私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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対乙女ゲーム令嬢 案件

令嬢第四事例 報告2

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 私はまず、主人公であるリゼットの姿を確認しに行った。

 リゼットは目のクリクリとした可愛らしい少女だった。中級貴族の令嬢で品も良く、成績も優秀な非の打ち所がないような人物だ。確かに、これなら男性の攻略は難しくないと考えられる。

「とても可愛らしい方ですね……」
「そうなのよ、可愛いから敵にはしたくないのだけど、どうしても運命的には相対しなければならないから苦しいところよね。」

 一方、ノン悪疑惑の悪役令嬢のダリアだが、見た目は悪役らしくても、話し方や性格は悪役らしからぬ気さくさだ。

「ダリア様って、見た目に反して結構気さくに話されますよね?」
「私は前世の影響が大きいから、気を抜くと話し方が変わってしまうの。あなたは貴族らしい敬語を放さなくて済むから、とても気楽だわ」

 そうか、前世の時の話し方が残っているのか。通りで貴族らしくない発言が出るわけだ。
 だが、私も正直話しやすいので特に気にする必要はない。私も気楽だ。

「ちなみに、今後のイベントの予定としてはどのように対策を進めますか?」

「目先は兄のセドリックがリゼットと出会うイベントがあるので、まずはそれを回避したいと思うわ。兄も騎士イアンと同じで出会いさえ回避できれば、ルートが開始されることがないはずだもの」

「では、目先はお兄様であるセドリック様とリゼット様との出会いを回避する対策に臨みましょうか」
「そうしましょう」

 2人の出会いイベントは放課後の貴族達の通う学校で行われるらしい。タイミングは、試験結果発表日の放課後だ。

 試験の成績が悪く、肩を落として歩いていたセドリックは正面から来たリゼットにぶつかってしまう。
 弾みで思わず点数の書かれた答案用紙を落としてしまい、リゼットに点数を見られるという恥ずかしい状況に陥ってしまうのだが……主人公補正のかかった優しいリゼットは、馬鹿にすることなく、ぶつかったお詫びに勉強を教えると言い出すのだ。

 元々女の子に弱いセドリックは、リゼットの優しさに一瞬で虜になる。猛アプローチをし、勉強会という名のデートを重ね、リゼットとの仲を深めていく流れらしい。リゼット目線では比較的攻略が簡単なルートだそうだ。

「え、お兄様は勉強をリゼット様に教えてもらう側なのですね……」
「恥ずかしながら、勉強は不得手らしくて。人使いと女心を読むのは長けているようなのですが……」

 何となく、勉強が出来るイケメンに勉強を教えてもらった方がドキッとすると思うのだが、ゲームの開発チームとは私は好みが合わなさそうだ。

 というか、今さらっと聞き捨てならぬ何か重要なことを聞いた気がする。

「人使いと女心を読むのは長けてると言いました?」

「そうなのです。兄のセドリックは所謂……軟派系の人でして、女の子が大好きなのです。その上、周りの人使いも上手く、兄の雰囲気に周りは流されてしまう傾向があります」

「少しヒモ……いえ、チャラい感じの人が好みであるプレイヤーが、攻略するタイプの方ですね。」
「そうね、一番チャラチャラしているタイプね」

「でも……ダリア様は裏の根回しにより断罪されるのですよね?シナリオの話を聞く限りセドリック様は、裏から手回ししてダリア様を追放するような頭脳派には思えないのですが……」

「記憶にあるセドリック派の人達の話では……勿論、魅力の一つは軟派なキャラ設定ですが、もう一つは成長を感じるキャラ設定だそうです」

「成長……?」

「ストーリーが進むにつれ、慣れない頭脳を使って持ち前の人使いの上手さを駆使し、必死に主人公を守るよう心身共に成長していく。その成長を見守るのがセドリックルートの良さだそうですよ。主人公目線では、軟派だったセドリックの成長物語としてストーリーを進めていくらしいです」

「攻略していく度に成長を感じられる、そんな母性愛をくすぐられるキャラでもあるということですね……」

 なるほど、セドリックはゲーム内でチャラさと育成要素を組み合わせたポジションのキャラなのか。
 これは、後半に行くほど成長して厄介な相手になる予感がするので、先に摘んでおく必要がありそうだ。

 それにしても、話を聞く限りダリアは兄の成長に利用されることになるのか……酷いとばっちりである。やはり早めにセドリックルートは潰しておこう。


 ーー早速セドリックルートの回避案を考え始める。

 まず、リゼットを出会いイベントの発生する校舎裏に来させない案を考えてはみたが、この案はリゼットに接触する恐れがあることから直ぐに却下となった。ダリアが声を掛けるといじめと判断されてしまう恐れがあるため、リゼットの行動制限は難しい。

 結果、行動が制限できる可能性が高い、兄のセドリックを引き止める案に至った。

 手始めに、当日の放課後の予定を聞き出し、ダリアが校舎ではなく違う場所に呼び出すことに。しかし、セドリックはダリアを何故か警戒し、放課後は一人で遊びたいとの理由をつけられ断られてしまった。

 大方、妹に干渉されたくないこと……女の子と出かけることでも考えているのだろう。さすが軟派系キャラ。

 クズだ。……あ、不適切な発言があったことをここでお詫びします。

 呼び出しの作戦は止めにして、せめて校舎に来ないように、新しい店のチラシを渡して興味を逸らしたりする作戦を色々と試みてみた。

 ただ……手ごたえはあまり無い。

 そしてついに、出会いイベントの当日を迎えた私たちは、取り急ぎイベント予定場所の校舎の裏側で待機をした。

「ダリア様、ここまで対策をしましたが、お兄様は一向に行動を変える気配がありませんでしたね」
「本当です。こんなにも上手くいかないなんて……兄のキャラには困らされてしまいます。本当にお恥ずかしい限りです」
「仕方ないです、今回はギリギリまで様子を確認して、事前に何かできるのであれば対応しましょう」
「そうですね……」

 しばらく待機していると、向こうの方からダリアの伝えたシナリオ通りに肩を落としてフラフラと歩くセドリックの姿が見えた。

「あれだけ対策をしたのに、やはり来てしまったわ!」
「やっぱダメだったのか……」

 努力の甲斐無く現れたセドリックに、2人して肩を落とした。
 そして、まずいことに反対側からリゼットが何気なく歩いてきている姿も見える。
 
「ダリア様、肩を落としている場合ではないですよ! リゼット様も来ています!」

 このままではぶつかって、出会いイベントが開始されてしまう。
「どうしましょう!」
「何も思い浮かばない! どうしよう!」

 案が出ず、パニックになり始めた私達。
 方や一向に足を止める気配のないセドリックとリゼット。二人が近づく度に焦りで思考が止まる。

 ついに私は頭のネジが外れたらしい。
 何を考えたのか、私は魔法を使っていた。
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