16 / 20
15
しおりを挟む
「ダメだ拾えない」
誠一は息を吐き江崎に言った。
久しぶりだな厚労省と、江崎は頭を回していた。
「地下かな」
「…家宅捜索に入っているがとっくに24時間が経過した。例えブツが上がってもヤツは自宅にいない、」
「なるほど、人拐いは警察の領域になんのか。お前には無理だよなぁ、こうしてるし。
間違いないのか、その田中新太郎ってヤツに」
「多分な」
「…多分じゃねぇんだよ、てめぇっ」
江崎はつい、誠一の胸ぐらを掴んだが「わかってますよっ、」と誠一もつい、苛々したように言い返してしまう。
わかっている、そうだ。互いに冷静でいなければ、頭が狂いそうなのだ。
江崎はぱっと手を離した。
「…MDMAはポツポツと…ありゃ個人売りだな。じゃあシャブはどうかっつえば」
「まぁご存じの通りほぼシャブだからな、若干増えたとか」
「お前のような理数系が多くて困る、んなのずっと左肩上がりだわ。
…緊急搬送履歴やら」
「怖いこと言わないでくださいよ。でも根本から訂正するとシャブにプラスされる部分ですね“メチレンジオキシ基”には…まぁきっと理数系じゃないんじゃわかりませんよね、化学式で検索してどうぞ。恐らくアナフィラキシーで誤認することはな」
「可愛いなこの絵、イモムシみたい」
「…構造式ですけどねっ、」
ポチポチスマホを弄る江崎に畜生、気持ちわかりますよと思った俺ムカつくなと思いながら。
「でーも、まぁいーんだわ。俺なら相手が死んだら埋めるし」
「…だからいちいち怖いことを」
「なんで裏ルートで洗えないかわかるか、正規ルートだからだ。正規ルートで真っ先に浮かぶセックスドラッグはと、考えた」
「…はぁ?」
「てめぇマトリだろ。田中新太郎がどこでキメセクパーティーしてんのか裏取れたんか、」
「…わかった、止めよう。悪い気が立ってる、結構いま限界だ」
「生ぬるいこと言って」
誠一のケータイに着信が入った。
黒田だった。
「…もしもし」
『もしもしマトリさん。
昨日の話ですがライブ主催のメンバー、ひとり捕まえました』
「…変われ」
江崎はそう言ったが誠一は構わず「誰だそいつは」と譲らない。
『ディッセンバー・パールハーバーのベース、ミサトノリヒロです。彼曰く、昨日のライブ終わり、楽屋には慧のギターが残されもぬけの殻だったらしいです。
彼は終わってすぐに帰宅したので状況把握が出来てないらしいですが…メンバーは…』
「つまり、その後のことは知らないんだな?」
『はい』
「…メンバーの名前、誰かアプリ使ってたら一人でも良い、教えてくれ」
『例の、真鍋の友人がそのミサトなんです』
「なるほど、わかった。
大丈夫、こっちには拷問のスペシャリストがいるから」
てめぇ覚えてろよと江崎が舌打ちをするなか通話を切り、「ケータイ会社に個人情報の開示請求をする…が、」と誠一はサーバーで単語検索を掛けた。
どうやらディッセンバーには誰か、全科者がいる。
「なるほど、自社レーベルねぇ」
「江崎さん、」
呼んだ誠一は眉間のシワを押し「すまない」と言った。
「次に言ったらぶっ殺すぞてめぇ」
…人を殺したヤツの目には、大抵光がないのに。
「悪かったなクソ野郎。ちなみに見解は」
「色々あるが大体決まってる、男を連れ去ってるからな、ニトライトだろ」
「…っわめんどくせぇな、素人だと…本気で質が悪そうだな、んなバカは使い方もわかってねぇだろうし」
「実際ひとり死んでるしな。お前ってゲイ?前から思ってたけど」
「うるせぇよマトリだよいまそれどころじゃ」
「肩の力を抜けっつってんだよ。お前には田中ん家付近のホームセンターやらの防犯カメラ映像の開示請求権はあんのか」
「警察の方が店側は応じてくれるだろうな。だがそんな露骨な」
「多分頭まわってねぇよこんなヤツ、お前と一緒で。走れ」
そう言って江崎が去ろうとするのに「待て」と誠一は声を掛けた。
「…賭けだぞ、それ」
「あ?」
「…合法で行くか?」
「お前今更地位とか」
「違う。
…務所入ったことないんだろ」
「バカじゃねえの?マトリ辞めちまえド近眼」
そう言う江崎に「勘弁しろよ…」と魂が抜けた声。
…だが、そう言われればやるしかないなと、誠一はまずジャケットを羽織った。
多分限界なのはそれぞれだ。慧にはハンデがある、誤使用までされたら死ぬかもしれない。
声の枯れもあった、あの聞き取りにくいノイズでは判断も出来なかった…など、言っても仕方がないことよりも虱潰しに行くしかない。
…頼む、待っていてくれ。助けに行く。
…なんと言えば良いか。
…江崎は言わせてくれないかもしれないな。あの様子だ、完璧に命を掛けている。
意外だった。ただの博打のつもりなんじゃないかと思っていたのに。
病院も考えなければ、そう、今は慧が生きているのを前提としなければ。事件発生から考えるとあと24時間しか自由がない。
また電話が鳴った。今度は半井だ。
「…もしもし」
『マトリさん、』
…泣きそうだな。
『い、いま……。シルバさん、スタジオ入りました、』
「…何」
『新宿のスタジオアルファです、』
「ちょっと待て、」
走った。
江崎に追い付き「江崎、」と、電話も忘れそうになりつつ、呼んだ。
「新宿のスタジオアルファだ、今、田中が入ったらし」
「…そいつに伝えろ、絶対突撃すんなと。やりそうだよな!」
確かに。
「聞こえたか」と聞けば『でも…』と、あぁもう、
「いーから言うことを聞け。お前は一般人だ」
江崎はケータイを弄りながら「場所はわかった、平良走れ、そこは俺の物じゃない」と言った。
「俺は相手に許可を取る」
「…わかった」
「頼んだぞ、こっちはこっちで物を用意する」
「…物? 」
江崎は走って行ってしまった。
電話越しで泣いている半井に「しっかりしろ、立て、」と声を掛ける。
「助かった。兎に角急ぐから」
まずは、走る。
誠一は息を吐き江崎に言った。
久しぶりだな厚労省と、江崎は頭を回していた。
「地下かな」
「…家宅捜索に入っているがとっくに24時間が経過した。例えブツが上がってもヤツは自宅にいない、」
「なるほど、人拐いは警察の領域になんのか。お前には無理だよなぁ、こうしてるし。
間違いないのか、その田中新太郎ってヤツに」
「多分な」
「…多分じゃねぇんだよ、てめぇっ」
江崎はつい、誠一の胸ぐらを掴んだが「わかってますよっ、」と誠一もつい、苛々したように言い返してしまう。
わかっている、そうだ。互いに冷静でいなければ、頭が狂いそうなのだ。
江崎はぱっと手を離した。
「…MDMAはポツポツと…ありゃ個人売りだな。じゃあシャブはどうかっつえば」
「まぁご存じの通りほぼシャブだからな、若干増えたとか」
「お前のような理数系が多くて困る、んなのずっと左肩上がりだわ。
…緊急搬送履歴やら」
「怖いこと言わないでくださいよ。でも根本から訂正するとシャブにプラスされる部分ですね“メチレンジオキシ基”には…まぁきっと理数系じゃないんじゃわかりませんよね、化学式で検索してどうぞ。恐らくアナフィラキシーで誤認することはな」
「可愛いなこの絵、イモムシみたい」
「…構造式ですけどねっ、」
ポチポチスマホを弄る江崎に畜生、気持ちわかりますよと思った俺ムカつくなと思いながら。
「でーも、まぁいーんだわ。俺なら相手が死んだら埋めるし」
「…だからいちいち怖いことを」
「なんで裏ルートで洗えないかわかるか、正規ルートだからだ。正規ルートで真っ先に浮かぶセックスドラッグはと、考えた」
「…はぁ?」
「てめぇマトリだろ。田中新太郎がどこでキメセクパーティーしてんのか裏取れたんか、」
「…わかった、止めよう。悪い気が立ってる、結構いま限界だ」
「生ぬるいこと言って」
誠一のケータイに着信が入った。
黒田だった。
「…もしもし」
『もしもしマトリさん。
昨日の話ですがライブ主催のメンバー、ひとり捕まえました』
「…変われ」
江崎はそう言ったが誠一は構わず「誰だそいつは」と譲らない。
『ディッセンバー・パールハーバーのベース、ミサトノリヒロです。彼曰く、昨日のライブ終わり、楽屋には慧のギターが残されもぬけの殻だったらしいです。
彼は終わってすぐに帰宅したので状況把握が出来てないらしいですが…メンバーは…』
「つまり、その後のことは知らないんだな?」
『はい』
「…メンバーの名前、誰かアプリ使ってたら一人でも良い、教えてくれ」
『例の、真鍋の友人がそのミサトなんです』
「なるほど、わかった。
大丈夫、こっちには拷問のスペシャリストがいるから」
てめぇ覚えてろよと江崎が舌打ちをするなか通話を切り、「ケータイ会社に個人情報の開示請求をする…が、」と誠一はサーバーで単語検索を掛けた。
どうやらディッセンバーには誰か、全科者がいる。
「なるほど、自社レーベルねぇ」
「江崎さん、」
呼んだ誠一は眉間のシワを押し「すまない」と言った。
「次に言ったらぶっ殺すぞてめぇ」
…人を殺したヤツの目には、大抵光がないのに。
「悪かったなクソ野郎。ちなみに見解は」
「色々あるが大体決まってる、男を連れ去ってるからな、ニトライトだろ」
「…っわめんどくせぇな、素人だと…本気で質が悪そうだな、んなバカは使い方もわかってねぇだろうし」
「実際ひとり死んでるしな。お前ってゲイ?前から思ってたけど」
「うるせぇよマトリだよいまそれどころじゃ」
「肩の力を抜けっつってんだよ。お前には田中ん家付近のホームセンターやらの防犯カメラ映像の開示請求権はあんのか」
「警察の方が店側は応じてくれるだろうな。だがそんな露骨な」
「多分頭まわってねぇよこんなヤツ、お前と一緒で。走れ」
そう言って江崎が去ろうとするのに「待て」と誠一は声を掛けた。
「…賭けだぞ、それ」
「あ?」
「…合法で行くか?」
「お前今更地位とか」
「違う。
…務所入ったことないんだろ」
「バカじゃねえの?マトリ辞めちまえド近眼」
そう言う江崎に「勘弁しろよ…」と魂が抜けた声。
…だが、そう言われればやるしかないなと、誠一はまずジャケットを羽織った。
多分限界なのはそれぞれだ。慧にはハンデがある、誤使用までされたら死ぬかもしれない。
声の枯れもあった、あの聞き取りにくいノイズでは判断も出来なかった…など、言っても仕方がないことよりも虱潰しに行くしかない。
…頼む、待っていてくれ。助けに行く。
…なんと言えば良いか。
…江崎は言わせてくれないかもしれないな。あの様子だ、完璧に命を掛けている。
意外だった。ただの博打のつもりなんじゃないかと思っていたのに。
病院も考えなければ、そう、今は慧が生きているのを前提としなければ。事件発生から考えるとあと24時間しか自由がない。
また電話が鳴った。今度は半井だ。
「…もしもし」
『マトリさん、』
…泣きそうだな。
『い、いま……。シルバさん、スタジオ入りました、』
「…何」
『新宿のスタジオアルファです、』
「ちょっと待て、」
走った。
江崎に追い付き「江崎、」と、電話も忘れそうになりつつ、呼んだ。
「新宿のスタジオアルファだ、今、田中が入ったらし」
「…そいつに伝えろ、絶対突撃すんなと。やりそうだよな!」
確かに。
「聞こえたか」と聞けば『でも…』と、あぁもう、
「いーから言うことを聞け。お前は一般人だ」
江崎はケータイを弄りながら「場所はわかった、平良走れ、そこは俺の物じゃない」と言った。
「俺は相手に許可を取る」
「…わかった」
「頼んだぞ、こっちはこっちで物を用意する」
「…物? 」
江崎は走って行ってしまった。
電話越しで泣いている半井に「しっかりしろ、立て、」と声を掛ける。
「助かった。兎に角急ぐから」
まずは、走る。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる