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対部族令嬢 文化省・異世界統制省合同案件
令嬢第五事例 報告10
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私はジャミールが尊敬の目で見てくる中、ふと言うべきことを思い出した。
「ちなみに、ジャミール殿下。私の占いではサーラ様ですが立派に勤めを果たしてくださる良き妃となられると出ています」
私はすかさずサーラのことを述べる。アニーサとの力比べに勝ち、信憑性が高くなっている今こそ伝えるべきであると判断したからだ。さらに、被せてアニーサののことも述べる。
「そして、アニーサですが、占い方法に不正が多く見られました。その上、自分の意のままに周りを翻弄しています。今まで当たっていたのは偶然でごさいます。即刻占いを停止させるべきです」
私の発言を聞いたジャミールは一瞬戸惑いを見せた。しかし占いの力比べの結果を知り、私の発言の方が信憑性があるということ。なにより、アニーサに比べて、私の真摯に伝える姿勢から何かを感じたのだろう。ジャミールは、私の発言を聞き入れた。
それからの時間は、アニーサへの対応を検討する時間となった。
アニーサは悔しそうに都度抗議をしたが、私が介入することであっけなく王族からの信頼、そしてサーラにとって代わる夢は消えたのであった。
◇◇◇◇◇◇
「アニーサさん、お話がございます。」
サーラは全ての関係者に席を外してもらい、アニーサを呼び出した。この空間には私、タロウがいる。そして、ローリンが物影から現れた。
全員揃った所で私は魔法のステッキを一振り。アニーサの前で私とタロウは変装を解いた。
肌の色が変わり、衣装も元の制服へと変わる。
アニーサは私達が魔法を使って早着替えをしたのに驚いたらしく、信じられないといった様子でこちらを見ていた。
「何、どういうこと? 魔法?私以外に魔法が使えるの?!」
自分以外の魔法使用者に初めて気付いたアニーサ。驚きの声を上げつつ、チラリとタロウの方も見る。
「……ヴィンあなたも?」
ヴィンとは、変装中のタロウの偽名のことだろう。
「アニーサさん。これが俺の本当の姿だ」
演技が無くなり、素のタロウになる。心持ち話し方が冷たくなった。
アニーサの眉がピクリと動いたのが分かる。
ーー準備が整った所で、私が話を持ち出した。
「改めまして、こんにちはアニーサさん。私達は世界番号0の魔法省、異世界統制省、文化省の者です。そして、私はその魔法省悪役局、悪役救済部、悪役令嬢おたすけ課の魔法少女エミリーと申します。以後お見知り置きを」
アニーサは驚きつつ、少し警戒の表情を見せた。突然のことだから驚くのも無理はない。ただ、警戒をした様子から察するに、世界番号0のことを知らない訳では無さそうだった。
「この度、サーラ様と文化省の者から、悪役令嬢おたすけ課への救済依頼が届きました。内容は、アニーサさんの虚偽の占い結果による権威失脚というもの。また、文化局により占いの正当性に関しても、魔法乱用の疑いがかけられていました」
すると、ローリンが続く。
「私は文化省文化維持局、儀式・祭事部、鑑査課のローリンと申します。今回、あなたの占いについて、調査をさせていただいた担当です。調査の結果、数々の魔法使用による不正な占い結果の提示が発覚しました。占いの使用を即刻停止していただきます」
私がさらに資料を確認しつつ説明を加える。
「また、占いの結果を悪用し、冤罪を発生させる恐れがございました。特にサーラ様に関しては事前に対応させて頂きましたが、極めて大きな事態と発展する可能性が高くなりました」
私は、顔を上げると少し威圧感を出しつつ、はっきりと結論を伝える。
「今回は未然に対応をするべく、このような手を取らせていただきました。ご自分の迂闊な行動を猛省していただきたいところです。つきましては、……即刻占いから撤退していただきます」
アニーサは、少し状況が理解できたらしい。私達の話を聞いてハッと鼻で笑った。
「嘘の占いだったから、私を止めに来たってことね。無駄よ。魔法の無い世界でこれで生計を立てているんだもの、食い下がるわけないわ」
それには、タロウが返事する。
「ご安心ください。魔法を使えるよう手配します」
「え?」
「それはこちらで説明します」と、タロウが話を始めた。
「改めて挨拶をします。私は異世界統制省、世界管理局、世界間移動部、転生・転移課のヴィンセントと申します。貴女が異世界であるこの世界に転移した件につきましては、私どもの管轄です。今回、私は貴方を調査すべく、この世界の住民に成り済まし、潜入調査をしておりました。騙していたこと、心よりお詫び申し上げます」
タロウは礼をした。とても紳士的に、先ほどまでの気安さはなくどこか一線置いたような態度をとる。
「あなた……スパイだったのね」
1人ショックを受けているアニーサをよそに、タロウは話を淡々と進める。
「実は、調査を進めると、貴方は手違いによりこの魔法の無い世界へと転移された事態が発覚しました。魔法認知の無い環境では、貴方は異能となり世界への影響を及ばず恐れがあります。よって、元の世界へと返戻する運びとなりました」
「え、待って、元の世界に帰る?!」
「はい。つきましては、私達の指示の元……」
「いやよ!」
話を妨げ、拒否をするアニーサ。警戒していただけで、特に騒ぐ様子もなかったのだが、タロウの発言を聞き、急に声を荒げ出した。
「せっかく魔法の無い世界で、自分が優位に立てる環境に来たというのに……これじゃまた私の才能が埋もれてしまうじゃない!」
どうやらアニーサは、元の世界では魔力は決して強くなく、劣等感を抱いて日々生活をしていたようだ。不満が爆発する矢先、「君を勇者にしてみせよう」と、とある人物から声がかかったらしい。必死に説明するアニーサ。
「声がかかったのですか?」
「ええ、人の名前や特徴を伝えてはいけないと言われているけど、確かに誘われたわ。だから、新しい世界に飛び出してみたのよ」
なるほど、やはりアニーサを連れ出した人物がいるのか。口外禁止を言い渡されている時点で、秘密裏にことが進んでいたのが分かる。
ただ、表上私はそんなことは知らない身。いや、知らない状況で進める必要がある。関係ないとばかり毅然とした態度をとった。
「しかし、今貴女がいると、この世界の均衡が保たれず、大きく影響を及ぼす恐れがあります。貴女はこの世界から離れるべき存在です。まだ大事になる前に、移動をお願いします」
「いやよ! あなたごときに何が分かるのよ!」
魔法少女のため舐められやすいのだが、今回はそうも言ってられないので淡々と事務的に会話をする。
「貴方に拒否権はございません」
「大体、あなた達が私を手違いでこの世界に越させなかったらよかったのよ。自業自得じゃない!」
確かにそうだ。しかし、やったのは私の知らない黒幕だ。尻拭いをさせられる身にもなって欲しいなどと考えるが、そんなこと当事者であるアニーサは知るわけがない。
私も腹が立ったが、ここで引くと今後の影響が計り知れない。
グッと手に力が入る。
そんな折、タロウが思い立ったように言い出した。
「元の世界にそんなに帰りたくないのか?」
「もちろんよ! 元の世界に行くくらいなら他の世界で職を探す方がましよ!」
すると、タロウがニヤリと笑った。
「ちなみに、ジャミール殿下。私の占いではサーラ様ですが立派に勤めを果たしてくださる良き妃となられると出ています」
私はすかさずサーラのことを述べる。アニーサとの力比べに勝ち、信憑性が高くなっている今こそ伝えるべきであると判断したからだ。さらに、被せてアニーサののことも述べる。
「そして、アニーサですが、占い方法に不正が多く見られました。その上、自分の意のままに周りを翻弄しています。今まで当たっていたのは偶然でごさいます。即刻占いを停止させるべきです」
私の発言を聞いたジャミールは一瞬戸惑いを見せた。しかし占いの力比べの結果を知り、私の発言の方が信憑性があるということ。なにより、アニーサに比べて、私の真摯に伝える姿勢から何かを感じたのだろう。ジャミールは、私の発言を聞き入れた。
それからの時間は、アニーサへの対応を検討する時間となった。
アニーサは悔しそうに都度抗議をしたが、私が介入することであっけなく王族からの信頼、そしてサーラにとって代わる夢は消えたのであった。
◇◇◇◇◇◇
「アニーサさん、お話がございます。」
サーラは全ての関係者に席を外してもらい、アニーサを呼び出した。この空間には私、タロウがいる。そして、ローリンが物影から現れた。
全員揃った所で私は魔法のステッキを一振り。アニーサの前で私とタロウは変装を解いた。
肌の色が変わり、衣装も元の制服へと変わる。
アニーサは私達が魔法を使って早着替えをしたのに驚いたらしく、信じられないといった様子でこちらを見ていた。
「何、どういうこと? 魔法?私以外に魔法が使えるの?!」
自分以外の魔法使用者に初めて気付いたアニーサ。驚きの声を上げつつ、チラリとタロウの方も見る。
「……ヴィンあなたも?」
ヴィンとは、変装中のタロウの偽名のことだろう。
「アニーサさん。これが俺の本当の姿だ」
演技が無くなり、素のタロウになる。心持ち話し方が冷たくなった。
アニーサの眉がピクリと動いたのが分かる。
ーー準備が整った所で、私が話を持ち出した。
「改めまして、こんにちはアニーサさん。私達は世界番号0の魔法省、異世界統制省、文化省の者です。そして、私はその魔法省悪役局、悪役救済部、悪役令嬢おたすけ課の魔法少女エミリーと申します。以後お見知り置きを」
アニーサは驚きつつ、少し警戒の表情を見せた。突然のことだから驚くのも無理はない。ただ、警戒をした様子から察するに、世界番号0のことを知らない訳では無さそうだった。
「この度、サーラ様と文化省の者から、悪役令嬢おたすけ課への救済依頼が届きました。内容は、アニーサさんの虚偽の占い結果による権威失脚というもの。また、文化局により占いの正当性に関しても、魔法乱用の疑いがかけられていました」
すると、ローリンが続く。
「私は文化省文化維持局、儀式・祭事部、鑑査課のローリンと申します。今回、あなたの占いについて、調査をさせていただいた担当です。調査の結果、数々の魔法使用による不正な占い結果の提示が発覚しました。占いの使用を即刻停止していただきます」
私がさらに資料を確認しつつ説明を加える。
「また、占いの結果を悪用し、冤罪を発生させる恐れがございました。特にサーラ様に関しては事前に対応させて頂きましたが、極めて大きな事態と発展する可能性が高くなりました」
私は、顔を上げると少し威圧感を出しつつ、はっきりと結論を伝える。
「今回は未然に対応をするべく、このような手を取らせていただきました。ご自分の迂闊な行動を猛省していただきたいところです。つきましては、……即刻占いから撤退していただきます」
アニーサは、少し状況が理解できたらしい。私達の話を聞いてハッと鼻で笑った。
「嘘の占いだったから、私を止めに来たってことね。無駄よ。魔法の無い世界でこれで生計を立てているんだもの、食い下がるわけないわ」
それには、タロウが返事する。
「ご安心ください。魔法を使えるよう手配します」
「え?」
「それはこちらで説明します」と、タロウが話を始めた。
「改めて挨拶をします。私は異世界統制省、世界管理局、世界間移動部、転生・転移課のヴィンセントと申します。貴女が異世界であるこの世界に転移した件につきましては、私どもの管轄です。今回、私は貴方を調査すべく、この世界の住民に成り済まし、潜入調査をしておりました。騙していたこと、心よりお詫び申し上げます」
タロウは礼をした。とても紳士的に、先ほどまでの気安さはなくどこか一線置いたような態度をとる。
「あなた……スパイだったのね」
1人ショックを受けているアニーサをよそに、タロウは話を淡々と進める。
「実は、調査を進めると、貴方は手違いによりこの魔法の無い世界へと転移された事態が発覚しました。魔法認知の無い環境では、貴方は異能となり世界への影響を及ばず恐れがあります。よって、元の世界へと返戻する運びとなりました」
「え、待って、元の世界に帰る?!」
「はい。つきましては、私達の指示の元……」
「いやよ!」
話を妨げ、拒否をするアニーサ。警戒していただけで、特に騒ぐ様子もなかったのだが、タロウの発言を聞き、急に声を荒げ出した。
「せっかく魔法の無い世界で、自分が優位に立てる環境に来たというのに……これじゃまた私の才能が埋もれてしまうじゃない!」
どうやらアニーサは、元の世界では魔力は決して強くなく、劣等感を抱いて日々生活をしていたようだ。不満が爆発する矢先、「君を勇者にしてみせよう」と、とある人物から声がかかったらしい。必死に説明するアニーサ。
「声がかかったのですか?」
「ええ、人の名前や特徴を伝えてはいけないと言われているけど、確かに誘われたわ。だから、新しい世界に飛び出してみたのよ」
なるほど、やはりアニーサを連れ出した人物がいるのか。口外禁止を言い渡されている時点で、秘密裏にことが進んでいたのが分かる。
ただ、表上私はそんなことは知らない身。いや、知らない状況で進める必要がある。関係ないとばかり毅然とした態度をとった。
「しかし、今貴女がいると、この世界の均衡が保たれず、大きく影響を及ぼす恐れがあります。貴女はこの世界から離れるべき存在です。まだ大事になる前に、移動をお願いします」
「いやよ! あなたごときに何が分かるのよ!」
魔法少女のため舐められやすいのだが、今回はそうも言ってられないので淡々と事務的に会話をする。
「貴方に拒否権はございません」
「大体、あなた達が私を手違いでこの世界に越させなかったらよかったのよ。自業自得じゃない!」
確かにそうだ。しかし、やったのは私の知らない黒幕だ。尻拭いをさせられる身にもなって欲しいなどと考えるが、そんなこと当事者であるアニーサは知るわけがない。
私も腹が立ったが、ここで引くと今後の影響が計り知れない。
グッと手に力が入る。
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