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しおりを挟む何故だろう?
皮膚感覚はあるはずだ。
「 」
何かを言っている、裸のこの、40前半くらいの確か、バンドマン。レフトのベースギターの使い手。私の傷付いた腕をシーツに押し付けて、首筋で何かを語り掛けるのはくすぐったい。弦を滑る指通りのようなこの、すべらかな汗も、鎖骨あたりで感じ取れる。
多分、このキラキラした、少し白髪交じった、けどストレートで癖がない短髪、だがアゴヒゲが痒い。ただ髪の毛は猫の毛みたいで凄く素敵。
それが、私の上で、どうしてこんなにむさぼっている感触はするのに。
熱い熱い息は、お腹あたりにあるっていうのに。
「 ?」
聞こえないの。
聴こえない。あんたの声が、音が。
曖昧に微笑めば、
二重の目元が優しく、少し細くなって。
そう、とにかく中に、息を吐いて。
ただこの現象はどうしてか。
首筋に伸びる、筋ばった腕が。
「うっ、くっ、」
多分あんたは。
ライブハウスで帰りそびれた適当な女をひっ捕まえていまこうしてんだけど。
「え、どうしたの」
聞こえない。
「いはぃ…うぐっ、」
私本当はそうじゃなくて。
「音羽《おとは》、痛かった?ねぇ、」
シーツでまた手が握られる。
聴こえないの。
レフト側、丁度あんたが立つ方、ベース音なんてね。
「うぐっ、うぅ、」
しっぽり抜かれた。
多分まだまだ序盤だった。
裸の男女、そして右側に寝転んで見つめる瞳が。
「…ぇなぅ」
「うん、うん」
撫でられる髪、それから目元。
「大丈夫?俺が誰だか、わかんなく」
左手は、下に伸ばされ、それは痛いような、優しいような、刺激的なもの。
「わかるの?ねぇ」
「うぅ、」
「わかんないの、あぁ、そう」
「あ」
「でも、わかってるでしょ、音羽」
ヒゲが胸を燻って。
ダメ、聞こえない。
夜が来ても朝が来ても。
クラゲみたい。
どうしてこんなに意識は、浮いていくの?
「 」
ダメ、聞こえないの。
私はそう。
「壊れたギターみたいだ」
唇が云い放つ、低い、低音で。
あんたにも聴こえないでしょう?
私のこの、空虚。ただのフォロワーのホローなんてさ。
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