私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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対部族令嬢 文化省・異世界統制省合同案件

令嬢第五事例 報告1

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 扉を抜けると馴染みの無い風景が現れた。
 人生で初めて見る砂漠だ。土づくりの建物が並ぶ街があり、中心部にドーム状の屋根が現れた。

 私達はドーム部分に降り立つと、早速資料を開く。急な依頼だったが、課長が登録処理をしたらしい。白紙に文字が浮かんだ。

 ノン悪事案 No.5
 場所:世界番号389
 救済対象:悪役令嬢 
 真悪役疑惑:占い師アニーサ
 依頼主:文化省と令嬢本人(接触可否:可)
 魔法の存在:無し(認知度:無し)
 備考:占い師アニーサによる悪評により、権威失墜の危機。王子ジャミールとの婚約も破棄される恐れあり。本人は身に覚えがなく、潔白を証明する必要がある。占い師の正体含め、文化局の調査と並行して行うことが望ましい。

 資料への反映が早い。毎度課長の仕事の早さには畏敬の念を抱くレベルだ。
 
 私が資料を見終わったのを確認したのか、ローリンは建物の一箇所を指差して言った。

「見て、あれが今回助ける予定の令嬢、サーラ様。見ての通り、高貴な生まれで、王位第一継承者であるジャミール様との婚約者であられるの」

 ここは宮殿だったらしい。1人の女性が宮殿の廊下を歩く姿が見えた。艶やかな黒髪に、青い瞳。小麦色の肌に青い衣装が美しく映えていた。

 「ごきげんよう、サーラ様」
 ローリンが廊下に降り立ち声をかけると、微笑みながらサーラは振り向いた。
 私とタロウは一歩下がって、後ろで礼をする。するとサーラは優雅な歩みでこちらに近寄り、慣れたように挨拶をした。

「ごきげんよう、ローリン様。そして関係者の方々かしら?この方々が来ていらっしゃるということは、もしかして依頼が受理されたということでしょうか?」
「さすが、サーラ様、察しが良くていらっしゃいます。後ろに控えている者は私の世界から来た魔法省と異世界統制省の者です」

 私は前に出ると早速自己紹介をした。
「ごきげんよう、サーラ様。私は魔法省、悪役局悪役救済部悪役令嬢おたすけ課のエミリーと申します。今後貴方様の担当となります」
 タロウも同じく続く。
「お初にお目にかかります。私は同じ世界から来た異世界統制省の者です。直接の担当ではありませんが、今回は調査のため同行をしております」

 サーラは私達に深々と一礼をすると、穏やかに微笑んだ。
「では、貴方達3人が今回この世界で行動をされるのですね。どうぞよろしくお願い致します」

 気品溢れる話し方と佇まいに、ほぅっと息を吞んでしまう。さすがお姫様といったところだろう。こんな人を陥れるなんて許せない。

 私は早速依頼の確認を行う。

「今回は、占い師アニーサによって虚偽の噂が流されているとのことでしたが、詳しくお聞かせ願えますか?」
「はい、アニーサはこの国で力を持つ占い師です。昔は名前さえ聞かない存在だったのですが、最近急にその名を轟かせ始めました。そのアニーサは、自分の気に入らない者に対しあらぬ噂を流したり、最近立場を悪用しつつあるのです。挙げ句の果てには、私に対しても王妃に相応しくないとの占い結果を突き付けました。さらに今後私が王妃になった暁には様々な災いが起こると、私に汚名を着せるような発言をもしたのです」

 すると、サーラの頬に涙が伝う。

 サーラが泣き始めたのを見かねて、続きをローリンが説明する。
「その時の詳細だけど……占いの評判を聞きつけた王家がアニーサを宮殿に招待したの。そこで誰が見ても美形であるジャミールの姿を一目見たアニーサはジャミールのことが気になってしまい、つい占いで王妃を陥れるような結果を言い渡したの。さらには、自分がその座には相応しいと。さすがに急なことではあったので、まだ王家では検討段階ではあるものの、今や町はその噂で持ち切り。サーラ姫とアニーサのどちらを信じるか、派閥が生まれ始めているのが現状よ」

「昔から信頼の厚いサーラ様のことですから、町人達はサーラ様を信じるのではないでしょうか?そんなぽっと出の占い師など信用するのでしょうか?」

「それが……アニーサの占いは何故か高確率で当たるの。突然現れた大占い師に、もはや聖女だとの噂も出ているくらいだもの。魔法の認知されていない世界だからきっと信仰する人も多出てくるのだと思う」

 タロウが口を挟んだ。
「この世界では魔法が認知されていないから、占いはさらに信憑性があるのだろうな。厄介だな。」

 なるほど……アニーサは闇が深そうだ。

「では、今回の依頼ですが、文化省のローリンと共にサーラ様の潔白を証明すること。そしてアニーサの勢力を衰えさせることでしょうか。……個人的にはギャフンと言わせたい感じではありますが」

 ローリンはクスッと笑うと頷いた。
「いいんじゃないの? 私もギャフンと言わせたいわ」
 大人しそうな雰囲気と裏腹に、少し強気な発言。意外とローリンさんとは気が合うかもしれない。

 サーラは涙を拭くと、潤んだ目のまま「ありがとうございます」と言った。


◇◇◇◇◇◇


 私とローリン、タロウの3人は早速渦中であるアニーサの様子を見に行くことにした。

 仰々しい赤いテントが目を引く。どうやらあそこがアニーサの営む占いの館のようだ。空を飛んでいた私たちは降り立つ前に準備をする。

「この世界の人は小麦色の肌で、日差しを遮るようにマントをする人が多いのよ。私達のように淡い色の肌で、服装も魔法省の制服だとすぐに他の地域から来た人だとばれてしまうわ」

「では、少し変装をしましょうか」

 私は杖を振り上げて、3人分の魔法を行った。
「マジカル チェンジ!」

 3人とも小麦色の肌に変化した。そして、服装も町人の者を参考にして合わせる。白のマントに少し飾りがついた、一般的な町人の服装だ。味気なかったので胸元のリボンはそのまま残しておいた。

「意外とやるじゃん」
「あら、潜入には丁度いいわね」

 2人も満足そうだ。普段から白のマントを付けているタロウは肌の色が変わった程度の変化だが満足だったらしい。

 テントに入ると、占いの最中だった。高い金額を支払う者から優先的に占っているらしい。
 富豪と思われる人物が占いを受けているようだ。周りは見物人であろうか。人が沢山集まっていた。私達もその中に紛れ込む。

  中心にいる女性がアニーサだろう。ワインレッドの髪に金色の瞳、赤い衣装の妖艶な美女が座っていた。
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