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7話
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休職に入り、俺は今後の事を考えていた。休職にはなったが、給料は会社から支給されることになっている。俺は特に会社を恨んでいないし、むしろ休職中でも給料を支給してくれる会社に感謝している。だがこれも一時的なものだろう。とりあえず俺は履歴書を買いに外に出た。
街中では抗議活動への参加を募る演説の声が聞こえる。テレビでも最近ではその手の番組ばかりだ。
店で履歴書を見つけてレジに持っていくと、レジの店員と目が合った。この店員は俺をあの治験者だと認識しているのだろうか。テレビでは出ていないが、インターネット上では俺の顔写真も出回っている。まったく誰が何の意味があってそんなことをするのだろうか。ただでさえ社交性の乏しい俺は、一層他者と接することが億劫になりつつある。
俺は履歴書を購入し、店を出た。まだ時間は午前10時。家に帰ってもやる事なんて無い俺は、近所にある公園に立ち寄ることにした。平日のこんな時間だ。公園には誰もいない。久しぶりのブランコに乗りながら、少し冷たくなった風を感じる。
俺のスマホが鳴った。奏からだ。
抗議活動で使った備品を車で運ぶ予定だった人が今日急遽来れなくなったそうで、今から運ぶのを手伝えないか聞かれた。彼女の声に少し焦りを感じた。
俺は快く受け入れた。
車は既にレンタカーが予約されているとのことで、俺はその店に向かった。
レンタカー屋の受付で指定された名前で予約したことを伝える。車はミニバンが予約されていた。
入り口前に車が止められ、俺はその車に乗り込んだ。実は久々の運転に少し緊張をしている。ゆっくりとアクセルを踏み、その店を出発した。
10分くらい経っただろうか。運転の感も戻りつつあり、また快晴ということもあったのだろう。俺は久しぶりのドライブを楽しんでいた。外の空気を入れようと車の窓を開けると、街中で行われている抗議活動の声が聞こえ、俺は現実に引き戻された。
奏との待ち合わせ場所に到着すると、既に彼女が待っていた。俺と目が合いこちらに向かってくる。
「急なお願いですいませんでした。今日はありがとうございます。」
「いえいえ、丁度暇だったんで。」
彼女は助手席に座り、俺は車を出発させた。この依頼を受けたときは深く考えていなかったが、よく考えると車の中では2人っきりだ。俺は別に今まで彼女がいなかった訳ではないが、久しぶりの状況に懐かしい感情を抱いた。
目的地に到着し、指定の場所まで荷物を下ろす。終わった頃には夕方になっていた。俺は彼女を家まで送ることにした。疲れもあってだろう、帰り道はあまり会話はなかった。紅色に変わっていく空を見ながら、もうすぐ終わるこの時間を尊く感じる。
暫くすると海沿いの道に入り、もうすぐ沈みそうな夕陽が見えた。
「よ、よかったら、ちょっと海で夕陽見ませんか?すごい綺麗なんで...」
俺は彼女の方を見ずに言った。二度と来ないこの機会を、どうしても逃したくはなかった。
「はい。」
奏は優しい声で答えてくれた。
街中では抗議活動への参加を募る演説の声が聞こえる。テレビでも最近ではその手の番組ばかりだ。
店で履歴書を見つけてレジに持っていくと、レジの店員と目が合った。この店員は俺をあの治験者だと認識しているのだろうか。テレビでは出ていないが、インターネット上では俺の顔写真も出回っている。まったく誰が何の意味があってそんなことをするのだろうか。ただでさえ社交性の乏しい俺は、一層他者と接することが億劫になりつつある。
俺は履歴書を購入し、店を出た。まだ時間は午前10時。家に帰ってもやる事なんて無い俺は、近所にある公園に立ち寄ることにした。平日のこんな時間だ。公園には誰もいない。久しぶりのブランコに乗りながら、少し冷たくなった風を感じる。
俺のスマホが鳴った。奏からだ。
抗議活動で使った備品を車で運ぶ予定だった人が今日急遽来れなくなったそうで、今から運ぶのを手伝えないか聞かれた。彼女の声に少し焦りを感じた。
俺は快く受け入れた。
車は既にレンタカーが予約されているとのことで、俺はその店に向かった。
レンタカー屋の受付で指定された名前で予約したことを伝える。車はミニバンが予約されていた。
入り口前に車が止められ、俺はその車に乗り込んだ。実は久々の運転に少し緊張をしている。ゆっくりとアクセルを踏み、その店を出発した。
10分くらい経っただろうか。運転の感も戻りつつあり、また快晴ということもあったのだろう。俺は久しぶりのドライブを楽しんでいた。外の空気を入れようと車の窓を開けると、街中で行われている抗議活動の声が聞こえ、俺は現実に引き戻された。
奏との待ち合わせ場所に到着すると、既に彼女が待っていた。俺と目が合いこちらに向かってくる。
「急なお願いですいませんでした。今日はありがとうございます。」
「いえいえ、丁度暇だったんで。」
彼女は助手席に座り、俺は車を出発させた。この依頼を受けたときは深く考えていなかったが、よく考えると車の中では2人っきりだ。俺は別に今まで彼女がいなかった訳ではないが、久しぶりの状況に懐かしい感情を抱いた。
目的地に到着し、指定の場所まで荷物を下ろす。終わった頃には夕方になっていた。俺は彼女を家まで送ることにした。疲れもあってだろう、帰り道はあまり会話はなかった。紅色に変わっていく空を見ながら、もうすぐ終わるこの時間を尊く感じる。
暫くすると海沿いの道に入り、もうすぐ沈みそうな夕陽が見えた。
「よ、よかったら、ちょっと海で夕陽見ませんか?すごい綺麗なんで...」
俺は彼女の方を見ずに言った。二度と来ないこの機会を、どうしても逃したくはなかった。
「はい。」
奏は優しい声で答えてくれた。
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