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試験課題 特例(対マジカル戦士)案件
令嬢第二事例 試験報告5
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◇◇◇◇◇◇
悪役局とは少し離れた建物にヒーロー局は存在する。
ヒーロー局の建物内に入ると、燃える志を意識した赤いリボンなど赤を基調とした制服の者が多く、悪役局の紫の制服を着る私は異色でとても浮いていた。通りすがりの人々の目線が気になるが、そんなことを気にしている場合ではない。私はツカツカとヒーロー局の建物を闊歩してやった。だって、私は怒っている。返事が遅い相手が悪いのだもの。
ーーそして、案の定部外者として途中で連れ出されてしまった。
「追加戦士課の人に会いたいんです! どうかお話だけでも……!」
「そんなことを言われましてもねぇ」
入り口の警備員がとても困惑している。しかし、ここで引いてはいけない気がした。いつもならこういった行動は控えていただろう。むしろ入り口で騒ぐ姿を軽蔑していたかもしれない。でも今はそんな判断ができないほど焦っていた。メンドイーナが消えるかもしれない上に自分の試験の期限が迫っていたからだ。
騒ぎを聞いたのだろうか、一人の女性がそっと私に話しかけてきた。
「追加戦士課に行きたいの?」
赤いリボンをしているヒーロー局の人だ。これはチャンスかもしれない。藁をもすがる思いでその女性に私は訴えた。
「はい!……このままでは私の担当する人が消えてしまいます! 追加戦士課の方に合わせてもらえませんか?」
女性は私の姿をマジマジと見るなり微笑んだかと思うと……
「いいわよ」
いともあっさりとその女性は許可してくれた。
「本当ですか……?」
「だって、私がその追加戦士課の者だもの」
「え……え!?」
◇◇◇◇◇◇
私は気づけば追加戦士課に案内された。ここの人々は赤のリボンに、マジカル戦士の可愛さを示すピンクのダブルリボン、そして追加戦士を表すのか、魔法のステッキの柄の入ったバッジをしている。
正直制服が可愛くて羨ましい。
「私はシルビア。追加戦士課のメンバーよ。魔法省の括りではあなたの先輩に当たるわね」
先輩……ということは少し行儀良くしておいた方が良いかもしれない。私はすかさず今回の非礼を詫びる。
「ご無理をお願いしてすみません。」
ニッコリと微笑んでくれたシルビア。良い人そうな感じがする。
「にしても、申請書が下りない件についてはこちらも迷惑をかけているわね。私達追加戦士を勧誘するメンバーからすれば人手は欲しいのだけど、課長が許可を出してくれなくて……」
「課長が?」
「そう、なんかねぇ……悪役局とヒーロー局との因縁ってやつね。特に悪役局には課長、少し入れ込んでて……」
これはめんどくさいやつだ。とても背後に黒いものを感じた。何があったかは知らないが、私達末端を巻き込まないでいただきたい。
しばらく歩くとマジカル戦士部に来たらしい。マジカル戦士を連想させる、パステル調の可愛らしい空間に来た。物珍しい光景に、惚れ惚れとしながら歩いていると、何やらニコニコと笑う人の席に連れて行かれた。
「この方がうちの課長、サンドラよ」
この人が課長?私は目を疑った。
因縁云々を言っていた割には、見た目は優しそうだ。しかし、シルビアの先ほどの話からすると、課長は何か闇を抱えていると思われる。見た目に反して中身は暗いのかもしれない。
油断せず、ここは第一印象をしっかりしておこう。
「あの、私悪役令嬢おたすけ課のエミリーと申します。急な訪問、謹んでお詫び申し上げます。」
「あらあら、このチームに乗り込もうとしてたって聞いてたからどんなお転婆さんが来るのかと思っていたら、意外にも礼儀はちゃんとわきまえているのね。」
ーーやっぱり!この人は笑顔で嫌味を言ってくるタイプだ。機嫌を損ねないように慎重に話を進めた方が良いだろう。
「あの、私が出した申請書がなかなか通らないと聞きまして……」
「それで待てなくて来ちゃったの?」
「……はい」
「そうねぇ……でもねぇ、あなたには分からないだろうけど、色々あるのよ」
色々ってなんだ。明らかに裏を含んだ言い方をされたが、正直たまったもんじゃない。
「色々とは……あの申請書が通らないほどの理由なのでしょうか? このままでは私の担当する人が消えてしまいます。……それに、私も正規職員試験に落ちてしまいます!」
後者の方を思わず強めに言ってしまったが、決して自分のことだけを考えているのではないことをここで訂正しておこう。
「あら、あなたの登用試験も兼ねていたの?」
「そうなんです!」
「それは可哀想なことをしたわね」
「それに…何があったかは存じ上げませんが、それで人が不幸に陥るのを見たくはありません。それでもヒーローを司る局なんですか?どうか今回は寛大なお心遣いをお願いします!」
訴える声に熱が入ってしまった。でも本当のことなので仕方ない。
思わずシルビアが助け舟を出してくれた。
「……課長、追加戦士は注目度が高く、プレッシャーも高いため、勧誘が難しい状況です。悪役から光堕ちは印象も良く、私としてはお言葉に甘えたい所存ですが」
課長は何か資料を開き、しばらく考えた後……ため息混じりに私を見た。
「そうねぇ、あなた、悪役救済部よね? まぁ、あそこは悪役局の中でも違う企業みたいな扱いされてるし……こちらへの影響はそんなにないかしらね」
「じ、じゃあ!!」
「分かりました、許可しましょう」
「ありがとうございます!!」
思わずガッツポーズをした。
「では早急に対応しましょう」
そう言うとシルビアは早速準備に取り掛かった。あとは任せるしかないだろう。この人は仕事が早いタイプだと、私の勘が言っている。きっと間に合ってくれる。
ーーこの場合、私にできることはただ一つ。
「シルビアさん、私は先に現地に行って時間を稼ぎます」
「そうして。私は変身ステッキを取りに行くわ。製作部に頼んでおいたのがそろそろ届くと思うから。後から追いかけるわ」
そして、私は追加戦士課にお礼を言い、急いで悪役局に戻ると事情を説明して、再びメンドイーナの待つ世界へ向かった。
無表情でも分かるくらい恐ろしく呆れた課長に会ってしまったが気にしないでおこう。
悪役局とは少し離れた建物にヒーロー局は存在する。
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ーーそして、案の定部外者として途中で連れ出されてしまった。
「追加戦士課の人に会いたいんです! どうかお話だけでも……!」
「そんなことを言われましてもねぇ」
入り口の警備員がとても困惑している。しかし、ここで引いてはいけない気がした。いつもならこういった行動は控えていただろう。むしろ入り口で騒ぐ姿を軽蔑していたかもしれない。でも今はそんな判断ができないほど焦っていた。メンドイーナが消えるかもしれない上に自分の試験の期限が迫っていたからだ。
騒ぎを聞いたのだろうか、一人の女性がそっと私に話しかけてきた。
「追加戦士課に行きたいの?」
赤いリボンをしているヒーロー局の人だ。これはチャンスかもしれない。藁をもすがる思いでその女性に私は訴えた。
「はい!……このままでは私の担当する人が消えてしまいます! 追加戦士課の方に合わせてもらえませんか?」
女性は私の姿をマジマジと見るなり微笑んだかと思うと……
「いいわよ」
いともあっさりとその女性は許可してくれた。
「本当ですか……?」
「だって、私がその追加戦士課の者だもの」
「え……え!?」
◇◇◇◇◇◇
私は気づけば追加戦士課に案内された。ここの人々は赤のリボンに、マジカル戦士の可愛さを示すピンクのダブルリボン、そして追加戦士を表すのか、魔法のステッキの柄の入ったバッジをしている。
正直制服が可愛くて羨ましい。
「私はシルビア。追加戦士課のメンバーよ。魔法省の括りではあなたの先輩に当たるわね」
先輩……ということは少し行儀良くしておいた方が良いかもしれない。私はすかさず今回の非礼を詫びる。
「ご無理をお願いしてすみません。」
ニッコリと微笑んでくれたシルビア。良い人そうな感じがする。
「にしても、申請書が下りない件についてはこちらも迷惑をかけているわね。私達追加戦士を勧誘するメンバーからすれば人手は欲しいのだけど、課長が許可を出してくれなくて……」
「課長が?」
「そう、なんかねぇ……悪役局とヒーロー局との因縁ってやつね。特に悪役局には課長、少し入れ込んでて……」
これはめんどくさいやつだ。とても背後に黒いものを感じた。何があったかは知らないが、私達末端を巻き込まないでいただきたい。
しばらく歩くとマジカル戦士部に来たらしい。マジカル戦士を連想させる、パステル調の可愛らしい空間に来た。物珍しい光景に、惚れ惚れとしながら歩いていると、何やらニコニコと笑う人の席に連れて行かれた。
「この方がうちの課長、サンドラよ」
この人が課長?私は目を疑った。
因縁云々を言っていた割には、見た目は優しそうだ。しかし、シルビアの先ほどの話からすると、課長は何か闇を抱えていると思われる。見た目に反して中身は暗いのかもしれない。
油断せず、ここは第一印象をしっかりしておこう。
「あの、私悪役令嬢おたすけ課のエミリーと申します。急な訪問、謹んでお詫び申し上げます。」
「あらあら、このチームに乗り込もうとしてたって聞いてたからどんなお転婆さんが来るのかと思っていたら、意外にも礼儀はちゃんとわきまえているのね。」
ーーやっぱり!この人は笑顔で嫌味を言ってくるタイプだ。機嫌を損ねないように慎重に話を進めた方が良いだろう。
「あの、私が出した申請書がなかなか通らないと聞きまして……」
「それで待てなくて来ちゃったの?」
「……はい」
「そうねぇ……でもねぇ、あなたには分からないだろうけど、色々あるのよ」
色々ってなんだ。明らかに裏を含んだ言い方をされたが、正直たまったもんじゃない。
「色々とは……あの申請書が通らないほどの理由なのでしょうか? このままでは私の担当する人が消えてしまいます。……それに、私も正規職員試験に落ちてしまいます!」
後者の方を思わず強めに言ってしまったが、決して自分のことだけを考えているのではないことをここで訂正しておこう。
「あら、あなたの登用試験も兼ねていたの?」
「そうなんです!」
「それは可哀想なことをしたわね」
「それに…何があったかは存じ上げませんが、それで人が不幸に陥るのを見たくはありません。それでもヒーローを司る局なんですか?どうか今回は寛大なお心遣いをお願いします!」
訴える声に熱が入ってしまった。でも本当のことなので仕方ない。
思わずシルビアが助け舟を出してくれた。
「……課長、追加戦士は注目度が高く、プレッシャーも高いため、勧誘が難しい状況です。悪役から光堕ちは印象も良く、私としてはお言葉に甘えたい所存ですが」
課長は何か資料を開き、しばらく考えた後……ため息混じりに私を見た。
「そうねぇ、あなた、悪役救済部よね? まぁ、あそこは悪役局の中でも違う企業みたいな扱いされてるし……こちらへの影響はそんなにないかしらね」
「じ、じゃあ!!」
「分かりました、許可しましょう」
「ありがとうございます!!」
思わずガッツポーズをした。
「では早急に対応しましょう」
そう言うとシルビアは早速準備に取り掛かった。あとは任せるしかないだろう。この人は仕事が早いタイプだと、私の勘が言っている。きっと間に合ってくれる。
ーーこの場合、私にできることはただ一つ。
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