私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

文字の大きさ
3 / 43
対貴族令嬢 案件

令嬢第一事例 報告2

しおりを挟む
 タイムアウトは二週間後の学園の卒業式。オリヴィアと私は作戦を練ることにした。

 まずは、王子本人の調査や例の平民女生徒の調査だ。特に女生徒の人物像や実際のいじめなどの有無を確認する必要がある。さらにオリヴィアの周辺の監視も怠らない。一番は人に害を与えていない証拠を出す必要があるため、周りの人物も捜査が必要だ。

 目星をつけていき、私はオリヴィアと共に行動に移すことにした。


 まずは王子ジークについて調査する。これについてはオリヴィアが情報を提供してくれた。

 オリヴィアと同じ学校、学年。特に大きく性格に問題は無さそうだ。ただ、一つ引っかかる部分がある。
 正義感が強く、悪いことが許せないらしい。いじめの現場などに出会すと必ずと言って良いほど助けに入る。今回の件も、女生徒がいじめられているのを聞いておそらく正義感が働いたのだろうと分かる。

 女生徒とは学園で知り合い、最初は女生徒に興味がなかったが、オリヴィアからのいじめの報告を聞いて庇い始めると、守りたい衝動から懇意にし始めたということらしい。

 きっと守りたくなる系女子だったのだろう。王子の正義感を逆手に取った女生徒が物凄くやり手なのだろうと思った。

 そのやり手女生徒を次に調査する。
 オリヴィアは表立って動けないため、私が動くことに。
 私は数日間女生徒を尾行することにした。勿論怪しまれないよう、妖精の姿でだ。

 尾行をしていると、データが揃ってきた。
 女生徒の名前はアリサ。最近男爵家の養子となったらしい。その為、令嬢教育が行き届いておらず、他の令嬢とは一風変わった雰囲気を醸し出している。おそらく、この令嬢らしからぬ雰囲気に貴族男性達は惹かれているようだ。
 なんと、アリサは王子以外の男子生徒にもアプローチしているらしい。少し気に入る男性がいると、令嬢の文化が分からないなどと甘えたりしている。
 尾行を続けていると、女生徒アリサの化けの皮がみるみる剥がれるため、見ていて面白かった。

 このノン悪疑惑はアリサが黒幕の可能性が高いとみて間違いない。

 あとはアリサがいかにオリヴィアを陥れようとしているかを探る必要がある。

 アリサの動向を調べたいので、オリヴィア周りの監視を頼むべく私は助手を召喚することにした。

「リンちゃーん!」

 呼びかけに応えるように、羽の生えたネズミのような生物が現れた。そして現れるやいなやこの生物はプンプンと怒り始める。

「我が名はリンデン。軽々しく愛称で呼ぶでないこの若造が!」

 リンちゃんは研修の時からずっと一緒にいる妖精だ。上から目線で話すが、呼べば必ず助けてくれる、頼れるパートナーである。性格はいわゆるツンデレだ。

「着任いきなり呼び出しとはこの馬鹿者が!」
 リンちゃんは体当たりをしてきたが、全身毛でできているためポフンと柔らかく全く痛くない。

「いきなりごめんって。実はあの女生徒の監視をしてるのだけど、ノン悪疑惑の令嬢の方の監視が足りなくて……」
「ふん、そんなの定点記録媒体を使えばいいだろうが」
「いやそうなんだけど、初仕事だしリンちゃんとデビューしたいなって」
 お願い……?っと私は渾身のウルウルとした瞳をしてみた。
 するとさすがツンデレ。
「ま、まぁどうしてもっていうなら付き合ってやってもいいぞ。で、どうすればいいんだ?」
 頼まれると弱いらしい。簡単に引き受けてくれた。チョロいものである。

 リンちゃんという強いサポーターを手に入れ、その後私はアリサの尾行を、リンちゃんにはオリヴィアについてもらうことにした。

 アリサの尾行をして数日後、アリサはついに行動に表してきた。なんと虚偽のいじめの報告を王子にしに行ったのである!

 ーーことの次第は以下の通りだ。
 池の辺りでお散歩しているアリサをいつも通り監視していると、なんと何の前触れもなくアリサは池に飛び込んだのである!
 突然その光景を目撃してしまった私は驚きのあまり自分の目が飛び出たのではないかと思ってしまった。水泳選手でもあんなに綺麗に飛び込みはしないのではないだろうか。
 アリサは何事もなく水から出てくるとずぶ濡れのまま、王子であるジークの所に泣きながら向かって行った。

 ジークは驚いて駆けつけた。女の子がびしょ濡れになって泣いているのだから。正義感の強いジークは放っておけない。それを良いことにアリサはジークに訴え始めた。
「池に突き落とされましたの……!私怖くて怖くて……」

 嘘つけーー!自分で飛び込んだやないかーい!っと思いっきりツッコミを入れたくなったが私は我慢した。

 ジークは真剣に話を聞いている。
「誰にされたのか……分かるか?」
「オ、オリヴィア様に……」
「またあいつか……! そろそろ我慢の限界だ……」
 見事な騙されっぷりである。アリサはジークに上着をかけてもらえ、満足そうにしていた。

 一連の流れを見て、私はもう決心した。アリサは黒だ。というか、もう真っ黒である。オリヴィアを陥れようとしているのはアリサで確定だろう。勿論、この様子は記録媒体に録画させてもらった。

 オリヴィアの周囲を監視するリンちゃんも報告にやって来た。
「おい、監視してやったがオリヴィアに大きな動きはなかったぞ。なんなら放課後もずっと図書館にいて真面目な奴だった」
「リンちゃん、良い情報ありがとう!念のためオリヴィアの友人も監視しておこう!」

 念のため周囲の関係者も監視をすることにした。しかし、オリヴィアの周囲の人々もアリサに対して悪い印象があるものの、大きく動く者はいなかった。ましてや、妖精として何人かに聞き込みを密かに行ったが、皆オリヴィアがいじめている現場を見たことが無いらしかった。

 証拠は揃った。あとはこちらが動くのみだ。

 婚約破棄が言い渡されそうなタイミングは明日。ギリギリ間に合ったようだ。


 その夜、私はオリヴィアの部屋を訪ねた。
「オリヴィアさん、明日は私が助けます。だから胸を張って前を向いて下さいね!」
「あ、ありがとうございます……!」
 御礼を言う割には自身が無さそうだ。味方がいるといっても、とても不安なのだろう。私たちが部屋を出る時、オリヴィアは大きなため息をついていた。

◇◇◇◇◇

 翌朝、卒業式のパーティーが行われている会場の裏に潜入した。会場内はリンちゃんに監視をしてもらっている。タイミングを見計らい中に入る予定だ。私は久しぶりに妖精の姿から、魔法少女の姿へと戻った。

「うーん、やっぱりこっちの方がしっくりくる!」

 すると中が少し静かになった。
 始まったらしい。中のリンちゃんからもGOの合図が来た。
「……私、ジークは婚約者であるオリヴィアとの結婚を破棄する!……」

 今だ!

 私は魔法陣を出し、転移魔法を使った。
 そして会場に着くと大衆の目線に動じることなく言ってやった。

「お待ちください。その婚約破棄、正当な判断でしょうか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

異世界猫カフェでまったりスローライフ 〜根暗令嬢に憑依した動物看護師、癒しの猫パラダイスを築く〜

きよぴの
ファンタジー
​「もし、動物の言葉がわかれば、もっと彼らを救えるのに――」 ​動物病院で働く動物看護師、天野梓は、野良猫を庇って命を落とす。次に目覚めると、そこは生前読んでいた恋愛小説の世界。しかも、憑依したのは、主人公の引き立て役である「根暗で人嫌いの令嬢」アイリスだった。 ​他人の心の声が聞こえる能力を持ち、そのせいで人間不信に陥っていたアイリス。しかし、梓はその能力が、実は動物の心の声も聞ける力だと気づく。「これこそ、私が求めていた力だ!」 ​虐げる家族と婚約者に見切りをつけ、持ち前の能力と動物たちの力を借りて資金を貯めた梓は、ついに自由を手に入れる。新たな土地で、たくさんの猫たちに囲まれた癒しの空間、「猫カフェ『まどろみの木陰』」をオープンさせるのだった。

【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」 その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。 「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」 彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。 「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」 そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。

笑顔が苦手な元公爵令嬢ですが、路地裏のパン屋さんで人生やり直し中です。~「悪役」なんて、もう言わせない!~

虹湖🌈
ファンタジー
不器用だっていいじゃない。焼きたてのパンがあればきっと明日は笑えるから 「悪役令嬢」と蔑まれ、婚約者にも捨てられた公爵令嬢フィオナ。彼女の唯一の慰めは、前世でパン職人だった頃の淡い記憶。居場所を失くした彼女が選んだのは、華やかな貴族社会とは無縁の、小さなパン屋を開くことだった。 人付き合いは苦手、笑顔もぎこちない。おまけにパン作りは素人も同然。 「私に、できるのだろうか……」 それでも、彼女が心を込めて焼き上げるパンは、なぜか人の心を惹きつける。幼馴染のツッコミ、忠実な執事のサポート、そしてパンの師匠との出会い。少しずつ開いていくフィオナの心と、広がっていく温かい人の輪。 これは、どん底から立ち上がり、自分の「好き」を信じて一歩ずつ前に進む少女の物語。彼女の焼くパンのように、優しくて、ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなるお話です。読後、きっとあなたも誰かのために何かを作りたくなるはず。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...