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対乙女ゲーム令嬢 案件
令嬢第四事例 報告1
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私とタロウが扉を通過すると、そこは貴族たちがいそうなお城のある環境があった。
なんだ、今回も貴族令嬢の世界なのか。いつも通りにすれば意外と簡単かもしれない。
「君、今貴族令嬢の世界だから簡単そうだとか思っただろう」
「……ぅえ?!」
心を読まれてる?! 慌てて、「いえ」と冷静を装って返事をしておいたが、多分ぅえにしか聞こえなかっただろう。
「簡単かどうかは資料を見てから判断したらいい。君に今から託す仕事はこれだ。」
そう言うと、タロウは私に資料を渡した。
ノン悪事案 No.4
場所:世界番号860
救済対象:悪役令嬢
真悪役疑惑:無し
依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
魔法の存在:有(認知度:中程度)
備考:対象令嬢は前世の記憶を持ち、乙女ゲームの悪役令嬢に転生をした自覚あり。なお、攻略対象によっては悪役令嬢として断罪される恐れがあることから、断罪されない運命を望む。
「読んだか?」
「はい、最近よく目にする悪役令嬢転生物ですね。要するに前世でやったゲームの悪役令嬢に転生したので、断罪される運命を回避したいということですね」
「察しがいいじゃないか。転生課で偶然対応した令嬢が、このままの運命を受け入れたくないとのことで、ぜひとも協力をして欲しいと接触してきた」
「まあ、自分の不運が分かっているのですから、予め避けたいのはよく分かります」
待ち合わせ場所であろう所に連れていかれると、令嬢が待っていた。
「ヴィンセント様! お待ちしておりました! その方が例の悪役令嬢おたすけ課の方でしょうか?」
令嬢が私達を見つけるなり駆け寄るが……私は思わず小声でタロウに聞く。
「ヴィンセント様って呼んでる……! タロウって名前伝えてないんですか?」
笑いをこらえながら言うと、ギロリと睨まれた。
「うるさい黙っていろ、余計なことを言うな。いいか、俺はヴィンセントで通っている。いいな?俺はヴィンセントだ!」
どうやらタロウと名乗ってないらしい。物凄い圧を感じて、私は笑いをこらえながらもうんうんと頷いた。タロウは使用禁止とのことだ。
令嬢はきょとんとしてこちらを見ている。慌てて私は挨拶をした。
「あ、……はいそうです! 私が今回依頼を承りました、悪役令嬢おたすけ課のエミリーと申します。以後お見知りおきを」
「あら、そうなのですね。私はダリア。よろしくお願いいたします」
ダリアと名乗る令嬢はお辞儀をした。
ダリアは悪役令嬢の運命を背負っているのを反映したかの如く、外見は悪役令嬢である。金髪の縦ロールの髪型に、釣り上がった目つき。少し怖そうにも見える。ただ、外見とは違い、凄く打ち解けやすそうな雰囲気を出していた。
挨拶が済んだことを確認するとタロウは口を開いた。
「では、エミリーには前回伺った大凡の内容は伝えていますので、詳細の説明に関してはエミリー本人によろしくお願いします。……では、私はこれで」
「じゃっ」と手を上げて帰ろうとするタロウを、私は慌てて止める。
「え、待ってください、帰るんですか?」
「……そうだが?」
「フォローしてくれるとかないんですか?」
「私は君と違って忙しい。助けが必要なら手を貸さないこともないが、まだ大丈夫じゃないのか?」
「……そんなぁ」
どうやら初めから丸投げするつもりだったらしい。
落胆する私を置いて、タロウは手をヒラヒラと振りながら颯爽と何処かに消えてしまった。
ーー仕方ない。今回も私が何とかするしかないらしい。
私はまず、いつも通り依頼主からの内容を確認することにした。
「では、ダリア様、タロ……ヴィンセントから引き継ぎますので詳細をお話いただけますか?」
ダリアは早速詳細を話し始めた。
「はい。私は前世の記憶があるままこの世界に生れ落ちました。そしてこの世界を把握して酷く驚きました。なぜなら、私がプレイしていたゲームの世界だったからです。ゲームの名前は『イケメン貴族物語~打倒悪役令嬢!~』。リゼットという主人公と、5人の攻略者が登場します。主人公が選ぶルートによってストーリー展開が変わるのですが、私はどうやらゲームに登場する悪役令嬢に転生してしまったようなのです」
ゲームの名前がびっくりする程に直球だったので吹き出しそうになった。あからさまに悪役令嬢を倒しにかかっている。
ダリアの話によると、ゲームのシナリオ通りに進むと、5人の中でダリアが破滅するルートは概ね3つ。
王子であるエドウィンと、兄のセドリック、そして騎士であるイアンのルートだ。
残りの2つは前者3つのルートよりも影響は少ないため、優先すべきは前者の3つのルートとなるらしい。
主人公であるリゼットがどのルートを進むのかによってダリアの運命は決まるので、断罪されないようにストーリーを進める必要がある。
一言でいうと、運命に逆らう方法を探すのだ。
「幸いにもゲームは結構やり込んでおりまして、どのタイミングで誰がどの行動を起こすのかなどは把握しております」
「……そこまで把握されているなら、私の手伝いは要らないのでは?」
「元々1人で対処するため、準備はしていたのです。幸いにも騎士のイアンルートは、騎士イアンとリゼットの出会いイベントを起こさなければ始まらないので、イアンを部屋に閉じ込めてイベント回避をしました。」
「は、はあ、すごいですね……」
それだけの行動力があれば問題ないのでは? と思ってしまう。
「問題はあと2人なのです。」
ダリアの運命を握る後2人のルートだが、ゲーム内でのシナリオは以下のようになっている。
ダリアは元々王子であるエドウィンと婚約者となっている。もし主人公がダリアの婚約者である王子エドウィンルートに進んだ場合、ダリアが嫉妬から主人公であるリゼットをいじめ始めるのだ。ついには、迫害の数々が暴露され、断罪されて国外へ追放となる。
兄セドリックのルートを進むと、兄弟であるダリアは兄に迫る主人公を疎ましく思い、嫌がらせを行う。ダリアによるリゼットへの迫害や脅威を恐れた兄が手を回し、ダリアは貴族から追放されてしまうことになる。
「出会いを避けられるものならいいものの……王子は身分の関係からも主人公と出会うのは必然です。そのため出会いイベントの回避ができないのです。さらに、兄に至っては性格上私が制限することが難しく、私一人の力ではどうしても不可能なのです。」
「では、メインはこのお2人からの脅威からお守りし、悪役にならないようにすることが今回の依頼ですね」
「そうです。大凡のタイミングや内容などは私にお任せください。どうか力を貸していただけるとありがたいです。 一緒に対策を考えてください!」
「分かりました、どこまでお力になれるか分かりませんが、共に頑張りましょう」
「はい、よろしくお願いいたします!」
そして、ダリアと私は脱破滅の運命を掲げ、対策を始めたのだった。
なんだ、今回も貴族令嬢の世界なのか。いつも通りにすれば意外と簡単かもしれない。
「君、今貴族令嬢の世界だから簡単そうだとか思っただろう」
「……ぅえ?!」
心を読まれてる?! 慌てて、「いえ」と冷静を装って返事をしておいたが、多分ぅえにしか聞こえなかっただろう。
「簡単かどうかは資料を見てから判断したらいい。君に今から託す仕事はこれだ。」
そう言うと、タロウは私に資料を渡した。
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場所:世界番号860
救済対象:悪役令嬢
真悪役疑惑:無し
依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
魔法の存在:有(認知度:中程度)
備考:対象令嬢は前世の記憶を持ち、乙女ゲームの悪役令嬢に転生をした自覚あり。なお、攻略対象によっては悪役令嬢として断罪される恐れがあることから、断罪されない運命を望む。
「読んだか?」
「はい、最近よく目にする悪役令嬢転生物ですね。要するに前世でやったゲームの悪役令嬢に転生したので、断罪される運命を回避したいということですね」
「察しがいいじゃないか。転生課で偶然対応した令嬢が、このままの運命を受け入れたくないとのことで、ぜひとも協力をして欲しいと接触してきた」
「まあ、自分の不運が分かっているのですから、予め避けたいのはよく分かります」
待ち合わせ場所であろう所に連れていかれると、令嬢が待っていた。
「ヴィンセント様! お待ちしておりました! その方が例の悪役令嬢おたすけ課の方でしょうか?」
令嬢が私達を見つけるなり駆け寄るが……私は思わず小声でタロウに聞く。
「ヴィンセント様って呼んでる……! タロウって名前伝えてないんですか?」
笑いをこらえながら言うと、ギロリと睨まれた。
「うるさい黙っていろ、余計なことを言うな。いいか、俺はヴィンセントで通っている。いいな?俺はヴィンセントだ!」
どうやらタロウと名乗ってないらしい。物凄い圧を感じて、私は笑いをこらえながらもうんうんと頷いた。タロウは使用禁止とのことだ。
令嬢はきょとんとしてこちらを見ている。慌てて私は挨拶をした。
「あ、……はいそうです! 私が今回依頼を承りました、悪役令嬢おたすけ課のエミリーと申します。以後お見知りおきを」
「あら、そうなのですね。私はダリア。よろしくお願いいたします」
ダリアと名乗る令嬢はお辞儀をした。
ダリアは悪役令嬢の運命を背負っているのを反映したかの如く、外見は悪役令嬢である。金髪の縦ロールの髪型に、釣り上がった目つき。少し怖そうにも見える。ただ、外見とは違い、凄く打ち解けやすそうな雰囲気を出していた。
挨拶が済んだことを確認するとタロウは口を開いた。
「では、エミリーには前回伺った大凡の内容は伝えていますので、詳細の説明に関してはエミリー本人によろしくお願いします。……では、私はこれで」
「じゃっ」と手を上げて帰ろうとするタロウを、私は慌てて止める。
「え、待ってください、帰るんですか?」
「……そうだが?」
「フォローしてくれるとかないんですか?」
「私は君と違って忙しい。助けが必要なら手を貸さないこともないが、まだ大丈夫じゃないのか?」
「……そんなぁ」
どうやら初めから丸投げするつもりだったらしい。
落胆する私を置いて、タロウは手をヒラヒラと振りながら颯爽と何処かに消えてしまった。
ーー仕方ない。今回も私が何とかするしかないらしい。
私はまず、いつも通り依頼主からの内容を確認することにした。
「では、ダリア様、タロ……ヴィンセントから引き継ぎますので詳細をお話いただけますか?」
ダリアは早速詳細を話し始めた。
「はい。私は前世の記憶があるままこの世界に生れ落ちました。そしてこの世界を把握して酷く驚きました。なぜなら、私がプレイしていたゲームの世界だったからです。ゲームの名前は『イケメン貴族物語~打倒悪役令嬢!~』。リゼットという主人公と、5人の攻略者が登場します。主人公が選ぶルートによってストーリー展開が変わるのですが、私はどうやらゲームに登場する悪役令嬢に転生してしまったようなのです」
ゲームの名前がびっくりする程に直球だったので吹き出しそうになった。あからさまに悪役令嬢を倒しにかかっている。
ダリアの話によると、ゲームのシナリオ通りに進むと、5人の中でダリアが破滅するルートは概ね3つ。
王子であるエドウィンと、兄のセドリック、そして騎士であるイアンのルートだ。
残りの2つは前者3つのルートよりも影響は少ないため、優先すべきは前者の3つのルートとなるらしい。
主人公であるリゼットがどのルートを進むのかによってダリアの運命は決まるので、断罪されないようにストーリーを進める必要がある。
一言でいうと、運命に逆らう方法を探すのだ。
「幸いにもゲームは結構やり込んでおりまして、どのタイミングで誰がどの行動を起こすのかなどは把握しております」
「……そこまで把握されているなら、私の手伝いは要らないのでは?」
「元々1人で対処するため、準備はしていたのです。幸いにも騎士のイアンルートは、騎士イアンとリゼットの出会いイベントを起こさなければ始まらないので、イアンを部屋に閉じ込めてイベント回避をしました。」
「は、はあ、すごいですね……」
それだけの行動力があれば問題ないのでは? と思ってしまう。
「問題はあと2人なのです。」
ダリアの運命を握る後2人のルートだが、ゲーム内でのシナリオは以下のようになっている。
ダリアは元々王子であるエドウィンと婚約者となっている。もし主人公がダリアの婚約者である王子エドウィンルートに進んだ場合、ダリアが嫉妬から主人公であるリゼットをいじめ始めるのだ。ついには、迫害の数々が暴露され、断罪されて国外へ追放となる。
兄セドリックのルートを進むと、兄弟であるダリアは兄に迫る主人公を疎ましく思い、嫌がらせを行う。ダリアによるリゼットへの迫害や脅威を恐れた兄が手を回し、ダリアは貴族から追放されてしまうことになる。
「出会いを避けられるものならいいものの……王子は身分の関係からも主人公と出会うのは必然です。そのため出会いイベントの回避ができないのです。さらに、兄に至っては性格上私が制限することが難しく、私一人の力ではどうしても不可能なのです。」
「では、メインはこのお2人からの脅威からお守りし、悪役にならないようにすることが今回の依頼ですね」
「そうです。大凡のタイミングや内容などは私にお任せください。どうか力を貸していただけるとありがたいです。 一緒に対策を考えてください!」
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