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対貴族令嬢 案件
令嬢第三事例 報告2
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「あの、殿下! 少しお聞きしたいことがあるのですが!」
学園の制服を着て、眼鏡をした栗色の髪の少女がクリス王子に声をかける。
……その少女は勿論、私である。
私は学園の生徒のふりをしてクリスに近づくことに決めた。
魔法で学園の生徒のように変装。髪の毛の色も変え、王子に声をかけることを許される貴族の物を身につける徹底ぶりだ。
「君は……? 貴族のようだが、見慣れない顔だな」
しまった。普通に変装しても、貴族を把握しているであろう立場のクリスには部外者であることがばれてしまう。さらにこの王子は察しが良いようだ。咄嗟に頭をフル回転させ、上手い口実を探した。
「わ、私は貴族ですが人前にあまり出ない身でして……あまり皆さまに顔を覚えていただけないのです。そ、それより、あの、ナタリーさんがいじめを受けている件についてお話しをしたくて……」
我ながらとても上手く気弱そうな少女を演じれたと思う。深く詮索するなというオーラを思いっきりだしながら話した上に、早く本題に入り、話を逸らしてしまうことにした。
「そ、そうか。そういう者もいるだろうな。変なことを言って申し訳ない。して、ナタリー君のことがどうしたんだ。」
何か気まずさを感じてくれたらしく、幸いにも深くは聞かれなかった。ひとまず安心だ。
「ありがとうございます。私は、ナタリーさんの力になれたらと思ってまして……まずどんな状況だったのかを知りたいと思っています。ですので、状況を知る方にお伺いできればと思ってまして。どなたがナタリーさんのいじめの状況を殿下に教えてくださったのでしょうか?」
「なるほど……本当は匿名であるべきなんだろうが、君にはどこか教えても良い気がするな。私に教えてくれたのはアンジェラという令嬢だ。彼女はとても心優しく毎回、ナタリー君への嫌がらせの報告をしてくれるのだ。……まぁ、毎回犯人はジェシカ嬢であるのがもう分かっている。彼女がなぜ嫌がらせをするのか、皆目見当もつかないが、嫌がらせをするような人物を妻にする気はない。そろそろ限界が来そうだ」
「なるほど、アンジェラ様と言う方がその報告をされているのですね……」
「ん? 君はアンジェラのことを知らないのか? 貴族内では有名だと思うが……」
ヤバイ、貴族でないのがばれてしまう。
「うっ……ゴホゴホ。体が弱く社交界にあまり関わりが無くて……貴族の友達もあまりいないのです」
思わず病弱を思わせるように咳込んだ。
「そうか、貴族とのかかわりが無い代わりに平民と仲がいいのか。君のような貴族の後ろ盾があれば、ナタリー君も心強いだろう。ナタリー君のことをどうかよろしく。そしてジェシカの悪事からどうか守ってくれ」
「はい……」
そのジェシカ本人からの依頼で来ているのだが……というのを言わずに飲み込んだ。ジェシカが冤罪であるのをクリスはやはり知らないと見た。
あと、殿下。もう少し人を警戒してください。私としては助かるが、匿名であるはずのアンジェラの名を言ってしまうクリスの今後を一人案じてしまった。むしろ、その人への警戒心の無さが、虚偽のいじめ報告を疑いもせず信じてジェシカを苦しめていることに、繋がっているのではないかと思えてしまう。
このノン悪令嬢の原因の一つは、婚約者であるクリスの警戒心の無さが挙げられるだろう。
そして、今回のクリスとの接触で、クリスがナタリーについて何か感情があるかとも言うわけではないのも知れた。恋愛感情ゆえに守っているなどということではなく、一般生徒の一人が婚約者にいじめを受けていたことに、腹を立てているようだ。
ナタリーとクリスの関係は否定され、王が自ら嘘の噂を流すこともないだろう。
となると、あとは報告に来ているアンジェラという貴族令嬢が真相に近いと考えられる。
アンジェラから情報を聞き出し、犯人像を確認するのだ。
私は次にアンジェラに近づくことにした。
まずはアンジェラの行動を監視し、接触できるタイミングや方法を探す。
ーーそして、私は知ってしまったのだ。アンジェラが鍵を握ることを。
昼休みであろうタイミングに、アンジェラと取り巻きであろう令嬢の3人がコソコソと小さな包みを抱えて廊下を歩いていた。そして、ナタリーが通るであろうことを確認した瞬間、令嬢の一人が忍者にも匹敵する速さでいびつな置物を通路に置いたのだった。
そして物影にそそくさと隠れると、様子を見始めた。
案の定、ナタリーが登場し、通路を邪魔するように置いてある置物を見て、おろおろと困り始めた。その姿を見て、アンジェラの取り巻きの二人はガッツポーズをしている。アンジェラも満足そうであった。
なんと、いじめの犯人はクリスに報告していた張本人であるアンジェラだったらしい。
私は思わずアンジェラの後をついていき、様子を窺った。
学園の制服を着て、眼鏡をした栗色の髪の少女がクリス王子に声をかける。
……その少女は勿論、私である。
私は学園の生徒のふりをしてクリスに近づくことに決めた。
魔法で学園の生徒のように変装。髪の毛の色も変え、王子に声をかけることを許される貴族の物を身につける徹底ぶりだ。
「君は……? 貴族のようだが、見慣れない顔だな」
しまった。普通に変装しても、貴族を把握しているであろう立場のクリスには部外者であることがばれてしまう。さらにこの王子は察しが良いようだ。咄嗟に頭をフル回転させ、上手い口実を探した。
「わ、私は貴族ですが人前にあまり出ない身でして……あまり皆さまに顔を覚えていただけないのです。そ、それより、あの、ナタリーさんがいじめを受けている件についてお話しをしたくて……」
我ながらとても上手く気弱そうな少女を演じれたと思う。深く詮索するなというオーラを思いっきりだしながら話した上に、早く本題に入り、話を逸らしてしまうことにした。
「そ、そうか。そういう者もいるだろうな。変なことを言って申し訳ない。して、ナタリー君のことがどうしたんだ。」
何か気まずさを感じてくれたらしく、幸いにも深くは聞かれなかった。ひとまず安心だ。
「ありがとうございます。私は、ナタリーさんの力になれたらと思ってまして……まずどんな状況だったのかを知りたいと思っています。ですので、状況を知る方にお伺いできればと思ってまして。どなたがナタリーさんのいじめの状況を殿下に教えてくださったのでしょうか?」
「なるほど……本当は匿名であるべきなんだろうが、君にはどこか教えても良い気がするな。私に教えてくれたのはアンジェラという令嬢だ。彼女はとても心優しく毎回、ナタリー君への嫌がらせの報告をしてくれるのだ。……まぁ、毎回犯人はジェシカ嬢であるのがもう分かっている。彼女がなぜ嫌がらせをするのか、皆目見当もつかないが、嫌がらせをするような人物を妻にする気はない。そろそろ限界が来そうだ」
「なるほど、アンジェラ様と言う方がその報告をされているのですね……」
「ん? 君はアンジェラのことを知らないのか? 貴族内では有名だと思うが……」
ヤバイ、貴族でないのがばれてしまう。
「うっ……ゴホゴホ。体が弱く社交界にあまり関わりが無くて……貴族の友達もあまりいないのです」
思わず病弱を思わせるように咳込んだ。
「そうか、貴族とのかかわりが無い代わりに平民と仲がいいのか。君のような貴族の後ろ盾があれば、ナタリー君も心強いだろう。ナタリー君のことをどうかよろしく。そしてジェシカの悪事からどうか守ってくれ」
「はい……」
そのジェシカ本人からの依頼で来ているのだが……というのを言わずに飲み込んだ。ジェシカが冤罪であるのをクリスはやはり知らないと見た。
あと、殿下。もう少し人を警戒してください。私としては助かるが、匿名であるはずのアンジェラの名を言ってしまうクリスの今後を一人案じてしまった。むしろ、その人への警戒心の無さが、虚偽のいじめ報告を疑いもせず信じてジェシカを苦しめていることに、繋がっているのではないかと思えてしまう。
このノン悪令嬢の原因の一つは、婚約者であるクリスの警戒心の無さが挙げられるだろう。
そして、今回のクリスとの接触で、クリスがナタリーについて何か感情があるかとも言うわけではないのも知れた。恋愛感情ゆえに守っているなどということではなく、一般生徒の一人が婚約者にいじめを受けていたことに、腹を立てているようだ。
ナタリーとクリスの関係は否定され、王が自ら嘘の噂を流すこともないだろう。
となると、あとは報告に来ているアンジェラという貴族令嬢が真相に近いと考えられる。
アンジェラから情報を聞き出し、犯人像を確認するのだ。
私は次にアンジェラに近づくことにした。
まずはアンジェラの行動を監視し、接触できるタイミングや方法を探す。
ーーそして、私は知ってしまったのだ。アンジェラが鍵を握ることを。
昼休みであろうタイミングに、アンジェラと取り巻きであろう令嬢の3人がコソコソと小さな包みを抱えて廊下を歩いていた。そして、ナタリーが通るであろうことを確認した瞬間、令嬢の一人が忍者にも匹敵する速さでいびつな置物を通路に置いたのだった。
そして物影にそそくさと隠れると、様子を見始めた。
案の定、ナタリーが登場し、通路を邪魔するように置いてある置物を見て、おろおろと困り始めた。その姿を見て、アンジェラの取り巻きの二人はガッツポーズをしている。アンジェラも満足そうであった。
なんと、いじめの犯人はクリスに報告していた張本人であるアンジェラだったらしい。
私は思わずアンジェラの後をついていき、様子を窺った。
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