私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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試験課題 特例(対マジカル戦士)案件

令嬢第二事例 試験報告6

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 メンドイーナは、絶賛戦闘中だった。メンドーなる怪物をマジカル戦士と戦わせている。

 しかし、私を見つけるや否や、悪役を忘れたかというくらい半泣きでこちらに近寄ってきた。

「貴方、来るのが遅いわよ! もう20話になってしまったわ! あれでしょ? もう助かる方法がないからギリギリに来たんでしよ? そうよ……私はもう消されてしまう運命なんだわ!」

 発狂しており、もうパニックである。

「メンドイーナ様、落ち着いて下さい。まだ決まった訳ではありません。追加戦士の許可がおりました。あとは担当が来るまで耐えて下さい!」

 パニックになっていたメンドイーナは、非常に驚いたのか急に静かになった。

「……本当に?私、追加戦士になれるの?」
「はい! 今追加戦士課の方が準備をされています! なので時間稼ぎをどうか!」
 追加戦士課が来るまでどうにか消されず耐えて欲しいことを伝えるとメンドイーナは、俄然やる気を出し始めた。

 しかしその時、メンドーなる怪物は倒されたらしい。遠くで負けた時に発する「マジメニシマスー」の声が聞こえた。
「倒すの早すぎよ! 仕方ない。私が自ら時間稼ぎをするわ!」
 ついにメンドイーナ本人がマジカル戦士と対峙することに。勇しく戦場に行くその姿はどっちが悪役か分からなかった。

 しかし、いざ戦うとマジカル戦士はパワーアップしておりメンドイーナでも苦戦しはじめる。明らかに押されている。そしてマジカル戦士は三人でついに浄化ビームの態勢に入った。ヤバイ、このままでは追加戦士になる前に消されてしまう!

「3つの力を合わせて! マジカル トリプル ビーム!!!」

 無残にも目の前でビームが発射され、メンドイーナに三色の光が迫る。私はその光景を見守ることしかできない。時間稼ぎは出来なかったらしい。

 もはやこれまでか……そう思った時だった。三色のビームを受けたメンドイーナが光りだした。


「お待たせ致しました。メンドイーナ様」


 声が聞こえた直後、1人の魔法少女シルビアがメンドイーナの前に現れた。

「あ、貴方は?」
「私は魔法省ヒーロー局マジカル戦士部の追加戦士課に所属するシルビアと申します。この度、悪役令嬢おたすけ課のエミリーの依頼を受けて、貴方をマジカル戦士にするべく。参上致しました。」

 どうやら間一髪シルビアの到着が間に合ったようだ。すると、シルビアは早々に緑の変身ステッキをメンドイーナに差し出した。

「これを受け取れば、貴方は追加戦士として生まれ変わります。悪役令嬢メンドイーナではなくなりますが、その覚悟はお有りですか?」

 意思の最終確認を行なっているらしい。形式的に話すシルビアに対し、メンドイーナは迷うことなくそれを受け取った。
「元々嫌だったもの。悪役令嬢なんて立場捨ててやるわ!」

 ステッキが受け取られ、意思の確認を済ませたシルビア。メンドイーナとステッキの相性が合うのを確認すると、追加戦士課の慣しに則り、契約の魔法を始めた。

「では、貴方をメイーナと命名します。担当はマジカルグリーン。4人目のマジカル戦士になります。……世界を救う新たな戦士の誕生に祝福を!」

 シルビアの掛け声と共にメンドイーナ、もといメイーナの身体は光り始める。

「マジカルチェーンジ!」
 メイーナがそう叫ぶと見た目が変化し始めた。暗かった髪や服はライトグリーンのパステル調のコスチュームへと変わっていく。そして闇を映し出したような目には、光が現れ、希望を表すように輝きを放ち始めた。

 変身が終わるとメイーナを照らしていた光は収まる。メイーナが光堕ちする間も自分達のビームで光っていたと勘違いしていたマジカル戦士達は、光が終わって初めて何が起こったのか知った。そして驚いた。

 そこには悪役令嬢メンドイーナの姿はなく、見慣れない人物が立っていたのだから。

「悪役なんてクソくらえ! 癒しの令嬢、マジカルグリーン!」

 マジカル戦士達は呆然とただ見つめている。
「ごきげんよう、お嬢さん達。私は令嬢メイーナよ。以後お見知り置きをっ」


ーーこうして追加戦士が誕生した。


◇◇◇◇◇◇

 悪役令嬢をマジカル戦士にすることで、見事案件を解決した私。ついに全ての仕事を終え、魔法省に戻ることになった。

 4人目のマジカル戦士となったメイーナ、今は大好きなマジカル戦士と仲直りした上に自分もマジカル戦士になれ、とても満足そうである。

「エミリーさん、本当にありがとう。何度見放されたかと思ったけど、最後までちゃんとサポートしてくれていたようで……助かったわ。何回か八つ当たりに人形まで作ってボコボコにしてごめんなさい。」

 とても感謝されているようだ。正直、最後に恐ろしいことを聞いてしまったけど、聞かなかったことにしよう。そう、許せるくらいにはハッピーエンドを迎えることができたのだから。

 シルビアはしばらくこの世界に滞在し、メイーナのフォローをするらしい。

「良かったわね。解決できて。あなた必死だったものね」
「本当に安心しました。自分の登用試験がかかっていたとは本人に口が滑ってもいえませんが……」
 シルビアはクスッと笑いながら、私の資料の一部を受け取った。

「あとは私達追加戦士課が引き継ぐわ。私も追加戦士を勧誘できて良かった。また魔法省で会うことがあれば宜しくね。」
「はい、シルビアさん。今回は急な依頼にも関わらず迅速な対応、本当にありがとうございました。今後とも宜しくお願いします!」
 シルビアは満足そうにして、手を振ってくれている。

 
「……では、私は元の世界に戻ります。マジカル戦士の皆様のご武運をお祈り申し上げます!」

 帰ろうとした時、メイーナが見送りながら言った。
「あなた、いつもこんな仕事してるの? 大変ね。この世界から応援してるわ!」

 私は笑顔で振り向いた。
「ありがとうございます。でも、
私、悪役令嬢おたすけ課の魔法少女ですから!」

 そう言って私は元の世界に帰って行った。
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