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降りそそぐ灰色に
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その日から、crashの連絡は一切スルーした。
もちろんそれは、シンジからのもだ。
グラシアとでんにじの動画をある程度ダウンロードし、バイト中は前のスマホ端末を学に預けておいた。
二週間、きっと寂しい時もあっただろうが、バイトばかりはどうすることも出来ない。
けれどスタジオ代を抜いてしまえば、金のやりくりも不可能じゃなかった。
時間もスタジオ6回分が空き、学と料理をする時間も作れた。
学が手を広げ上下にやるのに「ハンバーグか」とわかるくらい、意思の疎通も出来るようになっていった。
「ハンバーグかぁ、それ高校の調理実習以来だわ…」
「元々好きなん?」
「美智佳のお手伝いとかしてた?」
なんて、一人言のようで一人言じゃない一人暮らしの空間が広がってゆく。
学はそれで一度だけ泣いた。玉ねぎのみじん切りだ。意外にも、これはあのあまちゃんこと天崎真樹からの直伝だった。
上手くは出来なかったけど、二人でなんとなく笑って食って。
全然美味しくもなかったが、学に持たせた端末で料理を一回一回写真に残し、レシピも記録しておいた。
本当に小さな変化だけど、なんだか、大きく変わったような気がする。
そうやって、徐々に徐々に当たり前を過ごし慣れてきた頃、グラシアとでんにじの日がやってきた。
曽根原さんには先に言っておいたので、「広めだし、楽屋でいーよ」と、隅で見せてもらうことになった。
本番前にしてメンバーは、全員間違いなく酒が入っていて、酒臭くて仕方なかったけど。
「野菜ジュースかぁ、ええねんそれー。
あ、ハンバーグどぉだったぁ?スバルくんが感想言えって」
「誰だよスバルくん……失敗したわ」
「あーそーなんだねぇ、使えねークソアマだなー!」
今まで自炊してこなかったからな。てか、お前の料理じゃなかったんだな。まぁそうだよなこんな社会不適合者。
その頃には学の自己表現も増え、天崎に親指を立ててちょっと笑ったので「あーマナブ、傷治ってきてんねーよかったなー」と、ここは仲良くなったようだった。
「あーそろそろ出番だぞ真樹。
じゃ、お先っすグラシアさん」
「はーいじゃー」とでんにじに手を振り送り出したあと、曽根原さんがふと「茜ちゃん?」と耳打ちをしてきた。
「…辞めそうって、マジ?」
「…え」
「あ、いま山里くん、来てるらしいけど」
「あーまぁ行けないんでいいっす。
辞めるかもまぁ、先輩たち聴いて考えますよ。どーもです」
うーんと言いながら曽根原さんは楽屋のドアを開ける。
高峯は曽根原さんと一緒に出て行ったが、ノリトさんとSM亀田はどうやらここで聴くらしい。
まぁ、お邪魔できるくらい、広めだしな。
「ホントはもう決めてんじゃないの?」
亀田に言われ反射で「まぁね」と答えたが、正直本当に微妙なのだ。
「まー辞めちゃえ辞めちゃえ、どーせ」
「そーね」
未来なんて、何があるかわからない。
「まー、なんとかなるだろ。どっか当たっておこうか?」
「いや、まだホントに考えてないですよ。直感で生きることにしたんで」
んー…とノリトさんは微妙な反応をしたが、「楽しそーだね、それ」と亀田はニコッと笑ってそう言った。
本当にそれぞれ自由だ。
それがあのチームワークに繋がるのだろうか。
ステージの方でドラムが鳴り、「始まったな」と、その話は終いになった。
生で聴けばやっぱり違う。
演奏はそれなりに上手くてポップだとは感じていた、そう、やっぱりメジャーへ行けるだけある。
安定していた。かなり。変調すらも。
「やっぱスゲーよね」
「わかる」
「うん、スゲーっす。
あと、生の方が上手いっすね歌」
「っは!わかる!あまちゃん歌ヘッタクソかと思ったら何気ちゃんとファルセットとか出来てんだよねっ!」
どこか不安定な音域だけど、なるほど、昔ファンだったサブカルクソ女子の気持ちもわかる気がした。
なんと、MCなしで進んでいった。
ウチなんてMCどんだけだよってくらい主張するっつーのに。
たまに間はあったが、それはきっと水分補給だろう。これじゃそもそもかすれそうだけど、この擦り切れそうな感じも「生きた音楽感」があるのかもしれない。
ようやっとMCが入ったあたりで、曽根原さんと高峯が戻ってくる。
「はー、でんにじよかったな~、俺らもやるよ~」
『かなり昔、高校とかで~』と天崎が喋っているなか、曽根原さんが「うっしゃ円陣円陣」と言った、それだけでメンバーの目付きが変わる。
「俺たちもっといーのやるから。ちゃんと聴いといてなー」
…この、肌に来る臨場感。
なのにギクシャクしてない。こんなの…初めて見た。
『学校って曲で終わります。
呼んでくれたgrass alive sonicの曽根原さん、ありがとーございまっさ。エレクトリック・レインボーでった』
もちろんそれは、シンジからのもだ。
グラシアとでんにじの動画をある程度ダウンロードし、バイト中は前のスマホ端末を学に預けておいた。
二週間、きっと寂しい時もあっただろうが、バイトばかりはどうすることも出来ない。
けれどスタジオ代を抜いてしまえば、金のやりくりも不可能じゃなかった。
時間もスタジオ6回分が空き、学と料理をする時間も作れた。
学が手を広げ上下にやるのに「ハンバーグか」とわかるくらい、意思の疎通も出来るようになっていった。
「ハンバーグかぁ、それ高校の調理実習以来だわ…」
「元々好きなん?」
「美智佳のお手伝いとかしてた?」
なんて、一人言のようで一人言じゃない一人暮らしの空間が広がってゆく。
学はそれで一度だけ泣いた。玉ねぎのみじん切りだ。意外にも、これはあのあまちゃんこと天崎真樹からの直伝だった。
上手くは出来なかったけど、二人でなんとなく笑って食って。
全然美味しくもなかったが、学に持たせた端末で料理を一回一回写真に残し、レシピも記録しておいた。
本当に小さな変化だけど、なんだか、大きく変わったような気がする。
そうやって、徐々に徐々に当たり前を過ごし慣れてきた頃、グラシアとでんにじの日がやってきた。
曽根原さんには先に言っておいたので、「広めだし、楽屋でいーよ」と、隅で見せてもらうことになった。
本番前にしてメンバーは、全員間違いなく酒が入っていて、酒臭くて仕方なかったけど。
「野菜ジュースかぁ、ええねんそれー。
あ、ハンバーグどぉだったぁ?スバルくんが感想言えって」
「誰だよスバルくん……失敗したわ」
「あーそーなんだねぇ、使えねークソアマだなー!」
今まで自炊してこなかったからな。てか、お前の料理じゃなかったんだな。まぁそうだよなこんな社会不適合者。
その頃には学の自己表現も増え、天崎に親指を立ててちょっと笑ったので「あーマナブ、傷治ってきてんねーよかったなー」と、ここは仲良くなったようだった。
「あーそろそろ出番だぞ真樹。
じゃ、お先っすグラシアさん」
「はーいじゃー」とでんにじに手を振り送り出したあと、曽根原さんがふと「茜ちゃん?」と耳打ちをしてきた。
「…辞めそうって、マジ?」
「…え」
「あ、いま山里くん、来てるらしいけど」
「あーまぁ行けないんでいいっす。
辞めるかもまぁ、先輩たち聴いて考えますよ。どーもです」
うーんと言いながら曽根原さんは楽屋のドアを開ける。
高峯は曽根原さんと一緒に出て行ったが、ノリトさんとSM亀田はどうやらここで聴くらしい。
まぁ、お邪魔できるくらい、広めだしな。
「ホントはもう決めてんじゃないの?」
亀田に言われ反射で「まぁね」と答えたが、正直本当に微妙なのだ。
「まー辞めちゃえ辞めちゃえ、どーせ」
「そーね」
未来なんて、何があるかわからない。
「まー、なんとかなるだろ。どっか当たっておこうか?」
「いや、まだホントに考えてないですよ。直感で生きることにしたんで」
んー…とノリトさんは微妙な反応をしたが、「楽しそーだね、それ」と亀田はニコッと笑ってそう言った。
本当にそれぞれ自由だ。
それがあのチームワークに繋がるのだろうか。
ステージの方でドラムが鳴り、「始まったな」と、その話は終いになった。
生で聴けばやっぱり違う。
演奏はそれなりに上手くてポップだとは感じていた、そう、やっぱりメジャーへ行けるだけある。
安定していた。かなり。変調すらも。
「やっぱスゲーよね」
「わかる」
「うん、スゲーっす。
あと、生の方が上手いっすね歌」
「っは!わかる!あまちゃん歌ヘッタクソかと思ったら何気ちゃんとファルセットとか出来てんだよねっ!」
どこか不安定な音域だけど、なるほど、昔ファンだったサブカルクソ女子の気持ちもわかる気がした。
なんと、MCなしで進んでいった。
ウチなんてMCどんだけだよってくらい主張するっつーのに。
たまに間はあったが、それはきっと水分補給だろう。これじゃそもそもかすれそうだけど、この擦り切れそうな感じも「生きた音楽感」があるのかもしれない。
ようやっとMCが入ったあたりで、曽根原さんと高峯が戻ってくる。
「はー、でんにじよかったな~、俺らもやるよ~」
『かなり昔、高校とかで~』と天崎が喋っているなか、曽根原さんが「うっしゃ円陣円陣」と言った、それだけでメンバーの目付きが変わる。
「俺たちもっといーのやるから。ちゃんと聴いといてなー」
…この、肌に来る臨場感。
なのにギクシャクしてない。こんなの…初めて見た。
『学校って曲で終わります。
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