this is

二色燕𠀋

文字の大きさ
9 / 46
two

2

しおりを挟む
「おっはよーございまー!」

 タイミングが悪いのかなんなのか。木村が元気に出勤してきた。
 「はよ、何飲む」と、聞いてやったが、俺の業務はコーヒー屋かよという気分にもなってくる。

「私、開発の山城やましろ梨菜りなです、宇田先輩、であってますよね?ありがとうございました!」

 新人山城ちゃんは、ペコッと頭を下げて奥へ戻って行く。きちんとしたお団子。まさしくThe 新人という感じ。

 まぁ…一週間は延命したかなと昇が思っていると、木村が「今日は…抹茶オレで」と言いながらじろじろと見てきた。

「…別れたからって早くないですか宇田さん」
「ちっげぇよ、」

 木村もちょいとデスクを見ては「あ、シュガーちゃん来てない」と気付いた。

「…あれ?休み?」
「今のところ連絡はないけど…」

 「あ、でもな…」と悩み始めた木村を見て、まぁいいや、これでは営業部全員のコーヒー屋になってしまうと、昇はコーヒーを持ってデスクに戻る。
 悩み抜いた木村が砂糖を入れてかき混ぜていると、件の加東が「おはようございますっ!」と、なんとなく急いだ雰囲気で出勤してきた。

 安心した…一瞬金曜の夜のことが頭に浮かんだからだ。

 「おはよーシュガーちゃん。何飲む?」と木村が聞くのに「えー……と…」と、なんだかぼんやりしているようだった。

 まぁまぁ、と木村はデスクにやってくる。

 加東は下の方のボタンを押したようだが、誰かが出勤してきても「おはようございます」と、コーヒー屋になるわけではなく、ぼんやりと挨拶を交わしている。

 なんとなく、笑顔が控えめな気がする。

 寝坊ではないが、いつもと調子が違うのかと少し様子を眺めれば、砂糖を何本かとミルクを入れながら「間違えた…」と呟いていた。
 この違和感は俺だけだろうかと木村や渋谷の反応を伺ってみる。

「あ、多分今日微妙な日っすね、加東ちゃん」
「…かもな」
「まぁ月曜日だしねー」

 木村はいつも通り、特に気にしていない口調だが、やはりそうか。

 加東には、たまにそんな日がある。
 大抵そういう時、小さい微妙なミスを連発する。

「はよー加東ちゃん、珍しいねぇ、俺の方が早い」
「おはようございます渋谷さん。アラーム微妙に間違えちゃって」

 無難な返答だ。
 木村も「私も電車遅延したらいいなって月曜日は思うわ~」だなんて回答をしている。

 こーゆーときって、俺、どう対応してたっけ。
 変な意識をしているなと、昇は勝手に気まずくなった。

「遅延率は月曜が一番高いらしいぞ。
 おはよう加東」
「おはようございます」

 まぁ、悩んだところでフォローする以外にないしな…と頭を切り替えることにする。喉元過ぎれば、だ。

 何気に、始業時間ギリギリだったらしく、加東が座って雑談する、と言う雰囲気でもないままに業務開始のベルが鳴った。

 加東は早速、チョコレートを一欠片食べていた。
 本当によく太らないものだが、ぼんやりとすぐ飴まで口に入れてはっ、とした顔をするので、うーん、これはマメに話し掛けなければならない日だぞと、三人で共通認識になる。

 どちらかといえば「自然に」やらないとならない日だ。
 結果、気にしない方がいい。

 なのだが…あれ以来すぐの日、となると…。

 昇は「関係ないんだぞ、外のことはな!」と振り払い、さてさて羽毛布団、どこまで直したっけなとパソコンを眺めた。

 朝にそう頭の片隅へ入れたお陰か、いつの間にかいつも通りの仕事は出来たが、「加東の調子が悪いときの平常時」だ。

 それに対し季節外れの「羽毛布団」という、少し厄介な案件が舞い込んできている。
 まずは広報の戦略を見てみようと、試しに真後ろの席へと椅子を飛ばしてすり寄ってみた。

「よう桜井さくらい

 営業広報、同期の桜井。

 今日もまた派手というかなんというか、サブカル斬新お洒落女…というか。

「宇田じゃん、何」
「いやーちょっと案が欲しいというか」
「でしょうね。どの件」
「えっとねーこれ。羽毛布団」

 昇は先日、自分用に印刷した資料を桜井に渡した。
 速攻で「何このクッソみたいな文書、どゆこと?ふざけてる?」とバッサリ言われてしまったが、本当はあれから改訂をした。

「いやーホンットなんっもマジで思い付かなくて。卸業者と…これ、個人店にも売るって聞いたんだけど」
「あーね、はいはい」

 同期は話が早くて助かる。

 桜井はぱっぱと、卸業者用と個人店用のパンフの下書きを見せてくれた。

 なるほど図、写真の使い方が違う。

「…図解と写真との違いは?」
「まず、業者は図解、個人店が写真。そして今回は「リニューアル品」なわけよ。お分かり?」
「ほうほう…」
「個人店は鳥の絵よりこういう、製造機械とかの写真の方が印象良いでしょ?
 業者用のは図解の方がわかりやすいし営業も掛けやすいでしょ?」
「なるほど。
 これさ、従来品との違いが…見た目じゃわからんよなぁ、値段もそう変わらないし。
 …ん?
 個人店用だとなんでこれ、「新生活」って字入れてんの?販売は夏だけど」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

処理中です...