私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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対貴族令嬢 案件

令嬢第三事例 報告1

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 正規メンバーになって初めての仕事だ。
 私は初めて担当したような立派な建物が連なる世界にきた。
 どうやら、今回は王道の令嬢案件らしい。あれだけのイレギュラー案件を終わらせた私に怖い物はない。
 私は城の屋根部分に腰掛けると、サクッと終わらせるぞと意気込んで資料を開いた。


 ノン悪事案 No.3
 場所:世界番号183
 救済対象:悪役化可能性令嬢 
 真悪役疑惑:不明
 依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
 魔法の存在:無(認知度:無し)
 備考:平民女子に対していじめを行ったとの報告が寄せられ、婚約者との婚約破棄の恐れあり。令嬢本人はいじめに関し身に覚えが無い模様。


 私は資料を見て驚いた。備考の内容は、よくある令嬢の話である。しかし、見るべきはそこではない。

 ーー注目すべきはここ、『魔法の存在』である。魔法の存在は無し。この世界は魔法の存在が認知されていないどころか、そもそも存在が無いらしい。

 正直、試験後に意気揚々として来た身としては非常にやりづらいのが発覚してしまった。

 何故なら、魔法の認知度が高いほど魔法少女が接触することに対して抵抗がない。関係者への聞き取りなどがしやすいのだ。しかし、今回は魔法少女で人々に近づくことは殆ど禁止されていると言っても過言ではない。
 その上この世界は技術の発展も遅れているらしい。記録媒体も無いため、映像を記録して放映することもできない。ましてや、魔法が認知されていないため、魔法での証拠発表も不可能である。

 救いであるのは、本人に接触をしても良いことくらいだろう。さすがに本人に聞き取りはしたいところだ。

 私は資料を開いただけなのに、頭を悩ませることになってしまった。サクッと仕事を終わらせてやろうなんて考えを一喝されたような気がした。どこからか、無表情なのに嘲笑う課長の声が聞こえて来そうである。

 だがしかし悩んでいても仕方ない。とりあえずは令嬢本人の所に向かうことにした。


◇◇◇◇◇◇


 令嬢の名前はジェシカ。誰にも見られてはならないので、令嬢が夜、寝室に1人になったことを確認してから私は声をかけることに。

「夜分遅く失礼します、ジェシカさん。私は悪役令嬢おたすけ課の魔法少女、エミリーと申します。」

 寝ようとしていたのだろう、急に声をかけられてびっくりするジェシカ。魔法の無い世界なのだ、自分が依頼したとはいえ、驚くのが当たり前だ。

「まぁ! 本当に魔法少女がいるなんて……夢かしら?」
「夢ではありません。この度は、依頼されていた件でお伺いしました。つきましては、内容を聞きたいところなのですが、よろしいでしょうか?」

 夢と思われても仕方ない。魔法の存在がそもそも珍しいのだから。しかし、何度か痛覚を確認したジェシカは、私の存在を認めてくれたらしい。
 私に驚きつつも内容を話してくれた。

「私はジェシカ。この国の次期王になるクリス様の婚約者です。実はここ暫く、私にありもしない噂が流れておりまして……」
「噂?」
「はい、私が同じ学院に通う平民であるナタリーさんをいじめているとの噂が流れているのです。実際、ナタリーさんはいじめの被害にあっていますが、犯人は分からずじまい。何故か私のせいだとの噂が流れ、しかも殿下に直接伝わっているらしく、ついにその話を信じた殿下から、婚約破棄を言い渡されそうなのです。」

「では、見に覚えがないのに、犯人にされているのですね」
「はい……」

 これは完全なるノン悪事案であると私は確信した。令嬢が本格的に悪役令嬢になってしまう前に止めなければならない。

「分かりました、これは私どもの対応案件だと心得ます。対応致しましょう」
「あ、ありがとうございます!」
 ジェシカはホッとするように、胸に手を当てた。

 本当に人をいじめていないのか、本来なら確認する必要があるが、今回はその必要は無さそうだ。
 何故なら、正直、私の偏見が入ってしまうが、ジェシカが何か人を脅かすような人物には見えなかったためだ。
 金髪碧眼の美しい女性で、物腰は柔らかそう。言葉にも少し気弱さを感じる。人に強く言うどころか、人を陥れることもないだろう。故に、有りもしない罪を負いそうになっているのだろうと考えられる。

「では、早速捜査に当たりたいと思います。始めに、婚約者様に虚偽の報告がなされているとのことですが、そもそもいじめに関わったような記憶や、それに関する心当たりはありますか?」
「残念ながら、ナタリーさんとはあまり関わりも無く、思い付く部分が見当たらないのです。」
「な、なるほど……」

 ということはナタリーという少女のいじめの内容さえも把握していないことになる。
 これは、私が調べていく必要がありそうだ。


 翌日以降、私はまず被害者であるナタリーの監視を行うことにした。勿論、魔法少女の存在がバレてはいけないため、目眩しの魔法でになるが。

 ナタリーは、とても可愛らしい少女だった。少しドジなところもあるが、心優しそうである。ただ、どこか暗い感じがあり、いじめを受けていそうな物悲しい雰囲気を醸し出していた。

 何日か観察していると、やはりいじめを受けているのであろう光景を何度か目にした。教科書が隠されたり、いく先に変な彫刻が置かれていたり。
 しかし、その度に犯人を探すのだが、よほど用意周到なのか、犯人は現れない。なんなら、犯人探しをされるのを避けているようにも見えた。よほどのやり手だと思われる。

 私はらちがあかないと思い、次の手段にでることに。

 ナタリーではなく、いじめの報告を受けているというクリス王子に直接聞き出すことに切り替えた。

 いじめの報告をしているのが、誰なのかを突き止め、さらにその人物から噂の出所を探し出す魂胆だ。芋づる式に探すため、労力はかかるが確実だろう。

 ただ、今回は妖精として聞き取りなど出来ない上に、相手は王族だ。関係無い者が直接話しかけるのも難しいだろう。

 ーーそして、私は思い立った。
 この世界の人間になろうと。
 
「マジカル チェンジ!」
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