鳥戦記『海軍特別警察隊』

時雨光

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第壱章「前夜」

鳥戦記9「迎撃計画」

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私の目の前には、椅子に腰掛け。机の上の書類に目を通す鳥谷中将がいる。

「…この情報は誰が?」

鳥谷中将は書類を置き。こちらに訊ねる

「妖夢さんです。わざわざココまで持ってきました。」

苦笑を交えつつそう答える

「あの人らしいと言えばらしいですね。ガ島ですか。現状配備されてる戦力はどのくらいでしたっけ?」

そう聞く鳥谷中将は眉をひそめ。机に肘をつき両手を合わせた。

「現時点でのガダルカナル島における配備戦力はほぼ居ないに等しいですね。居ても測量班くらいかと。7月初旬に海軍から横須賀鎮守府所属の第十一設営隊とその護衛と警備の為、横須賀第五特別陸戦隊から200から400人程の分遣隊が同行すると聞いています。」

報告資料にあった記憶してる内容を一通り話しながら。米軍をどうしたものかと頭を悩ませる

「…ガ島における飛行場建設命令が出たのは5月の末か6月初旬だったはず。こうも早く勘づかれるか…MIの件もあるし妖夢さんが言うなら信頼性は高いですし。増兵の検討余地はありますね。」

そう。建設命令を私が海軍内で聞いたのも6月初旬程だった。ここ最近、1ヶ月もしない間の出来事なのである。それをこうも早く知られるとは…

「えぇ。ただ増派するにしても。陸軍は中国戦線優先で。南洋諸島もっぱらラバウルに至っては海軍の管轄としてほとんど取り合ってくれませんが。海軍だけで対処できますかね?」

陸軍と海軍は馬が合わんとはよく言うが。現状、米豪遮断に関しては両者賛成の意見を持っているものの豪州への侵攻は陸軍は兵力不足を理由に消極的であり。あくまでも資源地帯の占有を優先するようにと言うのが陸軍の意向である。その為基本的に諸島部の防衛は我々海軍が抽出した戦力での戦闘が求められる。

「…陸軍はどうだろうな…交渉はしてみるけど。陸さんの事だ、あまり良い回答は貰えないと思っておくのが良いかもしれない。それこそガ島に侵攻され。長期戦となれば陸軍が派遣されるかもしれんが。正直そこまでしないと陸さんは動かんだろう」

鳥谷中将はため息混じりにそう言うと、机に置かれた紅茶を一口飲み、深呼吸した

「海軍陸戦隊のみでの防衛ですか。。」

いくら拡大を続けていると言えども陸戦隊もそこまで潤沢に居る訳ではない。。ガ島の防衛…陸戦隊と陸軍の正規の歩兵師団では明らかに練度と規模に差がある。

「…ミッドウェー…か。」

一息ついた鳥谷中将がそう呟いた

「ミッドウェー?ですか?」
思わず聞き返した

「相手さんはまだ日本がガ島に執着すると見ているのだろう。そして実際こんなに反攻が早いとは予期していなかったから今ガ島に送れる大兵力は海軍には無いに等しい」

鳥谷中将はガ島周辺の地図を見ながら淡々と語り続ける

「…だから、我々は一旦ガ島を見捨てる。もしここで陸軍が大規模な兵力を送ってくれてもきっと補給網を完全に整えられていない現状では送られた陸軍の兵士を十分に活躍させられない。幸いまだガ島の飛行場は未完成だ。まだ踏ん切りがつく。」

そう言うと。鳥谷中将はガ島周辺の地図を指差す

「ガ島から北西おおよそ26海里。ラッセル諸島。ここをガ島維持、万が一の時は奪還の為の補給拠点兼主要基地とする。」

「…ガ島を易々と敵さんにくれてやるのですか?ガ島程の重要地点を易々と敵に取られたと知られれば。それこそ鳥谷中将やこのニューギニア方面隊幹部の解任の口実を守旧派に与えかねません。」

咄嗟に私はそう反論してしまった。私はこの時兵士の命より鳥谷中将やここに居る将校…そして自分の立場を優先してしまったのかもしれない。

「…時雨大佐」

その一声で今の自身の所属を思い出し我に返った。彼にそんな立場を遵守するように等と言う発言はそれこそ。私達が嫌う守旧派の言い方そのものであったと痛感した

「スミマセン。海憲が出過ぎた事を言いました」

私は鳥谷中将から顔を背け。うつむき。そう言った。
きっと今の私の顔は酷いだろう。自身の発言による自己嫌悪で眉をしかめ。奥歯を噛み締めているのだから。どうにか捻り出せたのがこの謝罪の言葉であった。

「時雨特務少佐。こっちを向いてください。私は圧をかける為に貴方の名前を呼んだのではありません。時雨さんがそうやってまた。中村中将の所に居た時みたいに自身の言葉で提案してくれた事に驚いただけです。」

彼の声はただ優しく。そう私に語った

「時雨さんの言う通り。あまりにもリスクが大きいものです。上がミッドウェー以降の大損失と認めれば。私達は昨日の会議で言った通り解任や転属を迫られるでしょう。でもここでガ島を巡って今居る艦隊の使用用途や動きを制限されれば、なおのことガ島での戦死者とガ島周辺での海戦で損害を負い。取り返しのつかない損失を負いかねない。でも島だけなら取り返しが効きます。それに米軍はガ島にかなりの兵力を送り込むはずです。逆に敵海軍の動きをガ島を使って制限し。輸送を途絶えさせ。陸上兵力を消耗させられれば。米軍の反攻の初動を挫く事ができる。」

彼の発言は自身に満ち溢れていた。背けていた目線が自然と彼の手元の地図にいく。

「…確かに。艦艇は自由に動かせても島は動かせない。ましてや、そこに大兵力がいれば海軍はその動かない島のために輸送と護衛をしなければならない為。行動が制限されこちらは出方をいくらでも変えられる」

「えぇ。その上での。ラッセル諸島そして。」

彼は再び地図を指差し口角をあげ。こちらを見る

「…レンネル島ですか?」

ガ島からは少し距離があるがガ島南方の海域にポツンと位置する島である。

「えぇ。レンネル島にも航空基地もしくは水上機基地を建設し。米軍の進軍経路として最も幅広く。最も自由度の高いガ島南方の海域の哨戒。抑止に使い。可能な限り米軍のガ島への輸送路やルートを制限させます。」

確かに、このガ島南方海域は島が辺りにほとんど無く。西はポートモレスビー。東は連合軍勢力下のバツアヌやニューカレドニアがある。つまり。連合国にとって豪州と米国を繋ぐ共通海域と言える。そこの中継点に等しいレンネル島を基地化してしまえば連合国は大規模な艦隊行動をできなくなる。

「すっすごい…これなら。十二分に米艦隊に対して我々の艦隊でも無駄撃ちを避け。確実に迎撃することができます。」

思わず地図から顔を上げ鳥谷中将の顔を見つめた

「えぇ。可能な限り兵力の分散は避けたいですから。問題は。米軍がガ島の飛行場完成予定頃に上陸を計画している以上残されている猶予があまりにも短い事ですね。今夜にでも緊急の会議を開き。既に入港している艦艇で臨時編成を行い第一輸送艦隊としてガ島で飛行場建設予定だった設営隊と護衛隊をラッセル島に送り込みたいですね」

そう言うと。鳥谷中将は立ち上がり部屋の扉を開けると外に居た部下に今夜18:00に会議室に幹部は集合するよう伝えるようにと指示をして。会議に必要な資料を纏め始めた。私も邪魔になっては悪いと部屋を後にした。
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