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第五章:粛清の鐘が鳴る
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王都の空に、低く鐘の音が響いた。
それは王政会議の開会を告げる合図――だが、いつもと違い、その響きには重く冷たい緊張がこもっていた。
議事堂前には、貴族や高官だけでなく、選ばれた民の代表も集められていた。
王太子直々の命で、今回は「公開審議」として行われるのだ。
真実は、国民にも知らされるべきだとアレクサンダーが判断したからである。
そして、そこに至るよう誘導したのは他ならぬエリザベスだった。
王政会議の壇上。
アレクサンダーはゆっくりと立ち上がり、王座の間に集まる面々へと鋭い視線を向けた。
「本日、この場で問うのは――“聖女リリアナ・ブラウン”の正当性についてである」
ざわめきが広がった。
それは畏敬と驚愕、そして不安の入り混じった音だった。
リリアナ本人は中央に立たされ、目を見開いたまま震えていた。
彼女はまだ、“自分が暴かれる”という現実を信じきれていない。
「彼女は、神託を受けた聖女であり、王国に祝福をもたらす存在である……それが、これまでの認識だった」
アレクサンダーは静かに視線を落とし、次の瞬間、壇上の横に並んだエリザベスへと手を差し伸べる。
「だが今、王国にとっての真実を明かすべき時が来た。
エリザベス・ヴァンドービルト。証言を求める」
その名が告げられた時、場内の空気が一変した。
かつて“悪役令嬢”と蔑まれていた彼女が、今や真実を語る者として舞台に立つのだ。
エリザベスは、ゆっくりと前に進み出る。
その一歩一歩は、軽やかでありながら、歴史を変える重みを持っていた。
彼女は静かに礼をし、顔を上げた。
「私は、リリアナ・ブラウンが王国において“偽りの力”を振るっていた事実をここに告発します。
彼女は、聖なる奇跡を装い、他者の魔力を奪い、魔導技術を独占していました」
傍らの魔導師が、記録装置を起動させる。
エリザベスが提出した解析結果や証拠映像が空中に投影され、参列者の目に映し出されていく。
“禁呪の魔方陣”
“失神する平民の少女たち”
“闇市で取引された魔力触媒”
ひとつ、またひとつ。
神聖とされていた聖女の仮面が剥がされていくたびに、人々の顔には恐れと怒りが浮かんだ。
「嘘よ!これは何かの間違いよ!」
リリアナが叫ぶ。
声は掠れ、狂気を帯び始めていた。
「エリザベス、あなたが仕組んだのね!全部、あなたが私を陥れるために――!」
しかし、アレクサンダーの手が制止の合図を出す。
「リリアナ・ブラウン。反論があるなら、証拠をもって反証せよ。王国の未来を担う者に、虚言を許す余地はない」
その冷ややかな声に、かつての優しさはなかった。
リリアナの足元が崩れるように揺らぎ、ついにその場に崩れ落ちた。
民の間からは、ざわめきと同時に怒号が飛ぶ。
「俺の妹の魔力が消えたのは、あんたのせいか!」
「聖女なんて、最初から偽者だったんだ!」
「エリザベス様を貶めた報いだ!」
混乱の渦の中、アレクサンダーは王太子として最後の宣言を下した。
「リリアナ・ブラウンは、禁術使用と国家欺瞞の罪により、すべての称号と権利を剥奪。
本日をもって、王国より永久追放とする」
鐘が、再び鳴り響いた。
その音は、正義がなされたことを告げると同時に――
エリザベスがすべてを覆し、王妃として新たな道を歩む“始まり”を告げる音でもあった。
それは王政会議の開会を告げる合図――だが、いつもと違い、その響きには重く冷たい緊張がこもっていた。
議事堂前には、貴族や高官だけでなく、選ばれた民の代表も集められていた。
王太子直々の命で、今回は「公開審議」として行われるのだ。
真実は、国民にも知らされるべきだとアレクサンダーが判断したからである。
そして、そこに至るよう誘導したのは他ならぬエリザベスだった。
王政会議の壇上。
アレクサンダーはゆっくりと立ち上がり、王座の間に集まる面々へと鋭い視線を向けた。
「本日、この場で問うのは――“聖女リリアナ・ブラウン”の正当性についてである」
ざわめきが広がった。
それは畏敬と驚愕、そして不安の入り混じった音だった。
リリアナ本人は中央に立たされ、目を見開いたまま震えていた。
彼女はまだ、“自分が暴かれる”という現実を信じきれていない。
「彼女は、神託を受けた聖女であり、王国に祝福をもたらす存在である……それが、これまでの認識だった」
アレクサンダーは静かに視線を落とし、次の瞬間、壇上の横に並んだエリザベスへと手を差し伸べる。
「だが今、王国にとっての真実を明かすべき時が来た。
エリザベス・ヴァンドービルト。証言を求める」
その名が告げられた時、場内の空気が一変した。
かつて“悪役令嬢”と蔑まれていた彼女が、今や真実を語る者として舞台に立つのだ。
エリザベスは、ゆっくりと前に進み出る。
その一歩一歩は、軽やかでありながら、歴史を変える重みを持っていた。
彼女は静かに礼をし、顔を上げた。
「私は、リリアナ・ブラウンが王国において“偽りの力”を振るっていた事実をここに告発します。
彼女は、聖なる奇跡を装い、他者の魔力を奪い、魔導技術を独占していました」
傍らの魔導師が、記録装置を起動させる。
エリザベスが提出した解析結果や証拠映像が空中に投影され、参列者の目に映し出されていく。
“禁呪の魔方陣”
“失神する平民の少女たち”
“闇市で取引された魔力触媒”
ひとつ、またひとつ。
神聖とされていた聖女の仮面が剥がされていくたびに、人々の顔には恐れと怒りが浮かんだ。
「嘘よ!これは何かの間違いよ!」
リリアナが叫ぶ。
声は掠れ、狂気を帯び始めていた。
「エリザベス、あなたが仕組んだのね!全部、あなたが私を陥れるために――!」
しかし、アレクサンダーの手が制止の合図を出す。
「リリアナ・ブラウン。反論があるなら、証拠をもって反証せよ。王国の未来を担う者に、虚言を許す余地はない」
その冷ややかな声に、かつての優しさはなかった。
リリアナの足元が崩れるように揺らぎ、ついにその場に崩れ落ちた。
民の間からは、ざわめきと同時に怒号が飛ぶ。
「俺の妹の魔力が消えたのは、あんたのせいか!」
「聖女なんて、最初から偽者だったんだ!」
「エリザベス様を貶めた報いだ!」
混乱の渦の中、アレクサンダーは王太子として最後の宣言を下した。
「リリアナ・ブラウンは、禁術使用と国家欺瞞の罪により、すべての称号と権利を剥奪。
本日をもって、王国より永久追放とする」
鐘が、再び鳴り響いた。
その音は、正義がなされたことを告げると同時に――
エリザベスがすべてを覆し、王妃として新たな道を歩む“始まり”を告げる音でもあった。
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