HalcyoN

二色燕𠀋

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TriazoruM

6

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 先日「無理無理無理無理」と宮殿で帰って来た彼とは全く違っている。

 ……あれの方がOA、後なのにな…!うーん、でもまぁ良しかと、少しだけ嬉しくなった。
 監督が先に立つのを察したアナウンサーが「これから撮影ということで」と進める。

「はい。
 佳境に入ってきました“桜色ドラマチック”、僕が演じるツヨシの葛藤とミサキとマナブの恋の行方は?水曜夜10時、是非とも見守ってください」

 平中くんは爽やかスマイルでそう言い、カメラから外れ、真顔にはなったが「ありがとうございました」と番組の各人々に両手を合わせお辞儀をしている。

 普段からやっているんだろうか。だとしたらこれは、見えない好印象だな。

 春雪がなんだかなぁとジーンとしている最中、「おい」と、監督が不機嫌そうに寄ってくる。

 うわ、めんどくさっ。

 顔には出ただろう。
 すると、平中くんが合わせていた手をふっと腰に当て「どうだ!」と言わんばかりに春雪へドヤ顔をしてくる。

 やるなぁ、ホントにこの子ったらとつい綻び、春雪は平中くんに親指を立てgoodサインを返す。
 平中くんがクールな笑顔で歩いてくれば、監督は舌打ちをして去って行った。

 つい、
「ちゃんと目とか合わせたじゃん、あと愛想も良くなったし凄くよかったよ」なんて早口になってしまう。

「まあね」

 そう言ってぐっと肩を抱かれスタジオを出た途端「…マジでイケてた?大丈夫?」と不安そうに聞くのがまた可愛らしい。

「うんうん。朝の顔感ありだったよ」

 肩を叩いてやる。

 「朝の顔…ま、いっか…」と肩の力を抜いた平中くんと共に楽屋へ戻り、眞田さんも楽屋でgoodサインをした。

 平中くんは照れたのか気まずいのか、「まぁ、はい…」と、来る前に買ったルイボスティーを眞田さんに渡していた。

 予定通り、そこから現場へ直行する。

 確かに薬も抜けたし頭もまわった。運転するには絶好だが、芳明が言った通りだった、扉を開けた瞬間の灼熱。

 18.9度。朝にか、11月なのに…と冷房を入れようか迷うところ。
 平中くんを見れば「18度とか南極の氷溶けんじゃん…」と言ったので、春雪は軽く冷房を入れた。

「最近季節ついてくの無理」
「…どっちかっていうと多分それ俺の台詞…。撮影押してるからわからないけど、出来るだけマメに休憩申請するね。今日20度越えるってさ…」
「南極の氷死ぬじゃん」
「そうだね…白クマさん死んじゃう…」

 後部座席では平中くんが奇妙な顔をし、「いや、それ北極じゃね?」と真剣に言った。

 まぁどっちでもいいなと、春雪は「じゃぁペンギンさんか」と、なんだか少しいい気分だ、小さめにサウンドを弄った。

 眠くなりそうなサウンドが流れる。
 平中くんが「珍しいね」と言った。

「確かに久々」

 ぼんやりと流していれば聞こえてくる、ロックの歌姫。あぁ、そういえば芳明はあまり好きじゃないんだよなぁと思いつつ。

「あ、知らない唄だけど誰かはわかった!」

 …まぁ、声にクセあるからなぁと、何気なく春雪の目に入ったサウンドの情報には2000年とあった。
 2000年!?と頭の中で計算すれば、平中レイア19歳。

「…君が生まれる前なのっ、これ!?」

 母親が好きになった歌手だった。歌舞伎町の唄とか、そういうのでハマっていたと思う。
 この唄は確か…そうだ、彼女が平中くんくらいの歳で作ったから2000年にマイナーカップリング集に入ったんだっけ。

「ん?」
「にせんねん…」
「着床する前だね、多分」
「マジかっ!」

 でもあんまりあんたも変わらなくない?が入ってこない。お前はきっとナイフをぉぉぉお~。直に歌詞が来た。

 静かに聞き始めた平中くんに春雪も丁度、と聞いてみる。芳明とは聞かないからなぁと、懐かしさを新鮮に感じたりして。

「お宅らこんな感じなの?」

 なんとなくシャッフルにしていた何曲目かで、然り気無く平中くんにそう言われ、はっと気付いた。だから、嫌いなのかなと。
 密かに考えを振り払う。
 
「あーこのアルバムね、1曲目のやつあるでしょ。その次の歌に「Fuck of G man」って単語があるんだよねー。だから嫌いなんだと」
「思い出した!この人あれだ、ガラス蹴っ飛ばすイメージだったけど他の歌にあるよね、えっと…銀座で、警官ごっこ~って」

 一部歌ったのがとても上手で「歌上手いね平中くん!」とつい、感激してしまった。

「え?そう?」
「声の恩恵だ…ボイトレとかも…」
「この人意味わからん歌詞だけどすっげぇ共倒れ感あったね、最初のやつ」

 …いやはや引き戻されちゃったな。

「そうかなぁ。片想いの曲だと俺は思ったけどさー」

 あ、2014年のやつ来た。と、外を眺めるついでに平中くんをミラー越しにチラ見すると、手を組んで前屈みになった。

 外はどうやら真夏のように、日が照っている。
 季節柄、乾燥もありそうだ。本当にマメに水分補給をさせてあげないとな。

「…イーヴンな関係ってどういうこと?」

 …当時を思い出すなぁ、でもタイムリーなようなと思い、春雪はなんとなく曲を変えた。

 全然違う男性の、まだ売ってないやつ。そういえばこの人も癖のある声だな。

 やっぱり平中くんは「ホントに全く知らん人来た」と言ったので来ましたなと、「わかってるわかってる」と答えた。

 アコースティックに乗ってみれば確かに、眩暈を起こし誰かが歩道で倒れていたとしても、暴走するようにクラクションも鳴らさないだろうし、轢いてしまうこともないだろうと思えた。

 ちょっぴり、いい気分。
 本当ならどこかへふらっと宛もなく、ドライブへ行きたくなるような陽気、のはずだった。
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