生はハメられたんじゃないだろうか。
そう考えると辻褄が合ってくる。
あの胸糞悪い表情、バカにした様な蔑んだ様な感じの。
まぁ、とにかくこの騒動を収めておかなくては。
ひとまず個人的にマスコミが目障りだったので、大阪まで飛んでもらった。
今頃連中はパニックになっているだろうが、そんなことは知ったことじゃない。
一瞬でマスコミが消えたのを見ていたJC三人組やご近所さんが、目を丸くしている。
絵里香ちゃんの家の様子も気になるところだが、俺としてはJC三人組の動向が気になるところだ。
三人はずっと家の様子を見ていて、次第に動きがないことがわかるとその場を後にした。
直接何かをするつもりはないらしい。
誰か応援でも頼んでおくんだったな……。
まだ少し人がいるのが見えるし、正面から絵里香ちゃんの家に入るのは危険そうだ。
少し悩んだ末に、俺はJC三人組を追うことに決めた。
いや、下心があってとかそういうんじゃない。
こいつらは事件の真相を知っていると思ったからだ。
先生が今日逮捕されたってことは、短期決戦で決着をつける必要がある。
無実の罪なのかどうかはまだ断定できないが、あの先生がJCに手を出すなんてことがまず想像できなかった。
睦月がたまにやっていた、屈折率の調節をして姿を誰からも見えない様にする術を使ってJCの後を追う。
途中、睦月にメールして絵里香ちゃんの様子をこっそり見に行ってほしい、と連絡を入れておいた。
これでとりあえずは何とかなるか?
「富沢のやつのあの顔、傑作だったね」
「ねぇ、全くだよ」
三人が足を運んだのは駅前のカラオケ屋だった。
触れてしまわない様にぴったりと後にくっついて歩いて、部屋の中まで追跡することができた。
どうやらこいつらで間違いなさそうに見える。
「これであいつももう、教職に復帰なんて無理でしょ」
「だろうねぇ、淫行とか今世間が一番うるさい問題だし」
先ほどから音声の録音をしているが、決定的な一言が出てこない。
「でも、自分の娘とそんなに変わらない歳の女の子とチュッチュできて最後に幸せな思い出来たんじゃないの?だったらうちら、いいことしたんだよ!」
「違いないね!」
どういうことだ?
先生が自ら手を出したってことになるのか?
いや、それだと今の現状に違和感が……。
「だけど富沢、半分意識が朦朧としてなかった?だとすると記憶ないかもしれないよ?」
おっと?
これはもしかして……。
「でも、既成事実はもうあるから。だったらあとは警察が自白に追い込むでしょ」
なるほど、何となく掴めてはきたかもしれない。
何かしらの薬か酒かで富沢先生の意識を奪ったかして、無理やり……まぁ、最後までしたのかはわからないがそういう証拠画像なり映像なりを撮って、警察か学校に提出した、というところだろう。
となると、あとは動機だな。
それにしても、動きが早い気がする。
どうせ何か逆恨みなんだろうとは思うが、思いついて今日の今日決行したのか?
前もって計画していたんだとして、それにしても発覚から逮捕までが早すぎる様な……。
「子どものすることに、いちいち大人が口挟んでくるのがそもそも間違いって言うかさ……」
「それね。今時あんな熱血指導、流行んないっつーの。まぁ、これで教師どもにはいい見せしめになったんじゃない?うちら英雄だよ!!」
そんなことを言いながらギャハハハと品のない笑いを見せる三人。
思った通り、逆恨みか。
とは言え、やりすぎだと思うが……。
まぁ、音声は手に入れたしとりあえず一回戻ってもいいかもしれない。
というわけで俺は睦月がいるであろう絵里香ちゃんの家の玄関に直接ワープすることにした。
「た、大輝くん?どうやってここに……」
「ああ、表にマスコミはいないと思いますよ。まぁ今日は外に出ない方がいいと思いますけど」
絵里香ちゃんママが俺の足音に気づいて玄関まで来てくれた。
多分睦月も似た様な侵入方法で来たんだろうと思ったし、特に説明は必要ないかと思う。
「ああ、大輝。何か掴めたの?」
「まぁな。とりあえずこれ、みんなで聞こうか」
先ほど録音した音声ファイルを再生する。
雑音もそれなりに入ってはいるが、三人組の音声はちゃんと聞き取れた。
絵里香ちゃんも絵里香ちゃんママも険しい顔で聞いている。
「これって……」
「怪しいと思ったんですよ。さっきマスコミが殺到してた時に、すぐそこでずっとこの家を見ながらニヤニヤしてる三人組がいたので……」
簡単に事情を説明して、三人を尾行したことを告げる。
「その三人って……一人茶髪の子混じってた?あと、二人は黒髪だけど普通のロングとウェーブかかった感じの……」
「あ、それですね。ご存知なんですか?」
「ええ……というかその子達が、今朝絵里香に話しかけてきたらしいのよ。絵里香はすぐ逃げたらしいんだけど……」
あのガキども、絵里香ちゃんに接触しただと……?
大事に至らなかったからまだいいものの……。
「聞いた限り、先生はハメられた可能性が高いですね。まだ先生は拘留中なんでしたっけ」
「そうね……玄関の外があの様子だったものだから、まだ面会にも行けていないのよね……」
「なるほど……というかマスコミが嗅ぎ付けるのも早すぎる……となるとあいつらが呼んだと考えるべきか」
放っておけばまたマスコミは押し寄せてくるだろう。
さっきまでの連中は幸い、過激な行動に出る人間がいなかった様だが次もそうとは限らない。
思ったよりも時間がないかもしれないな、これは……。
「大輝、私に作戦があるんだけど」
「マジか……でも、一人でやろうって思ってたし……だけど既にまきこんでしまってるよな」
「すぐそうやって抱え込もうとするの、本当良くないよ。ちゃんと頼ってくれないと、私としても存在意義がわからなくなっちゃう」
「そうだよな、ごめん。なら聞かせてもらってもいいか?」
不安な顔で富沢親子が見つめる中、睦月が作戦の概要を話す。
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