私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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対部族令嬢 文化省・異世界統制省合同案件

令嬢第五事例 報告4

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 アニーサの館近くに私とローリンが再び向かう。潜入してさらなる情報収集をする予定だ。

「ローリンさん、なにか別の生き物か何かに変身できますか?」
「ええ、大丈夫よ。」
「人の姿では行動がバレてしまうので、動物に姿を変えようかと思います」
「良い案だわね。警戒されにくいと思う」
「では、いきます!」

 私は魔法のステッキを振り、呪文を唱える。

「マジカル チェンジ!」

 ボフンと音が鳴り、私達2人は動物に変化した。

 ちなみに、私は……猫の姿に変化した。金髪碧眼だったので、ベージュに青い目で元の雰囲気は残しつつも、可愛らしい猫の姿へ。
 先輩のローリンは小鳥だ。水色の美しい姿で、捕まえて食べられるなんてことがなさそうな鳥にしてある。

 この組み合わせは、私が陸を、ローリンが空から監視ができるよう考慮しているのだ。

 早速私は野良猫を装い占いの館に潜入する。案の定、猫の姿だと人に近寄ればシッシッと払われる程度で気に留める物はいない。小鳥のローリンも無事潜入できたらしい。屋根の下で止まっているが、目にしているものはいなさそうだった。

 私は人々の間をかき分けて前に出て、アニーサが占いをする様子を間近で観察することにする。
 すると、私のように猫の客は珍しかったのか、私に気づいたアニーサが自ら私に手招きをしてきた。

 本人としては可愛らしい猫がいたので、撫でてみようくらいの感覚だろう。

ーーここで、私は躊躇する。

 何故なら、アニーサに私達の正体がばれてしまう恐れがあるからだ。占いが出来るということは即ち、予知能力があるとも表現できる。その能力を持つアニーサならば私の正体が分かるかもしれない。この猫は人の姿に戻り、貴方に害を及ぼすよ……なんて知られたら一大事だ。

 しかし、なかなか近寄らない私に対し、もどかしくなったのかアニーサ自ら近づいてきた。
 これはヤバイ。

 猫らしく「シャー!」と牙を剥き出して威嚇してみたが、効果は無し。アニーサは気にする事なくどんどん近寄って来る。

 仕方ない……腹を括り、私は猫らしく接触することにしてみた。恐る恐る頭を差し出す。

 頭を撫でられた。が……アニーサは何も感じ取っていないようだ。今度はニコニコと笑いかけると私をひょいと持ち上げ、占いの席の横に私を座らせた。

 どうやら私が元人間であることに気付いていないらしい。

 私は正直安心した。
 そしてふと思う。

 ーーこれはチャンスかもしれない。一番近い特等席で監視対象を見ることが出来るのだ。

 私はアニーサに逆らわず、懐いた素振りをすることに切り替えた。さらにわざとらしく猫っぽく丸まり、寝ぼけたような感じでじっとすることに。

 アニーサは私を側に置いて警戒することなく、次の占いの準備に入る。

 そして私が横で見守る中占いが始まった。
 今度は優しそうな中年女性が客だ。

「貴方は何を占ってほしいんだい?」
「私は息子の怪我が治るかどうか見てもらいたくて……」
「私は人の健康に関することは余りできないが……ちなみにどんな怪我だい」
「思いっきり擦りむいたようで、傷薬が手に入るかどうかを知りたくて」
「なんだいその程度かい、ならば占ってあげよう」

 そう言うと、アニーサは占いをし始めた。

 ウラウラと、また占いを片言で言っているようにしか聞こえない呪文をする。

「この館を出た後、近くに井戸があるだろ。その辺りに誰かが薬を置いてくれる」
「本当ですか? ありがとうございます」

 女性は安心したようにお礼を言うと、出て行った。


 今見ていた一連の流れは、私が前回見ていたものと変わりない。何か秘密が隠れているにしても、今はただの水晶を使った占いにしか受け取れない。

 猫の姿になって特等席に座っても、この程度か。
 少し期待外れでガックリと肩を落とした。

 ーーしかし、この直後私はアニーサの不思議な言動を目撃してしまうのだった。

 アニーサは休憩だといって館の奥にある控室に入っていった。念のため、私も後をついていく。猫だからか警戒されることなくアニーサと共に中に入れた。後ろからは同じく鳥の姿のローリンがコッソリ中に入ったのが見える。

 アニーサは私を再び撫でた後、何故か椅子に座って休憩するかと思いきや、天窓のような天井に穴の開いた場所の下に立った。

 すると、アニーサはそこで何かをボソッと唱えつつ手を動かし始めたのだ。何を言っているかまでは聞こえなかったが、手は人差し指をクルクルと回している。
 そして、終わったらしく何食わぬ顔で再び占いの会場へ戻ったのだった。

 あれ? 休憩という割には休憩をしていない。

 私達はその後も引き続き監視を行った。何回か見ていると、どうやらアニーサは占いをして控室に向かうを繰り返してることが発覚した。

 実に怪しい。もしかするとこの休憩に何か意味があるのかもしれない。

 その夜、ローリンと作戦会議をしていると、ローリンも同じことを感じたらしい。
「絶対あの休憩時間に何か秘密が隠されているのよ。あの女、本当に休憩してたのなんて数えるほどよ」
「やはり、ローリンさんもそう思いますか……」
「休憩時間については引き続き調査が必要ね」
「では、猫と鳥の姿が意外にも問題なかったので、明日も張り込みましょう。私にいい案があるのです」

 私達は作戦を立てて再び、猫と鳥の姿でアニーサの所に向かった。

◇◇◇◇◇◇

 その日もアニーサは占いをして、休憩ではない謎の休憩時間を挟むということを繰り返していた。

 私達はついに行動に移す。

 まず、私が昨日同様にアニーサに近付く。
 アニーサは「あら、昨日の猫ちゃん。」と言うと、警戒することなく昨日と同じように私を傍に置いてくれた。

 よし、上手くいった。
 天井の辺りで待機している鳥のローリンに目配せをして、作戦決行の合図を送ると、ローリンも頷いた。
 
 一人の中年男性が占いを受けていた。その内容は泥棒に入られ、宝石を盗まれた。取り返すことができるか? というものだった。

「貴方の占い結果ですが……残念ながら同じものを取り返すことは不可能でしょう。しかし、この館を出たすぐの路地裏、そこに犯人が落としていった別の宝石が残っているでしょう。新たな宝石を手にすることが出来るでしょう」
「なんと、犯人が落としたものが! 早急に確認してきます。誰かに取られてしまってはかなわん」

 そう言うと、急いで男性は館を飛び出していった。

ーーその後ろを鳥であるローリンがついていく。いや、中年男性を追い越すように飛んでいった。

 私はそのまま、アニーサの傍らで待機する。
 いつも通りアニーサは休憩と言って奥の部屋に入っていった。

 私はアニーサに懐いたようにぴったりとくっつきながら入室する。そして、アニーサはまた天窓付近で何かを呟きだした。私は何をしているのかを正確に確認するため、猫っぽくアニーサに甘えてみせる。

 私の様子に気づいたアニーサは、私を片手で抱き上げると、私を抱えたまま呟きだした。そして残った片手を動かしていく。

 そこで私は知ってしまったのだ。アニーサの謎を。
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