42 / 86
第三話
13
しおりを挟む
────
結局その後、3人でデミグラスのオムライスを作り、ワインを2人で1本空け、お互いの過去話に花を咲かせた。
俺が風呂から出てくると光也さんは小夜の髪の毛を神妙な顔で鋤いていた。その二人の姿は、まるで兄妹みたいだ。
「そろそろ髪の毛切るか?」
「ん?」
「いや、伸びたなと思ってさ」
「とこやさん?」
「面倒だから俺が切ってもいいよ」
そう言えば家漁ったとき、やけに本格的な美容師グッズあったな。あれってもしや…。
「そう言えばハサミあったな」
「あー、うん。昔ちょっとね」
「あんたどんだけ資格あんだよ」
「フリーターって暇なんだよね」
だろうな。じゃなかったらそんな持たないよな、資格なんて。
軽く髪の毛を乾かしてやるその手つきがちょっとプロっぽい。
一通り終わると、「さ、そろそろ寝ないとな」と小夜の頭を撫でた。
「おやすみなさい」
そう言って小夜はベットの壁際へ寝転んだ。クマを二匹とも抱えている。
俺は光也さんの髪を拭いた。思わず触りたくなった。
「髪綺麗だなーどーやったらこーなるの?」
「特になんもしてねぇよ?真里染めてるからじゃね?」
「確かにめっちゃ染めたからなー」
光也さんはふと、ストックしてあった山崎をグラスに注ぎ始める。
「え、マジ?」
「一杯だけのもうかなーって。飲む?」
「…じゃぁ」
こいつ、ホントほっといたらろくでもねぇ暮らしするんだろうな。
テキトーに氷を入れて指で軽く混ぜる。その動作をちょっと邪な目で俺は見ていた。
「何?今日は飲みたい日なの?」
「さぁ?そーでもねーけどなんとなく目の前にあったから」
あーあー、嘘吐きやがって。ちょっとピクッとしたぞ。
まぁそりゃそっか。仲良しなねぇちゃんと決別してきたんだからな。
「まぁ小夜も寝たし酔っぱらってもいいだろう!」
「やったね」
そう俺が言えば一気飲みして更にもう一杯注いだ。
「ただ、あんま調子に乗ると明日仕事だからな?」
「わかってるよ」
「で、飲んでどうしたいの?」
「ん?」
「話したいの?寝たいの?忘れたいの?それとも自棄?」
「…なんだろうな。特に何もない。ただ飲みたい。自棄だったら多分そこのスポドリで割ってる」
「…なにそれ怖っ!死ぬぞ!」
「あー、それで1日のびてたことあったよ」
「あんたってヤツはホント…」
「まぁバイトない日だったからよかったけどねー」
「そーゆー問題じゃないから」
光也さんはふと、笑い始めた。
なんだろ、気が触れたのかな。
「な?結構クズだろ?」
「…」
「お前ね、人を見る目がない。俺だったらこんなクソッたれ絶対選ばないな」
「うるせー先輩だな」
わかってないのはあんたの方だ。
山崎を流し込む。これ結構喉にくるんだよなぁ。
さっきから遊ぶようにくるくると氷を回している。なんだよ可愛いなぁ。俯いてる顔も哀愁あってそれがなんだか色っぽくて。
「資格ってさ、他に何持ってんの?」
違うこと考えよっと。
「んー、なんだっけな。
バーテン、美容師、調理、あとなんかパソコン系と、なんだろうな…でもほとんど大したことない級だよ。かじってるだけだから。建築もちょこっとやった。資格じゃないけどギターとか三味線とか楽器もやったしなぁ。
姉ちゃんに言われたわ、何やっても続かないって」
「そうかぁ?バイトとか長いじゃん」
「うん。バイトはね。
俺なんかね、あっさり切れちゃうんだよな、どっかで。でもなんだろ、全部思い入れがない訳じゃないんだ。ただ、切っちゃうんだよな」
「…自己防衛なんじゃねぇの?」
「ん?」
「あんたどっかで切らないとさ、多分はまりこんで堕っこっちゃうんだよ。だから本能的に、自分が気付かないところで切っちゃうんじゃない?
あんた見てるとそんな気がする」
「ホントにそうだったら、やっぱりクズだな」
「そうか?俺は良いと思うけど?
だってよ、堕ちるかもしれない、本能が悲鳴あげる直前まで夢中になるって、なかなかねぇと思うぜ?」
「……」
まだくるくるしてるよ。ちょっといたずらしてやりたくなるよなこれ。
俺がその手を握るように手を置いたらちょっとビックリしてこっち見る。
小動物じゃねぇんだからよ。
「さっきからずーっとくるくる、遊ばないの!」
「無意識だわー。
いやーなんか分離するとちょっとなー」
光也さんはすぐ手を引っ込めて一気に飲み干した。やり場がなくなったのかそれから体育座りをしてる。
「満足した?」
「ん?んー」
あれ、結構酔ってんのかこいつ。
結局その後、3人でデミグラスのオムライスを作り、ワインを2人で1本空け、お互いの過去話に花を咲かせた。
俺が風呂から出てくると光也さんは小夜の髪の毛を神妙な顔で鋤いていた。その二人の姿は、まるで兄妹みたいだ。
「そろそろ髪の毛切るか?」
「ん?」
「いや、伸びたなと思ってさ」
「とこやさん?」
「面倒だから俺が切ってもいいよ」
そう言えば家漁ったとき、やけに本格的な美容師グッズあったな。あれってもしや…。
「そう言えばハサミあったな」
「あー、うん。昔ちょっとね」
「あんたどんだけ資格あんだよ」
「フリーターって暇なんだよね」
だろうな。じゃなかったらそんな持たないよな、資格なんて。
軽く髪の毛を乾かしてやるその手つきがちょっとプロっぽい。
一通り終わると、「さ、そろそろ寝ないとな」と小夜の頭を撫でた。
「おやすみなさい」
そう言って小夜はベットの壁際へ寝転んだ。クマを二匹とも抱えている。
俺は光也さんの髪を拭いた。思わず触りたくなった。
「髪綺麗だなーどーやったらこーなるの?」
「特になんもしてねぇよ?真里染めてるからじゃね?」
「確かにめっちゃ染めたからなー」
光也さんはふと、ストックしてあった山崎をグラスに注ぎ始める。
「え、マジ?」
「一杯だけのもうかなーって。飲む?」
「…じゃぁ」
こいつ、ホントほっといたらろくでもねぇ暮らしするんだろうな。
テキトーに氷を入れて指で軽く混ぜる。その動作をちょっと邪な目で俺は見ていた。
「何?今日は飲みたい日なの?」
「さぁ?そーでもねーけどなんとなく目の前にあったから」
あーあー、嘘吐きやがって。ちょっとピクッとしたぞ。
まぁそりゃそっか。仲良しなねぇちゃんと決別してきたんだからな。
「まぁ小夜も寝たし酔っぱらってもいいだろう!」
「やったね」
そう俺が言えば一気飲みして更にもう一杯注いだ。
「ただ、あんま調子に乗ると明日仕事だからな?」
「わかってるよ」
「で、飲んでどうしたいの?」
「ん?」
「話したいの?寝たいの?忘れたいの?それとも自棄?」
「…なんだろうな。特に何もない。ただ飲みたい。自棄だったら多分そこのスポドリで割ってる」
「…なにそれ怖っ!死ぬぞ!」
「あー、それで1日のびてたことあったよ」
「あんたってヤツはホント…」
「まぁバイトない日だったからよかったけどねー」
「そーゆー問題じゃないから」
光也さんはふと、笑い始めた。
なんだろ、気が触れたのかな。
「な?結構クズだろ?」
「…」
「お前ね、人を見る目がない。俺だったらこんなクソッたれ絶対選ばないな」
「うるせー先輩だな」
わかってないのはあんたの方だ。
山崎を流し込む。これ結構喉にくるんだよなぁ。
さっきから遊ぶようにくるくると氷を回している。なんだよ可愛いなぁ。俯いてる顔も哀愁あってそれがなんだか色っぽくて。
「資格ってさ、他に何持ってんの?」
違うこと考えよっと。
「んー、なんだっけな。
バーテン、美容師、調理、あとなんかパソコン系と、なんだろうな…でもほとんど大したことない級だよ。かじってるだけだから。建築もちょこっとやった。資格じゃないけどギターとか三味線とか楽器もやったしなぁ。
姉ちゃんに言われたわ、何やっても続かないって」
「そうかぁ?バイトとか長いじゃん」
「うん。バイトはね。
俺なんかね、あっさり切れちゃうんだよな、どっかで。でもなんだろ、全部思い入れがない訳じゃないんだ。ただ、切っちゃうんだよな」
「…自己防衛なんじゃねぇの?」
「ん?」
「あんたどっかで切らないとさ、多分はまりこんで堕っこっちゃうんだよ。だから本能的に、自分が気付かないところで切っちゃうんじゃない?
あんた見てるとそんな気がする」
「ホントにそうだったら、やっぱりクズだな」
「そうか?俺は良いと思うけど?
だってよ、堕ちるかもしれない、本能が悲鳴あげる直前まで夢中になるって、なかなかねぇと思うぜ?」
「……」
まだくるくるしてるよ。ちょっといたずらしてやりたくなるよなこれ。
俺がその手を握るように手を置いたらちょっとビックリしてこっち見る。
小動物じゃねぇんだからよ。
「さっきからずーっとくるくる、遊ばないの!」
「無意識だわー。
いやーなんか分離するとちょっとなー」
光也さんはすぐ手を引っ込めて一気に飲み干した。やり場がなくなったのかそれから体育座りをしてる。
「満足した?」
「ん?んー」
あれ、結構酔ってんのかこいつ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる